休校中に家庭学習でインテイクを推進!四天王寺高等学校・中学校のトレパ活用法

みなさんこんにちは。

新型コロナウイルスの影響で全国的に学校が休校となり、学生のみなさんの自宅学習の時間が増えていることと思います。

そんな中、オンライン授業や授業動画の配信といったICTの活用に積極的に取り組まれ、何とか生徒たちに「学び」を届けようとされている現場の先生方の尽力には敬服いたします。

さて、今回は英語の家庭学習についてのトピックです。

休校によって思うように授業が進まない中で、動画などの形で何とか授業を進めていこうという動きも増えてきましたが、ここで課題となるのはどんなことでしょうか?

英語の授業においては、次の3つのステップがありますよね。

英語の授業における3ステップ

1.インプット:教員側からの単語や発音、知識提供

2.インテイク:音読や練習問題への取り組みを通じて、表現を自分のものにする

3.アウトプット:学んだ単語や表現を駆使して、活動に取り組む

学校での一斉授業では、この3つのステップを取り入れた形で授業が進行しています。

しかし、授業動画の配信をするとなった場合には、基本的に教員側からの「インプット情報の提供」になってしまうため、インテイクアウトプットの部分にまでは手が届きません。

生徒に「繰り返し音読して、発音や語彙表現を身につけておいてね!」と声かけをすることは出来ますが、個々の生徒がどれくらい実際に取り組んだのかを確かめる術もありません。

英語の音読のイラスト


また、授業が段階的に再開されていったとしても、遅れを取り戻す必要性に駆られ、どうしても「インプット」部分が主体の授業にならざるを得ない可能性もあります。

これらの可能性を想定した時に、「せめて家庭学習でインテイクの部分くらいまではカバー出来たら…。」「生徒の発話や音読への取り組みの度合いを確認することが出来たら…。」という声は当然出てくるのではないかと思います。

そんな家庭学習における「インテイク」部分の補完に積極的に取り組まれているのが、大阪の天王寺区にある四天王寺高等学校・中学校です。

今回はデジタル・ナレッジの4技能学習支援ツール「トレパ」を活用して、生徒たちの英語学習促進に尽力されている松本真奈先生にお話を伺いました。

トレパって?


トレパは、株式会社デジタル・ナレッジが開発したブラウザ上で使用できる英語の4技能学習支援ツールです。

このシステムでは、AI(人工知能)による生徒の英語発話診断、英作文の文法判定、入力したテキストの読み上げなど様々な機能を持っており、先生方はこれらの機能を組み合わせて教材を簡単に作成し、英語の指導に使うことができます。

決まったコンテンツを使用できるアプリではなく、自由かつ柔軟にコンテンツを作成することが出来るエディター(編集ツール)であるという点が大きな特徴です。

どうやってコンテンツ作成していくのかについては、下記の動画をご覧ください。


また、生徒のスピーキング・ライティングへの評価・学習履歴の管理をトレパが行うことで、先生の負担を軽減します。


このように教材の作成から配信、そしてその成績管理までを包括的にカバーできるのがトレパというシステムになります。

簡単にトレパの概要についてご紹介させていただいたところで、このシステムを活用して、どのように家庭学習を充実させているのか、その取り組みについて松本先生に伺っていきましょう!

どの学年・クラスに対して使っているの?

トレパをどのクラスに対してどんな内容で使っていますか?

中学1・2年生では、受験研究社の『中学 自由自在 英語』を使って授業を実施しており、その内容の音読にトレパを活用しています。

高校2年生のクラスでは、使用している検定教科書の本文をトレパ上で音読させるようにしています。

高校3年生のクラスでは、副教材の文章を利用し、その音読にトレパ上で取り組ませています。

トレパが教材の編集ツールであるという特性を活かし、教材については全て自分で作成しています。

なるほど。参考書や教科書をベースにして、先生自らオリジナルの教材を作成しているのですね!

どれくらいの英文を音読させているの?

音読させる際は、単文ですか?それとも、まとまった英文を音読させているのでしょうか?

中学生は、 『中学 自由自在 英語』 に出てくる一文ずつをトレパの「読み上げ」機能を使って聴かせ、その通りに音読させて「発話診断」でチェックするように指示しています。

また、その英文の日本語訳を見せて、英語に直すということもやっており、「文章比較」を使っています。

一方で、検定教科書のコンテンツでは、パラグラフ単位など、ある程度まとまった英文を音読させるようにしています。

学年や学習段階に応じて、柔軟にコンテンツを作成することが出来るのも、トレパが編集ツールであることの強みですね!

課題の出し方はどうしてる?

生徒に対して、課題の出し方はどのようにされていますか?

例えば、中学1年生であれば『中学 自由自在 英語』を使っているので、各レッスンの導入解説動画を数本作ります。

それを生徒に配信しているので、動画の中で理解してもらった英文を、トレパで繰り返しリスニングし、さらに音読のトレーニングもしてもらっています。

特に「何分やるように」というような指示はしておりません。

その代わりに、「できるだけ音読評価のハイスコアを目指しなさい。」という指示を出し、生徒の自発的な学びを促しています。

トレパでは、管理画面で生徒の取り組みの状況を確認できるのですが、これを私がチェックをしていることはあえて伝えていません。

生徒たちの自宅での取り組みの度合いが、管理画面から把握できるのはすごく良いですね!


トレパでは、生徒が発話したログを管理画面から確認することが出来ます。

下記の動画で、管理機能のご紹介をしておりますので、併せてご覧ください。

生徒の課題への取り組み具合はどうですか?

肌感覚で結構ですが、どれくらい課題達成をしているように感じてらっしゃいますか?

学年によりますね。

中学1年生であれば他教科の課題もそこまでの分量が与えてられていないので、英語であれば5割くらいの生徒ははちゃんと取り組んでくれているという感じです。

高校3年生ともなると他教科の課題も多く、問題を解いたり、長文読解に取り組んだりも自分たちでできるので、音読トレーニングにかける時間は減ると思います。既にある程度できていることも確かなので。

また、与えている課題は、まとまった英文を音読するものが大半のため、トレパによる発音評価で100%(満点)に近づくことが難しくなるという事情もあります。

トレパは発音に関してシビアな評価を下すので、その「厳しさ」が逆に向上心につながる可能性もありますね。

トレパで様々な学習を一元化できる?

高校3年生ではトレパは活用しにくいのですか?

先ほども申し上げたように、どうしても素材となる英文が難しくなると、音読が難しくなることは否めません。

それでも、トレパを使うメリットがあります。

普段の授業であれば、副読本の教材を紙やタブレットで開いて読む、CDや音声再生アプリを立ち上げてリスニングをする、ワークブックで理解度を測る、ということをしています。

その際、様々なメディアを使うことになります。これらのことを、トレパでは一括で行うことができるのです。

英文はコピー&ペーストでトレパに掲載すると、それをトレパが読み上げてくれるので、リスニング学習もできます。

音読してその発音の正確さもチェックできますし、本文の内容の理解度を測るための問題もトレパの機能を組み合わせれば作ることができます。

つまり、トレパというメディア1画面でそれらの複数のタスクが遂行できるのです。

今のように自宅でスマホ一台で勉強する子もいる状況では、大変助かっています。英語学習が一つのプラットフォームで成立しますからね。

生徒たちには、学校からSurface GOを配布しているので、英作文の問題などもキーボードで打ち込んで回答することが可能です。

音読に限らず、トレパ1つに様々な学習コンテンツを集約できるのは便利ですね。

授業動画についても四天王寺中学校・高等学校では、現在別のLMSから配信しているようですが、これも実はトレパに集約することが出来ます。

しかもトレパに授業動画を埋め込むと、管理画面からその動画を見た回数や、動画のどの部分をよく見ているのかのヒートマップも確認することが出来ます。

配信した授業動画をきちんと見てくれているのかどうかも把握できるのは、非常に便利ですね。

生徒側のメリットは?

トレパを活用することで、生徒側にはどんなメリットがあるのでしょうか?

中学1・2年生の生徒たちが助かっています。

音読しようにも発音がまだ拙かったりするので、AIによる発音のお手本のリスニングや発音の評価が家庭でできるというのはありがたいです。

高校生になると、自分で発音記号などを理解している生徒もいるので、一人でもなんとかなるんですけどね。

実際に、中学1・2年生対象の授業動画を作る時も、集中力の観点から動画もあまり長く出来ない(1本あたり10分くらい)という制約があります。

そうなると、文法事項や単語の意味の話を優先させたいというのが本音です。すると、当然、発音までは十分には手が回らなくなります。

ですので、家庭で発音について学べるというのは、英語の発音に不慣れな生徒たちにとっては有益だと思います。

しかも、トレパの読み上げ機能で英文の読み上げ速度を「可変速」にしているので、「ゆっくり聞きたい人はゆっくりでもいいよ」と指示ができるのもメリットです。

自分の聞き取る速度に合わせられるし、何度も聞きたい人は聴けるし。

授業動画配信では手が届きづらい「インテイク」の部分を、補完できるわけですね!

教員側のメリットは?

トレパを使うことで、どんな教員側のメリットがありますか?

ほぼ英語が初めてという子たちに、動画以外に発音トレーニングの機会が提供できているという点です。

今回、このような状況下でトレパを使っていて良かったな、と思います。

従来、授業ではインプット、インテイク(音読トレーニングなど)、アウトプットということをしています。

しかし、このコロナ禍において、動画ではどうしてもインプットである文法・構文などの内容が中心になってしまいます。

音読などのトレーニングの担保がトレパでできるのは非常に助かっていますね。

また、私が受け持っている中2のクラスなのですが、コロナによる休校措置の直前に動詞の不規則変化についての授業があったんです。

現在形・過去形・過去分詞形の変化について、「春休み中に書いて・発音して覚えてきてね。新学期になったら活用のテストをするからね」と言っていたところでした。

ところが急な休校措置になってしまい、過去分詞の読み方とかも変化表の1/4程度しか触れていなかったんです。

そこで、トレパで動詞の不規則変化表を作りました。たとえばspeak-spoke-spokenをトレパで音読しながら、書いてスペルを覚えてね、という課題を出しました。

教員としても、不規則変化表だけ渡して終わりということにはしたくなく、ちゃんと読めるようにもなって欲しいので、このような活用ができたことは非常に助かりました。

ちなみに、不規則変化も、read-read-readって打ったらトレパは発音もread[riːd]-read[réd]-read[réd]ってしてくれるんですよ!びっくりしました。

知識や情報を伝達したその先の「定着」という部分を家庭学習の中で実現できるように促せるのは、ストロングポイントですね!

トレパを活用する上で注意すべき点は?

逆にトレパの活用で気をつけることはありますか?

やはり日本語の固有名詞ですね。

『中学 自由自在 英語』にも出てくる「加藤先生」を「Mr.Kato」と入力して、AIに発音させると「ミスター ケイトー」みたいな読み方になります。

そこで、例えば「阿蘇山」についてはテキストでは「Mt.Aso」と入力しながら、トレパに発音させるのに「Mt.Asso」と打つと近い発音をしてくれます。

日本語の発音に近いアルファベットの並びを入れて、近似値的な発音をさせる。そういう工夫はしました。

英語の百科事典に掲載されていないような日本語の固有名詞はどうしても英語での発音に「正解」がないために、トレパでも認識しづらいという側面がありますね。

松本先生は、その点も上手く回避しつつ、コンテンツを作成されているのですね!

おわりに

松本先生ありがとうございました。

今回はトレパを活用して、新型コロナウイルスによる休校措置下での英語の家庭学習充実に取り組まれている四天王寺高等学校・中学校の松本真奈先生の取り組みについてお伺いしてきました。

授業動画の配信等では、どうしてもカバーすることが難しい「インテイク」の部分でトレパのシステムが役立っていることが分かりましたね。

休校措置がいつまで続くのか、登校が再開してからの授業がどうなるのかもなかなか明確にならない中で、家庭学習でこうした語彙表現、発音、文法事項などの「定着」を促せるというのは、大きな強みになってくると思います。

また、登校できず自宅で1人で学習する時間が長くなる中で、AIが自分の発音に評価やフィードバックを出してくれることは、生徒にとっても学習に向かうモチベーションアップにつながるでしょう。

今回ご紹介させていただいた四天王寺高等学校・中学校の松本先生の取り組みが今後の授業の進め方等を考えていく上で、参考になりますと幸いです。

関連サイト

四天王寺高等学校・中学校HP:https://www.shitennoji.ed.jp/stnnj/

トレパ公式サイト:https://torepa.jp/