実は難しい?英語を論理的に話す・書く力を養う方法とは?

皆さまは「英語で1分間自分の意見を述べてください。」と言われたら話すことができますか?

皆さん、こんにちは。
増進堂・受験研究社、編集部の永峰と申します。


皆さんは普段、日本語で会話をしている時に、自分が論理的に話せているかどうか考えたことはありますか。


実は相手とコミュニケーションを取る上で、自分の考えや言いたいことを頭の中で整理して、論理的に組み立てられているかどうかで相手に与える印象はがらりと変わります。


誰かと会話をしていて、この人の言っていることや意見は分かりやすいと感じることもあれば、その逆もあると思います。


そんな「論理的に話す力」はただ毎日、日本語を使って会話をしていたからといって向上していくものではありません。意識的に自分の発言を見直し、トレーニングをする必要があります。


日本語でも難しいとなると、それを英語でやってくださいとなると、当然ハードルは高くなってしまいますよね。


私自身も大学時代に英語圏に留学した際に、授業で自分の意見を聞かれた際に、考えを整理しないままにとりあえず思いついたことをそのまま口に出してしまい、あまり理解されなかったという苦い経験をしました。


さて、話が変わりますが、文部科学省の学習指導要領改訂に際して高校の英語では「英語表現」という科目が「論理・表現」という名称に変わります。


学習指導要領内の「論理・表現」についての記述にこんなものがありました。


日常的な話題や社会的な話題について,使用する語句や文,対話の展開などにおいて,支援をほとんど活用しなくても,ディベートやディスカッションなどの活動を通して,複数の資料を活用しながら,多様な語句や文を目的や場面,状況などに応じて適切に用いて,意見や主張,課題の解決策などを,聞き手を説得できるよう,論理の構成や展開を工夫して詳しく話して伝え合うことができるようにする。高等学校学習指導要領(平成30年告示)外国語編 英語編より

授業内でもディベートやディスカッション等の形式での英語活動が行われていくということで、生徒に「論理的に話す力」を身につけさせていくという狙いは明白です。


しかし、ただ授業の中でやみくもにディベートやディスカッションに取り組んでも、先ほども述べたように、意識しなければ「論理的に話す力」は身につきません。


では、どうやってお子様の力を磨いていくのか、先日参加させていただいた村田女子高等学校で実施された「ミラコンフォーラム2019」にて、その1つのヒントを見つけました。


それが今回ご紹介させていただく共立女子中学高等学校の鮫島慶太先生が模擬授業で実演してくだったSTAR TALKという指導法です。

■ 鮫島慶太先生とSTAR TALK

「ミラコンフォーラム2019」での鮫島先生の授業風景

鮫島慶太先生は、東京都千代田区にある共立女子中学高等学校にて英語教員としてご活躍されています。またESN英語教育総合研究会の関東地区副代表としても活動されております。


まずは、今回鮫島先生が実演してくださったSTAR TALKという指導法の概要を明記しておきます。


STAR TALK
福岡女学院高等学校・坂本彰男先生が提唱され、北野高校の松山知紘先生をはじめ多くの先生方が実践されているBACE TALKというspeakingとwritingを組み合わせた活動に思考力訓練を組み合わせた指導法。

では、ここからその指導法の詳しい内容に踏み込んでいきたいと思います。

■ まずは主観的な視点で話してみる


皆さんが「Do you want to study abroad in the future?(あなたは将来、留学したいですか。)」と質問されたとします。


この質問は自分自身に対して聞かれているわけですから、あくまでも自分の主観的な意見や考えを答えることになりますね。


STAR TALKの活動では、最初に15秒ほど頭を整理して、まずは日本語で45秒間どれくらい自分の言葉で話せるかに挑戦します。その後、同じ活動を今度は英語で実施します。


ここまでは基本的に頭の中でとにかく考えて話すという段階ですが、この後にSTAR TALKでは、ワークシートを用いて自分の考えや意見を書いてまとめることで頭を整理し、論理的に話すための「道」を作っていきます。


とりわけ鮫島先生の作成したワークシートは以下のように導線が構築されています。



まず一番上に、質問に対する自分の意見が入ります。質問が「Do you want to study abroad in the future?(あなたは将来、留学したいですか。)」なので、「はい」か「いいえ」で答える形になりますね。


そして自分の考えを支える理由が必要です。さらにその理由を補強するためには例や証拠が必要になります。


このように常に相手に自分の意見や考えを伝えるときに、それを論理立てて頭の中で組み立てる訓練をしていくことで、徐々に論理的な思考力が身についていきますよね。

■ 一般論についてより客観的な意見を述べる


そして、ここからが鮫島先生発案のSTAR TALKの真価が発揮される活動になってくると思います。


先ほどの活動にも「論理的思考」はもちろん関係していたのですが、さらにここに「批判的思考」を組み合わせることで、さらに自分の意見や考えに説得力を持たせることができます。


話題を仮に「High school students should study abroad.」に設定したとしましょう。この時に求められているのは、もちろん自分の考えや意見ではありますが、先ほど比べて客観的な視点が重要になります。


つまり相手をどうやって納得させるかというディベートやディスカッション的な力が求められるというわけです。


最初に15秒ほど頭を整理して、まずは日本語で45秒間どれくらい自分の言葉で話せるかに挑戦し、その後同じ活動を今度は英語で実施します。続けて先ほどの画像のツリーに従って自分の考えを書きながら整理し、相手に伝えます。


ここまでは先ほどと同じです。


この次にSTAR TALKでは以下のようなツリーで自分の考えや意見に論理性と説得力を与えていきます。



この鮫島先生の 導線の引き方がすごく効果的です。


というのもまずこの4項目を埋めるだけでも十分45秒~1分間1つのトピックについて自分の言葉でかつ論理的に英語を話すことができます。


意見に理由や例だけでなく、「~と考える人もいるよね。」と想定反論を展開し、さらにそれに対する反論を「でも~なんだよ。」と付け加えるだけで、相手に与える印象がガラリと変わります。


さらにこのツリーに従って自分の頭の中を整理する練習は、そのままディスカッションやディベートにも繋がりますよね。


自分の意見を言うときに、想定反論とそれに対する反論まで頭の中で整理する力が身につけられれば、ディスカッションやディベートの場で積極的に発言できるようになるでしょう。


そしてSTAR TALKでは一連のスピーキング活動の後に、自分の意見を100語程度でまとめる練習も行います。


これにより論理的に「話す」「書く」力をバランスよく高めることができますよね。

■ STAR TALKの意図と目的


鮫島先生は、この活動を「民間英語試験」に対する対策や「大学入試の対策」としてではなく、それらを超える活動として展開していこうと考えています。


「15秒考えて45秒話す」といった活動では、STAR TALKは収まらないことは授業実践の中で感じておられるようです。


1分ではなく3分、3分ではなく5分、5分でも言いたいことは終わらない、といった生徒の成長を見るのが楽しみなのであり、それこそが「生きた英語力」になるんだという点を熱く語っておられました。


また、この活動の原形であるBACE TALKを開発された福岡女学院の坂本先生は、アウトプット活動がインプット活動と相乗の関係にあることを重視すべきだとお考えになっていらっしゃるようです。


鮫島先生もその点を重視し、インプット活動(ビデオ教材の視聴Listening教材の視聴・Reading教材の読解)×STAR TALK(Speaking・Logical and Critical Thinking・Writing・によるアウトプット活動を統合させることを目指した教材・授業の開発を目標にしているとお話しされていました。


STAR TALKはあくまでゴールではなくあくまでも通過点なんですね。

■ 学生時代に出会いたかった!


今回の「ミラコンフォーラム2019」で鮫島先生のSTAR TALKについての模擬授業を受けさせていただいた率直な感想は、「自分が学生だった時に出会いたかった!」です。


私自身、中学・高校と英語の学力には自信があり、学校のテストでは比較的点数も取れていました。


しかし、大学時代に英語圏に留学し、ディベートやディスカッションの場に出たときに、自分の意見を言ってください、書いてくださいと言われても、驚くほどに言葉が出てこないことに愕然としました。


英語の学力テストで点数を取ることはもちろん大切ですが、考えや意見を自分の言葉で論理立てて相手に伝えるという力は全く別物なのだと思います。


そして今回ご紹介させていただいた鮫島先生が提唱されているSTAR TALKはそんな学生にとって大きな助けになる学習法だと思います。


メモを取りながら、論理的思考、批判的思考の道筋を作っていき、頭の中を整理してから口に出すという訓練を繰り返すことで、徐々にそれをメモなしでもできるようになっていくことが期待されます。


また、生徒は論理的に英語を話すために自分には何が足りないのかという視点で、英語の語彙や文法、表現の学習に取り組めるようになるので、主体的な学びも促進されると思います。


ただ英語を口に出すだけではなく、こういうトレーニングをしていくことで本当の意味で相手に伝わる、コミュニケーションツールとしての英語が身につくのでしょう。

■ 日本語教育にも役立つ!


ここまでSTAR TALKという英語の活動・学習法についてお話ししてきたのですが、このメソッドは英語に限らず有効だと思います。


鮫島先生もSTAR TALKの中で最初に日本語で相手に伝えるというタスクを入れておられましたが、実は外国語として英語を話せるようになるためには日本語力を高めることも重要なのです。


そのため幼児・小学生の頃から徐々に今回ご紹介したツリーで考えをまとめて、日本語で話す訓練を積んでおけば、それが英語になった時にもスムーズに頭を切り替えることができると思います。


英語教育の早期化もあり、英語の授業はオールイングリッシュで!という流れが強まってきていますが、外国語としての英語力にはまず日本語力が欠かせません。


ぜひ、今回ご紹介したSTAR TALKのような論理的・批判的思考をお子様の日本語教育に役立てて頂ければとも思います。


今回ご紹介した先生

鮫島慶太(さめじま けいた)

東京都私立共立女子中学高等学校教諭
ESN英語教育総合研究会 関東地区副代表 CT教育副代表
TOEFLアライアンス総会やTerra Talkパネルディスカッションにも登壇

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