こんにちは!manavi編集部の安藤です。みなさん、理科してますか?
今年も夏休みがやって参りました。
以前manaviでも「おうちで理科実験」を提案させていただきましたが、長期休みは、お子さんがじっくり自由に実験・観察に取り組むチャンスです!
今回は、そんな「おうちで理科実験」の題目の1つとして、「ミョウバンの結晶づくり」に取り組みました。
ミョウバンと聞いて、何のことかピンと来なかった方もいらっしゃるかもしれません。
実は、身近で手に入り、中学・高校入試でもよく扱われる物質なんです。
入手方法や性質など、記事の中でもご紹介します。
また、お子様の自由研究のヒントとして、実験の深め方や、まとめ方についても触れたいと思います。ご家庭での取り組みの参考になれば幸いです。
~それは、ある日の受験研究社での出来事~
安藤さん。今度、夏休みの特設webページを作るにあたって、ウチの『なるほど!理科図録』を読んでたんです。
コレ、写真やイラストが多くて、パラパラ眺めていても面白いですね。
おお!編集部として、嬉しい感想ですね。
この図録は、学校や塾での理科の学びに、映像イメージを補う目的で作られた本なんです。
理科の勉強も「百聞は一見に如かず」で、視覚情報が大事なんですが、身近に観察できる生き物がいなかったり、学校で理科実験をあまりやらなかったりする子も多いみたいで。
確かに観察とか実験とか、普段から家庭で取り組むのは、中々敷居が高いイメージがありますね。時間も手間もかかりそうです。
でも、そういえばもうすぐ夏休みですし、自由研究として、息子とじっくり理科実験に取り組むのもいいかもなぁ。
自由研究のネタなら、この本にもたくさんありますよ。
例えば「ミョウバンの結晶づくり」なんてどうでしょうか。
あ。この写真。さっき眺めていたときに、宝石みたいだなぁと、なんとなく気になってたんです。
これをつくるってどういうこと?
小さい粒の状態のミョウバンを、この写真のような結晶に大きく育てる実験です。
理科で勉強する「溶解」のことや「ろ過」の事などが学べますよ。
なんか楽しそう!
でも、本当にこんな写真のようになるんでしょうか・・・?
良い疑問ですね!それを実験で確かめてみましょう!
今回の記事では実験のテーマを提案させいただきましたが、保護者の方からお子さんに研究テーマを提案するのではなく、お子さんが「これやりたい!」となるのが理想です。
参考書や図鑑などを「なんとなく」見ていたときに、目に留まったものがあれば、自由研究の題材にしてみてはいかがでしょうか。
例えば結晶は、ミョウバンの他にも「食塩」や「ホウ酸」、「クエン酸」などの身近な薬品でも作ることができますが、形は様々です。「なんとなく」気に入った形のものがあれば、それをテーマにしても良いかもしれません。
では、僕が家庭で用意できる器材を用意しておくので、村井さんはスーパーでミョウバンを買ってきてもらえますか?
スーパーに売っているんですね?探してきます。
~しばらくして~
ありました!買ってきましたよ!中々見つからなくて、すごく探しました。
塩コーナーの近く、お漬物作りのコーナーにありました。ミョウバンってお漬物を作るときにぬか床に入れるんですね。
さらに私、ミョウバンについて色々調べたんですよ。
知ってました?ウニは殻から取り出して空気に触れていると、溶けてなくなっちゃうから、形が崩れないようにミョウバンの液に漬けるそうですよ。
ウニって苦いと思っていましたが、実はその正体は、漬けたミョウバンの苦みだったみたいです!
それは初耳でした!古くから使われている食品添加物の1つなんですよね。
あとさらに聞いてください!
ミョウバンで消臭スプレーも作れるってYouTube で紹介されていました。
薬品としても広く使われていますね。水に溶かすと、殺菌・消臭作用があるので、薬局の薬品コーナーにも売っていることもありますよ。
今、私の中で「ミョウバンすごい!」ってなってます。
なんだかミョウバンのことが好きになってきました。
実験材料に愛着がわくのはいいですね!
実験以外に色々調べるのも、いい勉強になりますね。
材料がどこで手に入るのか、どのようなことに使われているのかなどを調べて、材料への知見を深めていくことも自由研究の醍醐味の1つです。
特に材料を準備する際は、お子さんと一緒にお店で探したり、調べたりすることを心がけてみてください。
ミョウバンは日本で古くから使われていますので、その歴史や用途について調べるのもよいでしょう。
それでは結晶を作ってみましょう!
ご家庭で準備出来そうな材料や、比較的簡単な手順をまとめてみました。
1.材料
・ミョウバン(15g以上、焼ミョウバンの場合)
・ お湯(100mL)
・耐熱容器(250mL程度、ガラス製など透明なものが望ましい)
・糸(ナイロン製の釣り糸など)
・割りばし
・スプーン
2.溶液を作る
・容器に、60〜70℃程度に温めたお湯100mLを入れる。
・ミョウバンを15g、少しずつ加えて、スプーンでかき混ぜながら溶かす。
・溶液が溶け残りで白く濁っているなら、500Wの電子レンジで20秒ほど加熱し、再度かき混ぜるとだんだん透明になる。溶け残りが無くなるまで、加熱とかく拌をくり返す。
3.種結晶を作る
・ 溶液が冷めるまで待つと、容器の底に小さなミョウバンの結晶が現われる。
・結晶ができたら、1つ取り出してかわかす。これを「種結晶」とする。
4.種結晶を成長させる
・種結晶を作ったときの残りの溶液を再度あたためて、容器の底にできていた残りの結晶を全て溶かす。 500Wの電子レンジで20~30秒、様子を見ながらあたためてかき混ぜるのをくり返す。
・種結晶を糸に結びつけ、もう片端を割りばしや鉛筆などの棒状のものに結びつける。
・溶液が冷めて、容器の底に再び小さな結晶ができ始めたタイミング(40℃弱ぐらい)で、溶液中に種結晶をつるす。
・溶液の液面と容器の底との中間の位置にくるように、種結晶の位置を調整する。
・容器を静かな場所に置き、しばらく放置する。数時間経って溶液が完全に冷めると、種結晶が大きく成長する。
小さな種結晶を糸で結ぶのが意外と難しいですね・・・
でも、なんとかつるせました!成長が楽しみです!
~数時間後~
わあ!結晶が大きくなっています!
でも・・・なんかガタガタで、図録の写真とは違いますね。
そうですね・・・
ミョウバンは上手に結晶すると、図録の写真のような、正八面体になります。
今回の実験での、結晶の成長の様子をよく見てみましょう。 成長の途中で複数の結晶がくっついてデコボコしているようですね。
本当だ。よく見ると、水面にも小さな結晶が浮いてますね。
結晶は、結晶核と呼ばれる小さな粒子を中心にして成長します。糸で結んだ種結晶は、大きな結晶の核になる役割があるんです。
ところが、溶液の中に溶け残ったミョウバンの粒があったり、ホコリが浮いていたりすると、それが結晶核になって、育てたい結晶の他に、細かい結晶がたくさんできてしまいます。
今回は、細かい繊維がある裁縫用の糸を使ったことも影響して、糸のまわりにも結晶ができてしまっています。
どうすれば、結晶どうしがくっつかないようにできるのでしょうか?
種結晶をつるす用の糸は、ナイロン製の細い釣り糸などを使うことで、表面がツルっとしているので、糸のまわりの結晶は少なくできそうです。
あとは、溶液中の結晶核になりかねない不純物を取り除けば、細かい結晶も少なくなって、成長させたい結晶にくっつきにくくなるはずです!
不純物を取り除く…
なるほど!ここで小学校で学ぶ「ろ過」が出てくるんですね。
その通りです。ろ過の装置や操作方法は、中学入試や高校入試にも頻出ですので、勉強する良い機会ですね。
『なるほど!理科図録』や『小学高学年 自由自在 理科』でも手順などを確認できます。
コーヒーフィルターを使うと、ご家庭でも簡単にろ過ができます。
ミョウバンを溶かした溶液を冷ます際に、ろ過をした上でラップなどをかぶせて、ホコリが入らないようにしましょう。
他にも、ミョウバンを溶かす量や、温度の管理など、きれいに結晶させるために工夫できることはいっぱいあります。ネットで調べると、色んな方法が出てきますね。
『小学高学年 自由自在 理科』の、索引で「結晶」を調べて、結晶の性質や関連する実験が載っているページを読んでもヒントになると思います。
色々と試してみましょう!
調べた通りにやったのに、実験がうまくいかないときは、研究を深めるチャンスです。
他の方法を調べて、自分がやった方法との違いを探したり、少しずつ材料や手順を変えたりして、理想に近づけていく課程こそが、研究の成果になります。
その際、お子さんが主体的にアイデアを出したり、調べたりすることが大切です。
保護者の方は、お子さんが本当に行き詰ったとき以外は、「伴走」や「見守る」意識でサポートしてあげてください。
ろ過をしたり、糸を釣り糸に変えたりして、もう一度実験をしたら、結晶の形がちょっと綺麗になりました!
おお!
余計な結晶が減ったので、結晶もやや大きくなって、形も八面体に近くなりましたね~!
私はこれで良いと思うのですが、もしかしたら息子はさらに作りこみたくなるかもしれませんね。
無色透明な結晶を目指したり、逆に色をつけたり、とにかく巨大なものを目指したり…
色々と実験をアレンジできると思いますよ。
結晶づくりの実験に関して、学びを深めるヒントを3つご紹介します。
・水道水ではなく、コンタクトレンズ用の精製水を使うと?
→「不純物がより少ない水」を使って溶液を作ったら、結晶はどうなるでしょうか?精製水の製造工程や、コンタクトレンズに使われる理由も調べてみましょう。
・食紅を溶かした溶液で結晶をつくると?
→色がついた溶液を結晶させたら、結晶にも色がつくのでしょうか?食紅の原料や、用途などを調べるきっかけにもなりますね。
・長時間おいて溶液を蒸発させると?
→海水から食塩を作るときのように、溶液を蒸発させることでも結晶を育てることができます。この場合、結晶の成長に違いはでるのでしょうか?
あとは、自由研究なので、これを「どうまとめるか」ですね。
なにか良い方法はないでしょうか?
先ほどの『小学高学年 自由自在 理科』には、「自由研究の進め方」という特集がありますので、それを見ながらまとめてみましょう。
「自由自在」には理科の用語や問題だけじゃなくて、そんなことまで載っているんですね。
この特集には、まとめ以外にも、テーマの決め方や、実験の計画の仕方などもありますので、研究を通してお子さんの参考になると思います。
試しに触りだけ、今回の実験をまとめてみましたよ。
よく分かりました!
まとめ方のイメージと一緒に、息子にも紹介しますね!
ついでに私は余ったミョウバンを分けてもらって、消臭スプレーを作ってみようと思います笑
材料を購入するところや、実験装置を組み立てているところなど、研究を都度映像として残しておくと、後日振り返ったり、レポートにまとめたりする際に便利です。
まとめ方をあらかじめ決めておけば、それに使いたい映像を逆算することができ、実験の際にスマートに撮影できると思います。
ミョウバンの実験なら、結晶が成長する様子をタイムラプス撮影すると、変化が分かりやすいです。
一方で、お子さんが自ら実験を行いながら撮影するのは大変です。
保護者の方が、記録係として協力するのも良いと思います。その際には、安全性や肖像権への配慮など、大人の視点とともにお子さんの活動をサポートしてあげてください。