同じ本なのに何かが違う?「違い」の背後に隠された〈動機〉を探れ!/manavi探偵団 Case. 4.0

目次




Case. 4.0 同じ本なのに何かが違う?

英単語集に隠された謎を解決したmanavi探偵団

謎を解く喜びを知ったポワ太ミカンは,次なる謎を求めて学校の外へと飛び出していた。

そんなある日,学校の近所の図書館で,2人は奇妙な会話を耳にする。

お姉ちゃんからこの『小学 高学年 自由自在 社会』をもらったんだ!

あ!僕も最近同じ本買ったよ!

あれ?よく見ると,同じページなのに,微妙に内容が違ってない?

確かに,同じ本なのになんで?

その会話を聞いたポワ太は,2人のもとに駆け寄る。

ポワ太!図書館で走らないの!

君たち!その本,この名探偵ポワ太にも見せてくれないか?

図書館で大きな声出さないでよ!2人も怖がっているし…。

突然ごめんね。私たち,アガサ中学校の中学生で,manavi探偵団として活動しているの。

それで,2人の会話の内容が気になって。もしよかったら,私たちにもその本の話を聞かせてくれないかな?

これは2冊とも同じ『小学 高学年 自由自在 社会』っていう本なんですけど,私のとBくんのでは微妙に内容が違うんです。

パッと見た感じでは,全く同じに見えるね。

表紙の写真は少し違うけれど。

名探偵の目はごまかせないぞ!

よく見ると,ここの資料が微妙に違うんだ!

ほんとだ。

こっちは2019年版の「日本のすがた」から引用した資料なのに,こっちは2023年版のものになってる。

そうなんです。

もしかしたら,他にも違うところがあるかもしれません。

2冊の本をもう少し比べてみよう。

・・・

確かにこの2冊を比べると,他にも違うところがたくさんあったね。

しかも,パッと見では気がつかないようなところばかりだ。

これは何かある。名探偵の勘がそう言っているぞ!

この本を出版しているのは…受験研究社

あれ,何か聞き覚えがあるような…。

この馬のマーク!忘れもしない。

例の英単語集を作った会社だ!

『英単語2100』に関する謎はこちら

そうだった!これはまた何か秘密がありそうだね…。

そうとわかれば,今すぐに行って,を解き明かそう!

やっぱり,そうなるよね…。

……でも,ちょっとワクワクしてきた。

ポワ太ミカンは,この謎を解くべく,再び受験研究社本社へと向かうのだった…。

Case. 4.3 統計資料変更事件

manavi探偵団が挑む次なる「」。

それは,近所の小学生たちが持っていた,同じ名前なのに内容が異なる2冊の本に関するものである。

本の名前は『小学 高学年 自由自在 社会』

その違いには何か理由があると考えたポワ太ミカン

浮かび上がる馬のマーク。受験研究社という社名。
2人は,再びこの本を作った人のもとへと向かうのだった。

彼らは,無事に「」を解き明かすことができるのか……

僕は名探偵だ。この本の「謎」を解きに来た!

ポワ太くん,また来たんだね!

モナミ。『英単語2100』使わせてもらってます。

受付の人と知り合いになってる!どういうこと?

じゃなくて,すみません,あの私たちこの『小学 高学年 自由自在 社会』という本を作った人とお話をしたくて…。

私のことかな?

「犯人」はあなただ!証拠は揃っているぞ!

だから,いきなり失礼でしょ!

あの,あなたがこの本を作った人ですか?もしそうなら,少しお話を聞かせてもらえないでしょうか?

名探偵からの挑戦状だ!

いいでしょう。その挑戦受けて立ちます。

近所の公園で小学生2人が,あなたが作った『小学 高学年 自由自在 社会』を持っていた。

でも,おかしい。2人は同じ本を持っているはずなのに,微妙に内容が違うんだ。

そうなんです。

1人が持っている本には「2019年」の資料が載っているのに,もう1人が持っている本には「2023年」の資料が載っていたんです。これは変ですよね?

変じゃないよ。それをやったの私だし。

えっ?

自白したな!やっぱり,「犯人」はあなただ!

確かに「犯人」は私だよ。

でも,名探偵ならそのトリックまで暴いてこそじゃない?

ボン。確かにその通りだ。

でもちょっと難しいだろうからヒントをあげるね。

注目して欲しいのは「2冊の本がそれぞれいつ売られていたものか?」だよ。

同じ本だから売られていた時期も同じじゃないのかな?

掲載されていた資料が2019年と2023年のものだったし,それぞれ2019年版と2023年版ってことなんじゃないか?

でも,同じ本を毎年毎年,変えるのは変じゃない?

う~ん。でも,そうとしか思えないしな~。

よく見たら本の最後にこんなページがあるね。

普段,本を読むときにこんなページを見ることはあまりないけれど,よく見たらこの本が初めてできたのは「昭和31年」って書いてあるね。

西暦に直すと,1956年,おばあちゃんがまだ学校で勉強してた頃かも!

なかなか歴史ある本だね。

どれどれ。いちばん最新の情報は「令和6年2月1日改訂第1刷発行」だね。その前は「令和2年2月1日全訂第1刷発行」とある。

この「全訂」と「改訂」というのは何が違うんですか?

全訂」は「全面改訂」の略で,本を全体的に大きく変更すること,「改訂」は,本の一部を部分的に変更することだね。

全面改訂」の場合は本の内容や構成がガラッと変わることが多いよ。

全訂…内容の全般にわたって手入れがされたもののこと。
改訂…内容の一部に手入れがされたもののこと。

なるほど。ちなみに本を作る作業をしているのは,本が出るよりもどれくらい前なのかな?

なんでそんなこと聞くの?

いや,少し気になってね。

だいだい1年前くらいかな?この本の場合だと。

だとすると,「令和2年2月1日全訂第1刷発行」のときのものを作っていたのは「令和元年」つまり「2019年」で,「令和6年2月1日改訂第1刷発行」のときのものを作っていたのは「令和5年」つまり「2023年」ということか。

あっ…。まさか!

きみたちの推理,聞いてあげる。

この『小学 高学年 自由自在 社会』の今の表紙デザインのものが発売されたのは,おそらく「令和2年2月1日全訂第1刷発行」,つまり2020年の2月1日ですよね?

そうだね。

そして,「令和6年2月1日改訂第1刷発行」とあるように,この本は今年,改訂,つまり微妙に内容が変更されているんだと思う。

でも「全訂」ではなくて,「改訂」だから,表紙や紙面のデザインも大きく変わったりはしていない。

だから,同じ本なのに内容が違うなんてことが起きたんだ!

まさか見破られちゃうとはね~。

Case. 4.6 私たちの社会の時は止まらない

ついに,同じ本なのに内容が違う2冊の本のトリックを見破った2人。

この本を作った編集者は語り始める。

なぜ,既に完成している本にこのような変更を加えたのか?

ボン!動機はあなたの口から話してもらいましょうか。

動機はシンプルだよ。

この本を使う人には,できるだけ最新の情報で勉強してもらいたかったんだ。

ということは,他にも変わっているところがあるんですね?

もちろん。数えきれないくらいの箇所を更新したと思うよ。

例えば……これは「日本列島」について説明したパートなんだけど,どこが変わっているかわかるかな?

う~ん,これも地図のところが「2017年」のものから「2022年」のものに変わってる?

いや,それだけじゃないぞ!

よく見たら,日本の小さな島々の数が「約6800」から「約1万4000」に変わっている!

あ!これテレビのニュースで聞いたことある!

国土地理院は、日本にある島を36年ぶりに数え直した結果、その数は全国で1万4125島に上り、これまでに公表していた数の2倍以上に増えたと発表しました。(2023年2月28日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230228/k10013994061000.htmlより)

すごい!さすが名探偵さんだね~。

これくらいは朝飯前だ!

私たちの社会は常に変わっていくから、今日まで最新だった情報が明日も最新のままとは限らないよね

だから,こうやって「改訂」のタイミングで細かいところまで情報や資料の更新を行っているんだ。

すごいこだわり…。

でも,それってすごく大変じゃないですか?

そう!

常にテレビのニュースや新聞に目を通して,新しい情報が出ていないか目を光らせないといけないし。

あとは,今回の「改訂」で,こうした情報や資料の更新に力を入れたのは,新型コロナウイルスの影響もあるんだ。

どういうことだ?

新型コロナウイルスの流行を契機にして,世界が大きく変わってしまったから,当然,統計資料も大きく変わってしまったんだよね。

確かに,観光業界は特に大きな影響を受けたとニュースで言っていたし,統計もかなり変わってそう。

「社会」という教科特有のことかもしれないけれど,こうやって常に最新のデータで勉強ができるというのは,安心感があるなぁ。

本で勉強した内容が自分たちの生きる今の社会とちゃんとつながっていることも実感できるし。

その通り。この本で勉強したことが使ってくれる人の「生きた学び」になればと思って,頑張っているんだ。

でも,そうなると,公園で出会った女の子がお姉ちゃんからもらったと言っていた『小学 高学年 自由自在 社会』はもう使えないってことになるのかな?

確かに,そこは心配かも。あの子にどう伝えたらいいのかな…?

安心して。「令和2年2月1日全訂第1刷発行」のものも2020年から実施されている現行の学習指導要領に対応して作られているから,問題なく使えるの。その女の子にも,「お姉ちゃんからもらった『自由自在』は使えるよ。」って伝えてあげてね。

Case. 4.9 編集者からの挑戦状

『小学 高学年 自由自在 社会』に隠された「」を解き明かした2人。

manavi探偵団としての成果を胸にポワ太ミカンは帰途につこうとするのだが……

かわいい名探偵さんたちに私からも挑戦状だよ。

挑戦状?まだ何かあるのか?

歴史分野で「古墳」について説明したこの部分を見てみて!

この中でどこが変わっているのか,そしてなぜ,私が変更したのかを解き明かしてみて欲しいんだ。

歴史分野でも,情報更新が必要なの?

う~ん。新しい情報は出てきたりしなさそうだし…。

この「灰色の脳細胞」を持つ名探偵に解けない謎はない!


ポワ太とミカンは帰ってくる……

ぜひ,この「」についてみなさんも考えてみてください。(答えは記事の一番最後に…)

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小学 高学年 自由自在 社会

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最後の「」の真相

<変更された場所>
大仙(大山)古墳 → 大仙(仁徳陵)古墳


<変更した理由>
現行の小学校の教科書で一般的な表記に合わせるため

学校で学ぶ内容と『小学 高学年 自由自在 社会』の内容にできるだけズレがないように配慮しています。

少しでもみなさんに使っていただきやすい本になれば幸いです。

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