家庭学習が上手くいかない意外な「落とし穴」!子どもの自己管理能力を高めるには?

子どもの家庭学習がどうも上手くいかないんですよね…。


こんにちは。NEXT LEARNING Labsの主任研究員の岡田です。


5月7日になりました。ゴールデンウィークの連休中に緊急事態宣言も延長が発表され、それに伴い、各学校では5月末までの休校となりました。

保護者の方々にも、「さらにあと1ヶ月も家庭で勉強させなければ・・・」と不安に思われている方もおられるでしょう。

しんどいことでも、終わりが見えていたら耐えられますが、収束が見えないと心理的に負担感が増えますよね。

また、お子様だけの話ではなく、テレワークや休業等の対応により家族全員が家にいるケースもあり、そうなるとますます大変です。

私個人の話でも、元々が自宅勤務なので自分が外出自粛する分には構わないのですが、家族まで在宅になると、オンライン会議であっても、やはり気を使います。

職場・学校でそれぞれの場所で、それぞれの時間を過ごしていたものが、時間・場所を共有しながらそれぞれの仕事や勉強をするとなると、普段であれば考えにくい軋轢が生まれるものです。

男同士の喧嘩のイラスト「友達喧嘩・兄弟喧嘩」


そこで!四六時中、家族で一緒に過ごしているというご家庭を想定して、いくつかの「落とし穴」とその対応について一般論を述べたいと思います。

※お子さまにも個性があり、ご家庭も他とは異なる状況・環境がありますので、全てのご家庭に当てはまるとは限りません。予めご了承ください。

学校での勉強と家庭学習は全くの別物?
第一の落とし穴

「学校と同じ質と量の学習を実行しようとする」


これは仕事でも同様ですが、家庭で学校と同じことはできません。できない理由はいくつかあります。


・テレビや漫画など、家庭内には誘惑が多い。
・教室の管理者である教員が不在。(保護者もやることがあるし、専門家ではないので同じことはできない。)
・刺激を与え合う友達・仲間がいない。


という環境面での違いがあります。

特に、友達の存在は意外と大きいですね。ちょっとした雑談やコミュニケーションの中で社会的なスキルを身につけているというのも学校の存在意義です。

むしろ教科的な知識を獲得する場としてというよりも、社会的な生活体験をする場としての学校の方が本質的な気がします。

特に新しい内容を学習する際には、教師という支援者だけではなく、友達もふくめた社会的文脈が重要です。(専門用語では「発達の最近接領域」と言いますが)

周囲にそういうサポート役がいると、学習者は背伸びして学ぶことができるのです。

このように、違いがありすぎる以上、家庭学習では学校と同じことをさせようとしても成立しません。

また、学校の授業には、大きく区分すると三つのプロセスがあります。

授業の3つのプロセス

(1) インプット(教科書や教材、先生の解説から学ぶ)
(2) インテイク(実際にトレーニングしたり、何度も解き直したりして、知識・技術を身につける)
(3) アウトプット(実際に知識を使う。発表やテスト・アンケートなどでスキルを証明する)


今、オンライン授業や動画授業が流行っていますが、大抵は、(1)に関してだけです。ところが、低学年では(1)の割合は非常に小さいのです。

高校生くらいになったり、大人だと「座学」でも自分なりにこれまでの背景知識と新しい知識を結びつけて自ら学ぶことがあります。ですから、MOOC(大規模公開オンライン講座)などが成立します。

しかし、低学年の場合には、「学習の動機付け(今日はどんな勉強をして、どんなことができるようになるのかを示しながら、ワクワク感を演出する)」、「理解度に合わせた授業や解説」、「インテイク時の伴走(隣で見守っていてあげる)」、「理解度・定着度の確認」、「評価に応じたフィードバック」など、教員や保護者がいないと成立しにくいことが多々あります。

そもそも、低学年のうちは、学習内容というよりも、学習習慣を身につけることが重要で、それが身についてない時期に、自学自習を要求するのは難しいのです。

今回のコロナ禍で、学校の先生方がいかに大変な仕事を引き受けてくれていたのかがわかります。

保護者のマネジメント手法を子どもに押しつけると…?
第二の落とし穴

「学習習慣を身につけるために、保護者のマネジメント手法を流用する」


今、テレワークが急遽実施されたことで、自宅での業務を「管理」するツールが流行っているそうです。

例えば、ずっとZoomやSkypeで接続してチーム内メンバーの業務を監視するということや、PCのインカメラで集中度を測ったり、予定管理ソフトを分刻みで入力するように指示したり…。

しんどくないですか?

上司と部下の関係は、就業時間が終われば解放されます。ところが家庭内であればそうはいきません。

1日のうちの数時間という枠の中で、タイムマネジメントをすることは我慢できていても、それが終日、連日となると一気に心理的な負担が大きくなるのです。

思春期ならなおさら、軋轢が生じやすくなりますね。

なら、低学年のうちにタイムマネジメントをさせるために、予定を書き込んで家庭内の時間割を作るのは良策なのではないか!と思いませんか?

もちろん、家庭内時間割で勉強をしていく子たちもいます。しかし、そういう子ばかりであれば苦労はしないのです。おそらく、小学生の子のうち、それができるのは少数派です。

理由は2つあります。

一つは、小学生ではまだ大人と同じような意味での「時間感覚」が身についていないからです。

時間を忘れてしまった人のイラスト(女性)


ご家庭でこんな会話、よくありませんか?

30分だけゲームしてもいい?

いいよ…ってあれ? もう2時間もゲームしてるじゃない?


大人だって集中していると時間を忘れることがありますが、子どもの場合、それ以外にもタイムマネジメントの訓練を積んでいないという点で、時間感覚が曖昧なのです。

大人であれば、夕飯の支度に大体1時間くらい、とか、この分量のタスクなら自分のいつものペースなら2時間で終わる、とかという「見積もり」ができるのですね。

ところが、その見積もりができないのです。

だから、時間割を決めたし、時計も机に置いたから、その通りにできる・・・とはなりにくいのです。

二つ目は、やはり「学習の仲間がいない」からですね。

迷子の男の子のイラスト


学校では、時間割だけではなく、先生がいて、仲間がいます。つまり集団行動が前提です。周囲を見渡せば、タイムマネジメントの軸になる友達や行動が溢れています。

ところが家庭だと自分しかいませんよね。

保護者の方が声掛けして、「10時になったから、算数の時間ね」と言うと、柔らかい表現で「指示」であり、きつい表現だと「命令」になってしまします。

ところが学校だと、大抵は隣や周囲にいる友達が「そろそろ算数の時間だよ」とか「あ、先生が来た!」みたいに勝手にアラートしてくれます。

これは指示でも命令でもない「情報」なので心理的なプレッシャーがほとんどないのです。

こういった社会的な行動の中で、徐々に自分で「気づく」ということが育成されていきます。

この育成をしようと、保護者が頑張れば頑張るほど、お子さんにはプレッシャーになったり、自分で気づうという機会を失うことにもなります。

こういった問題を解決するには?

では、実際に家庭ではどんな点に注意して学習を進めればいいのでしょうか。

ヒントは2つあると思います。

問題解決のヒント

(1)お子さんの生活で「軸」になる行動を見つけること
(2)段階的にマネジメントを任せること


まず、保護者の方にお尋ねします。好きなテレビ番組はありますか?楽しみにしている番組です。

私が学生時代には、『火曜サスペンス劇場』という毎週火曜日21時から放送していた枠がありました。それを家族で見ていました。

そういう「決まった枠」というのがあると、その枠の「前後」になんらかの行動を紐付けしやすくなります。

例えば、『ドラえもんが始まる前に宿題を終える』などです。この場合には、「ドラえもん」というテレビ番組が行動の「軸」になります。

テレビを離れて見る子供のイラスト(男の子)


昼食やおやつ、夕食の時刻が明確に決まっているご家庭なら、その「前後」を使うのもいいでしょう。

お子さんがまだ「何時何分」ということに注意がいかなくても、その軸の前後は意識しやすいものです。まず、お子様にとってわかりやすい「軸」を見つけるて、それを目立たせることから始めてみましょう。

次に、そのような取り決めは「段階的に」行うということです。

一念発起で「よし、やるぞ!」と気合いを入れすぎると、最初から細かいことまで決めてしまいがちです。一旦ルール化すると、それを逸脱した場合にはどうしても「叱る」行為が生じがちになります。それではしんどいですよね。

年齢によって多少異なりますが、まずは1日に軸になるものを3つくらい決めます。(昼食、夕食、好きなテレビ番組、で3つになります。)

その前後で、取り組むことを決めていきましょう。

その際も注意点は、「いきなり大量に取り組むことを決めてしまわない」ということです。ちょっと頑張ればできるくらいの量がいいでしょう。

また、取り組むことは具体的に決めましょう。ページ数や、何回漢字を書く、などです。

そして実際にお子様が取り組む際にも、注意点があります。

例えば「昼食後、30分、算数のドリルを○ページ分、解く」という約束をしたとします。この場合、○ページを終えたら、30分経っていなくても好きなことをさせてあげるべきです。

30分という約束をしたからと言って、「じゃ、予定にはないけれどあと3ページ、追加しましょう」と言ってしまうと、お子さんは「だったらダラダラと30分勉強したほうがよかった」と思うようになり、集中しなくなります。

せっかく集中して短時間で終わらせたのであれば、それを認めてあげることです。その代わり、早いのはいいのですが×がたくさんついたり、明らかに手抜きしているようであれば、ページ数を減らしても、着実に解けるようになることを基準にしてあげてください。

要は「集中して前向きに学ぶ」状態にしてあげたいのです。

以上、家庭での取り組みのヒントになれば幸いです。

manaviでは保護者の方々からのご質問をお待ちしております。