【第2回】電力システム工学の山口順之先生に訊く「大学の学びの醍醐味」

山口先生の学生時代のお話を伺っていきます!

目次





こんにちは。manavi編集部です。

今回も東京理科大学 工学部電気工学科 准教授の山口順之先生にお話を伺っていきます。

前回のインタビューでは、先生のご専門の 「電力システム工学」 の概要や、エネルギー問題についてお話しいただきました。

2回目の今回は、先生が現在の研究テーマを選んだ理由や、役に立った学びなど先生の「学生時代」をテーマにお話しを伺っていきます。

それでは山口先生、よろしくお願いいたします。

電力システム工学を選んだきっかけとは?

近年では「エネルギー問題」を小中高の教育でも積極的に取り上げるようになり、理科や社会の教科書での記述や、受験問題での扱いも増えてきました。

エネルギー問題に関連し、研究の需要も日々高まっている「電力システム工学」ですが、山口先生が研究するに至った経緯についてお聞きしたいと思います。

どうして、今の研究テーマを選ばれたのですか?

高校生のころから、電気は大きなエネルギーを生み出し、運び、取り出すことができるのに、目で見ることも手で触ることもできないところに面白さを感じていました

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大学4年生になって、電力供給は経済面でも環境面でも社会全体に大きな影響を及ぼすもので、一人では勉強しきれないものだと思い、電力システムを対象とする研究室を選びました。

電力システムは、人類が作り出した最大の電気回路です。皆さんのそばにある壁についているコンセントは、実は電気的に日本中の発電所につながっています。面白いと思いました。

あと、恩師が真面目に授業をする方だったので、その点も研究室選びの大きな要因でした。

ところで先ほど、「エネルギーを生み出し」と言いましたが、本当は、エネルギーは変換するもので、無から湧いてくるものではありませんので、気を付けましょう。

もう一つ、電気が触れないと言いましたが、静電気なら触れられますね。パチッときます。でも、コンセントは手で触ると危ないのでやめましょう。


高校までの理科で感じていた電気への興味が、大学での学びによって「電力システム」の方面へ深まっていったのですね!

一方で、小学校のころは実験が楽しくて大好きだったのに、「日常とのつながりを見出せない」「目に見えないからイメージしづらい」といった理由で、「中学生・高校生になるにつれて理科が苦手になる」という話をよく聞きます。

山口先生のように、目に見えない理科の現象も「面白い」と思い、興味を持ち続けられる感性を大事にしたいです。

また、多くの大学で3~4年生の時期は研究室に配属され、教授の下で研究を行います。

研究生活の充実度は、配属先の先生の人柄や、指導の受けやすさなどによっても変わってきそうですが、「真面目に授業をする方」の研究室を選ぶあたり、山口先生ご自身の真面目さも伺えます。

大学生活を変えた「研究室配属」

続いての質問は、先生の学生時代についてです。どのような生徒だったのでしょうか。

どんな学生時代を過ごされましたか?

お恥ずかしながら、大学に入ったばかりのころは一人暮らしに不慣れで、態度も成績も悪い、だらしのない学生でした。

しかし、4年生になって研究室に配属されてからは、大学に居場所ができて楽しかったですね。

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初めて自分のパソコンを買い、研究のために計算プログラムを書くようになりました。電気回路の電流や電圧を計算するプログラムでした。

プログラムは自分がちゃんと理解していないと全然動きませんが、丁寧にじっくり考えるとちゃんと動くようになります。計算結果をグラフにプロットしたときは感激しました。

研究用のプログラムを実行させて、終わったら自分に電子メールを出すように設定しておいて、悪友たちと飲みに行ったりもしていましたね。

授業に出て理解していたつもりだったのは単なる思い込みでしたね。自分の手でプログラムを書き動かしてみて初めて、学んだことが身につくということを実感したように思います。

今でも、研究室で卒論に取り組むことこそが、大学の学びの醍醐味だと思っています。



研究室配属が、それまでの学びを活かすきっかけになったのですね!

今は専門性の高い研究に従事し、ご自身の研究室を持つ山口先生も、はじめから優秀な成績を収めていたわけではない、というのは意外でした。

また、「自分の手でプログラムを書き動かしてみて初めて、学んだことが身につくということを実感した」という言葉にもあったように、アウトプットがあって初めて学びは活きてくるものです。

研究室に所属することで、同じ専門を持つ仲間や先輩とディスカッションを行ったり、卒業論文の執筆を行ったりするなど、アウトプットの機会も生まれます。「研究室で卒論に取り組むことこそが、大学の学びの醍醐味」という先生のお話も納得ですね。

普段の学びに「根性」は必要ない!?

研究室への配属と、そこでの学びをひとつのきっかけに、「電力システム工学の研究者」になった山口先生ですが、現在の研究を支える「学生時代の学び」についてお聞きしましょう。

今役に立っている、学生時代の学びはありますか?

自分が納得いくまで時間をかけて考えることが役に立っていると思います。

例えば、テキストにわからない数式が出てきたら、例として値を代入して考えてみると腑に落ちるはよくあります。自分の言葉で説明できるようになれば、学んだことが応用できるようになってくると思います。

また、無駄な労力から解放されるように、時間や手間を惜しまないことです。

パソコンを触るなら、ブラインドタッチはそれなりにできるようにする、キーボードのショートカットキーを10個ぐらい覚える、といったようなことから、研究の条件や検討の過程は書き残す、図を書いておくということまであります。

他にも、繰り返しの計算や作業のために、計算機プログラムを結構書きました。初めは面倒ですが、やっておくと後から楽になります。

根性で勉強することも良いのかもしれませんが、どうしても必要という場面まで根性は温存しておき、普段は根性に頼らず、自然に勉強するとよいと思います。

いざというときに頑張れるように、普段からバックアップや作業効率の向上を心掛けたいですね!

研究活動に限らず、普段の学びの場面にも役立つアドバイスを頂戴しました。

「分からないから嫌い」になってしまいがちな理科ですが、山口先生が、高校生のときから電気を「面白い」と思い続けることができたのも「自分が納得いくまで時間をかけて考える」という意識があったからこそなのかもしれませんね。

また、先のことまで考えて、効率的になるように努力を惜しまない姿勢は、未来の世界を見据えた電力の使い方・効率を研究する山口先生らしいお答えだと思います。

学びのヒント

山口先生、今回もありがとうございました。

今回のインタビューから、以下のような学びのヒントが得られたと思います。

ヒント

・学んだことを自分の言葉で説明しよう

授業に出て理解していたつもりだったのは単なる思い込みでした」「自分の言葉で説明できるようになれば、学んだことが応用できるようになってくる 」というお話がありました。ご家庭でも普段から、「振り返り」や「説明」といったお子様のアウトプットの機会を作りたいですね。

例えば「今日は学校でどんな勉強をしたの?」と尋ねることで、一日を振り返り、お子様自身の言葉に変換して説明する機会になります。

他にも、「日記」の習慣をつけて、文章で振り返りを行うのも良いと思います。

manaviおすすめの本

今回の記事に関連したおすすめの書籍をご紹介させていただきます。

関連書籍

科学のなぜ?新事典

★取り上げるテーマを,地球・宇宙のふしぎ,植物のふしぎ,動物のふしぎ,私たちのからだのふしぎ,身近なふしぎの5つの分野に分けて,いろいろな「なぜ?」を紹介しています。

★カラーの写真・イラストをふんだんに使って,小学生が理解しやすいように本文をまとめています。

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お子様が「なぜ?」と思ったときに、手元ですぐに調べられる一冊、『 科学のなぜ?新事典 』をご紹介させていただきました。

小学低学年でも理解できるように配慮し、分かりやすい言葉で説明されている書籍なので「書いてあることを、お父さん・お母さんにも自分の言葉で説明してみる」という活動にも繋げやすいと思います。

また、本書は「カラーの写真・イラストが多い」というのが特徴です。

言葉では説明しづらいことも、新事典の写真・イラストを模写することで伝えやすくなる…そんな経験から、先生のお話しにもあった「図を書いておく」ことの重要性を学んでくれたら嬉しいですね。

今回の賢者

山口 順之

東京理科大学 工学部電気工学科 准教授
北海道大学大学院工学研究科 博士後期課程修了(博士(工学))。
2002年 電力中央研究所 研究員。2008年より1年間、米国ローレンスバークレー国立研究所 客員研究員。2015年 東京理科大学 講師、2019年より現職。

専門は、電力システム工学。2021年度 経済産業省「未来の教室」STEAMライブラリー東京理科大学コンテンツ統括責任者。経済産業省 総合資源エネルギー調査会 系統ワーキンググループ 委員、電力・ガス取引監視等委員会 制度設計専門会合 専門委員,技術雑誌「スマートグリッド」編集委員長等。

著書(分担執筆)「電気事業の仕組みを読み解く」「国際標準に基づくエネルギーサービス構築の必須知識」「スマートコミュニティのためのエネルギーマネジメント」「配電システムネットワーク工学」。

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