コンピュータ科学の分野ではどんな力が求められるのでしょうか?また、学校の勉強だとどの教科が重要なのでしょうか?
今週も引き続き、美添先生にお話を伺っていきます。
2020年度からプログラミング教育を小学校から実施していこうという動きがみられています。
プログラミングというのは、コンピュータを動かすための手段であり、コンピュータ科学を構成する要素の1つです。
学校教育の現場で、プログラミングについて扱われるようになることで、当然このコンピュータ科学の分野に興味を持つ子どもは増えてくると思います。
そこで、今回はそこから発展し、広くコンピュータ科学の世界で活躍するために求められる力や知識を美添先生にお伺いしました。
また、それを踏まえて、学生時代にどんな勉強をしておくと良いのかについてや読んでおいた方が良い本についてもお聞きしていきます。
それでは、 美添先生よろしくお願いいたします!
プログラミング学習等も小学校から始まってきますが、お子様がコンピュータ科学に興味を持った際に、どんな力や技能が必要になってくるのでしょうか。
コンピュータ科学の最前線でご活躍されている美添先生にズバリお聞きしてみました。
先生の専門領域で必要になる学力・力とはどんなものですか?
当たり前ですがまずは論理的な思考力と、コンピュータの知識です。それ以外だと繰り返しになりますが、英語ですね。
コンピュータの知識だけではだめで、数学や英語、論理的思考力など様々な力が求められるんですね。
「学校の勉強なんて役に立たない。」というのは、子どもがしばしば口にする勉強をしないための口実です。
確かにコンピュータについて研究したければ、学校の勉強なんてせずに、ひたすらコンピュータの専門的なことを学べば良いんじゃないかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、学校で学ぶ内容というのは、非常に重要な「学びの基礎」の部分であり、その後の学びに寄与するものです。
例えば、美添先生が仰っているように英語が分からないと、海外の研究論文が読めないため、コンピュータ科学の学びの領域が限られてしまいます。
数学を通じて養われる論理的な思考力は、例え将来的に数学を扱う職業に就かなかったとしても、社会人としては重要なスキルです。
このように学校で習う教科についてしっかりと学んでおかないと、将来自分が何かをしようとか、何かを学ぼうと思ったときに、自分の足枷になってしまうことが考えられるのです。
小さなお子様に理解してもらうのは、難しいかもしれませんが、保護者の皆さまの言葉で、こういったことをぜひお子様に伝えてあげて欲しいです。
先ほど、コンピュータ科学の分野で活躍するためには、専門知識だけでなく論理的思考力や英語力が求められるというお話をしていただきました。
では、それらの力を養っていくために学生時代の勉強の中で、どんなことに意識すれば良いのでしょうか。
小中高生の子どもたちができるとしたらどんな勉強ですか?
数学と英語はとりあえずやっておいて、あとは面白いと思ったことを深く調べましょう。
なるほど。自分の興味や好奇心も大切ですが、その前に必須と思われる勉強にしっかりと取り組んでおくことが大切なんですね。
賢者のインタビューにお答えいただいている先生は、この質問に対して、どちらかというと自分が興味を持ったことや好奇心を持ってことにどんどん取り組んでみようという風にお答えいただいておりました。
一方で、美添先生は自分が「面白い」と感じたことを学ぶことも大切だとしたうえで、様々なことに「面白さ」を見出せるようになるためには、学校で学ぶような基礎的な学習が重要だと語っています。
前回の記事の筋トレ的学習のところでも言及されていましたが、美添先生は数学が苦手で、あまり好きではなかったようです。
しかし、自分の好きなコンピュータ科学の分野に進むために必須であり、重要だったからこそ、時間をかけて勉強し、理解を深めたそうです。
確かに私たちの世界には、たくさんの「面白い」ことがあります。
ただ、それを「面白い」と感じられるかどうかには、自分の中にある知識・技能や教養が深く関わってくるのです。
お子様が何か自分の好きなことに没頭し、学校の勉強を敬遠するようになることもあるでしょう。
そんな時に、保護者の皆さまが、その「好き」と学校の勉強のリンクを示してあげることができると、お子様にとっての学ぶ目的が明確になり、勉強に取り組む必要性をより具体的に理解できるのではないでしょうか。
さて、第3回の最後ということで、賢者の先生にはいつもお聞きしている「おすすめの本・参考書」についての質問を投げかけてみました。
今回、美添先生はかなり具体的に書籍を挙げてくださっているので、非常に参考になるのではないかと思います。
小中高生にむけて、おすすめの本や参考書などあれば教えてください。
少し難しめの本ですが、秋の夜長に挑戦してみてください。「最短経路の本」、一見、探索と関係なさそうな「乱択アルゴリズムの本」、「囲碁プログラム」の本を紹介します。
1冊目は『最短経路の本 レナのふしぎな数学の旅』です。
この書籍は、 最短経路にはどういう物があるのか、 日常生活に技術がどのように影響を与えているのかが分かりやすく説明してくれています。
中学生から高校生にかけておすすめです。
2冊目は『数学ガール/乱択アルゴリズム』という書籍です。
乱択アルゴリズムとは「乱数」を使ったアルゴリズムのことです。
コンピュータの中で擬似的にサイコロを振るような操作を繰り返すことでいろいろな計算をすることができます。
実はこの方法を探索アルゴリズムに使うこともできます。
高校生以上におすすめしますが、中学生でも読めるかも知れません。
最後に『最強囲碁AI アルファ碁 解体新書 増補改訂版』をおすすめしておきます。
アルファ碁というのは、人間の名人に勝った囲碁プログラムの名前です。
本書は、その仕組みを詳しく解説してくれています。
最先端の内容を説明しているので、高校生の方には少し難しいかもしれませんが、良かったらチャレンジしてみてください。
具体的な書籍名を挙げてくださり、非常に参考になりました。すぐにでも読んでみたいです!
特に1冊目の『最短経路の本 レナのふしぎな数学の旅』は、物語を読みながら、数学について学べる本のようなので、入門編としては非常に読みやすそうな内容ですね。
もし興味を持った本があれば、ぜひチェックしてみてくださいね。
美添先生、ありがとうございました。
今回の学びのヒントとしては、「『面白い』を追いかけるためには学校での勉強も非常に重要である」というところでしょうか。
小さなお子様であれば、自分の興味の持ったことや「面白い」と感じたことにとにかく取り組んでみることは非常に大切です。
しかし、ある程度の年齢に達して、自分の「好き」や「面白い」を将来の仕事や研究につなげようと考えたときに、実は学校の勉強というものがすごく重要になってきます。
先生のお話の中で言うと、コンピュータ科学の研究に数学や英語が必要不可欠という点ですよね。
また、学校で学ぶ内容というのは、美添先生も仰っているように、習得したり、理解するのにすごく時間がかかるものが多いのです。
将来、自分が「面白い」と思えることに出会ったときに、学校で学習する基礎の部分を疎かにしていたがために、それを追いかけるのを諦めなければならない状況に追い込まれないよう、お子様にアドバイスをしてあげてください。
「面白い」ことを学ぶためには、「面白くない」と感じることでも学ぶ必要があるのです。
今回の記事に関連したおすすめの参考書・問題集をご紹介させていただきます。
美添先生が英語が大切ですということを強調されていたので、今回は受験研究社一押しの英語の問題集をご紹介します。
『中学 英語 自由自在問題集』は、多様な問題を収録した問題集であるだけでなく、文法の解説や入試対策も収録しており、非常に充実しています。
また、解答解説が非常に詳しいので、英語が苦手なお子様にもおすすめできる1冊となっています。