こんにちは!今回も引き続き、2021年度より始まる中学校の新学習指導要領に関わるお話をさせていただきます。
さて、2021年度から中学校で新学習指導要領に基づく新課程がスタートします。
具体的に前の学習指導要領とどんなところが違うのか?それによって子どもの学びはどう変わっていくのか?
前回の記事では、新しい学習指導要領の中で何が強調され、学びの捉え方がどう変わったのかを全体的なところでお話させていただきました。
良ければ、前回の記事もご一読ください。
その中で、特筆すべき点は、「知識」を単にインプットするだけではなくて、それを「使える」ものにしていくという部分でした。
加えて、「知識」と「資質・能力」の関係の捉え方が変わり、それらを別々に涵養していくのではなく、円環構造の中で連動させて養っていくという方向性も示されました。
今回とそして次回の記事では、この変化を踏まえて、では実際に各教科では、どんな「学び」がこれから求められていくのか?という部分を、教科ごとの「変化」にも言及しながら、皆さんにお伝えできればと考えています。
お伝えするにあたり、今回も『中学 自由自在』の担当編集者にインタビューしながら進めていきます。
また、「前編」に当たる今回扱うのは、「英語」「国語」そして「数学」です。
ぜひ、ご一読いただければと思います。
ここからは増進堂・受験研究社の新しい『中学 自由自在』を担当した編集スタッフに話を聞きながら、学習指導要領の教科ごとの変更のポイントを整理していきます。
その上で、具体的にどんな学びが有効なのかについても聞いていきます!
変更点は?
英語の新学習指導要領では、大きくどんな点が変更になりましたか?
やはり小学校でも英語の「授業」がスタートしたことに伴って、学習量や難易度が上がりましたね。
語彙レベルでいうと、中学校で学習する語数が従来の1200語から「小学校で学習した語数(600-700)に 1600-1800 語までの新語を加えた語」という表現へと改訂され、学習する語数が大幅に増加しました。
中学校卒業時に学習している語数でいえば、単純に2倍近くまで増えてますね…。
そうなんです。他にも学年ごとに学習する文法項目もかなり変わりましたね。英語の「仮定法」と聞くと、何となく高校生になってから学習する難しい文法事項というイメージがありませんか?
全然分からなかった記憶があります…。
そんな「仮定法」のうちの基本的なものが実は今回の改訂で、「高校1年→中学3年」という具合に中学生の過程に入ってきました。
えっ?仮定法を中学生で学ぶんですか!?
他にも過去形や過去進行形が中学2年から中学1年に、受動態や現在完了形が中学3年→中学2年にといった学年間の移動も見られ、以前よりも早い段階で高度な文法事項を理解する必要が出てきます。
なるほど。では、「求められる力」という観点で見ると、どんな変化があるのでしょうか?
英語の技能って、しばしば「4技能」と言われますよね。
「聞く」「読む」「話す」「書く」ですね。
そうです。ただ、今回の新学習指導要領では、そんな「4技能」が「4技能5領域」という表記に変わっています。
5領域ですか?
はい。従来は、「話す」とされていたものが「話す(やり取り)」「話す(発表)」に分けられました。
より「話す」の力の中身を明確にしたということでしょうか?
そうですね。これまでは学んだ語彙や表現が単純にインプットされているかを問うペーパーテスト等による評価が主流でした。
しかし、「話す」技能を問われる検定試験の重要度も上がっていくことから、単に覚えているだけではなく、それを「使える」かどうかがこれから重要になっていくことは間違いありません。
英語はコミュニケーションのツールですもんね。
はい。そのため新学習指導要領では、「即興で」という言葉が強調されています。
つまり,より実際に英語を使う際に近い場面を想定して,英語を話せるかどうかを問われるわけです。
具体的に有効な学びは?
新学習指導要領下の英語では、どんな学習が有効なのでしょうか?
従来のように単に単語や表現、文法事項を覚えているだけで高得点が取れるテストは間違いなく減っていくと思います。
特に検定試験では、そうした単純な問題が解けるだけでは良い結果を得られません。
そのため文法や単語1つをとっても覚えていれば良いという認識ではなくて,それを実際に覚えた語彙や表現を選択して「使える」というパフォーマンスの部分が重視されることとなります。
でも、「使える」ように学習するってピンときませんね…。具体的にどんな勉強をするのが良いでしょうか。
英語学習を次のようなイメージで捉えていただけると分かりやすいと思います。
①母語である日本語と似ているところ・異なるところなどを意識しながら、語彙・表現・文法などの「知識」を身につけていく。
②それらが実際に使われるシチュエーションをイメージしながら活用することで、場面に応じて適切な「知識」を選択して、使うという「資質・能力」が養われていきます。
③自分のこと、身近な事柄について英語で表現していく中で、自分の表現したいものが見えてくるため、それを表現する上で足りない「知識」(語彙・表現や文法など)を主体的に学習していく。
先ほどの「資質・能力」と「知識」の関係が、英語にはこのように反映されてくるのですね。
①のところでは、これまでにもご紹介した『中学 自由自在』に掲載されている「意味順」のアプローチが助けになってくれると思います。
②のところも難しく考える必要はありません。まずは教科書に掲載されているダイアログを空で読めるくらいまで徹底的に音読してみてください。その上で『自由自在』も補助的に使うのは効果的です。
例えば、『中学 自由自在 英語』では、文法の学習ページにおいて、実際の使用場面や状況を表したイラストとモデル文(ダイアログ)を併載しています。
そのため、使用場面を想定しながら音読してみるだけでも、文法事項や表現を使われるシチュエーションがセットで身についていきます。
なるほど。語彙や表現を実際に使われるシチュエーションまでイメージしながら「使える」ものに落とし込んでいくわけですね。
そうなんです。他にも同書の「コミュニケーション・表現編」は、英語を使うシチュエーションごとに重要な表現をまとめたパートです。
このパートを活用して、実際に英語を使う自分を想像して、表現を音読しながらインプットしていくのも効果的でしょう。
これなら英語に自信が持てなくても始められそうです。その次の段階として、③ではどんなことができるでしょうか?
そうですね…やはり学んだ表現や語彙を自分のことを表現するために使ってみるというのはどうでしょうか?
入試や検定試験でも自由英作文は問われますし、英語でコミュニケーションをする際には、まずは自分のことを英語で表現できるのが大前提ともいわれます。
確かに、まずは自分のことからですよね。
教科書や『自由自在』も参考にしながら、学んだ語彙、表現、文法事項を駆使して、ぜひ自分のことを表す英文をノートなどに書いてみてください。
その繰り返しが、「資質・能力」と「知識」を連動して高めていく1つのアプローチになるはずです。
変更点は?
国語の新学習指導要領では、大きくどんな点が変更になったのでしょうか。
国語については、実は英語と似ていて、語彙や表現を単に覚えるだけではなくて、自分の言葉として使いこなせるようになることを目指して学習を進めていくことが強調されています。
具体的にはどんな言葉を学ぶのでしょうか?
中学1年「事象や行為,心情を表す語句」
中学2年「抽象的な概念を表す語句」
中学3年「理解したり表現したりするために必要な語句」
上記のように取り上げられるとされています。
そして話や文章の中で使いながら、これらを自分の言葉として使いこなせるようにするとともに,語感を磨くことが求められているのです。
やはりインプットすることはもちろん大切ですが、それをアウトプットしながら、自分のものにしていくということが英語同様に重視されているのですね。
具体的に有効な学びは?
新学習指導要領下の国語では、どんな学習が有効なのでしょうか?
やはり、英語と同様に語彙や文法について「使い方」を意識して学習を進めることで、自分のものとしていくことを念頭に置いた学習が大切ですね。
普段の学習においても、その言葉、熟語の意味が分かればいいという断片的な知識で満足するのではなく、それを自分が使うとしたどんな場面で、どんな相手に、何を伝えたいときなのかと深堀りしていくような学習が望ましいのではないでしょうか。
なるほど。国語の学習だと実際に「使ってみる」をどのように日常学習に取り入れられるでしょうか。
読解はそうした自分が習得した語彙や文法と言った「知識」を発揮できる場の1つになります。
何となく読み進めていくのではなく、身につけた言語感覚を駆使して戦略的に読み進め、理解していく癖をつけていけると良いですね。
なるほど。でも読解は私も苦手でしたし、苦手意識を持っている中学生も多いかもしれません。
どんなところが難しかったですか?
なかなか自分の書いた答え、選んだ選択肢が「模範解答」に合致しなかったんですよね。「なんで、その答えなの?」と納得できないこともありました。
なるほど。でもそれってすごく大切な経験だと思いますよ。
思春期は、自分の視点だけではなく、他者の視点から物事を理解する、社会的な視点から物事を考えるということを徐々に学んでいく時期です。
ですので、自分の読み方と、模範解答の読み方とを比較して、納得できるところ・納得できないことを考えるということができると、より深く読解を進めていけると思います。
お子さんには発達段階や個性がありますから、その読み方が納得できない場合もあります。
そのときに、模範解答がこうだからと無理やり自分の考えを押し曲げて納得してしまうのは、少しもったいないのです。
確かに模範解答に合わせるというところで思考が止まってしまいますもんね。
はい。ですので、一旦、自分は文章中のどこを根拠にそう読んだのかのメモを残しておきましょう。
その間に『中学 自由自在 国語』を活用して、読解のテクニックを学んで、「知識・技能」をパワーアップさせていく。
また、発達の過程で「資質・能力」の部分が成長していく。
それらを経て、数ヶ月後に改めてその問題の読解にチャレンジすると、あの時は納得できなかった模範解答が腑に落ちるなんてことも珍しくはありません。
少し遠回りをしたように思われるかもしれませんが、これが生きた「学び」です。
解き方をマスターするだけではなく、自分が文章を読む時の視点・根拠を大事にする姿勢を養うことを忘れないでいただきたいですね。
変更点は?
数学の新学習指導要領では、大きくどんな点が変更になったのでしょうか。
まず、単元については学年間で多少の移動はありましたが、それほど大きく変わったということはありません。ただ新しく「箱ひげ図」というものが入ってきましたね。
「箱ひげ図」ですか?
はい。ご覧になったことがあるかもしれませんが、データのばらつきをわかりやすく表現するために用いられる統計図の1種ですね。
あ、見たことあります!高校の「数学Ⅰ」で学んだような…。これを中学生から学ぶんですね。
はい。ただ、この「箱ひげ図」の追加は1つ象徴的な変化とも言えます。
こうした統計や分布の問題は、解く際に「思考力・判断力」を問われます。
そして今後の高校入試では、こうした「思考力・判断力」を問うような問題が増えていくといわれていますね。
なるほど。単純な計算が解けるだけでは点が取れなくなっていくということですね。
もちろん単純な計算が解けることは基礎なので大切です。しかし、そこから発展して、文章や資料,表,図から,正しく必要な情報を読み取る力を求める問題や,思考力を問われる問題,考え方や解き方も答える問題などにつなげていく必要があります。
基礎的な計算力、公式や解法を身につけるとともに、それを「使って」正しく情報を読み取ったり、考えたりしていかなければならないわけです。
具体的に有効な学びは?
新学習指導要領下の数学では、どんな学習が有効なのでしょうか?
解き方を形式的に覚えてしまうのではなく,どのような理由があってその式を立てたのか,その解き方をしなければならないのかまで考えながら問題を解く癖をつけることが大切だと思います。
なるほど。でも、適切に数式を処理できればテストなどで「正解」を得られますよね。
もちろん数学的に「処理する」ことは大切です。
しかし、私たちの頃にはほとんど中学校では扱わなかった「統計」が単元として扱われるようになったのはご存知でしょうか。実はこれは重要な変化です。
確かに学校で「統計」をじっくり学んだ記憶はないですね…。
統計では数学的に「処理をする」(解く)という作業だけではなく、出てきた数値を「評価する」「解釈する」という判断が求められます。
従来の数学教育では、機械的な処理をいかに正確かつ迅速に再現できるか、ということに重きが置かれがちでした。
しかし、今回の指導要領改訂やその前からの教育改革の流れの中では、社会課題を自分の頭で判断するために数学を活用するということが重視されています。
だからこそ、「なぜこの立式をしたのか?」「なぜこの補助線を引いたのか?」など、解く過程で出てくる判断の根拠を示せるような学習が大切なのです。
確かに何となく解いていると答えにはたどり着けても、そこに至るまでの過程の根拠を示し、整理する力は育ちませんね。
その通りです。そのため学習法として1つおすすめしたいのが「教え合い」です。
自分が解いた過程を、人に丁寧に説明できるようになるのを目標として、取り組んでみてください。
自分で自分の解いた過程を評価・解釈したり、他の人の解いた過程と比べたりすることが大切なのですね。
今回も読んでいただきましてありがとうございました。
次回は今回の内容の続きとして「理科」と「社会」についてお話させていただきます。
良ければ、こちらもご一読いただけますと幸いです。
●概要
・『中学 ⾃由⾃在』 国語、社会、数学、理科、英語
・定価:2,900円(+税)
・判型:A5判
・ページ数:本⽂592〜656ページ、解答編(数学)160ページ
・発売予定⽇:2021年2⽉15⽇
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このたび、『自由自在』の中学⽣シリーズを2021年度の新学習指導要領に合わせて全⾯改訂しました!
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