こんにちは!今回からは2021年度より始まる中学校の新学習指導要領に関わるお話をさせていただきます。
さて、2021年度から中学校で新学習指導要領に基づく新課程がスタートします。
具体的に前の学習指導要領とどんなところが違うのか?それによって子どもの学びはどう変わっていくのか?
ただ、保護者の皆さまの率直な疑問は、「自分たちが学生だった頃とどう違うのか?」ではないでしょうか。
保護者の皆さまが、中学生になられたお子様と向き合う際に、真っ先にイメージするのは、ご自身の中学生時代だと思います。
もちろん、そこでの経験や学びをお子様に還元していくことは非常に大切なことです。しかし、今回の学習指導要領の改訂もそうですが、学校での学びというものはどんどんと変化しています。
ですので、保護者の皆さんが中学生だった頃には「当たり前」だったことが、今ではそうではないなんてことも十分にあり得るのです。
この記事では、今回の学習指導要領の改訂で強調されたポイントに注目しつつ、その中で学びがどう変化していくのかについてお話させていただければと思います。
ぜひ、ご一読ください。
まずは、今回の学習指導要領の改訂にあたって、以前のものと比較して、強調されている部分について簡単にご説明させていただきます。
今回の改訂では
「知識・技能」
「思考力、判断力、表現力」
「学びに向かう力・人間性」
という3つの柱から養うべき「資質・能力」を整理しています。
これらの資質・能力は道徳科や外国語活動、総合的な学習の時間及び特別活動も含めた各教科等の指導を通して、偏りなく育成されるべきことが明記されています。
そして、「養うべき力」という視点で考えたときに注目したいのは次の点です。
「言語能力や情報活用能力、問題発見・解決能力等の学習の基盤となる資質・能力を教科横断的な視点で養っていく」と新学習指導要領では触れられています。
ここで挙げられた「問題発見能力」は非常に重要なキーワードです。
問題を解いたり、問題に答えを出したりするだけではなくて、自分主体で問題そのものを見出していく力が求められるということが強調されています。
例えば、国語の授業では、教師が文章について一方的に説明をしていく、または教師が設定した問いかけに対して生徒が答えを考えていくというアプローチが主でした。
保護者の皆さんが持たれている国語の授業のイメージはおおよそこんな感じではないでしょうか。
しかし、「問題発見能力」を育てるためには、文章を読みながら生徒の側が主体的に疑問を持ち、それについて考察を深めていくことが求められるのです。
もちろん「問題発見能力」は社会に出たら当然必要になる力ですし、中学生の段階からその基礎を作っていこうというのが、今回の指導要領に込められた1つのメッセージでもあります。
また、「教科横断的な視点」という部分にも注目していただきたいですね。
例えば、言語能力であれば、国語や英語が中心にあると考えられがちです。
しかし、数学における論理的な解答の表現や、社会や理科でのレポートの作成、特別活動・道徳等におけるディスカッションやディベートなども、実は言語能力を養う上では重要なものです。
このように教科の枠組みを超えて、基盤となる「資質・能力」を育てていくという方針が、今回の学習指導要領ではこれまで以上に強調されています。
そして「主体的・対話的で深い学び」というこれまでも指導要領に盛り込まれていたキーワードが改めて強調され、それを実現するために授業を改善していかなければならないと言及されていました。
ディスカッションやディベートといった対話的なタスクに取り組んでいると、それ自体が主体的で深い学びになっていると思われるかもしれませんが、それらの活動がイコール「主体的・対話的で深い学び」ではありません。
生徒が自分なりの視点や考えを持って、協働して、合意形成をしたり、問題意識を共有したり、創造したりしていくことが大切なのであって、ディスカッションやディベートはその理念を実現するためのタスクにすぎないのです。
この本質の部分を見失わないように授業を進めていくことの重要性が今回強調された形です。
これまでも重要だった「知識」の部分は依然として重要であるとしたうえで、これからの社会で求められる「資質・能力」を育てていくことを改めて強調したのが、今回の中学校の新学習指導要領なのです。
さて、各教科の詳しい話は次回以降にさせていただくとして、少し全体的なお話をさせてください。
みなさんは「資質・能力」そして「知識」という言葉を聞くと、どんなイメージを持ちますか?また両者にどんな関係があると思いますか?
前者は、先ほどの章で挙げたもので言うと「情報活用能力」「問題発見能力」「問題解決能力」などにあたります。
そして、後者は「一般的な知識」「各教科の知識」「語彙・表現」などに該当するでしょうか。
すると、まずは「知識」を身につけて、それからその「知識」を活用する活動の中で「資質・能力」を育てるという流れをイメージされるかもしれません。
しかし、新しい学習指導要領では、ここの捉え方が少し変化しています。
というのも、国立教育政策研究所から出された『資質・能力を育成する教育課程の在り方に関する研究報告書』の中で「資質・能力」は次のように定義されています。
①子供が新しいことを学ぶ際に使える潜在的な学ぶ力や考える力
②教科等の質の高い知識やその学び方に関するメタ認知,ものの見方・考え方を含む総体
当たり前すぎて見逃されがちなのが、意外と①の「資質・能力」なのではないかなと思います。
その成熟度に個人差はあれど、生まれ持ったものも含めて、人は新しく学ぶ事柄を理解するための土台としての「能力・資質」を持ち合わせているという視点です。
先ほどの報告書では、「資質・能力」を端的に「学び始めには学習に使う手段,学び終わりでは学習内容も含み込んだ次の学習のための手段」とまとめています。
つまり、①の「資質・能力」をベースに「知識」を身につけていき、学び得た「知識」を①と連動させることで②の「資質・能力」を育てていくという構造が新しい学習指導要領下における「資質・能力」と知識の関係なのです。
野球で喩えるなら次のようになります。
「ルールを覚えましょう。走りましょう。キャッチボールしましょう。」
これが「基礎知識」ですね。
「実際に試合をしてみましょう。」
これが「知識の活用 」です。
これをふたつに分けて、別々のものとして捉えるのではなく、
「野球を試合形式も含めた実践を通じて、ルールや基本的なスキルを身につけましょう!」
というアプローチに転換していこうというのが、今回の学習指導要領改訂に伴って重視されている点なのです。
図示すると、次のような一方通行的な構造ではなく
「知識」 ⇒ 「資質・能力」
次のような相互に行き来するような構造になっていると捉えていただけると良いと思います。
「資質・能力」 ⇔ 「知識」 ⇔ 高次の「資質・能力」
この点を踏まえて、実際に家庭学習でどんなことをしていけば良いのかを考えていきましょう。
では、ここまでの内容を踏まえたときに、「家庭学習」の役割はどう変わるのでしょうか。
これまで重視されてきた知識・技能の重要性はもちろん変わることはありません。
一方で、今後重要度が上がっていくのは、「習得した知識・技能を使って何をするか?」の部分であり、それを通じて「問題発見能力」「情報活用能力」といった、より高次の「資質・能力」をいかにして育てていくかになります。
もちろん、自宅でこうした能力を育てる学習に取り組めればベターですが、いきなり実現するのは、なかなか難しい部分もあると思います。
また、学校でも今後、学んだ内容を踏まえて、活動に取り組むことに繋げていくような授業スタイルが増えていくことも予見されます。
そう考えたときに、家庭学習では、まずこの2つの役割をより意識すると良いのではないでしょうか。
①学びに向かう姿勢・主体性を身につける
②「使う」ことを意識したインプットやインテイクを心がける
「学びに向かう姿勢・主体性」には、もちろん本連載の第1回の記事の中でお話ししたタイムマネジメントと話も関係してきます。
自分で「やりたいこと」と家庭学習の時間のバランスの取れたスケジュールを組んで、それを実行できるのも1つの重要な主体性です。
一方で、こうした主体性は与えられた課題や問題に黙々と受け身的に取り組んでいるだけでは育っていきません。
例えば、学校で学んだことを自分なりに深めようとしてパソコンやスマートフォンを使って調べる、本や映画などに触れる、博物館や美術館のような施設を活用する、こうした行動も重要な「学び」となります。
保護者の皆様としては、やはり参考書や問題集に黙々と取り組んでいる姿を見ると、安心感があるかもしれません。
しかし、お子様の多様な「学びに向かう姿勢」を受け入れて、肯定してあげることが、主体性が育っていくためには欠かせません。
また、学校の授業で対話や活動が重視されるようになると、家庭では、単なる知識・技能の「インプット」だけではなく、それを実際に「活用する」ことを想定した「インテイク」が重要になっていきます。
英語であれば、「とりあえず単語や表現を覚えておけば良い」というようなイメージもあるかもしれませんが、それを自分が実際に使いこなせるようになることが何よりも大切です。
そのため、覚えた単語や表現を使った例文があるのであれば、それを見て覚えるだけではなく、聞いて、口に出して定着させていく。
また、その次の段階として、単語や表現を自分ならどんなシチュエーションで使うかを考えてみる。
このように「覚えること」をゴールとするのではなく、活用のためのプロセスと捉えるような考え方の転換が重要になってくるでしょう。
今回も読んでいただきましてありがとうございました。
この記事の内容をここまで読んでくださった保護者の皆さまは、今こう思われているかもしれません。
「じゃあ、具体的にはどんなことをすれば良いの?」と。
各教科の具体的な学習指導要領における変化や、それに伴って意識したい学習法については第4回と第5回の記事で2回に分けてお届けする予定です。
こちらも非常に濃い内容になっておりますので、良ければ、ご一読ください。
●概要
・『中学 ⾃由⾃在』 国語、社会、数学、理科、英語
・定価:2,900円(+税)
・判型:A5判
・ページ数:本⽂592〜656ページ、解答編(数学)160ページ
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