日本で働く外国人が今後ますます増えていくと思われますが、やはり英語が必須でしょうか…?
今週からは、新しい賢者の先生にお話を伺っていきます。
インタビューにお答えいただいたのは、株式会社エルロン代表取締役、そして日本語講師としてもご活躍されている石川陽子先生です。
先生は、日本の企業で働く外国人を対象とした、社会人基礎力養成を取り入れたビジネス日本語カリキュラムを作成し、大手コンビニ、国立大学等にて授業を実施などに取り組まれてきました。
日本は諸外国と比べ、人口に占める在留外国人の割合が低いことで知られますが、外国人労働者の流入等によりその割合は上昇傾向にあります。
こういった状況が進むと、当然保護者の皆さまが勤められている職場に外国人がいるなんてことは当たり前になっていくかもしれません。
加えて、外国人労働者の御子弟も一緒に日本へやって来るわけですから、皆さまのお子様の通う学校にも外国からやって来た子がいるというケースも増えていきます。
しかし、日本人の気質的に英語でのコミュニケーションに不安や気負いを感じてしまい、積極的に関わりを持とうとしないなんてことも懸念されますね。
外国人の側からすると、コミュニケーションを取ってもらえずに不安を抱えてしまい、日本に居心地の悪さを感じてしまうことでしょう。
これからの日本でそんな状況が想定されるからこそ、今回は外国人労働者や日本への留学生への日本語教育に取り組まれてきた石川先生にお話を伺う運びとなりました。
職場だけでなく学校現場にも密接に関わってくる可能性があるお話ですので、ぜひ全4回のインタビュー記事をお読みいただき、この話題についてお子様と共有していただけますと幸いです。
それでは、石川先生よろしくお願いいたします。
さて、最初にもご紹介したように石川先生は日本で仕事や学業に励まれている外国人の日本語教育に取り組まれています。
そんな先生が、今どんな活動や取り組みをされているのかについて、最初にお話を伺いました。
石川先生は海外から日本に来て仕事や学業をされる方への日本語教育に取り組まれていると伺っております。
その中で、具体的にどのような活動をされているのか、教えてください。
「やさしい日本語」を使って、外国人と日本語でコミュニケーションをとるためのサポートに取り組んでいます。
「やさしい日本語」というキーワードが挙がりましたが、どういったものなのでしょうか?
「やさしい日本語」は、日本人が簡単な練習をすることで使えるようになる、外国人とのコミュニケーションツールだと思っています。
石川先生が取り組まれている「やさしい日本語」のワークショップの様子もご紹介させていただきます。
こういった画像だけを見ると、多くの方は「英語」を使っているんだろうなと想像すると思いますが、実は先ほどもお話があったように日本語を使って学んでいるんですね。
外国の方を見ると、どうしても「外国語」で話さなければという先入観を持ってしまいます。
しかし、日本にいる外国の方と話す際は、こういった「やさしい日本語」でコミュニケーションを取ってみるのは、メリットも大きいのではないでしょうか。
さて、先ほどの先生の取り組みの紹介の中で「やさしい日本語」というキーワードが挙がりました。
日本にいる外国人にも伝わる日本語ということで、概要をお話しいただきましてが、石川先生はそんな「やさしい日本語」にどんなメリットを見出しているのでしょうか。
日本国内で、外国籍の方々に英語ではなく「やさしい日本語」で対話することのメリットはどんなところなのでしょうか?
日本語を少し工夫するだけで、私たちは母語で、外国人の方々とコミュニケーションをとることができます。これは当然メリットです。
なるほど。日本語でコミュニケーションをとれたという経験が自信に繋がっていくわけですね!
「やさしい日本語」の普及活動に力を入れ始めた理由のひとつが、次のデータにあります。
このデータは、日本にいる外国人に質問し、得た回答の結果データです。
一方で、日本人に「あなたは、自信をもって英語で言いたいことを伝えることができますか?」という質問に、「はい」と答えた方は15%だったというデータもあります。
これらのデータからも、日本で生活している外国人とのコミュニケーションは、「日本語」が双方にとってよい、ということが分かると思います。
このお話を、様々な団体や企業ですると「そうなんですね!」と、少し安心したような表情をされるのが印象的です。
私たちの母語を、少し工夫するだけで、様々な国の方とコミュニケーションができるとしたら・・・素敵ですよね。
生活も学びも、「やさしい日本語」を使うことで可能性が広がっていくと感じています。
ぜひ、みなさんに、「やさしい日本語」を試していただきたいです。
日本人は「バイリンガル」や「外国語が話せる」ということに対して、自分に課すハードルが高いとも言われますよね。
そのため「あなたは、自信をもって英語で言いたいことを伝えることができますか?」という質問に「はい」と答える自信を持っている方が少ないのだと思われます。
そんな傾向があることを考えても、日本語を使うことで、外国の方とのコミュニケーションへの抵抗感が軽減されるのが大きいですね。
また、外国の方にとってもメリットがあるというのは非常に重要なことだと思います。
観光客の場合であれば、一時的な滞在ですから日本語を話さなくともそれほど大きな問題にはなりませんが、日本に住むとなると日本語を話せないと不安を感じる局面は必然的に多くなります。
そんな心理的な不安を日本語で話せたという成功体験によって和らげる効果があるのは、大きなメリットではないでしょうか。
さて、2019年10月末時点の前年同期から13.6%増の165万8804人に到達するなど、近年日本に在留する外国人労働者が増加傾向にあります。
そんな外国人労働者の子どもたちも日本にやって来るというケースは、当然比例して増えていくと思われますが、現在の日本の学校や教育現場ではそれに対してどれくらい対応できているのでしょうか?
これからまさに課題になっていくであろうこの話題について石川先生にお伺いしました。
企業や組織で働く外国人が増えるということは、その御子弟も増えることになります。在留外国人の方々はどのように日本の学校で学んでおられるのでしょうか?
文部科学省のデータによると、公立学校における日本語指導が必要な児童生徒数は、平成28年時点で、約44,000人いると言われていますね。
学校では、まだまだ対応が追いついていないという状況があるのですね。
大きな大学の近くの効率の小・中学校には、教授として大学に勤めている外国人の御子弟が在籍していることも多いです。
こういった学校でも、担任の先生とは別の先生や支援員・学生サポーターが不慣れな英語で何とかコミュニケーションを取ろうとし、子どもに上手く伝えることが出来ないと四苦八苦している光景が見られました。
また、他の子どもたちが、なかなか外国からやって来た同級生と上手く関わりが持てず、浮いてしまうという状況も懸念されます。
「やさしい日本語」はそういったジレンマを解消するカギになり得る有効なツールだと感じますね。
石川先生、ありがとうございました。
今回の先生のお話の中でのSDGs教育に関する「学びのヒント」としては以下のことが挙げられると思います。
(1)「やさしい日本語」でコミュニケーションを取ることは日本人にとっても外国人にとってもメリットがある
(2)日本の教育現場は、まだまだ外国人の受け入れに追いつけていない状況である
日本人は特になのかもしれませんが、外国人を見ると、まずは「英語で話さなくては!」という先入観を持っている方が多いのではないでしょうか。
しかし、在留で働いていたり、学校で学んでいたりする外国人とコミュニケーションを取ると考えた時に、相手はむしろ日本語での会話を望んでいるかもしれません。
日本語でコミュニケーションを取ることが出来たという経験は、彼らにとっても日本に住む上での不安軽減にもつながります。
もちろん私たちは母語を使うことが出来るわけですから、コミュニケーションを取ることへのハードルが下がりますよね。
このように少し視点やアプローチを変えることで、コミュニケーションに纏わる深刻に思える問題が解決していくこともあるのだと驚かされます。
今回のインタビュー記事で、気になった方はぜひ「やさしい日本語」を調べていただいて、お子様にこんな日本語があるんだよとお話してあげてください。
今回の記事に関連したおすすめの参考書・問題集をご紹介させていただきます。
小学まとめノート 国語 基本語1200
○各ページの上段に言葉とその意味を6つ並べ,下段にそれらの言葉の用例を穴埋め式の問題にして確認できるようにしています。
○言葉やその意味にある赤文字を消えるフィルターを使って消せば,穴埋め問題として何度でも取り組むことができ,理解を深めることができます。
『小学まとめノート 国語 基本語1200』は小学4年生までに覚えておきたい基本的な1200の語彙を収録した問題集となります。
言葉は教科を超えた基礎教養ですので、やはり小学校低学年から徐々に積み上げていきたいですね。
また、同書は日本語を基礎レベルから学べますので、外国語として学ぶ人にも参考になるかもしれません。