後藤先生はどのようにして「昆虫博士」としてのキャリアを持つに至ったのでしょうか。
こんにちは。manavi編集部です。
今週も引き続き、国立遺伝学研究所 特任研究員として、「昆虫の体の仕組み」について研究なさっている後藤寛貴先生にお話を伺っていきましょう。
国立遺伝学研究所については?こちらから
前回のインタビューは以下のリンクから閲覧することができます。
先週は、先生の研究内容がどんなものかについて聞きし、研究を進める手順などもお話していただきました。
正真正銘の「昆虫博士」として、世界や日本の各地で研究されている後藤先生ですが、 クワガタムシやカブトムシの研究にたどり着くまで、どのような学生時代を過ごされてきたのでしょうか。
学生時代からクワガタムシやカブトムシのことばかり勉強していたのでしょうか?
今週のインタビューでは、 昆虫の研究を始めたきっかけや、力を入れたことなど、 先生ご自身の「学生時代の経験」のエピソードから「研究者」 を目指すためのヒントを探りたいと思います。
それでは、後藤先生よろしくお願いいたします。
日本だけでなく世界各地での研究機関で活動されてきた後藤先生ですが、 研究を始めたきっかけとはなんだったのでしょうか。
どうして昆虫の研究をしようと思ったのですか?
小さいころから虫が好きだったのと、個体レベルから分子レベルまで幅広く扱える生物を研究対象にしたいと考えていました。
また、「形」は目に見えてわかりやすいので、生物の体作り (「発生生物学」という分野) の研究をしたいと考えました。
「虫好き」から始まって、大学でクワガタムシの研究の可能性に気づいたんですね!
虫が好きなことが高じてシロアリの研究室を選び、そこがクワガタムシの研究のきっかけになったということでした。
多くの大学での研究も最初のうちは、担当教授の下で論文などの資料の集め方や実験法、データの解析法など、「研究の進め方の基礎」を学ぶことが多いです。
後藤先生も、シロアリの研究での下積みを経て、先週のインタビューにもあったシロアリとクワガタムシの 「共通性」 、すなわち 「育った環境によって異なる姿へ成長すること」に研究のヒントを得たんですね。
さらに、カッコいいと思った昆虫を研究対象としてチョイスするのも、後藤先生の昆虫の「形」への愛とこだわりを感じます。
では、「小さいころから昆虫が好きだった」という先生は、大学の研究室で研究活動に触れるまでは、どのように過ごしておられていたのでしょうか。
どんな学生時代を過ごされましたか?
大学の学部時代は割と不真面目な学生でした。体育会の卓球部に入っていたので、最も力を入れたことは卓球ですね(笑)いまでも市民チームに入ってプレイしています。
スポーツも楽しみつつ、自然の中でゆっくり過ごした学部時代から徐々に研究漬けの日々へ変わっていったのですね。
意外にも「大学入学時から勉学のみに集中していた!」というわけではなかったということでした。
理系の研究者となると、「実験室にこもりきりで、日の光を浴びない暗いイメージ」を連想される方もいらっしゃるかもしれませんが、後藤先生は今でも卓球をプレーされるなど、とても健康的ですよね。
ただ、大学生活も後半になると、それまで積み上げてきた講義の知識を応用した実習や研究が始まるので、先生が後悔されていたように、ただ遊んでばかりではいけないということでしょうか。
また、教授や先輩方とコミュニケーションが取れるか、きちんと指導してもらえるかなど、 選んだ研究室の環境も重要になりそうです。
初めから研究の道一筋という人生ではなくても、「好き」という気持ちとともに学びに適した環境に身を置くことで、研究者の道が開けてくるのかもしれませんね。
今週のテーマは、後藤先生の「学生時代の経験」でしたが、「研究者としての現在に役立っていること」をお聞きして、最後の質問にしたいと思います。
今役に立っている、学生時代の勉強はありますか?
具体的に挙げるとしたら、やはり一番が英語になるでしょうか。
高校時代、大学受験のために基礎学力を上げたことはその後無駄にはなりません。具体的に「これが役に立った」というよりは、様々な場面でそれぞれ異なる学生時代に勉強した知識が役に立っているという印象です。
英語を中心として、文理問わず色々な知識が役立ってきたのですね!!
海外でも研究されてきた後藤先生ですので、英語の重要性を真っ先に挙げられました。
そしてやはり、データを扱う研究活動には、プログラミングの知識も必須になるということでした。
英語やコンピュータプログラミングの重要性は、美添一樹先生のインタビューでも語られています。
実は、研究成果を発表したり、論文に記したりする際には、研究の内容にもよりますが英語のことが多いです。
後藤先生が投稿されている論文誌ろんぶんしを見ても、「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」や「Molecular Ecology」など海外のものがずらりと並んでいます。
研究者には、成果を世界中に知ってもらうため、そして世界中の研究者と協力するためのコミュニケーション能力が求められ、そのひとつが英語力なのだと思います。
先生が述べられていた、デザインの能力や作文力、一般教養なども、相手に上手く伝える・良い関係を築くといったコミュニケーションのための素養とも言えそうです。
そして、様々な経験をしてこられた後藤先生だからこそ可能な研究の発想やアプローチがあり、先生の研究の面白さや独自性につながっているのかもしれませんね。
後藤先生、今週もありがとうございました。
今回のインタビューでは以下のような学びのヒントがあったと思います。
(1)好きな気持ちやこだわりを大切にしよう
(2)学生時代の経験や知識は様々な場面で役立つ
今回のインタビューで、後藤先生の昆虫の研究でのご活躍は、「虫好き」から始まり、「わかりやすさ」や「カッコよさ」といったこだわりに支えられていたと感じました。
このように、ひとつの分野にこだわりを持って取り組むことは、研究者や専門家にとって一番重要になると思います。
とはいえ、好きなことばかりに打ち込んでいては、専門的な研究といえども成立しません。異なる分野の知識や経験の吸収も、他の人とのコミュニケーションの場面や、研究の面白さを生む上で必要となってくるのです。
お子様にも、様々な経験を経て魅力ある人間に成長して貰いたいものですが、我々大人には何ができるのでしょうか。
例えば、習い事や家の手伝い、友達と遊びに出かける計画を立てるといった「子どもにしかできない経験、子どものうちにやっておきたい経験」をするためのサポートがあるかもしれません。
ここで注意したいのは、お子様の「好き」や「こだわり」が一番重要であること、「これをさせたい、あれに興味を持ってほしい」といった大人の都合を押しつけ過ぎないことです。
先週も述べましたが、お子様が色々な経験を”主体的に楽しむ”ことができるように、 温かく見守ってあげてください。
今回の記事に関連したおすすめの書籍をご紹介させていただきます。
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加えて、本シリーズには毎ページの下部に身に着けておきたい理科の教養や雑学が掲載されております。
お子様の理科知識を増やすだけでなく、雑学に興味を持たれたお子様との「お母さん、これ知ってる?」といった、親子のコミュニケーションのきっかけをつくることができれば、と思いご紹介させていただきました。