【第4回】西村則康先生に聞く!中学受験の勉強法や参考書どうする?
更新日:2019/6/05
引き続き西村先生にインタビューしていきます。
前回の記事は未就学児の学習のポイントについて質問にお答えいただきました。今回は、小学校の低学年・中学年にフォーカスしていきます。
西村先生の学習ピラミッドでいうと、「基礎学習」が重要な年齢ですね。高学年はこの「基礎学習」が複雑化・高度化していきます。その前に、しっかりと土台固めをしたいですね。
また、そろそろ塾通いも気になるところです。そのあたりの保護者の皆さまのお悩みが少しでも解消されたらと思い、質問してみました!
低学年で特に身につけたい力は?
以前の記事で、西村先生が「学習ピラミッド」という言葉を挙げてお話をしてくださったかと思います。
小学校低学年は学習ピラミッドでいうとどんな力を身につける段階にあるのでしょうか。お聞きしてみました。
低学年では「学習ピラミッド」のどのあたりをフォーカスしているの?
ピラミッドで言うとちょうど真ん中になります。読み・書き・計算といった基礎学習が一番重要な時期です。
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この段階ですと、「熟練」ということを心がけることも重要になってきます。
意識しなくても勝手に頭が考えて答を出してくれる。そのくらいまで熟練しなくてはいけない。
特に四則計算(+、-、×、÷)ですね。これらに関しては毎日一定量の練習をする習慣をつけましょう。
つまり継続する力が必要になってくる学年になってきたということです。
基礎からしっかりと定着させるコツは?
いきなり難しい応用問題に取り組むことは効果的な学習とは言えません。
まずは何事も基礎からということで、西村先生に基礎学習のコツをお伺いしました。
難しすぎないものを毎日一定量ずつやれるような教材をベースとしましょう。
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それを基本にして、目的に応じてちょっと難しめのものも用意して一部使ってみることも大事です。
もしくは、いろいろなものが混ざっているものを使ってみる。そういったものを時期に応じて、子どもの興味に応じて少しずつ変化させていくことを心がけましょう。
先ほども申し上げましたが、子どもの興味・関心や心の状態をしっかり観察しながら、問題集を与えることが、良い結果をうむコツです。
消化不良にならないようにしてあげましょう。
中学受験を見据えた応用学習と参考書の選び方
中学受験を見据えた学習を進めていくと、基礎学習を経て、応用学習に取り組んでいくことになります。
やはり中学受験を突破するには、低学年の頃から応用学習に積極的に取り組む必要があるのでしょうか。
西村先生に本音で答えていただきました。
中学受験をさせるためには、「応用学習」までさせるべきなのでしょうか?
基本的には必要ありません。学習ピラミッドでいうと「基礎学習」の範疇に入ります。しかし、基礎学習の範囲の中でもレベルが高くなると考えてください。
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中学受験の学習は、学校でやっている問題よりは少しだけ複雑です。最終的にはスピード感が求められます。
ですので、選ぶ問題集としては少しずつ「はやく解く」練習が自然にできるものがよいですね。例えば1ページあたりの問題が少しだけ多いとか、少し数字が大きくなっているものとか、もしくは文章が少しだけ長くなっている、など。そういう問題集を選んでみてください。
いきなりそれを始めるのではなく、5分で終わるようなプリント教材から始めましょう。それが終わった後、
『自由自在』の3・4年生用といったものを使ってみる。
例えば小学3年生の子が新学期にプリント教材を使い始め,ある程度学習ペースがつかめてくると,自然に『自由自在』の3・4年生用を使えるレベルになります。
目次で「3年生で習う単元」,「4年生で習う単元」が分かるので,受験を考えていない子も必要な部分に取り組むだけで大きなプラスになります。
受験を考えている子は既習事項に加え,1学年先の計算・語句問題まで先取り学習しておけば入塾テストでも上位を目指せます。 また受験といったことになると関西では理科がありますね。関東の方では理科・社会も入ってきます。全教科の復習ができるようなものも少しやってみるほうが良いでしょう。
ただ難関中学の受験を目指す場合には、低学年・中学年の内から高いレベルの問題に取り組むことが必要とされますよね。
そういったお子様にどんな参考書に取り組ませればいいのか、参考書のスペシャリストでもある西村先生のご意見を聞いてみました。
中学受験でトップレベルを目指したい場合の参考書選びのポイントは?
トップレベルを目指す為には能力的にも高いものが必要ですね。抽象的思考が早めにできること。つまり早熟であること。早熟さを目指さないと実は他の子に勝つことができません。
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だからこそ、少し難しめの考えるような問題を与えることが必要です。でもそれは受験テクニックとしての手法を教えることではなく、難しめの問題を試行錯して解く楽しさを身につけさせるとよいでしょう。
それに加えて読み・書き・計算のレベルアップも必要です。その為には『ハイクラステスト』みたいなものがいいのではないでしょうか。
でもそこだけをやらせると子どもは普通嫌になるので、易しく簡単にやった量が目に見えるようなものも併用していくと効果的です。
試行錯誤をさせるチャレンジ用の問題集と、読み・書き・計算のレベルアップ用問題集、達成感を得るドリルの3本立てですね。
明確に中学受験について決めているわけではない、でも可能性として視野に入れつつお子様の学習を進めたいという方ももちろんいらっしゃることと思います。
そういう場合には、どんな参考書が適しているのでしょうか。
中学受験ははっきり決めていません。でも、視野にいれながらバランスよく学力を伸ばしたいです。どんな参考書・問題集を選べばいいですか?
中学受験が定かでない子どもに難しい本を与えすぎることは子どものやる気をなくします。受験用よりは少し易しいが,学校の補習用よりは難しいものがいいですね。
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中学受験を子どもがしようとなるには、子ども自体が「僕、できる子」という意識にならなくてはいけないのです。
学校の友達がやっていないようなレベルのものを自分はやっているという自意識が芽生えるようなものをやらせる必要があります。
だが難し過ぎてもいけない。そうなると、自然に選ぶべき問題集は決まってきます。
受験用に比べれば少し易しいが学校の補習用に比べれば少し難しい。見た感じも学校の友達が使っているものよりは少し難しそうに見えるもの。
『標準問題集』あたりが良いのではないかと思います。
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小学3・4年 算数 自由自在
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子どもの興味を学びにつなげる本は?
保護者の皆さまの中には、お子様が好奇心や探求心を持って自発的に学ぶ姿勢を身につけてほしいとお考えの方もいらっしゃることと思います。
そういう学習の進め方をする際におすすめの本があるかどうかお聞きしてみました。
子どもの探求心・好奇心を大切にしたいです。ふさわしい本はありますか?
子どもが学校で学んできたことに対する疑問や興味に対して応えてくれる,マンガのような事典や科学雑誌のような参考書がよいでしょう。
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学校で実はいろいろなことを学んできます。そうすると、学校でやってきたことに対して「なぜそうなるの?」という興味は必ずあるものなのです。それを調べるための本が欲しいですね。
また、ある言葉を習ってきたらその周辺にある言葉を探してみたくなるのが普通です。
そういったことが書いてあるマンガのような事典であったり、もしくは科学的な事柄を学校で習ってきたならば、それについてもっと詳細な説明が面白く書かれている科学雑誌のような参考書だとかあれば良いです。
そういうものを買い与えて読ませていくことが非常に良いことです。
「読みなさい。」ではなかなか上手くいかないので最初は読んであげることから始め、その後一緒に今度は眺めてみる。最後に子供だけで読んでみる。このように徐々に自分で調べるようにしましょう。
例えば、漢字を新たに覚えたとします。その漢字を使って会話をするとか、学習で言うと短文作りとかを一緒にやってみるのも良いでしょう。
「短文を作ってごらん。」という言い方ではなく、「その言葉を使ってちょっと遊んでみようか。」といった雰囲気でやってもらえればもっと効果的です。
物事には必ず理由がある。現象には必ず原因がある。そのことを探っていくとあるところまでは分かるが、その先いっぱい分からないことがある。
このように世の中が疑問だらけだということが分かることが実は本当の探求心だということです。
その基礎を作る勉強が大事ですし、気になることができたらすぐに調べる環境づくりを家庭内で実施してみましょう。
低学年・中学年の学習のお悩みあれこれ
ここからは、保護者の皆さまが疑問に感じていることが多いポイントに絞ってどんどんと西村先生に質問をぶつけていきたいと思います。
それでは先生お願いいたします。
学校の学習内容で困らないようにしたいです。どのような本を選べばいいですか?
教科ごとに学年×10分でできる易しめのもの,1枚ずつはがせるプリント教材などがよいでしょう。毎日決まった時間・量の学習を続ける習慣が大切です。
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時間数の目安ですが、算数・国語・各教科「学年×10分」。一年生であれば算数・国語10分ずつ。二年生であれば20分ずつ、という風に考えていけば良いですね。
その時間内でできる内容にしましょう。負担が大きいとやる気をなくします。 一枚一枚はがせるようなプリント教材などが実は一番使いやすいので、そこから始めれば良いでしょう。
例えば、
『基本トレーニング』も非常に良い。
『5分間復習プリント』であれば一日2枚ずつやっていく感じですね。そういう風にまず数か月間は負担の少ないものを毎日決まった時間に決まった量をやっていきましょう。
親はそれが続いていることを褒めることを心がけてください。褒め続けることが重要なのです。 そういった習慣が身についてから、時々、子どもの様子を観察して、例えば「うちの子、九九が苦手だわ。」と思えば九九ドリルも良いでしょう。
もっと正確性を高めたいと思った場合はもう少し難しめのものを買い与えるのも良いと思います。
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小3 / 5分間復習プリント 算数
小学3年の算数の基礎的な問題を,1単元1ページあたり5分間で取り組むことができます。
短時間で終わるので,次々と進めていくことができます。
解答には,解き方などを簡潔にまとめた考え方を加えています。
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分厚い参考書が一冊あれば便利だと思いますが、子どもが嫌がらないか不安です。何かアドバイスはありますか?
分厚くって大変そうに見えるので、それを逆手にとる。やった部分を分かるように目印をつけてあげて、褒めることで、達成感を与えてあげましょう。
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確かに、普通、子どもは厚い参考書を見ただけで「大変そう!」と思います。
しかし,そんな時こそ達成感を大きく育めるチャンスです。
最初のページから最後のページまでを「やりきらなければならない!」と思いこむ必要はありません。参考書は、分からないことがあったら調べ学習するために使うというので良いのです。
調べたり、解いたりして、1ページやったとしますね。ページのところにマーカーで色をつけたり、ふせんをつけたりします。
そうやって子どもの成果を「見える化」してあげましょう。
これを一週間も続ければ厚みが出てきて,子どもは達成感を得られますし,これを励みに学習習慣を身につけた子どももたくさんいます。
目に見える達成感を与えてあげないと勉強はなかなか続かない。お母さんたちも褒めやすくなります。低学年にとって大事になってくるのはお母さんたちが見守ってあげることです。
保護者にとっても子どもの学習と向き合うための準備期間だと思ってください。義務感に訴える言い方ではなく、子供がやろうと思うような声かけを保護者自身が学習する期間とも言えるのです。
習い事が多くて、普段の学習が心配。どのようなことを心がけるべきでしょうか?
基礎学習の部分で習い事・お手伝いなどで代用できることは少ない。無理のない範囲で、学習の習慣づけをすることは必要です。
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まだ低学年・中学年だと塾に通っている子どもは少ないと思います。やはり、家でやっているかいないかで差はうまれます。
身体能力は習い事でカバーできることが多いですが、残念ながら基礎学習の部分では習い事で代用できることが殆どありません。
読み・書き・計算については、きちんと家で決まった時間は勉強をする習慣をつけることが重要です。各教科で「学年×10分」を目安としてください。これなら無理のない範囲でできるはずです。
長期休暇などで学校・塾がない日にはどのようなことをさせるといいですか?
基本的に、平日/休日はあまり意識しなくても良いでしょう。ただ、長期休暇の場合、普段学校で行っている基本的なことに「少し難しいこと」をプラスしてみましょう。
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学校で普段何気なく知的な刺激を受けているのに、長期休暇中にそれが全くなくなることはないようにしましょう。
現状の指導要領で言うと3年生から4年生になると、子供にとって急に学習内容が難しくなったように感じます。特に4年生ですね。 長期休暇の場合には学校でやっているはずの範囲について、それを少し詳しく書いてある参考書を使って学習することをオススメします。
中学受験はしなくても
『自由自在』くらいを使いたい。問題を全て解き終わることではなく、少なくともその中の例題だけはじっくりやるというスタンスで結構です。
学びのヒント
西村先生、今回もありがとうございました。
今回の学びのヒントとしては「学習ピラミッドに沿って無理なくその後の学習の基礎を養う」ポイントが挙げられます。
中学受験などを見据えると、低学年のうちからお子様に応用問題に取り組ませなければと焦りを感じられる保護者の方もいらっしゃいます。
しかし大切なことは適切な時期に、適切な学習を進めることです。
今回の西村先生のお話を踏まえて、お子様のこれからの学習計画について一度考えてみるといいかもしれませんね。
今回の賢者
西村 則康
日本初の「塾ソムリエ」として中学受験を目指すご家族から絶大な信頼を得ている。
暗記や作業だけの無味乾燥な受験学習では効果が上がらないという信念から「なぜ」「だからどうなる」という思考の本質に最短で入り込む授業を実践している。
著書に『中学受験は親が9割 [学年・科目別]必勝対策』(青春出版社)、『年齢別 子どもの頭が必ずよくなる育み方』(潮出版社)、『子どもがぐんぐんやる気になる魔法の声かけ』(主婦と生活社)など。
西村先生の詳しい情報はこちらから
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