英語の語順もこれで安心?「意味順」で英文を書くきっかけを掴もう!【前編】

目次




みなさんこんにちは!増進堂・受験研究社、編集部の永峰と申します。

突然ですが英語は得意あるいは好きですか?それともあんまり…ですか?


私は今でこそ、英語の参考書や問題集の編集という仕事に携わっていますが、中学1年生で初めて英語を学び始めたときはすごく苦手意識が強かったのを覚えています。

その中でも特に苦戦したのが、英語と日本語のルールや語順の違いでした。

おそらく今、英語を勉強している中学生の中にもそうした日本語との違いに苦戦している人は多いんじゃないでしょうか。

これから前編・後編の2回にわたってお届けするこの記事では、増進堂・受験研究社から発売中の参考書『中学自由自在』の中でも取り上げられている「意味順」というアプローチを使って、その壁を乗り越えるための手助けを少しでもできたらと考えています。

特に英語を「書く」のが苦手で、「どうやって書いたら良いのか分からない」「書き始めるきっかけが掴めない」という人にはすごく効果のあるアプローチだと思います。

この前後編にわたる「意味順」の記事を最後まで読んで、少しでも「英語で自分の言いたいことを表現できる面白さ」を感じていただけると嬉しいです。

なお、この記事は2021年10月31日に実施した「『中学 自由自在 英語』活用セミナー:「意味順」を使ってみよう!」の内容に基づいています。

こちらのセミナーにつきましては、増進堂・受験研究社の公式LINEにてアーカイブを特別公開中です。良かったらこちらもご覧いただけますと幸いです。

増進堂・受験研究社公式LINE

※上記のリンクから公式LINEにアクセス(友だち追加)していただけます。既に友だち登録いただいている方は、トーク画面のメニューからアクセスできます。

日本語は語順を気にしなくても平気?


最初に日本語と英語の「語順」の違いの話をしてみようと思います。

日本語を使っていると、特に話し言葉では「語順」を意識することは少ないのではないでしょうか?

例えば、次のイラストの状況を言葉で伝えるとしたら、日本語でどう表現しますか?


大別すると、この2パターンに分けられると思います。

男の子が(は)リンゴを食べる。」
リンゴ男の子が(は)食べる。」


話し言葉では、あまり使わないかもしれませんが、こんなパターンもあるかもしれません。

男の子が(は)食べる。りんごを。」


注目していただきたいのは「男の子」「リンゴ」という単語の位置関係です。

このように日本語を使う際には、文の中で「男の子」「リンゴ」のどちらが先に来ていても同じ意味を表すことができるんですね。

では、英語ではどうでしょうか?


次の2つの英文が同じ意味になるかどうか考えてみてください。

The boy eats the apple.
The apple eats the boy.


まず、Ⓐの英文を訳すと「男の子が(は)リンゴを食べる。」となります。

ですので、イラストで表すと、こうなりますよね。


では、Ⓑの英文はどうなるでしょうか。


なんと、日本語に訳すと「リンゴが(は)その男の子を食べる。」となってしまい、イラストで表すとこうなってしまいます。

某人気マンガでは「鬼が人間を食べる」描写がありますが,リンゴの悪魔が人間を食べようとしていますね。恐ろしいです。


このように英語では、「語順」が異なるだけで文の意味が全く違ったものになってしまうことがあります。

日本語と英語では、こうした文の作り方のルールが根本的に異なるために中学生で本格的に英文法の学習をスタートさせると、苦手意識を抱えるお子様が増えてくるのです。

英語の誤りの中には間違えると意味が通じなくなってしまう「Global Error」と多少間違えても意味は通じる「Local Error」があるとしばしば言われます。

「語順」の誤りは、ほとんどの場合で前者の「Global Error」に分類されるので、「語順」がぐちゃぐちゃだと、相手に自分の伝えたいことが正しく伝わらないなんてことになってしまいます。

このように日本語と英語では「語順」の重要性が大きく異なりますので、英語学習を始める際は「語順」をしっかりと意識しないといけません。

英語の「話す」「書く」は差がつきやすい?


平成29年度に実施された英語力調査結果(中学3年生を対象)で、こんな興味深い結果が出てきました。

次の表は同調査で実施した「聞く」「読む」「話す」「書く」の4技能の試験それぞれの得点を分布化したものです。(右側のピンク色が平成29年度です)

まず、「聞く」の技能では、このような結果となっています。

平成29年度英語力調査より


この得点分布見ると、山が1つの「正規分布」と呼ばれる形になっていることが分かります。

これはつまり上位層と下位層で「差がつきにくい」と見ることができますね。

同様に「読む」についても見てみましょう。

平成29年度英語力調査より


こちらも同様に中間層に最大の山が1つある分布になっており、上位層と下位層の差がそれほど大きくはつきにくいということが分かります。

では、「話す」「書く」ではどうでしょうか。

平成29年度英語力調査より


「話す」の分布を見てみると、高得点の人数も多い一方で、中間層にもう1つ小さな山があるのが分かりますよね。(赤色と青色で示した部分を参照)

さらに緑色の枠で示したように0点の生徒が7%もいるという状態になっています。

より特徴的なのが「書く」の分布でして、こちらではA1レベル上位以上の割合が46.8%と高い一方で、緑色の枠で示したように無得点者が11.0%と、山が2つある二極化した分布になっています。

平成29年度英語力調査より


このことから、「話す」「書く」は「聞く」「読む」と比べて、得意な生徒と苦手な生徒で差がつきやすい技能であることが分かりますね。

では、なぜ「話す」「書く」には0点の生徒がこんなにも多いのでしょうか?


まず、「聞く」「読む」の試験だと選択式問題なんかもありますから、とりあえず答えてみようと思って何問か解いてみる生徒がほとんどでしょう。

一方で「話す」「書く」になると、そもそも話し始める、あるいは書き始めるまでのハードルが高く、何も話さない、書かない生徒が多く出ることが容易に想像できます。

つまり「英文をどう話したり、書いたりすれば良いのか分からない」といういちばん最初のところで躓いている生徒が多くいて、その結果0点の生徒が一定数いるのではないかと推測できるのです。

同調査のアンケートで「英語が苦手に感じられる理由」を①~⑨の9つの要因の中から1つだけ答えてくださいという質問をしました。

その結果、⑥・⑦の英語を「聞く」「読む」について苦手を感じている生徒がそれぞれ4%ほどいました。

平成29年度英語力調査より


その一方で以下に示したように③の「英語の文を書くのが難しい」と回答した生徒が10%以上いました。

平成29年度英語力調査より


この質問は「1つだけ」しか答えられないので、実際に③の要因を苦手要因として抱えている生徒はもっと多いのではないかと思われます。

加えて、②の「文法が難しい」と感じているお子様も約13%と高い数値を示していますね。

小学校での英語の授業がスタートしましたが、文法を本格的に学習するのは、依然として中学生になってからですので、新指導要領に移行してもこの傾向は大きく変わらない可能性もあります。

私は英語の教員免許を所得するために、地元の公立中学校で教育実習をした経験があります。

その際に中学3年生の生徒の英作文の課題を添削したことがあるのですが、書きたい内容は察することができるけれども、英語の書き方のルールや英文法がぐちゃぐちゃで、上手く伝わる英文になっていない生徒の解答をたくさん目にしました。

しかも、校内の定期テストで比較的高得点を取れているような生徒でも、英文を「話す」「書く」となると上手くいかないことが多々ありました。

つまり、与えられた問題に答えることはできるのに、自分で英語を使って伝えたり、表現したりすることには難しさを感じている生徒が意外と多いんですね。

このように、日本の中学生の英語学習者は、「英語で文を作ること」そのものにすごく苦手意識を抱えていることが多い傾向にあります。

だからこそ今回の記事では、そんな英語の文を作る、書くための最初のハードルを乗り越えるために「意味順」というアプローチを使ってみようと思います。

「意味順」って何だろう?


まず「意味順」って何だろう?ということで、その成り立ちからご説明します。

まずは、この英文をご覧ください。

We play soccer in the park after school.


自然な日本語に訳すと「私たちは放課後に公園でサッカーをします。」となります。

では、この英文を意味のまとまりごとに分けるとどうなるでしょうか?


いわゆる「スラッシュ読み」でスラッシュを入れる位置と同様に分けられるのですが、分けると次のようになります。

では、これを1つの表にまとめてみましょう。

次に、表のそれぞれの列がどんな意味(要素)を表しているのかを考えていきます。

学校によっては、主語が「S」で動詞が「V」でと言った文法的な説明をされているかもしれませんが、今回はもう少し分かりやすく直感的な日本語で表してみますね。

このようにまとめてみると英語の文は、意味のまとまりとその順番によって構成されていることが分かりますよね。

中学1年生で扱う基本的な英文の多くは、この「だれ」「する」「何を(誰を)」「どこ」「いつ」という5つの意味のまとまりで構成されています。

こうした英文の語句の並び順を意味のまとまりで捉えた順序のことを「意味順」と呼ぶのです。そして,上記が「意味順」の表ということになります。

では、この「意味順」の表を使って,どのように日本語から英語の文を完成させることができるのでしょうか。

それは、ここまでの手順を逆に辿っていけば良いのです。

ここまでは

①英語を意味のまとまりごとに分ける
②それに対応する日本語をそれぞれ挙げる
③その日本語がどんな要素を表しているのかを書き出す


という3ステップで「意味順」の表を作りました。


これを逆にするということです。

つまり最初に下記のような意味の要素だけが書かれた表があるとします。

そこに自分の書きたいことを、まずは意味のまとまりごとに分けた日本語で書き入れていきます。

ここまでできたら、次に意味のまとまりごとに日本語を英語へと置き換えていきましょう。

というようにして、日本語から「意味順」の表を使って英文を完成させることができましたね。

まとめると

①日本語を意味のまとまりごとに分けて,表の1段目に書き入れる
②表に書き入れた日本語をそれぞれ英語に置き換えていく


というステップで日本語の文から英文を作ってあげることができるのです。

では、ここからはいくつか例題を用意しましたので、一緒に取り組んでみましょう。

「意味順」を実際に使ってみよう!


それでは、先ほどご紹介した2つのステップを踏みながら、実際に英文を作ってみましょう。

「意味順」で英文を作るステップ

①日本語を意味のまとまりごとに分けて、表の1段目に書き入れる
②表に書き入れた日本語をそれぞれ英語に置き換えていく

最初の問題です!


「私は中学生です。」という日本語の文がありますが、これを「意味順」の表を使って英語に変換してみましょう。

まずは、「私は中学生です。」という日本語の文を意味のまとまりごとに分けて表の1段目に入れていきます。

すると、こんな風に表を埋めてあげることができます。

「私は」は「だれが」のところに、「中学生」は私が「なに」であるのかを説明しているので、「なに」のところに,「です」はそのまま「する(です)」のところに入れてあげてくださいね。


では、表に日本語を入れたところで、今度はそれぞれの日本語を英語に置き換えていきましょう。

すると、次のように表を埋められますよね。

「中学生」は「a junior high school student」と表現することができます。


このように「意味順」の表を使うと、日本語から英語に変換する際の語順の障害が取り除かれ、スムーズに変換できるようになりましたよね。

では、次にこちらの問題にチャレンジしてみてください。

「私は放課後に公園でテニスをします。」という日本語を英語に変換していくのですが、先ほどよりもかなり文が長くなりましたよね。

それでも先ほどと同様に、まずは意味のまとまりごとに日本語の文を分けてあげて、「意味順」の表の中に書き入れてあげてください。

すると、こんな風に表を埋めてあげることができます。

日本語だと「放課後に」「テニスを」という順番になっていましたが、英語の場合は「どこ」「いつ」の順番ですので、これが逆転していますよね。

ここまでできたら、あとは1つ1つ日本語から英語に置き換えてあげるだけですね。

次のように表を埋められたら正解です。

上記の通りに英文を作ることができましたか?


ここまでの2つはいわゆる「肯定文」でしたが、最後に疑問文にもチャレンジしてみたいと思います。

「あなたは放課後にテニスをしますか?」という日本語の文を英語に置き換えてみましょう。

先ほどまでと同様に日本語を意味のまとまりごとに分けて表に入れていくのですが、おそらく多くの方がここで「あれ?」と思ったのではないでしょうか。

そうです。疑問文であることを表す「か?」を表のどこに入れたらいいのかが分からないのです。

実はここで、表のいちばん左にある「玉手箱」が登場します!


『中学 自由自在 英語』では、「だれが」よりも前に出さなければならない要素については「玉手箱」の枠に入れてあげようというルールになっています。

ですので、「か?」は「玉手箱」のところに入れてあげて、その上で日本語から英語に置き換えてあげてください。

そして、日本語をそれぞれ英語に置き換えてあげて、次のように表を埋められたら正解です。

このように疑問文のようなイレギュラーが出てきたときに「玉手箱」という枠を新たに設けてあげるなど,最初の5つの要素でできた表を自分なりにアレンジしながら使っていけるのも「意味順」の面白いところです。

接続詞や関係代名詞などが登場すると英文はより複雑になっていきますが、そうした英文が出てきても表をアレンジすることで対応できる場合があります。

とは言え、この「意味順」の表はあらゆる英文に対応しているというわけではありませんし、万能ではありません。

それでも、英文をまずは書いてみるという最初のステップで難しさを感じている方には、すごく役立つアプローチだと思います。

ぜひ、「意味順」のアプローチを活用しながら、英文を「書く」ことにチャレンジしてみてくださいね。

次回の記事では、「意味順」のメリットと、より実践的な活用例をご紹介します。

関連書籍

『中学 自由自在 英語』

〇意味順やQRなどで使いやすさアップ!

 意味順で覚える英文構造や,QRから音声を聴くことができるようにしています。

〇新学習指導要領に対応して全面改訂!

 新学習指導要領に対応し、学習内容と紙面構成を大幅に一新する全面改訂を実施。中学3年間および高校への発展学習事項まで完全にカバーしています。

〇高校受験の最強のパートナー!

 入試での頻出項目や、よりハイレベルな内容も丁寧に解説。自宅でも塾でも頼れる最強の1冊です。

〇豊富な図や表でわかりやすい!

 学習内容をわかりやすく整理した図や表を豊富に収録。オールカラーで楽しく、理解が深まります。

〇コミュニケーション・表現力を伸ばす!

 これから必要となる「コミュニケーション・表現力」を伸ばす場面設定での解説を充実させています。

〇スマホアプリで自由自在先生が使えます!

 自由自在シリーズ各書籍の全ページをデータベース化。キーワードをスマホアプリで質問すると、該当するページをスマホアプリ上で確認できる全く新しいサービスを用意しています。

 

詳しくはこちらから