苦手にどうアプローチする?正頭先生に訊いてみた!

目次






こんにちは。manavi編集部です。

2021年夏に行われた保護者向けオンラインセミナーの内容をお届けしています。

前回の記事ではセミナーのテーマでもある「身近な環境を家庭の学びにツナグ方法」を考えるにあたって、これからの教育の在り方、子どもの学びに対する大人の接し方などの解説をまとめております。

第2回では、実際に保護者の皆様から寄せられた質問の中から「○○が苦手!」「○○を身につけたい!」というお子様の話題をピックアップしてご紹介いたします。

セミナー内での正頭先生のコメントを紹介しながら、保護者はどのように環境づくりを行っていけばよいのかを考えていきます。

是非最後までご覧ください!

自分から勉強するのが苦手

家庭学習も学校の勉強(宿題)にプラスして必要だと考えています。

通信教育の教材やドリル・プリントなどを習慣づけもかねてするように子どもに言っていますが、なかなか取り掛からず、間違い直しも再三言わないとしません。

本人が習慣としてさっさと取り掛かるようにするにはどうすればいいのでしょうか?

人類が誕生し、学校教育が誕生して以来、同じように悩まれている方はとても多いはずです。ご質問はまさに「答えがない問題」なのだと思います。

まずは、イライラしないことが重要だと思います。自発的に取り組めなくても「そんなもんでしょ。」ということですね。

とはいえ、保護者のお母さん、お父さんがお悩みだということで、自分だったらどうするかということをお話します。

子どもを動かすために必要なのはストーリー、物語だと思っています

続きはコチラ

ご質問の文面を見る限り、ネットや書店で保護者の方がいいなと思った教材を購入して、それに取り組んでいるようです。私ならドリルを買うなら、子どもと一緒に本屋に行きざっと本棚を見て「どれだったらできそうかな?」と問いかけて子どもに選ばせると思います。


このドリル選びのとき、保護者からの介入は一切なしにしておきます。「それよりもこっちの方がいいんじゃない?」などとは言わずに、「自由に選んでごらん」とだけ言って、選ばれたものを一冊買う。

そして本屋の帰りに晩ご飯を食べたりして、「これは一緒に晩ご飯を食べたときの、あそこで買った問題集」のように、その問題集にちょっとしたエピソードをつけてあげるといいと思います。

私の友人のエピソードで印象的だったことがあります。その友人の娘さんは野菜が苦手で、全然食べられなかったのです。ところが友人と一緒にカレーを作って、そこにニンジンを入れたら、食べられたそうです。

つまり「お父さん・お母さんと一緒に」「自分で作った」というストーリーがあることによって、目の前のニンジンへの印象が「苦手・食べられない」から「今日のニンジンは食べたい」に変わったという一つの事例だと思います。

問題集に関しても、与えられたものよりも自分で選んだものというストーリーがある方が取り組みへのモチベーションは上がると思います。そこへさらに「おじいちゃん、おばあちゃんと一緒に買い物に行った。」とか「そのとき晩ごはんにおいしいエビフライを食べた。」とか、そんなエピソードがついてくると、モチベーションもより強力になってくるでしょう。

まずは一緒に問題集を選んでみるとか、一緒にやってみるとか、何かしらその問題集に特別な思い出やエピソードを作ってあげると、自発的な取り組みを促すきっかけとして良いと思います。

言語分野の勉強が苦手

言語が苦手な子どもです。いわゆる動詞とbe動詞の日本語のニュアンスも理解できていないのですが、国語だけでなく英語もどうアプローチしたらよいでしょうか?

なるほど。

僕は英語の先生なので、なんとなく分かります。be動詞のニュアンスはとても難しいですね。中1や今では小学校でbe動詞の学習をするものの、ニュアンスを理解できるようになるのは大学生とか、高校生後半ぐらいになってからのレベルだと思っています。なぜなら、be動詞の日本語訳はないからです。

ですので、「動詞とbe動詞の日本語のニュアンス」に関しては理解できなくても今の段階では問題無いとお考え下さい。

続きはコチラ

「英語の勉強をどのように進めればよいか」ということに関しては、英語も国語も基本的には道具だから何かをするために英語が必要だとか、英語を使えたら便利だという状況をつくってあげることが一番良いと思っています。

英語の勉強をさせたければ「他の何か興味がある事に関連付けて興味を持たせましょう。」ということです。

例えば海外のアイドルグループに興味を持ったら、「よし英語版で聞いてみようか」とかですね。ちょっと遠回りなやり方かもしれませんが、お子様が英語を嫌いだ、苦手だ、と言っているのであれば、むしろ遠回りのアプローチの方がいいんじゃないかと思います。

読書は好きだけど、漢字練習が苦手

読書が好きなため、読書を通じて、漢字の読みは自然に覚えています。一方、何度も同じ字を書くのが嫌で、漢字の書きはかなり苦手(覚えようとしない)です。何かいい方法はないでしょうか?

大人でも何度も同じ字を書くのが好きな人っていますかね? ほぼいないんじゃないでしょうか。私は嫌いです(笑)

子どもが漢字練習を嫌だと言っているのであれば、あんまり無理させないほうがいいかと思います。むしろ本が好きなのであれば、本をたくさん読ませてあげることの方が重要だと思います。

続きはコチラ

写経のように書くことに意味があると考える人はいるんでしょうけども、私はあまり好きじゃないです。私も時々漢字が書けないことがありますが「じゃあ頑張って練習して覚えよう。」という気にはならないです。子どもが同じように考えたとしても、当然のことではないでしょうか。

時間が解決してくれることはあると思うので、読書が好きで、読書を通じて漢字の読みを自然に覚えているのであれば、ついでに書きもと思わずに、読書好きの気持ちを伸ばしていく方がいいと思います。

漢字を一生懸命書いて、一生懸命覚えて得をする瞬間は、漢字テストの時ぐらいです。他にもなくはないですが、あんまり多くないかなと個人的には思います。

子どもが漢字テストでいい点とりたいなと思うようになったら、漢字の勉強をするようになると思いますし、そうでなければ、漢字の勉強に意味を持たせるのは結構難しかったりします。

解決の方法を無理に探そうとしすぎないで、もう少し今は見守ってあげてもいいのではないでしょうか。

本は好きだけど、読解を強くしたい

中学受験に向けて勉強中ですが、読解力を強くするにはどうしたらよいですか?ちなみに本は大好きです。

読解力の定義にもよると思いますが、本が好きなことと、読解力が高まるというのは全く別物だと思ってもらった方がいいかと思います。

本が好きで国語の能力が高い子もいれば、本が大好きで国語の能力が低い子もいっぱい見てきました。なので、そこに相関関係はない、となんとなく思っています。

僕がやらせるなら文章要約みたいなことはさせるかなと思います。本が好きで、いっぱい読んでいるのなら、その本を読み終わった後にそれがどんな内容だったのかをレポートするなど。

口頭でもいいですし、文章を書いてもいいですし、作文でもいいですけども、それがどういう内容だったのか「ちゃんと私に伝わるように教えて?」というような言い方で促すイメージです。

ただ、受験用の読解力ということであれば、問題集をひたすらやっていくっていうのは、実は意外と効果的だなと思ったりするので、そんなやり方でもいいのかなと思います。

ノートをとるのが苦手

小学校3年生の男の子です。学校で全くノートを書きません。たまに促されて書くくらいです。テストでの点数はほぼ満点を取れているので、担任の先生は「ノートにこだわらず、発表などで表現をしてくれているのでいい」とおっしゃってくれています。

このままで本当に良いのでしょうか。

子どもに聞くと、書くことが苦手なのではなく、写すだけなのが嫌だ。自分の考えを書くのはいいと言っています。算数のノートや自学ノートには週一回程度自分の考えを書けるようになってきました。宿題は漢字も計算もすべてしています。

いやいや、もう何も問題ないじゃないですか。優等生すぎて素晴らしいなあと思います。

お子様が実践されている、授業ノートに自分の考えをまとめて書く・図式化する・何か絵にするという活動は、大学生ぐらいでは必須になるレベルだと思います。それを小学校3年生からできているというのは素晴らしいと思います。

もしもお母さんが気にされているのが、学校の評価だけであるならば、育てたい子どもの能力と学校の評価が若干違ったというだけの話です。

学校の評価と子どもの能力のどちらを気にすべきかというとき、絶対とるべきは子どもの能力だと思うので、僕はその考えを尊重して良いと思います。

実際担任の先生も、それでいいよと言ってくださっているようですので、担任の先生に理解があるのであればそれでいいと思います。指定されたようにノートが取れなかったことで、多少評価が下がるということがあったとしても、自分なりのノートのまとめ方をしていることの方が、将来的には価値があると思います。

つまり、目の前の学校評価に惑わされなくてもいいのです。とても高い能力を持っておられるお子さんだと思いますので、その調子!という感じで応援してあげていいんじゃないでしょうか。

決められたことをするのが苦手

小学校4年生の男の子です。毎日決められた事がどうしても抜けてしまうようです。ちゃんと毎日決められたことができるように、この夏休みに家族で取り組みたいと思います。例えば、植物を育てるために決まった時刻に水をやるとか、お手伝いさせるなどを考えています。先生のオススメはありますか?

時間を守らない子どもはたくさんいますが、時間を守らない大人はあまりいないですよね。

なぜ子どもは時間を守らなくて、大人は時間を守るのかというと、精神的な成長や教育ということではなくて、誰かに迷惑がかかるということが見えた瞬間に私たちは時間を守るわけです。

決まり事をする際には、想像するというステップを越えてから毎日のルーティンとしてステップを上げていけばいいと思います。 今の段階では、裏にある人の顔が想像できるような仕掛けがあるといいかなと感じました。

続きはコチラ

例えばすごく偉い人と会うとなったら、大人は絶対に時間を守ろうとします。でも、大人でもどうでもいい約束なら時間を守らないのです。

例えば、10時にひとりで遊園地に行こうと思ったとき、何があっても10時には行かなくてはいけないと考えるでしょうか。まあ大体10時前後でいいよねといった雰囲気ではないでしょうか。でも、偉い人と10時に会うとなったら、5分前10分前には着くようにするでしょう。

これをやらなかったら、あの子に迷惑かけちゃうかもしれない。あるいはこれをやったらあの子が喜んでくれるかもしれないというふうにして、その後ろにある人の顔が見えた瞬間に、はじめて決まりを守ろう、頑張っていこうと思えたりするものです。

もしかしたらこの4年生の男の子が約束を守れないというのは、そこを守ったことによって、あるいは守らなかったことによって、誰かがどんな表情をするのかということが見えていないのかもしれません。もしくは、相手の表情がないことばかりを決まり事としてやっているのかもしれません。

例えば、家庭学習のプリントをしっかりやりましょうと決めたときに、それをやらないことで誰かが困るでしょうか?あるいは、それをやることで誰かが喜ぶでしょうか?多くの場合、プリント学習の成果は自分に返ってくるし、やらなかったことも自分に返って来ます。

自分に返ってくるだけだと思ってしまうと、子どもはやらなくなったりします。なぜなら、僕が我慢すればいいんだろう、という発想になるからです。

大人がそうであるように、誰かが喜ぶ、誰かが悲しむということが見えてはじめて人は頑張ろうと思って動き始めるんですよね。だから、「あなたのために言ってるのよ。」という言葉を、保護者や先生はついつい子どもに言いがちですが、それはあまり良くない言葉だと私は思っています。

「じゃあ僕が損すればいいんでしょ?」「僕が諦めたらいいんでしょ?」「そんなぐらい余裕で諦めるよ。」「そんなぐらい余裕で損するよ」という発想になってしまうのです。

これが子どもの正論なので、その裏にある大人の表情が見えるような仕掛けをするといいと思います。例えば、田舎のおじいちゃん、おばあちゃんに手紙書いてみようというとき、届いたときの喜ぶ表情を想像しながら書こう、という取り組みになります。

植物を育てるのもとてもいいと思います。これ、水をちゃんとやっていると、どんな風に植物が育つのかな?水やらなかったら植物が枯れちゃうのかなという想像ができ、しかも結果がはっきり見えてきます。

正頭先生ありがとうございました。

次回の記事では、保護者がとるべきアクションや、引き続き悩み相談の話題をお伝えする予定です。こちらも是非ご一読ください。

今後も受験研究社では、ご家庭での学びに役立つ情報の発信、学びにまつわる疑問や悩みを考えるためのオンラインセミナーを開催予定です。是非チェックしてみてください!

⇨受験研究社のオンラインセミナーについてはこちら

最後に、今回のセミナーでも話題にあがった正頭先生の著書を紹介させていただきます。

関連書籍

世界トップティーチャーが教える 子どもの未来が変わる英語の教科書

詳しくはこちらから

連載記事一覧