デザイナーに求められる力とはなんでしょうか。
こんにちは。manavi編集部です。
今週も引き続き、 「紋章上繪師(もんしょううわえし)」の波戸場承龍先生にお話を伺っていきましょう。
前回の記事では、先生の学生時代についてお聞きし、 紋章上繪師・ デザイナーとしての現在に役立ってきた経験についてお話しいただきました。
前回のインタビューにもあったように、50歳前後で新しい家紋デザインに挑戦するようになるまで、「デザインの勉強はしたことがなかった」という先生。
そこからどのように学ぶことで、たくさんの作品を生み出すに至ったのでしょうか。とても気になりますよね!
そこで今回のインタビューは、デザイナーを目指すお子様のご参考になるような、デザインのお仕事に必要な力やそれを育むための環境について、家紋デザイナー・波戸場承龍先生の視点から語っていただきたいと思います。
それでは波戸場先生、今週もよろしくお願いいたします。
まず最初の質問は、先生が思う「デザイナーに必要な力」についてお聞きしましょう。
デザイナーに必要な力とはどんなものですか?
デザインする上で、まず自分が楽しいか、ワクワク出来ているかが一番大切なことだと思っています。こんなものが欲しいな!あったら楽しいな!と自分自身がワクワクしながらデザインすることが大事なのです。
インプットとアウトプット、そしてそれらを通して「ワクワクできるか」が重要なんですね!
スポーツでは優れた選手の動きを体得する、座学においては、教科書の解き方を参考にする、といった「お手本の真似をする」という王道の学び方がありますよね。デザインの技術においても、質の良いお手本にたくさん触れることの重要性をお話しいただきました。
こうしたインプットのきっかけとなる「観察力」については、昆虫学の後藤先生、 航空宇宙工学の和田先生のインタビューでも語られていましたね。
また、 「人を喜ばせたい、驚かせたいという想い」をモチベーションにできるのも素晴らしいですよね。先生自らもワクワクすることで、デザイナーとしての活動を通した、先生と人々の「win-winの関係」が出来上がっています。
インプットやアウトプットを支える、モチベーションをどのように持つかが大事だということを改めて感じました。
先ほどお話いただいた「デザイナーに必要な力」。
身につけることでデザイナーのお仕事に限らず、人生の様々な場面で活きてきそうな気がしますが、お子様の力として養うために保護者の皆様ができることはあるのでしょうか。
波戸場先生自らの子育ての体験にも触れていただきながら、先生のご意見をお聞きしましょう。
先ほどの質問で答えていただいた力を養うために、保護者の方に理解・協力してもらいたい点はありますか?
小さい頃から自然に触れ、本物を見せることが必須です。お子さんが興味を持ったものは、伸ばしてあげて欲しいです。そして、あまり過保護にせず、ひとりで考えることができる子どもに育てることも大事ですね。
教え込むというよりは、自ら学ぶことができる「環境をつくる」ことが保護者の大切な役割のひとつと言えそうですね!
本物の知識・技術に触れられる環境、親をはじめとしたお手本が見られる環境、大いに失敗できる環境…こうした保護者の「環境づくり」の重要性を一番に語っていただきました。
お話の中には、今日求められる「自ら考え行動する能力」を持つ人材になるためにも重要なヒントがたくさんあったように思います。
お子様のためを思って生まれる、指示を出したり、教え込んだりといった衝動を
ぐっとこらえて、保護者が環境づくりや見守りに徹することで、結果的に「考える力」を身につける機会が増え、お子様の成長にもつながるということでしょうか。
先生のご子息であり、現在はお仕事のパートナーである波戸場耀次さんの子ども時代のお話も印象的でした。
耀次さんに対して、 「絶対的な親と従う子」という上下関係の強い親子関係ではなく、「子どもに対して人として接する」、「子どもの自由を尊重する」 という姿勢を貫いた結果が、 現在のお仕事において 「上司と部下」のような上下関係ではない、「パートナー」という関係となって表れているような気がします。
これまでの記事がきっかけになってくだされば幸いですが、「デザインって面白そう!」と思ったお子様には、是非作品という形で「アウトプット」をしていただきたいと思います。
では、それを支える「インプット」の部分で、具体的にどのようなお手本があるのでしょうか。受験研究社で『自由自在 デザイン』のような参考書をご紹介できればよいのですが、残念ながらそのような書籍のご用意はありません…
そこで第3回最後の質問は、波戸場先生おすすめのデザインの書籍について、お聞きしたいと思います。
デザインで役立ちそうな本があれば教えてください。
『The Non-Designer’s Design Book』
Robin Williams 著,吉川典秀 訳・マイナビ出版
画像クリックで販売サイトにジャンプします。お使いのブラウザ設定によっては表示されません。
デザイン本と言えば、この『The Non-Designers Design Book』をお勧めします。
デザイナー初心者に向けて、見やすく伝わるコンテンツがどのように作られるのかが、非常に分かりやすく書いてあります。
コントラスト・反復・整列・近接というデザインの基本ルールが、多くのデザインを比較しながら解説されています。
難しい専門知識なども使われていないので、容易に読み進められるのも嬉しい点です。
『MdNデザイナーズファイル2019』
MdN編集部 編・ エムディエヌコーポレーション
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4844368451/
国内外で活躍する256人のアートディレクター・グラフィックデザイナーのポートフォリオとプロフィールを紹介している本です。
基本的に有名なデザイナーの作品しか載っていないので、日本のトップのデザインの変遷が見られ、見ているだけで創作意欲を掻き立てられる作品集になっています。
機能的で使いやすく、ワクワクさせられる1冊です。デザインについて教えてくれる書籍も必要ですが、良質なデザインを沢山見ることで自分の中に取り込んでおくことも大事だと思います。
手前味噌でとても恐縮なのですが、家紋をデザインの視点から制作した本が、拙箸の『紋の辞典』です。
家紋の解説もさることながら、パラパラとページをめくるだけでも家紋の美しいデザインが楽しめる本になっていますので、特に家紋のデザインに興味のある方にはぜひ、ご覧いただけると嬉しいです。
初心者でも読みやすく、作品が豊富に掲載されている書籍をご紹介いただきました。
波戸場先生の著書の『紋の辞典』 は前回ご紹介いただいた『誰でもできるコンパスと定規で描く「紋」 UWAEMON』 と合わせて、伝統的な和のデザインやその成り立ちを学ぶにはうってつけです!
ご自宅の家族共用の本棚に1冊しのばせておけば、お子様もふとしたタイミングで「手に取って眺める」という楽しみ方もできるかもしれませんね。
デザインに興味があるお子様には、ご紹介いただいたような書籍を通して、「いいな」と思えるコンテンツにたくさん触れることで、デザインに対する好き!という気持ち、ワクワクする気持ちを持ち続けて欲しいですよね。
波戸場先生、今週もありがとうございました。
今回のインタビューでは、 以下のような学びのヒントがあったと思います。
・お手本にたくさん触れて感性を磨き、引き出しを増やそう
・安心して失敗できる環境をつくろう
多くのお手本となる作品に触れることで感性が磨かれ、増えた引き出しがデザインの武器になるというお話がありました。
紋章上繪師として何万もの家紋と向き合ってきた波戸場先生だからこそ、大人になってからデザインを本格的に始めた波戸場先生だからこそ、確信を持って言えるお言葉だと思います。お子様のインプットにおける大事なヒントとして、挙げさせていただきました。
一方で、アウトプットを躊躇する一因になる「失敗」に関するヒントもありました。
「失敗から学べることもあるからやってみよう!」という気持ちを持てるような、保護者の接し方を探していきたいですよね。
先生の子育てでは「叱る時は、きちんと意味を理解させて叱り、怒ることはしない」というお話がありましたが、「頭ごなしに否定しない」「辛抱強く見守る」というのがひとつの道なのかなとも思います。
また、マラソンの伴走者のように保護者がお子様の活動に寄り添い続けることで「ひとりきりではない心強さ」も生まれると思います。そういう意味では「親子で一緒に学ぶ」という機会も重要なのかもしれませんね。
今回の記事に関連したおすすめの書籍をご紹介させていただきます。
自由自在 中学 見て学ぶ国語
★知っておくべき国語の知識を深められます。国語を学ぶ上で必須の知識はもちろん,その背後に広がる豊かな世界に触れることで,学習内容に対する興味・理解がいっそう深まります。
★系統立てて知識が整理できます。網羅的な知識事項、教養的内容を系統立てて整理した構成になっています。また、関連したページを示すことで、より深い知識を得られるようになっています。
★日本文学史に関するトリビアクイズで国語への知的好奇心を高めます。
資料豊富で、タイトル通り「見る」ことに特化した参考書、 『自由自在 中学 見て学ぶ国語 』をご紹介させていただきました。
詩や短歌、漢文などは、お手本となる有名な作品が多く掲載されています。合わせて、国語の文学史も詳しく掲載されており、「日本という名の教養」を深めることができる一冊です。