毎日の英語授業にAIを!festa!が生み出すアクティブな学び

隣の生徒とヘッドフォンを交換して、何かを聞いていますね。一体何をしているところなんでしょうか?

■ はじめに


皆さん、こんにちは。増進堂・受験研究社、編集部の永峰と申します。


四天王寺高等学校・中学校(大阪市天王寺区)にて、AIを使った英語4技能学習支援ツール「トレパ」(デジタル・ナレッジ)に検定教科書『FLEX English CommunicationⅠ』をバンドルした新サービス「festa!」を使った授業を実施しましたという内容のプレスリリースを先日、発表させていただきました。


festa!ロゴ画像

プレスリリースの詳細は以下のリンクからご確認ください。



今回のTOPICSでは、実施した授業のより詳細なレポートを皆さんにお伝えできればと考えています。


弊社の新サービスである「festa!」を活用した授業を四天王寺高等学校・中学校にて授業の中でご使用いただいたのは、今回が初めてとなります。


以前に「festa!」を課外活動の中で活用していただきまして、その際に書いたレポートは以下のリンクからお読みいただけます。



前回は、課外学習だったということもあり、生徒に「festa!」を使って個別学習をしていただきました。


その際は、生徒が黙々とAIに向かって話し続け、自分の発音の精度を向上させようとする姿が見られました。


一方で、今回は毎日の一斉授業の中で「festa!」を取り入れるという方向性で、授業を構成していただき、2人の先生に実際に授業を行っていただきました。


授業を間近で見せていただく中で、主に2つの点で「festa!」の有用性を確認することができましたので、ぜひ皆さんにお伝えできたらと思います。

■「festa!」が一斉授業で活きるワケ


『FLEX English CommunicationⅠ』版の「festa!」には、音読とリテリングという2つの柱があります。


前者は教科書の本文を音読するというもので、後者は教科書の内容をインプットし、それを自分の言葉で言い換えてアウトプットするというものです。


そこで「festa!」には、生徒が自分の学習到達度によって、難易度の異なるタスクに取り組めるようにするという工夫を施させていただきました。


近年「ユニバーサルデザインの授業づくり」という考え方が注目されていますが、その中の項目の1つに「個人差に応じて評価の内容、方法、基準等を工夫し、全ての児童生徒が達成感や満足感を味わえるように」というものがあります。


「festa!」は音読を4パターン、リテリングを2パターンにレベリングすることで、一斉授業の中で生徒が同じタスクに、異なるレベルで参加できるように意識したのです。


今回の実証授業の中でも先生の指示の中で「自分の自信やレベルに応じて取り組む音読タスクを選んでいいよ。」というものがありました。


これにより英語が得意な生徒はより難しい音読タスク(文法事項や新出単語が穴抜きにされている)に、苦手な生徒は基本の音読タスクに取り組み、それぞれに達成感を感じられるようになっていたと思います。


また、今回の授業の中でこんな一幕がありました。


「festa!」では、タブレットに向かって英語を発話すると、その音声が録音され、それに対する評価が表示されます。


トレパ(festa!)による評価画面イメージ

それを生かして、先生が他の生徒の発話音声の録音とその評価が残っている状態の端末を隣の生徒と交換して確認するように指示を出したのです。


もちろん「festa!」はAIが発音を評価してくれるので、生徒が黙々と個別に音読練習に取り組む上でも有効なサービスです。ネイティブのお手本音声と自分の発音の差分を埋めていくという形で発音の向上が見込めます。


しかし、一斉授業の中で活用することで、このように自分・他人の発音とそれに紐づいた評価を共有するという機会が生まれます。


他人の発音を聞いて、それに対してAIがどんな評価を下しているのかを客観的に見ることで、生徒たちは自分の発音の特徴や課題をより明確に意識できるようになります。


こんな風に読んだらAIは高評価してくれるんだ!

ここはAIに低評価をつけられていて、確かに録音された音声を聞いても不十分に思えるなぁ・・・。


こういった他者との比較から「気づき」が生まれることで、生徒はより明確な課題意識をもって「festa!」に取り組めるようになると思われます。


その点で、一斉授業で活用するメリットも非常に大きいと感じました。

■ 生徒同士が教え合う流れが生まれる


授業内にペアで音読をお互いに聞かせ合って、それに対してコメントをするという時間を設けられていることがしばしばあります。


しかし、日本人の気質的に、ペアの生徒の発音が良くないと思っても、あまりストレートに伝えられない傾向があると思うのです。


それは、自分の英語の発音に自信を持っていない生徒が多いからであり、自分の主観的な意見で発音にダメ出しをして険悪な空気にならないだろうか・・・という危惧もあるからかもしれません。


そこでAIの客観的な評価というものがペアワークに介在することで、生徒はより客観的な根拠に基づいて、アドバイスができるようになりますよね。


ただ、ここで1つ問題が生じます。


皆さんは、AIというものをどれくらい信用していますか?


そうなんです。今回授業を実施していただいた教室内にも実は「AIの評価って本当に信用できるのか・・・?」という雰囲気は確かに存在していました。


そこで先生が1つ面白い指導方法を披露してくださいました。


一定時間、生徒にAIに発音を評価してもらった後で、発音の信頼度が高かった生徒(今回の授業内では70%以上の信頼度を高評価として扱った)に他の生徒の前で読んでもらうという時間を設けたのです。


じゃあ○○さん、みんなに発音を聞かせてあげてください。

He wanted to teach children to think freely and thought that ……

(すごい!やっぱりこれくらい読めたら、AIはちゃんと評価してくれるんだ。)


この生徒の発音は、私の耳で聞いても抜群に綺麗でした。


生徒たちも「彼女が70%を超えているのは納得だ。」という様子でしたね。


これにより、生徒たちの主観的な「発音が上手」とAIの高評価が一致し、教室内で「festa!」の下す評価への信頼が高まったのです。


この時間がきっかけとなり、生徒たちは「festa!」の評価を参考にしつつ、積極的にアドバイスし合うようになりました。


「アクティブ・ラーニング」という言葉が注目されるようになり、その手法としてペアワークやグループワークが挙げられます。


しかし、ただペアワークをしているだけでは、本当に「アクティブ」とは言えないのではないかと思います。


ペアになって音読を聞かせ合い、お互いにアドバイスし合うというタスクは、確かに表面的に見れば「アクティブ・ラーニング」なのかもしれません。


ただ、その際に生徒たちが「良いと思うよ~。」「もうちょっと頑張って~。」といった感想程度のやり取りをしているだけであったとしたら、それは本当に「アクティブ」な学びなのでしょうか。


その点で、音読を聞かせ合うペアワークであったとしても、そこに「festa!」が介在することで、お互いにどうすれば発音の信頼度を高められるかを考え合うという「アクティブ」な時間が生まれます。


今回の授業の中で、先生が「AIなしでアドバイスし合う場面」と「AIありでアドバイスし合う場面」を使い分けてコントラストを際立たせることを意識してくださいましたが、確かに後者の方がより活発なペアワークになっていました。


加えて、発音の向上という観点でも、有効性が見られました。


授業の序盤に信頼度70%超えの綺麗な発音を披露してくれた生徒とペアを組んでいた生徒は、それほど高い信頼度を出すことができていませんでした。


しかし、2人がペアで指摘し合いながら、音読の練習を続けた結果、授業の終盤には、その生徒も信頼度70%超えを記録するようになっていました。


まさに「アクティブ」な学びが、生徒の発音向上を生んだ瞬間を見たような気がしました。

■ おわりに


今回は四天王寺高等学校・中学校にご協力いただき、毎日の一斉授業の中でAIを使った教材である「festa!」がどんな効果を発揮するのかを検証させていただきました。


音読のタスクにフォーカスした授業になりましたが、一斉授業の中で生徒1人1人の音読を丁寧に指導していくことは難しいですし、生徒同士でアドバイスとなってもあまり有意な時間にはならないこともあります。


その点で、「festa!」の存在は生徒にとっても大きな助けになるサービスなのではないかと、今回の授業の中で実感しました。


音読をしてAIが評価が表示され、その評価を上げるために自分なりの課題を設定し、その改善に取り組む。これも立派な主体的学びです。


さらに、一斉授業の中でペアワークにAIによる評価を組み合わせることで、他者との比較という視点も加わり、より「アクティブ」な学びが生まれます。


AIはもちろん何でもできるわけではありません。しかし、普段の何気ない音読・リテリング活動に取り入れることで、少しだけその活動の「質」が向上させることができます。


外部の検定試験が入試に導入されようとしていますが、そこでは音読や絵を見てのストーリーテーリングの問題が登場します。


そういう問題に対応するための力を養う上で、1つ「festa!」は有効なサービスと言えます。


増進堂・受験研究社は、今後もAIと「学び」を結びつけられるようこれからも試行錯誤を続けていきます。


また皆さまにお伝えできるようなニュースがありましたら、随時発信させていただきます。