外国人がどんどんと増えていって、日本の社会はこれからどう変わっていくのでしょうか?
先週に引き続き、株式会社エルロン代表取締役、そして日本語講師としてもご活躍されていらっしゃる石川陽子先生にお話を伺っていきます。
石川先生へのインタビューは今回が最終回となります。
第3回のインタビューでは、石川先生に「日本での外国人とのコミュニケーション」のコツやポイントについて伺ってきました。
今回は、最終回ということで、これまでのお話を踏まえつつ、先生の目から見た「日本における外国人の今とこれから」についてお話を伺いました。
社会の変化に対応するために、そして日本人と外国人が共生していくために、どんな考え方や視点が大切になるのでしょうか。
それを考えていく上で役立つヒントが詰まった記事になっておりますので、ぜひ最後まで読んでいただけると幸いです。
それでは、石川先生よろしくお願いいたします。
様々な側面から、日本の社会は今まさに大きく変化していっております。
日本語教師として多くの外国人たちと関わってきた石川先生は、そんな日本のこれからをどんな風に捉えているのでしょうか。
今後、数十年で日本はどのような社会になる(あるいは「なってほしい」)と思われますか?
10年後には、日本で様々な国の方と一緒に働いたり、学んだりすることが、今よりも当たり前な社会になっているのではないか、と思っています。
2015年以降、日本の人口は減り続けていますが、今後数十年の間に、少子高齢化は更に加速すると想定されています。
経済施策として様々なことが構想されており、その中のひとつが外国人人材の受け入れです。
第1回の記事でもお話しましたが、現在日本で生活をしている外国人の方は293万人いらっしゃいます。
また、日本に旅行で来る訪日外国人の方は、コロナ以前の2019年は、3000万人を超えていました。
もちろん新型コロナウイルスの影響で訪日外国人を取り巻く状況は大きく変化しています。
それでも今後、日本にどんどんと外国人が増えて、彼らと一緒に働いたり、学んだりする機会が増えていくことは間違いないでしょう。
その時に、日本人が不安を抱えていたり、外国人が悩んだりせず、共に成長できる社会になってほしいと思っています。
その為に、今からできることが沢山あると感じています。
やはり、今後も日本における外国人の労働者や学生はどんどんと増えていくと予想されているんですね。
学校でも、職場でも外国人がいるという光景がどんどんと当たり前のものになっていくのだと思いますし、その時にどう共生していくかは重要な課題になっていきます。
そのために、「やさしい日本語」の習得も含めて、準備としてできることはたくさんあるでしょう。
常に社会がどう変化していくのかを自分なりに考えて、準備をする癖をつけておくと、その変化が実際に訪れた時に慌てずに適応できるはずです。
未来視点で、逆算的に自分が今どんなことをできるか、何をしておくべきなのかを考えるという視点は非常に大切ですね。
特に、今は新型コロナウイルスの影響で、従来の当たり前が当たり前ではなくなってきていますので、目の前だけを見てというよりは1年後、2年後…にどうなっているのかという先のことも見据えておく必要があるでしょう。
次に、よくある質問ではあるのですが、外国人の方が日本のどんなところに魅力を感じておられるのかについてお聞きしてみたいと思います。
観光で日本に来ている人というよりは、仕事や勉強のために実際に日本で生活をしている外国人と多く関わりがある先生だからこそ、あえてこの王道の質問をさせていただきました。
外から見た日本の魅力とはどんなことでしょうか?
日本の魅力を聞くと皆さん様々なことをおっしゃるのですが、私が良く聞くことは、まずは食べ物です。
「外からの目」は私たちが気づきにくいことを教えてくれますよね!
白米やお出汁って日本人からすると、当たり前のものになりすぎていて、改めてその魅力について考えることは少ないと思います。
しかし、それを「外からの視点」で捉えてみると、すごく魅力的なものに見えるわけです。
そして、先生が述べられたように問題点に関しても同じような性質があります。
自分がその問題点を内側にいると、どうしてもそれに対して鈍感になってしまい、問題であるということにすら気がつかないということも多々あります。
日本のワークタイムバランスは、確かに私たちの国の中だけを見れば、当たり前のことですが、他国と比較すると問題点を抱えています。
物事を考えるときに、当事者視点、自分視点だけではなく、それらを客観的に見るような「外からの視点」を大切にしたいですね。
さて、いよいよ最後の質問となりました。
ここまでインタビューをさせていただいた石川先生が今後どんなことに取り組んでいきたいと考えておられるのか、その展望やビジョンについて伺いました。
今、力を入れている取り組みや、今後実施していきたい教育活動があったら教えてください!
日本人が外国人に抱いている壁やハードルを下げながら、外国人にも日本語の運用力を付けてもらい、日本のコミュニティにスムーズに入っていけるような機会作りをするということが、私の最終的な目標です。
まずは、コミュニケーションを取るためのツールである「やさしい日本語」を広げていくということですね!
何か問題や課題が生じ、それを解決する必要が出てきたときにどうしても、どちらかが強引にでも歩み寄らなければ、どちらかが譲歩しなければといったネガティブなベクトルでの解決策の模索が為されることは多いです。
例えば、「日本に外国人が増えるからとにかく英語を話せるようになる」という視点で考えると、日本人の側に負担が大きすぎますよね。
もちろん、そうしなければ解決に至らないというケースもあるのですが、今回のインタビューの中で挙がった「やさしい日本語」のようにどちらにもメリットがあるポジティブな解決策を考えてみるのもとても大切なことですね。
特に、これから日本人と外国人が社会で当たり前のように共に暮らしていくとなると、どちらかが我慢をしなければならない、損をしなければならない解決策では、疲弊してしまい、持続が難しいでしょう。
両方にメリットがあり、そして「幸せを感じられる」ようなソリューションを創造する力は、今もそしてこれからも重要視されるものでしょう。
石川先生、ありがとうございました。
第4回は石川先生の目から見た「日本における外国人の今とこれから」ついて、お話してきましたが、今回の「学びのヒント」としては以下のことが挙げられると思います。
(1)魅力や課題を「外からの視点」で客観視して見つけよう!
(2)「両方が幸せな」状態に至る解決策を考えるようにしよう!
記事の中で、先生に外国の方から見た日本の魅力や課題についてお話がありました。話題に挙がっていたのは、やはり日本に生きている私たちがなかなか気づかないことばかりでした。
このように「外からの視点」を持ち込んで初めて、当事者には気がつきにくい魅力や問題が発見されるということもあるものです。
子どもたちには、他者視点で自分を見つめてみる、他の町に住む人の視点で自分の町について考えてみる、そして外国に住む人の視点で日本について考えてみるというように、徐々にスケールを大きくしながら、「外からの視点」の癖づけを促してみてください。
また、両方が幸せになれる解決策を見つけようとする姿勢も大切にしていただきたいですね。
例えば、学校で集団生活をしていくとなると、様々な問題が起きますし、全員の要求や希望が満たされるということは難しいでしょう。
それでも、問題や課題が生じるたびに誰かに負担がかかるというネガティブな方向にばかり進んでいくと、その時は解決したように見えても、どんどん息苦しくなってしまいます。
石川先生は、「やさしい日本語」というツールをフックにして、外国人と日本人の両方にメリットがある状態にして、歩み寄れるように活動を続けています。
ぜひ、子どもたちには、できる限り誰もが幸せになれる、メリットを享受できる解決策を模索するという姿勢を育てていって欲しいものです。
今回の記事に関連したおすすめの参考書・問題集をご紹介させていただきます。
小学漢字 1026字の正しく美しい書き方
○小学校6年間で学習する漢字1026字すべてを学年別に取り上げた漢字字典です。
○音読み・訓読み,部首,画数,筆順などを掲載。また,その漢字を使った熟語も豊富に取り上げました。
〇巻末には「美しく書く」コツも解説しています。
漢字を美しく書くというのは、「相手視点」ないし「外からの視点」を意識するということでもあります。
自分だけが読めれば良いのであれば、文字を美しく書く必要はありません。
しかし、それを相手に読んでもらうとなると「相手が読みやすいかどうか」を考える必要がありますよね。
ぜひ、この『小学漢字 1026字の正しく美しい書き方』に取り組んでいただき、誰から見ても「美しい漢字」を書けるようにトレーニングしてみてください。
また、海外からの友だちができた時に、日本語の特徴の一つである漢字の成り立ちや意味についても話してあげられるようになっておくと良いのではないでしょうか。