こんにちは!manavi編集部の安藤です。みなさん、理科してますか?
先日、和歌山県で開催された『おもしろ科学まつり』を取材した際に、興味深い実験を見学しました!
それは、近畿大学附属和歌山高校・中学校のブースでのこと。
使っているのは、電池と磁石と銅線。そしてそれらを支える小さなナットだけ。
そんな簡単そうに見える装置で、銅線がくるくると回り続けるのです!
こちらの実験を、是非おうちでも!と思い、再現するべくmanaviで研究しました。
今回の記事では「銅線・磁石・電池」を使った、動きのある実験を紹介します。
シンプルながら奥が深い実験ですので、自由研究のテーマとして、お子様とご自宅でトライされるのにもオススメです。
~おもしろ科学まつりの取材を終えたmanavi編集部にて~
安藤さん。今年の科学まつりも、おもしろい実験がいっぱいありましたね。
そうですね。manaviで紹介したくなる実験も、たくさんありました。
モーターの実験なんか、息子さんの自由研究のネタにピッタリだと思いますよ。
え?モーターを使っていた実験なんてありました?
ふふ。ありましたとも。
一般的なモーターのイメージとは違うかもしれませんが、案外簡単な仕組みでモーター、すなわち「電動機」を作ることができるんですよ。
そうなんですか?でも、そもそもモーターがどんなしくみかよく分かりません…
そうだ!『科学のなぜ?新事典』で調べてみよう。
ふむふむ。「モーターは磁石と電磁石の組み合わせでできている」とありますね。
ひょっとして、磁石と乾電池で銅線を回していたあの実験装置が、モーターだったんですか?
ええそうです。電気の力で動いているので、まさに「電動機」です。
なるほど…
でも、モーターって車を動かしたり、扇風機を回したり、結構パワフルなイメージです。銅線がやさしく回る実験からは想像つかないですね。
少し手を加えると、より力強く回るモーターを作ることもできますよ。
実際にやってみましょうか。
早速、材料を用意しますね。電池と磁石は、100円ショップや、スーパーで売ってますよね。
でも、銅線ってどこに行けば買えるんですか?
少し大きめのホームセンターなどで、電気系の売り場にあるのを見かけますね。
電球やスイッチを売っているような場所の近くです。
分かりました。探してきます!
~しばらくして~
安藤さん!近所のホームセンターで、銅線っぽいものを見つけました。
ただこれ、「エナメル線」って書いてあります。実験に使えるのでしょうか…?
お!いいところに目をつけましたね。
このエナメル線は銅でできた銅線の一種ですが、ただの銅線ではないんです。表面に電気を通さない塗料(被膜)が塗られていて、保護されているんですね。
今回の実験は、塗料をはがせばエナメル線でもOKです。
塗料は紙やすりなどで削ってしまいましょう。
分かりました。エナメル線も使えるんですね!安心しました。紙やすりも買っておきますね。
ちなみに、見つけてもらったこのエナメル線は「φ0.4mm・10m」と書いてありますが、それぞれ線の太さと長さを示しています。
さらに、ものによっては「UEW(ポリウレタン)」や「PEW(ポリエステル)」など、被膜の種類が表記されているエナメル線もありますが、どちらもやすりで削って使うことができますよ。
へー。銅線にも色々な種類があるんですね。勉強になりました。
それではまず、おもしろ科学まつりでも紹介されていた、原始的なモーターを作ってみましょう。
このモーターは、200年ほど前にマイケル・ファラデーという科学者が考案した世界初のモーターと仕組みが同じなので、「ファラデーモーター」と呼ばれているんですよ。
1-1.材料
・エナメル線(0.4mm~1.0mm径程度もの、長さ15cmほど)
・ネオジム磁石(13mm径程度のもの)
・単三電池
・紙やすり
・セロハンテープ
1-2.電池と磁石を組み立てる
・電池の+極にネオジム磁石を2~3個重ねてつける。
・電池の-極にセロハンテープでフチをつくる。
1-3.エナメル線を削る(被膜のない銅線を使うなら省略可)
・エナメル線の先と中央の計3か所を紙やすりで削って被膜をはがす。
・上手く削れたか分かりにくい場合は、あらかじめ水性ペンなどで色を付けておくとよい。
1-4.電池の上にエナメル線をのせる
・エナメル線をハート型に曲げて、線の中央(削った部分)を電池の-極にのせる。
・エナメル線の両端が磁石にふれるように曲げ方を調節して、手をはなすと回転する。
【注意】エナメル線を電池に長くつないでいると熱くなります。実験が終わったら、エナメル線と電池をはなしましょう。
エナメル線を電池の上にバランスよく載せるのが難しいですね…
あ!回転しましたよ!
上手くいきましたね!
銅線は細いものでも使用できますが、径が1.0mm弱くらいの太めのものを使った方が、お子様が作業しやすいのでオススメです。
また、磁石を導線に触れさせる具合は軽めにし、銅線で電池をきつくはさみこまないように注意しましょう。
続いて似たような材料で、もう少しパワフルに回転するモーターも作ってみましょう。
こちらはゼムクリップを使うので通称「クリップモーター」です。
2-1.材料
・エナメル線(0.4mm径程度もの、長さ40cmほど)※被膜のない銅線は不可
・ネオジム磁石(13mm径程度のもの)
・単三電池
・紙やすり
・セロハンテープ
・ゼムクリップ2個
2-2.エナメル線でコイルを巻く
・エナメル線を電池に5回巻きつけて、コイルをつくる。
・エナメル線の両端は4cm程度残す。
2-3.エナメル線を削る
・コイルの両端のうち、片方は被膜を全て削り、片方は下半分のみ削る。【重要】
・全て削るときは紙やすりを折ってエナメル線を包んで動かす。半分のみ削るときは、紙やすりの上にエナメル線を置いて動かすとよい。
2-4.モーターを組み立てる
・ゼムクリップを折り曲げて、電池の両端につける。
・電池に磁石をつけて、クリップの上にコイルをひっかける。磁石がコイルの輪の真下にくるように、位置を調整する。
・手で軽く回してやると、コイルがくるくると回りはじめる。
【注意】コイルを電池に長くつないでいると熱くなります。実験が終わったらコイルをクリップから外しましょう。
組み立て方が、ファラデーモーターより結構複雑になりましたね…
でも、よりパワフルに回って、「モーター」という感じがします!
今回はなるべくシンプルに作りましたが、工夫をするとものを動かすことができるくらいパワフルになりますよ!
まさに「自由研究向け」ですね!
コイルが全く動かないときは、電流が流れていないので、クリップと電池の接点がしっかりくっついているか確認しましょう。特に+極は出っ張っているので、テープで上手く固定できていないときがあります。
クリップとコイルの接点になる場所の被膜がしっかり削れていないと、上手く回転しないときがあるので、 コイルを取り外して再度やすりでこすりましょう。(片側は全面、もう片側は半面だけ削るのを忘れずに!)
また、コイルの線をなるべく真っ直ぐにすることで、ブレが少なく、回転しやすくなります。線が曲がっているときは、手でのばして調整してみてください。
それにしても、どちらのモーターも、どうしてエナメル線が動くんでしょうか?動き方にも違いがありますし。
それは、電気と磁石によって力が生まれるからなんです!
まず、ファラデーモーターから説明しましょう。
このファラデーモーターは、図にするとこんな感じです。
実は、電池の+極→磁石→銅線→電池の-極 という順序で電流が流れる電気回路になっているんですね。
銅線の中では、図の青色の矢印のように、下から上の向きに電流が流れているイメージです。
さらに、電流の近くに磁石があることもポイントです。
磁石の周囲には、N極から出てS極に向かう「磁界」が存在します。磁界は、磁石が鉄を引きつけたり、磁石どうしが反発したりする力が発生するフィールド、と考えてください。
図の赤色の矢印のような向きで磁界があり、この磁界の中に電流が流れる銅線があるイメージです。
このように、磁界の中を電流が流れるとき、銅線を動かす力が発生します。これを電磁力とよび、この装置を回す力の正体です。
上の図の緑色の矢印のような向きで銅線に力が加わり続けて、回転しているイメージです。
磁石の近くを電流が流れると、電磁力が発生して、電磁力が銅線を動かしている、ということですね。
その通りです!
この電流の向き、磁界の向き、力の向きには決まりがあり、それぞれ左手の中指、人差し指、親指の向きの関係として示されます。これが中学の理科で学ぶ「フレミングの左手の法則」です。
あ!その法則は、『SUPER 理科事典』でも見たことがあります!
ファラデーモーターも、この『SUPER 理科事典』 に載っている実験も、なんとなく原理が分かりました!
実験とセットで教科書や参考書の解説を読むと、さらに理解が深まりますね!
続いて、クリップモーターが動く原理を考えましょう。
この装置は、電池の極からクリップを通じて、コイルに電流が流れるようになっています。
ということは、コイルに電磁力がはたらくんですね。
はい。すぐそばに磁石がありますからね。
コイルに電流が流れて、電磁力が発生したときの様子を、横向きの図にすると、こんな感じです。
コイルは輪になっていますよね。この輪のうち、磁石に近い方と遠い方で電流の向きが逆になるので、そこにはたらく電磁力の向きも逆になるんですね。
この図のような状態のとき、コイルは時計回りの力を受けて、回転し始めるのです。
なるほど…
さらにここからがこの実験の面白いところです。
コイルが半回転して上下がさかさまになると、輪の中を流れる電流の向きが逆になりますよね。
すると今度は、反時計回りの力が発生することになるんですよ。
フレミングの左手の法則で、中指を180度回転させると、親指も180度回転しますよね。
つまり、コイルが180度回転すると電磁力が逆向きになるのです・・・
本当だ。
でもそれだと、コイルはくるくる回らずに、いったり来たりすることになるんじゃないですか?
はい。ですが、エナメル線の被膜は電気を通さない、という話をしたのを覚えていますか?
ええ。だからやすりで削って、被膜をはがしたんですよね。
あ!コイルの片側は半分しか削っていないから、半回転したあとは、コイルに電流が流れないのでは!
その通りです!
そのために、コイルの端のうち片方は、半分被膜を残しておいたのです!
コイルが半回転したときは電流が流れないので、電磁力は発生せず、勢いで時計回りに回転し続けます。
そして一回転して電流の向きが戻ったあとは、再び時計回りの方向に電磁力が発生します。
被膜をあえて半分残したことで、一定の回転方向に電磁力が発生するように、上手く調整されていたんです!
ここからは、是非ご家庭でトライしていただきたい実験をご紹介します。
クリップモーターで動く車、その名も「クリップモーターカー」です!
先ほどの実験よりコイルが太く、大きくなって、見た目がさらにパワフルになっていますね!
はい。電流を強くしたり、磁石を増やしたり、コイルの巻き数を増やしたりすることで、モーターの回転力が高まります。材料を多めに用意して、色々なパターンを試してみると面白いですよ。
その上で、モーターを電池ごと模型車に搭載して動かしているのが、クリップモーターカーです。
車を動かす力を得るには、バランスが重要なんです。材料を増やせばモーターはパワフルになりますが、車体は重たくなる…特に、速く動く車を作るには、試行錯誤を重ねる必要があります。
この「クリップモーターカー」は、全国の科学好きな高校生が集う「科学の甲子園」という大会において、レース競技になったことがあるくらい、科学的・工学的なセンスが磨かれるんです。
YouTubeで検索すると、レースの動画も出てきます。
結構奥が深いんですね…!
他にもネットで検索すると、クリップモーターカーづくりの記事が出てきますよ!
ネットの情報も参考にしつつ「自分だけのオリジナルなクリップモーターカーづくり」を目指して、自由研究のテーマにしてみてはいかがでしょうか?
楽しそうですね!早速息子に紹介してみます!
その前に、参考書で今日のおさらいを、と…