この春から新中学生になられたお子様も少しずつ新しい学校生活に慣れてきた頃でしょうか?
以前にタイムスケジュールの記事でも触れましたが、中学生は概して小学生とは比べ物にならないほどに多忙です。
授業時間が小学校よりも長いのはもちろんのこと、習い事や部活動、塾など、「時間がいくらあっても足りない!」状態になってしまうので、自分なりの時間配分を確立するまでが大変ですよね。
そんな新しい生活のバタバタの中で、5月にやって来るのが「はじめての中間テスト」です。
テストに際して、保護者の皆さんが抱くのは、やはり「とにかくたくさん勉強して欲しい!」「少しでも長く勉強して欲しい!」といった思いでしょう。
確かに小学校のテストと比べて、中学校のテストはテスト範囲も格段に広くなり、問題量や難易度も高くなりますし、それを乗り越える上では、勉強量も勉強時間も大切です。
ただ、勉強量や勉強時間のことに関心が向きがちな一方で、小学校と中学校のテストには、もっと大きなそして明確な違いがあるのです。
みなさんは何だと思いますか?
意外と見落としがちなのですが、その答えは実は「解答用紙」の存在なのです。
今回は、そんな「解答用紙」にスポットを当てながら、中学校で「はじめての中間テスト」に向けて、ぜひともしておきたい準備についてお話していきます。
最初に保護者の皆さまに質問です。
お子様が通っている中学校の定期テストの過去問をご覧になられたことはありますか?
過去問を見たことがある場合でも、どんな問題が出題されているか、あるいはどれくらいの難易度なのかに注目された方が多いのではないでしょうか。
ここで、注目していただきたいのが、実は「解答用紙」の存在なのです。
公立の小学校では問題と解答欄がセットになったプリント形式のテストが実施されることがほとんどだと思います。
その一方で、中学校に入ると、公立の学校であっても、問題用紙と解答用紙が分かれた形式のテストが実施されることが多くなります。
地域差があったり、先生の裁量や教科によって異なったりする場合もありますが、分かれた形式で実施されるケースがグッと増えるのは事実です。
また、高校入試の際には,全ての教科で問題用紙と解答用紙が別々になりますので、もし自分が受ける定期テストが別々の形式でなかったとしても、意識しておくことは非常に大切ですよね。
ここで、保護者の皆さまにもう1つ質問です。
学生時代に「解答用紙」で失敗した経験はありませんか?
「あるある…。」と心の中で苦い学生時代の経験が蘇った方も意外といらっしゃるのではないでしょうか。
少しだけこの記事を書いている私の話をさせていただきますね。
あれは、ひたすら文章の空所補充をする「1点×100問」の社会科の定期考査を受けたときでした。
同じような解答欄がズラーっと並んだ解答用紙。しかし、暗記してきたことをひたすら書いていくだけなので、心の中では「楽勝!楽勝!」と浮かれ気分でした。
制限時間ギリギリになりましたが、何とか全ての問題を解き終わり、100点満点を確信して、解答用紙を提出。
そうして迎えたテスト返却の日、浮かれ気分の私に悲劇が襲いかかります。
「10点、20点、30点……。」
「70点足りな~い!!」
変だな~。変だな~。おかしいなぁ~。おかしいなぁ~。
実は、解答用紙の途中で解答欄が1つズレてしまっており、それを境に以降の問題が全て誤答として扱われていたのです…。
有名な怪談「皿屋敷」を彷彿させる私の失敗談をお話させていただきました。
このように「解答用紙」の失敗というのは、ちょっとした油断や不注意で誰にでも起こり得ることなんですよね。
確かに解答用紙に細心の注意を払うように意識したとしても、当初取れる予定だった「100点」を取れるだけで、それが「120点」になるようなことはありません。
しかし、解答用紙に注意しないと、「100点」を取れるはずだったのに、それが「30点」になってしまうことはあるわけです。
そう考えると、問題用紙と解答用紙が分かれるテストの形式そのものに対して準備をしておくというのは、お子様の努力や頑張りをしっかりと点数に反映させるために必要なステップだと言えるのではないでしょうか。
さて、問題と解答欄が一体化したプリント形式のテストと、問題用紙と解答用紙が分かれた形式のテストでは何が異なるのでしょうか。
前者の場合だと、問題のすぐ近くに解答スペースがあるので、自分が出した解答を一度記憶して、他の場所に書き写すという工程が発生しません。
例えば、算数だと問題の下に途中式と答えをそのまま記入できるようになっていて、そこで完結しますので、正確に計算することさえできれば、◯がつきます。
一方で、中学校の多くで採用される問題用紙と解答用紙が分かれた形式のテストでは、問題と解答欄が別々の場所にありますよね。
つまり、問題用紙で導き出した答え、あるいは問題用意を見て頭の中に浮かべた答えを別の用紙の解答欄に書き写す作業が必要となるわけです。
この過程では、記入すべき解答を一度自分の頭の中に短期的に記憶して、それを解答用紙に記入するまでの間、正確に保持しておかなければなりません。
そのため、これが上手くいかないと、例えば数学のテストで問題用紙の時点では正しく「-9」という答えを導き出せていたのに、解答欄に記入する際になぜか符号が脱落して「9」と記入してしまうなんてことが起こりうるわけです。
そのため、「記憶」する力を高めれば、問題用紙と解答用紙が分かれていてもミスは起きにくくなります。
しかし、「記憶」はとりわけ認知機能に分類される力なので、学校でも教えてくれませんし、勉強量や勉強時間でカバーすることも難しいのです。
認知機能に負荷をかける訓練を継続的に実施することで、徐々に伸ばしていくものですので,来週あるいは再来週に実施されるテストに向けて、今から準備!というわけにもいかないんですね。
では、短い時間の中でどのようにして「解答用紙」への対策をすればいいのでしょうか?
そこで重要になってくるのが「段取り」です。
保護者の皆さんや試験監督の先生はお子様によくこんな声かけをします。
「テストには集中して取り組みなさい!」
これを聞いたお子様は「集中しなきゃ!」とマインドのレベルでは思うかもしれません。
しかし、何に、どうやって集中すればいいのかがはっきりしていないと、本当の意味で集中できていることにはなりません。
某国民的マンガでも、主人公が呼吸法に関する修行を積む過程が描かれていましたが、最初は右も左も分からないままにがむしゃらに取り組んでいるだけで、上手くいきませんでした。
そこから、徐々に何に「集中」すべきなのか、どうやって「集中」すべきなのかを学び、少しずつ成長していったのです。
ですので、問題用紙と解答用紙が分かれたテストに向き合う際も、ただ「集中しなさい!」「注意しなさい!」と声をかけるのではなく、「◯◯と◯◯に集中しなさい!」あるいは「◯◯に注意しなさい!」と声をかけてあげると、お子様の焦点が明確になります。
つまり、事前に集中すべきポイントや注意すべきポイントをピックアップし,それを基にテスト時間中の取り組みの「段取り」を決めておくと良いわけです。
そうすることで、お子様が「記憶」の部分で上手くいかない、あるいはミスをしてしまうことがあっても、それらを「段取り」でフォローしてあげることができます。
今回はそんなテストに取り組む際の「段取り」のモデルを1つご提案させていただきます。
今回、ご提案するモデルは、問題を解くフェーズと解答を書き写すフェーズを分けて考えるアプローチになります。
まず、問題用紙に解答を書き込んでいき、最後にそれを一気に解答用紙に書き写していくという風に、2つの作業を完全に分けてしまうわけです。
テストの制限時間が「50分」であれば、「40分」を「解く」時間に充て、その際に解答は問題用紙に書いていきます。その上で残りの「10分」でチェックしながら、解答欄に「書き写し」ていきます。(大問ごとに分けるなども可能です。)
このアプローチの大きなメリットは、小学生の頃に慣れ親しんだ問題と解答欄が一体型のテスト形式に近い取り組み方ができるという点ですね。
以下により具体的な手順をまとめてみました。
(1)名前を問題用紙・解答用紙の両方に記入する
(2)解答欄の数から問題の全体の大まかな分量を確認する
テストが始まって、最初にするべきことはきちんと名前を書くことです。
問題用紙と解答用紙のそれぞれに記名欄があるケースだと、問題用紙にだけ名前を書いて満足してしまうお子様も出てきます。
記名をしないと得点を与えないという厳格な先生もいらっしゃいますので、これは最重要チェック項目と言っても過言ではありません。
そして、テストが始まって解答用紙を見たときに、もう1つしておきたいのが問題の分量の確認です。
小学校のテストとは違い、中学校のテストは問題量が格段に多くなるので、解き終わるまでにかなり時間を要します。
今回ご紹介しているアプローチでは、問題を解く時間と解答を書き写す時間を分ける都合上、後者の時間をきっちりと確保できるように取り組む必要があります。
ですので、最初に全体のおおよその問題量が分かっていれば、「◯分でこれだけの分量を解き終わっておかないといけない!」という意識を持つことができ、時間配分ができますよね。
(3)あとから書き写す「解答」が分かりやすいように◯をつけるなどしておく
問題を解いたら、いきなり解答用紙に書き写すのではなく、まずは問題の下に解答を記入しておきます。
これは後ほど問題用紙に書き写していくことになりますので、自分が後から見て分かりやすいように印をつけたり、◯で囲っておくなどすると良いでしょう。
(4)記入する解答欄の問題番号を確認する
(5)書き写した問題の番号にチェックをつける
先ほどの私の経験談でもそうですが、記入する解答欄が正しいかどうか、ズレていないかどうかをきちんと指差し確認しながら、記入していくことは非常に大切です。
特に最初の中間テストでは、注意しすぎるくらいでちょうどいいと思いますので、焦らず解答の記入をしていくように心がけたいですね。
また、同じ解答を2回書き写したり、1つ問題を飛ばして解答を書き写してしまったりなんてことが起きてしまうかもしれません。
それを防ぐために、問題を書き写したら、その問題番号にレ点をつけていき、あとからレ点がついていない問題がないか確認するプロセスを踏んでも良いでしょう。
(6)問題の指示に沿った解答を書いているか確認する
制限時間の終盤が近づくと、試験官の先生が「見直ししてね~!」と声かけをすると思います。
その際、とりあえず時間の限り、問題の解き直しをするというお子様も多いことでしょう。
一方で気をつけていただきたいのが、解答欄に適さない解答を記入してしまっているというケースです。
これは解答用紙が別であるがゆえに起こりがちなのですが、例えば、社会で次のような問題とそれに対応する解答欄があったとします。
Q:面積が最大の大陸の名称を答えなさい。
大陸 |
この際、解答欄に次のように記入してしまうお子様が一定数いるんですね。
ユーラシア大陸 大陸 |
ここで何が問題なのかと言うと、解答欄に「大陸」の部分は記入されているにも関わらず、自分が記入した解答にも「大陸」が含まれていて、言葉が重なってしまっていることです。
これは、先生の裁量にもよりますが、多くの場合では誤答扱いになってしまいます。
解答欄に適した解答ができているかというのも「見直し」の際の重要な視点の1つなのです。
記事の途中でも書きましたが、問題用紙と解答用紙が分かれたテストの形式に向けての準備は、テストの点数の向上に直接的に寄与するものではありません。
しかし、形式への慣れは、解答をスムーズにしてくれたり、テストの際の気持ちの動揺を防いでくれたり、ケアレスミスや不注意による減点をなくしたりといった形で貢献してくれます。
つまり、お子様が時間をかけて勉強してきた成果を100%出し切るために必要な準備なんですね。
対策としては、やはり日常学習やテスト期間中の勉強の中で、問題用紙と解答用紙が分かれた形式に触れておくのが最も端的で効果的でしょう。
そこで、今回の記事を最後まで読んでくださった皆さまにささやかですが、「解答用紙」対策に活用できるプレゼントをご用意しました。
増進堂・受験研究社から発売中の中学生向けの問題集に『標準問題集』シリーズというものがあります。
こちらは中学生の日常学習や定期テスト対策に最適なシリーズです。
今回は、この中から「数学」と「社会」について、中間テストで出題が想定されるページの一部を問題サンプルとしてダウンロードできるようにさせていただきました。
そして、「解答用紙」の対策ということで、本来は問題集に付属しない、オリジナルの解答用紙もあわせてダウンロードできるようになっています。
こちらを使って、本番のテストを想定しながら、解答用紙に記入する練習をしてみてください。
その際には、ぜひ先ほど挙げた手順を意識して取り組んでみてくださいね。
また、今回紹介したアプローチは日常学習の中に取り入れることも可能です。
(1) 問題集や学校のワークに取り組む際に、その冊子とセットでノートを1冊、用意します。
(2) ◯分で解くという制限時間を設定します。(問題集などで予め定められている場合もあります)
(3) 制限時間を「解く」時間と「書き写す」時間に分けます。
(4) 「解く」時間で、問題用紙やワークの解答スペースに解答を記入していきます。
(5) 「書き写す」時間で、解答をノートに書き写していきます。
(6) ノートに書き写した内容を見直します。
問題集やワークを取り組む際に、実際のテストに取り組む際のシミュレーションを上記のように行っておくと、落ち着いてテストに臨むことができるでしょう。
ぜひ、日常学習の中に「解答用紙」対策を取り入れてみてください!