身近なものに置き換える?イメージを掴みながら論説文を読もう!<後編>【ミニ読書連載第5回】

こんにちは。増進堂・受験研究社、編集部の永峰です。


この記事は論説文のミニ読書に関する記事の「後編」となります。まずは「前編」を、下記のリンクからご一読ください。

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身近なものに置き換える?イメージを掴みながら論説文を読もう!<前編>

この記事では、前回から引き続き『中学 自由自在 国語』の中で扱われている池内了さんの『科学者と戦争』の一節を題材に、論説文のミニ読書のアプローチをご紹介していきます。

ここまでは、

・自分の知っている言葉に「置き換える」
・本文の逆パターンを想定して「比較する」

という2つのステップを踏んできました。

そして、いよいよこの「後編」では、タイトルにもなっている「身近なものに置き換える」のステップに移りたいと思います。

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いよいよ「身近なものへの置き換え」に挑戦!①


文章をここまで2つのステップで整理してみても、「軍事開発」という概念そのものに馴染みがなさ過ぎて、この文章が言っていることのイメージが掴みづらいお子様は多いと思います。

そこでいよいよ「身近なものへの置き換え」の出番です。

まずは、「軍事開発」ではない場合、つまり自社で独自に開発する際のデメリットやリスクを数学の方程式を模して表してみますね。

自社で独自に新製品を開発する場合

新製品を自社で独自に開発する場合のデメリットやリスク
+最初に必要なお金を自分で払わないといけない
+利益が出るかどうかを考えないと新しい製品が作れない
+製品を作るのに必要な器具・装置・部屋などのお金を自分で払わないといけない
+利益を得るために、たくさんのお金を出さないといけない


「論説文の内容を自分の方に引き寄せる」上で重要なのは、次の2つのアプローチです。

①自分の身近な人、こと、ものに置き換えて考えてみる。
②抽象的にではなく、より具体的に考えてみる。


ということで、この方程式の「解」の部分だけをまずは身近なものや自分の好きなものに置き換えてみましょう。

私は甘いものに目がないので、今回は「町の洋菓子屋さんになって新商品のシュークリームを開発する」というシチュエーションを想像しながら、考えてみることにします。


すると、先ほどの方程式は次のように変化します。

新製品のシュークリームを自分の店で独自に開発する場合

新製品のシュークリームを自分の店で独自に開発する場合のデメリットやリスク
最初に必要なお金を自分で払わないといけない
利益が出るかどうかを考えないと新しい製品が作れない
製品を作るのに必要な器具・装置・部屋などのお金を自分で払わないといけない
利益を得るために、たくさんのお金を出さないといけない

では、これに対応する形で足し算をしている他の要素が具体的に何を表しているのかをイメージしてみましょう。


まず、「最初に必要なお金を自分で払わないといけない」「製品を作るのに必要な器具・装置・部屋などのお金を自分で払わないといけない」の2つについて。

シュークリームを作るには、材料を買ってこないといけませんし、オーブンやミキサーといった道具(設備)を準備しなければなりませんね。


次に、「利益が出るかどうかを考えないと新しい製品が作れない」について。

無事にシュークリームができたからと言って、人気が出て、売れるかどうかは分かりませんよね。つまり利益が出るかどうかが分からないのです。

仮に開発するために100万円の資金を借りたとして、シュークリームが10万円分しか売れなかったら…。この場合私は90万円の借金を背負ってしまいます。

一方で、もしかすると、200万円分売れて100万円の儲けが出るかもしれませんよね。

つまり、私はシュークリームを開発する段階で、儲けが出るかどうか分からない状態で、お金を借りるというリスクを冒さなければならないのです。

これは「利益を得るために、たくさんのお金を出さないといけない」の部分にも関連してきますね。

整理するとこうなります。

新製品のシュークリームを自分の店で独自に開発する場合

新製品のシュークリームを自分の店で独自に開発する場合のデメリットやリスク
シュークリームの材料費などの最初に必要なお金を自分で払わないといけない
利益が出るかどうかを考えないとシュークリームを作れない
シュークリームを作るのに必要なオーブンやミキサーなどのお金を自分で払わないといけない
利益を得るために、たくさんのお金を出さないといけない


では、ここで質問です。

皆さんなら、この状況で、お金を借りて新商品のシュークリーム開発に乗り出しますか?

私なら「お金借りるのが怖いから、やめておこう…。」と尻込みするような気がします。


では、「軍事開発」の場合だとこれがどのように変化するのでしょうか。考えていきましょう。

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いよいよ「身近なものへの置き換え」に挑戦!②

デメリット・リスクの時と同じように、次はメリットを方程式で表現してみます。

「軍事開発」で企業が新商品を開発する場合

「軍事開発」で企業が新商品を開発する場合のメリット
最初に必要なお金を軍に肩代わりしてもらえる
利益が出るかどうかを考えずに新しい製品を作れる
軍が製品を作るのに必要な器具・装置・部屋などにお金を出してくれる
利益を得るために、出さなければならない資金を少なくできる
開発の過程で生まれた副産物を自分の企業だけで販売できる


これをシュークリーム開発に置き換えていくのですが、町のお菓子屋さんにとって資金源となってくれる「軍」は例えば何に当たるんでしょうか。ここは少し想像力が必要ですね。

身近なもので言うと、「コンビニスイーツ」がこれに該当するかもしれません。


コンビニ側から町のお菓子屋さんを営んでいる私に、「一緒にシュークリームを開発して、コラボ商品を販売しませんか?お金や材料、道具は全部こちらで準備します!」と言ってきてくれたとしたら…。

こういうケースであれば、お金のことを心配することなく思いっきりシュークリームを開発することができますよね。

それを踏まえて、先ほどの方程式の解の部分を置き換えてみます。

コンビニとコラボして町のお菓子屋さんがシュークリームを開発する場合

コンビニとコラボして町のお菓子屋さんがシュークリームを開発するメリット
最初に必要なお金を軍に肩代わりしてもらえる
利益が出るかどうかを考えずに新しい製品を作れる
軍が製品を作るのに必要な器具・装置・部屋などにお金を出してくれる
利益を得るために、出さなければならない資金を少なくできる
開発の過程で生まれた副産物を自分の企業だけで販売できる

では、1つ1つ要素を置き換えてみましょう!


まずは「最初に必要なお金を軍に肩代わりしてもらえる」「軍が製品を作るのに必要な器具・装置・部屋などにお金を出してくれる」の部分について。

これは、つまりコンビニ側がシュークリームを作るのに必要な材料費やオーブンやミキサーなどの道具を買うのにかかるお金を払ってくれるということになります。

次に「利益が出るかどうかを考えずに新しい製品を作れる」「利益を得るために、出さなければならない資金を少なくできる」について。

これはコンビニ側がお金を出してくれ、仮に損が出たとしてもその責任を負ってくれるので、町のお菓子屋さん側は利益を考えずにシュークリーム作りに専念できるということになります。


そして「開発の過程で生まれた副産物を自分の企業だけで販売できる」というメリットを、このケースに当てはめて考えてみると…

シュークリーム開発の過程で美味しいカスタードクリームができたとして、そのクリームを私は、自分の店で提供しているケーキやタルトに使って販売できる。


といったことが考えられます。

いや~至れり尽くせりじゃないですか…。


では、ここまでの内容を整理しておきます。

コンビニとコラボして町のお菓子屋さんがシュークリームを開発する場合

コンビニとコラボして町のお菓子屋さんがシュークリームを開発するメリット
最初に必要なお金をコンビニ側に肩代わりしてもらえる
利益が出るかどうかを考えずに新しいシュークリームを作れる
コンビニ側がシュークリームを作るのに必要なオーブンやミキサーなどのお金を出してくれる
利益を得るために、出さなければならない資金を少なくできる
シュークリーム開発の過程で生まれた美味しいカスタードクリームを自分の店の他のケーキに使って販売できる

いや~最高ですね…。
さあ、ここで改めて考えてみましょう!


皆さんなら、自分で独自に開発する最初のシチュエーションと、コンビニがコラボを持ちかけてくれた2つ目のシチュエーション、どちらならシュークリームを開発したいですか?

私は迷わず2つ目を選びます。

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「論説文」はイメージを掴むことが大切!


さて、「軍事開発」の話をしていたのに、いつの間にか美味しいシュークリームを作る話になってしまいましたね。

しかし、この身近で具体的なシチュエーションを想像することで、この文章が一体どんなことを言っているのかがイメージしやすくなったような気がします。

もちろん、この読解のアプローチは時間がかかりすぎますし、試験やテストの際にやるのはおすすめしません。

しかし、「ミニ読書」の機会に、論説文への苦手意識を払しょくしたり、何とか読んでみるきっかけを作ったりする上では、非常に有効なアプローチに成り得る場合があります。

読解においては、著者の書いているものに読者である自分を近づけていくのが定石です。

でも、それが難しいと感じるのであれば、「ミニ読書」でまずは著者の書いたものを読者、つまり自分の方に引き寄せて考えてみるのもアリじゃないでしょうか?

その際は、今回の記事でご紹介したように、次の3つのステップを意識してみてください。

①文章の内容を本文の言葉を書き出しながら整理してみる
②書き出した内容を、辞書などを駆使して、自分の言葉で平易な内容に置き換えてみる
③平易にした内容を自分の身近なものや好きなものを例にして具体的にイメージしてみる


今回は、私が甘いもの好きだったので、シュークリーム開発をイメージしてみましたが、これについてはお子様が好きで身近に感じられる他のもので構いません。

「自分ならどうするか?」「自分ならどう感じるか?」といった「自分ごと」のレイヤーまで論説文の内容を落とし込んでみることが、大切なのです。

ぜひ、この夏休みに参考書や問題集に掲載されている論説文を使って、こんな「ミニ読書」のアプローチにもチャレンジしてみてください。

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