【第3回】本物のデザインに触れよう!デザイナーに必要な学び方を知る。

デザイナーに求められる力とはなんでしょうか。

こんにちは。manavi編集部です。

今週も引き続き、 「紋章上繪師(もんしょううわえし)」の波戸場承龍先生にお話を伺っていきましょう。

前回の記事では、先生の学生時代についてお聞きし、 紋章上繪師・ デザイナーとしての現在に役立ってきた経験についてお話しいただきました。

前回のインタビューにもあったように、50歳前後で新しい家紋デザインに挑戦するようになるまで、「デザインの勉強はしたことがなかった」という先生。

そこからどのように学ぶことで、たくさんの作品を生み出すに至ったのでしょうか。とても気になりますよね!

そこで今回のインタビューは、デザイナーを目指すお子様のご参考になるような、デザインのお仕事に必要な力やそれを育むための環境について、家紋デザイナー・波戸場承龍先生の視点から語っていただきたいと思います。

それでは波戸場先生、今週もよろしくお願いいたします。

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ワクワクをデザインの原動力に

まず最初の質問は、先生が思う「デザイナーに必要な力」についてお聞きしましょう。

デザイナーに必要な力とはどんなものですか?

デザインする上で、まず自分が楽しいか、ワクワク出来ているかが一番大切なことだと思っています。こんなものが欲しいな!あったら楽しいな!と自分自身がワクワクしながらデザインすることが大事なのです。

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また、人を喜ばせたい、驚かせたいという想いも大きな力になります。

美しいデザインをするには自然界をよく観察することも大切です。植物から宇宙まで、自然は自らを美しく見せるすべを知っていて、あらゆるところに黄金比やフィボナッチ数列などの法則が隠れています。これ以上のお手本はありません。

家紋のモチーフには植物が多いので、道端の花や葉をよく観察して、美しいフォルムを導き出しています。その次に、先人が残した「いいデザイン」をたくさん見ること、本物に触れることも大事ですね。

たくさん見たり触れたりすることで感性が豊かになっていきます。知識や引き出しが多ければ多いほど、デザインする時の武器になり、新しい発想やアイデアがどんどん思いつくようになります。

そして知識を吸収したらアウトプットすること。思いついたらまず行ってみることでスキルがアップしていきます。

デザイナーの場合、依頼者の思いやイメージを形にする力も問われますから、いかに相手の思い描いているイメージを聞き出すかというコミュニケーション力も必要になってきます。

そしてデザインの世界は、移り変わりが速い業種ですから、常に好奇心を持って色々なことにアンテナを張って情報を収集する力も必要です。

まとめるとワクワク、観察力、発想力、コミュニケーション力、情報収集力などが、デザイナーにとって必要だと思っています。

インプットとアウトプット、そしてそれらを通して「ワクワクできるか」が重要なんですね!

スポーツでは優れた選手の動きを体得する、座学においては、教科書の解き方を参考にする、といった「お手本の真似をする」という王道の学び方がありますよね。デザインの技術においても、質の良いお手本にたくさん触れることの重要性をお話しいただきました。

こうしたインプットのきっかけとなる「観察力」については、昆虫学の後藤先生、 航空宇宙工学の和田先生のインタビューでも語られていましたね。

また、 「人を喜ばせたい、驚かせたいという想い」をモチベーションにできるのも素晴らしいですよね。先生自らもワクワクすることで、デザイナーとしての活動を通した、先生と人々の「win-winの関係」が出来上がっています。

インプットやアウトプットを支える、モチベーションをどのように持つかが大事だということを改めて感じました。

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保護者にやって欲しい「環境づくり」

先ほどお話いただいた「デザイナーに必要な力」。
身につけることでデザイナーのお仕事に限らず、人生の様々な場面で活きてきそうな気がしますが、お子様の力として養うために保護者の皆様ができることはあるのでしょうか。

波戸場先生自らの子育ての体験にも触れていただきながら、先生のご意見をお聞きしましょう。


先ほどの質問で答えていただいた力を養うために、保護者の方に理解・協力してもらいたい点はありますか?

小さい頃から自然に触れ、本物を見せることが必須です。お子さんが興味を持ったものは、伸ばしてあげて欲しいです。そして、あまり過保護にせず、ひとりで考えることができる子どもに育てることも大事ですね。

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「子は親の鏡」という言葉がありますが、子どもは一番身近な親を見て育ちます。人は環境に大きな影響を受けますから、いつも楽しく明るい家庭で育った子どもは陽気な子に育ちます。親は子どもに教えるという立場ではなく、率先して見せることを意識して欲しいです。

見せてその楽しさを発見させる環境を作ること。それが親の役割だと考えています。

そして、子どもが失敗しないようにと、先回りして手をかけないことも大事です。失敗の中からの学びは考える力を養いますから、大いに失敗をさせてあげさせて下さい。

息子は、昭和58年、僕が26歳の時に生まれました。子育てが楽しくって、保育園の送り迎えはいつも僕がしていました。育メンという言葉がなかった頃です。

仕事場にも連れていき、どのように仕事をしているかも見せていました。親だからと言って子どもより優れている訳ではないので、常に「人」として接するように心がけ、叱る時は、きちんと意味を理解させて叱り、怒ることはしませんでした。

親目線の言動を避け、子どもの好奇心や自由を尊重して育てたせいか、息子は様々な経験を経て、今では物事を多面的に判断できる頼もしい相方になりました。

お互いの才能を認め合い、それぞれの短所を補うビジネスパートナーとして、毎日、一緒に仕事をしています。


教え込むというよりは、自ら学ぶことができる「環境をつくる」ことが保護者の大切な役割のひとつと言えそうですね!

本物の知識・技術に触れられる環境、親をはじめとしたお手本が見られる環境、大いに失敗できる環境…こうした保護者の「環境づくり」の重要性を一番に語っていただきました。

お話の中には、今日求められる「自ら考え行動する能力」を持つ人材になるためにも重要なヒントがたくさんあったように思います。

お子様のためを思って生まれる、指示を出したり、教え込んだりといった衝動を
ぐっとこらえて、保護者が環境づくりや見守りに徹することで、結果的に「考える力」を身につける機会が増え、お子様の成長にもつながるということでしょうか。

先生のご子息であり、現在はお仕事のパートナーである波戸場耀次さんの子ども時代のお話も印象的でした。

耀次さんに対して、 「絶対的な親と従う子」という上下関係の強い親子関係ではなく、「子どもに対して人として接する」、「子どもの自由を尊重する」 という姿勢を貫いた結果が、 現在のお仕事において 「上司と部下」のような上下関係ではない、「パートナー」という関係となって表れているような気がします。

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波戸場先生おすすめのデザインの書籍

これまでの記事がきっかけになってくだされば幸いですが、「デザインって面白そう!」と思ったお子様には、是非作品という形で「アウトプット」をしていただきたいと思います。

では、それを支える「インプット」の部分で、具体的にどのようなお手本があるのでしょうか。受験研究社で『自由自在 デザイン』のような参考書をご紹介できればよいのですが、残念ながらそのような書籍のご用意はありません…

そこで第3回最後の質問は、波戸場先生おすすめのデザインの書籍について、お聞きしたいと思います。


デザインで役立ちそうな本があれば教えてください。


『The Non-Designer’s Design Book』
Robin Williams 著,吉川典秀 訳・マイナビ出版

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デザイン本と言えば、この『The Non-Designers Design Book』をお勧めします。

デザイナー初心者に向けて、見やすく伝わるコンテンツがどのように作られるのかが、非常に分かりやすく書いてあります。

コントラスト・反復・整列・近接というデザインの基本ルールが、多くのデザインを比較しながら解説されています。

難しい専門知識なども使われていないので、容易に読み進められるのも嬉しい点です。

『MdNデザイナーズファイル2019』
MdN編集部 編・ エムディエヌコーポレーション

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国内外で活躍する256人のアートディレクター・グラフィックデザイナーのポートフォリオとプロフィールを紹介している本です。

基本的に有名なデザイナーの作品しか載っていないので、日本のトップのデザインの変遷が見られ、見ているだけで創作意欲を掻き立てられる作品集になっています。

機能的で使いやすく、ワクワクさせられる1冊です。デザインについて教えてくれる書籍も必要ですが、良質なデザインを沢山見ることで自分の中に取り込んでおくことも大事だと思います。

『紋の辞典』
波戸場承龍,波戸場耀次 著・雷鳥社

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手前味噌でとても恐縮なのですが、家紋をデザインの視点から制作した本が、拙箸の『紋の辞典』です。

家紋の解説もさることながら、パラパラとページをめくるだけでも家紋の美しいデザインが楽しめる本になっていますので、特に家紋のデザインに興味のある方にはぜひ、ご覧いただけると嬉しいです。

初心者でも読みやすく、作品が豊富に掲載されている書籍をご紹介いただきました。

波戸場先生の著書の『紋の辞典』 は前回ご紹介いただいた『誰でもできるコンパスと定規で描く「紋」 UWAEMON』 と合わせて、伝統的な和のデザインやその成り立ちを学ぶにはうってつけです!

ご自宅の家族共用の本棚に1冊しのばせておけば、お子様もふとしたタイミングで「手に取って眺める」という楽しみ方もできるかもしれませんね。

デザインに興味があるお子様には、ご紹介いただいたような書籍を通して、「いいな」と思えるコンテンツにたくさん触れることで、デザインに対する好き!という気持ち、ワクワクする気持ちを持ち続けて欲しいですよね。

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学びのヒント

波戸場先生、今週もありがとうございました。

今回のインタビューでは、 以下のような学びのヒントがあったと思います。

ヒント

・お手本にたくさん触れて感性を磨き、引き出しを増やそう

・安心して失敗できる環境をつくろう

多くのお手本となる作品に触れることで感性が磨かれ、増えた引き出しがデザインの武器になるというお話がありました。

紋章上繪師として何万もの家紋と向き合ってきた波戸場先生だからこそ、大人になってからデザインを本格的に始めた波戸場先生だからこそ、確信を持って言えるお言葉だと思います。お子様のインプットにおける大事なヒントとして、挙げさせていただきました。

一方で、アウトプットを躊躇する一因になる「失敗」に関するヒントもありました。

「失敗から学べることもあるからやってみよう!」という気持ちを持てるような、保護者の接し方を探していきたいですよね。

先生の子育てでは「叱る時は、きちんと意味を理解させて叱り、怒ることはしない」というお話がありましたが、「頭ごなしに否定しない」「辛抱強く見守る」というのがひとつの道なのかなとも思います。

また、マラソンの伴走者のように保護者がお子様の活動に寄り添い続けることで「ひとりきりではない心強さ」も生まれると思います。そういう意味では「親子で一緒に学ぶ」という機会も重要なのかもしれませんね。

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manaviおすすめの本

今回の記事に関連したおすすめの書籍をご紹介させていただきます。

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今回の賢者

波戸場 承龍

着物に家紋を手で描き入れる紋章上繪師としての技術を継承する一方、家紋の魅力を新しい形で表現するアート作品を制作。
紋章上繪師ならではの「紋曼荼羅®」というオリジナル技法を生み出し、家紋やロゴデザインの域を超えて、森羅万象を描き出す職人兼デザイナー。

著書『紋の辞典』『誰でもできる コンパスと定規で描く「紋」 UWAEMON』

波戸場先生の詳しい情報はこちらから

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