【第2回】塾ソムリエ西村則康先生流!やる気を引き出す参考書の選び方
2019/5/08
ひき続き西村先生にインタビューしていきます。
前回は、今後のインタビューを理解するために、西村先生のメソッドの根幹となる「学習ピラミッド」を概観する内容でした。
家庭学習では保護者が本を選んだり、声掛けしたりすることが中心となってきますよね。そこで今回は、家庭学習を充実させるために、学習の動機づけや気をつけるべき点を質問しました。
「どうやって勉強に向かわせるべきなの?」と悩める保護者の皆さまにはヒントがたくさんあること間違いなしです。
どんな本を買ってあげたらいいの?
保護者の皆さまは、お子様に本を読んで欲しいと考えていると思います。
しかし、いざ買ってあげようとなっても、どんな本がお子様の教育に役立つんだろうと疑問に感じられることも少なくないはずです。
まずは、参考書、教育関連書籍選びのスペシャリストでもある西村先生に本の選び方をお聞きしました。
「将来使うかもしれない」「興味をもってくれたらいいな」というように親が子どもに読んでほしい本も本棚に並べておくことが大切です。
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子どもに与える本の選び方をよく聞かれることがあります。
本棚に親が読んでいる本があれば、子どもは親がどのような本を読んでいるのか、こっそり見ているものです。
「難しい本を読んでいるのだな。僕も大きくなったらこういう本を読めるようになったらいいな。」これが知的好奇心の最初です。この知的好奇心に応えられるような背伸びした本が置いてあってもよいでしょう。
そのためにもすぐ調べられる図鑑類や地図帳、さらには地球儀などが子どもの手にすぐ届く環境をつくってあげましょう。
「今、子どもが使うか分からないけど、将来使うかもしれない」「興味をもってくれたらいいな」というように、子どもが読みたい本だけでなく、親が子どもに読んでほしい本も黙って本棚に並べておくことが大切です。
この環境が調べ学習の基礎となります。よくできる子の家の本棚を見るといろいろな種類の本が並んでいます。
お母さんの読んでいる本。お父さんの読んでいる本。子どもが今使っている本もあるし、今後使うであろうという本も並んでいる。そういった家庭の本棚を目標にしてもらえれば良いと思います。
重要なのは、ただ子どもに「自分で調べなさい」と本を渡すだけではなく、保護者の方も「一緒に見る」という積極的な態度が必要ということです。
子どももお母さんの表情から「こういうことに興味をもつことは良いことなのだな」「楽しいことなのだな」そう思えるような家庭の雰囲気を大切にしていただければと思います。
また、ネット検索というのも非常に重要だと思います。ネットですぐに分かることと、紙を触りながら本を見て分かることの両方できれば理想的です。
ネットの場合はいろいろな情報が出ていて、子ども自身が情報の正解・不正解を区別することができる。これは今後の世の中を渡っていく子どもたちにとって非常に重要なことです。
つまり、ネット情報を信用しきらない、その知識が本当に正しいのかどうかを本で確認してみる。この二つの作業が大切です。
ネットの情報と本での情報の違いや、どちらが正しいのかなどといった家庭での会話は非常に重要です。ネットだけで勉強させず、本棚にある本を使って家族で確認するという行動を通じた学びの環境をつくってみましょう。
参考書と問題集どちらを買うべき?
参考書と問題集では内容や分量に差がありますが、勉強の取り掛かりとしてはどちらを購入するのがいいでしょうか。
参考書選びのスペシャリスト西村先生に本音でお答えいただきました。
最終的には、参考書と問題集、両方持っていなくてはならないものです。ですが、まずは問題集が中心と考えて良いと思います。
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まずは、「このぐらいの問題が解けるようになってほしいな。」もしくは「うちの子だったらこのくらいできそうだな。」という問題集を選びましょう。
そして問題集につまずいた時に「これを見ればうちの子だったら解りそうだな。」というふうに参考書を選ぶようにします。
そうやって順番に考えていけば良いでしょう。
調べ学習のための図鑑・参考書類は家庭にはそんなに沢山は必要ありません。ある程度の量があれば良いものです。
足りない部分は、図書館で調べても良いし、図書館に頻繁に通うようになり同じ本を見るようであればその本を買えば良いと思います。
お子さんが、「自分で本を手に取り」、「何か一部を読み始めた」、もしくは「その本に少し目が近づいた」、そういった素振りが見えたらその本は「買い」です。
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一方的に親御さんがお子さんに本を渡す,というのではなく、本屋さんで一緒に学習参考書コーナーなどに行った時の話であれば、本屋さんでの振る舞いに注目してください。
子どもというのは何か一部でも興味があるものに対して、自分の所有物として持っていることに非常に喜びを感じます。そこを刺激することで、その周辺にも興味がうつっていきます。
もちろん、保護者の方が選んであげることも重要です。
ただし、少し背伸びをした本を親が買ってくるのは良いのですが、大事なのはこの割合です。
親の期待があまりにも強すぎると家の本棚が書店のようになります。そういった家庭を何件も見てきています。それだとだいたい上手くいかない。
その場合注意することは、「似たような本を何冊も揃えてはいけない」ということです。
各種類に一冊ずつ、親が見て良さそうな本を少量ずつ置いておく。子どもが手に取り始めた本の周辺の本をまた買い揃えていく。
そういう風に増やしていくと共に昔使っていた本はしまっておく。今、子どもがどんな関心をもっているのかによって本棚を変化させましょう。
中学生になってもまだ小学生の本も本棚に並んでいるというのは、意外とできない子に多い本棚です。子どもの興味に親が無関心なんですね。
学年にもよりますが、大抵は子ども自体が自分の本棚を棚卸して並べ直すなどの知恵はあまりありません。親御さんの協力が必要です。
何をすれば成績が伸びるのかしか興味がない家庭はよくありません。
大切なのは何をするのかではなく、「どのようにするのか」です。「何を学ぶか」だけではなく「どのように学ぶか」なのです。
参考書や問題集・図鑑なども、熟読するのかスピーディーに読むのか、もしくは解けばよいのか、読むだけで良いのか、等です。
本棚のレイアウトで、じっくり読むための場所、毎日のトレーニングのための問題集の場所、調べ学習のための本が置いてある場所、以前使っていた本の場所など、家庭内で決まりを作ってもいいかもしれませんね。
家庭学習で注意すべきことは?
家庭学習はお子様の勉強の中心になってくると思いますが、その際に保護者は何に気をつける必要があるのでしょうか。
第2週の締めくくりとして西村先生にお聞きしてみました。
子どもの様子や関心を、保護者がしっかり観察することです。例えば、読書を例にとりましょう。
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本は動機づけ、つまり興味を持つ「きっかけ」であり、大事なのはその本を子どもがどのような意識で読んでいるのかを、親がしっかり理解してあげることです。
そのため、親がそれを観察する空間が必要になりますね。その空間も距離を置いて見る方が良い場合もあります。近すぎて口出しをしてしまう場合もあるからです。
一緒に楽しむのが大切な場合もあります。それを見極めるのが親の大事な力になるのではないかと常々思っています。
このような観察をするには、親の心情に余裕がある必要があります。
安定した心情のお母さんであれば自然に行動しています。ストレスがあったり、子育てに不安なお母さんは距離が近過ぎる傾向にあります。
子どもに対して、ビジネスのように、マニュアル的に一つ一つ説明しながらやっていくと失敗することが多いものです。
そんな場合には、お子さんを変えようとするよりも、お母さんの心の持ちようだったり、ストレスの軽減など周辺部分を改善することが第一です。
子どもと親との距離感というのは家庭学習において非常に大事です。
逆に、子どもと父親との距離感は反対に距離感が多少遠い方がいいですね。背中で伝えるというような雰囲気が良い。いざとなったら出ていくというような威厳をもつことが大事です。
父親の役割としては、子どもを励ますこと。現状の子どもを認めてあげるとともに母親への労いを行うことです。これらを中心にやっていく方が良いのです。
親が仕事のスキルを使って何かスケジュールなどを立てようとするとことごとく失敗します。これまでに何百人とエクセルでスケジュールを作成した父親を拝見してました。
全て失敗です。
仕事感覚で子どもに接することが良くない。仕事というのは結果を出すことが求められますよね。
でも学習や教育というのは、「その過程の中で頭を鍛えていくことが大事」なのです。
目の前の問題を解くというのが大事なのではなく、「そこに向かう途中にどういった頭の使い方をしたか」、「どういった思考力を鍛えたか」ということの方が重要なわけです。
ですから仕事の流儀と学習の流儀は当然違ってくるのです。
一般化してしまいますが、子どものマネジメントは母親がメインで、家庭のマネジメントは父親がメイン。そういうイメージが良いと思います。
本選びや博物館めぐりなど全てのことは子どもにとってプラスになります。そういう意識でやってもらって良いと思います。
例えば、図鑑類は好きだけど物語を読むのは好きではないという子がいたとして、欠点を補おうという親の気持ちが強すぎるとうまくいかない。
その子の興味を中心としながら何か少しずつ付け加えていくような意識でいってほしいものです。
学びのヒント
西村先生、今週もありがとうございました。
今回の学びのヒントとしては「保護者の皆さまとお子様の距離感の重要性」が挙げられると思います。
勉強にしても、本や参考書選びにしても保護者の皆さまが過剰に干渉してしまうことでかえってお子様の成長に逆効果になる場合があります。
近すぎず、遠すぎずの距離感で接し、時にはお子様が自ら興味を持って取り組む姿を温かく見守ってあげる余裕も大切なんですね。
今回の西村先生のお話も踏まえつつ、お子様との関わり方を見直す時間を作ってみるといいですね。
今回の賢者
西村 則康
日本初の「塾ソムリエ」として中学受験を目指すご家族から絶大な信頼を得ている。
暗記や作業だけの無味乾燥な受験学習では効果が上がらないという信念から「なぜ」「だからどうなる」という思考の本質に最短で入り込む授業を実践している。
著書に『中学受験は親が9割 [学年・科目別]必勝対策』(青春出版社)、『年齢別 子どもの頭が必ずよくなる育み方』(潮出版社)、『子どもがぐんぐんやる気になる魔法の声かけ』(主婦と生活社)など。
西村先生の詳しい情報はこちらから
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