広報部に配属された新入社員のマナミは,新刊書籍『はじめてのことわざ・慣用句 新辞典』の特設ページのイメージを提案するよう,上司に依頼される。
この会社に入って,はじめて巡ってきたチャンス!
何としても良いページにしてみせるっ!
マナミはさっそく書籍に目を通し,特設ページのイメージを膨らませていく。
まずは,本を読んでみよう!
お~!いきなりマンガだ!
なるほど。それぞれのことわざや慣用句のページは,マンガと解説で構成されているのか。
うわっ!大迫力のすっぽん!
ここはことわざや慣用句に関連した豆知識が学べるのか~。
書籍もかなり読み込んだし,自信あり!
これは褒められちゃうな~♪
しかし,上司からは「作った編集者の顔が見えない」と言われ,案を練り直すよう言われてしまう。
う~ん。何が足りなかったんだろう…?
悔しがる彼女は,担当編集者にどんな思いでこの書籍を作ったのかを聞いてみようと思い立つ。
とにかくこの書籍を編集した人に話を聞いてみるしかない!
お忙しいところ,お時間いただきありがとうございます!
『はじめてのことわざ・慣用句 新辞典』のことをいろいろ聞かせてください!
こちらこそありがとうございます。
良い特設ページが作れるよう協力させていただきます。
この本を開くと,やっぱりマンガが真っ先に目に入りました。
なぜ,マンガがメインの学習参考書を作りたいと思ったんですか?
マンガが好きだからというのが本音です(笑)
いきなりぶっちゃけますね(笑)
でも,マンガが好きだからといって,いきなりマンガの執筆や編集ができるものなんでしょうか?
私もマンガは好きですが,マンガを作る自信は正直…。
実は,マンガを作るための勉強をしていました。
大学時代はマンガ研究会に入っていて,実際に自分の作品を作りながら,絵の描き方やコマの割り方といった,マンガの作り方の手順や技術を学びました。
この会社に入ってからは,脚本の学校に通って,ストーリーや登場人物の設定などの作り方を勉強しました。
これらの経験が今回の本を作る上で,とても役に立ちました。
すごい!もうマンガ家になれそう!
ありがとうございます。
ただ,マンガと学習参考書をかけ合わせて,子どもたちによりよい学びを届けることが,自分の目標でもあります。
すばらしい目標ですね!
やっぱりマンガと勉強って,相性がいいんでしょうか?
マンガ(視覚情報)とテキスト(文字情報)をリンクさせたり,紙面上で近くに配置したりすると,学習内容が頭に入りやすくなります。
認知心理学の言葉で「二重符号化」と言われますね。
なるほど!文字ばっかりの説明書だと読みにくいけれど,イラストがついているとわかりやすいみたいな話でしょうか?
それに近いと思います。
他にも「ストーリー法」という記憶法があります。
聞いたことはありますか?
初めて聞きました!
「ストーリー法」は,覚えたいものを物語にすることで覚えやすくするアプローチです。
例えば,「どんぐり」「リス」「タヌキ」「お母さん」「山」「川」という6つの言葉を覚えるとします。それぞれの言葉を口に出して別々に覚えようとすると少し大変ですよね。
どんぐり,リス,タヌキ……確かに難しいかも。
ですので,これを1つのストーリーにして覚えてしまうのです。
「100個のどんぐりが山を転がっていきました。リスがやってきて,1個拾いました。すると,タヌキとタヌキのお母さんもやってきて,もう1個拾っていきました。残ったどんぐりは川に落ちました。」
ストーリーにすると,「状況」が生まれます。「状況」と言葉が結びつくことで,頭に残りやすくなります。
インパクトのあるストーリーにすると,さらに覚えやすそうです!
物語や状況と結びついている知識って,なかなか忘れないんですよ。
ご自身にも物語で学んだことをずっと覚えているという経験はありますか?
あります。子どもの頃,私は『テレタビーズ』という幼児向けのテレビ番組が大好きだったんです。聞いたことはありますか?
聞いたことないです!どんな番組なんですか?
お腹にテレビがついている4人のキャラクターたちが「テレタビーランド」という場所で,遊びやダンスを繰り広げる物語です。
面白そう!今,スマホで調べてみます。
えっ,ちょっと不気味かも…?
かわいいですよ!ぜひ,見てほしいです。
『テレタビーズ』は子ども向けのエンタメとして純粋に面白さを追求している中に学びの要素があるという作りになっています。
見ていて,「勉強させられている」って感じがしないのが,すごいなと思っています。
「勉強させられている」感があると続かないですよね。
そうなんです。
ちなみに『テレタビーズ 』の物語やその中で学んだことは今でも覚えています。
す,すごい!
他にも印象に残っている物語はありますか?
高校時代に友人たちの間で流行った『ヘタリア』というマンガですね。
聞いたことあります!国を擬人化したキャラクターが登場する作品ですよね!
そうです,そうです。
『ヘタリア』は物語を楽しみながら,キャラクターの描写や関係から,歴史や文化,気候や風土なんかも学べる作品なんです。
高校生時代,このマンガを読み始めてから私や友人たちの世界史と地理の試験の得点が爆上がりしたんですよ(笑)
マンガの力,侮れないですね!
私も高校生時代に読んでおけば…(泣)。
今からでも読んで欲しいです!
大切なのは,勉強のために物語を読むのではなく,物語を楽しんでいると,それが自然と学びになっていることだと思っています。
楽しんでいたら,それが学びになってるって最高ですね!
ここから,もう少しこの『はじめてのことわざ・慣用句 新辞典』に踏み込んだ質問をさせてください。
もちろんです。
特設ページの案を考えていたときに気づいたことがあります。
この本以外にもマンガが載っていることわざや慣用句の本をいくつか読みました。ただ,どの本も基本的にはマンガが1話完結で,ことわざごと,慣用句ごとにキャラクターは別々でした。
でも,この本は1冊を通して同じキャラクターが登場していますよね。世界観も共通,しかも全体が妖怪たちの世界を舞台にした「ひとつの物語」になっている点は,他の本とは違っています。
やはり,ここはこだわったところなんでしょうか?
気づいていただけて嬉しいです。
そこは,この本を作る上で,絶対にゆずれないところでした。
やっぱりそうなんですね!
なぜ,こだわったんでしょうか?
ことばを覚えるためにマンガを読むのではなく,マンガを読んでいたら,自然とことばを覚えていたという体験をしてもらいたいなと思ったからです。
先ほど話題に挙げた『テレタビーズ』や『ヘタリア』も,私は勉強するために見たり,読んだりし続けていたわけではありません。あくまでも物語やキャラクターが好きだから,見たり,読んだりし続けることができました。
ですので,ことばを身につけてほしいという思いはありつつも,まずは物語や世界観を楽しんでほしい,推しの妖怪を見つけてほしいという思いの方が強かったりします。
キャラクターへの愛着が勉強のモチベになるってすごくいいですね!
愛着!とてもいい言葉ですね。
キャラクターが別々だったり,それぞれが独立したマンガになっていたりすると,やっぱり愛着を持てないですよね。
マンガの続きを読みたいから,あの妖怪が推しだから…。
そういう物語やキャラクターたちへの愛着が,子どもたちの学び続ける意欲につながれば嬉しいなと思っています。
その思い,読者のみなさんに伝えられるように頑張ります!
ここからはマンガの内容について聞かせてください。
もちろん,何でも聞いてください。
後編に続く…