こんにちは。元進学塾講師の谷津綱一(やつこういち)です。
10月は内申点に重みのある学校の学習と受験勉強の両立に迫られます。大半の人は部活が終わったにせよ、まだまだ学校行事も忙しいかもしれません。それに思い切り勉強に集中できた夏休みとのギャップも気になります。
そうした事情もあり、10月は特に受験生の気持ちが「揺れやすい」時期だと言われています。それに伴い、保護者の方から塾に寄せられる相談も増えてくる時期でした。
気持ちが不安定になりがちなこの時期、保護者からよくされる相談を列挙しました。
夏と比べると勉強量が明らかに減っている。
勉強に集中できていないように映る。
受験と行事の板挟みで苦しんでいるようだ。
学校内容と受験勉強のどちらも中途半端になっている。
上記の相談には、保護者の苛立ちだったり、お子様の抱える不安だったり、様々な要因がありそうですね。
中でも脱出が難しく厄介なケースは、本人の不安定な気持ちからマイナス思考に陥るものです。
例えば、
「夏にあれだけ勉強したのに結果が出ない」
「最近、周りの友達より自分が劣ってみえる」
といった本人の焦りがあるところに、保護者から直接「他者と比較するような言葉」を投げかけられることなどがきっかけになることも多いですね。
特にご兄弟比較は要注意ですよ!
保護者の皆さまには、子どもの側にいて悩みを打ち明けられる相談相手でいてあげて欲しいと思っております。
もちろん実際はそううまくいかないことは分かっていますが、あまり距離ができてしまうと、子どもたちは家族に見捨てられたという感覚から、受験にひとりで立ち向かうはめになってしまうのです。
子どもたちの心の中では、ご家庭のバックアップを求めています。
では、どんな時にお子様の家族にバックアップして欲しいという「助けてシグナル」が垣間見えるのでしょうか。
最も気づきやすいのは、「志望校が揺らいでいるケース」です。
もちろん、いろいろな高校の情報を得ることで、
「この学校も気に入ったし、あそこの学校も行きたくなった。」
というように希望が膨らむ話なら全く問題ないと思います。その一方で、
「自分には届かないかもしれない。」
と、弱音が出ていつの間にかランクを下げようとしている場合は要注意です。
もちろん志望校を変更すること自体は悪いことではありません。ですが目的のはっきりしないケースでは、客観的な成績評価だけでなく何か別の要因が潜んでいると疑ってかかることも必要です。
この場合、初めから否定はせずに理由をちゃんと聞いたうえで話し合いましょう。意思の疎通がうまく取れなければ学校の先生や塾と連携を取りながら、お子様の気持ちをほぐしてあげるとよいでしょう。
多くの中学生は「この時期、15年間で最大の悩みを抱えている」と言っても過言ではありません。
保護者の方がすべきなのは、お子様の学習面や成績ではなく、不安要素をひとりで抱え込んでいないかを見極めるための対話です。
「勉強しなさい。」「こんな成績だと厳しいんじゃない。」といった直接的で、不安を煽るような声かけではなく、お子様に寄り添い、不安や悩みを理解してあげるような声かけを心がけてみてください。
遠回りに思えるかもしれませんが、それが、お子様がここから学習に集中できるようになるためには必要なステップなのです。
とは言え、実際にお子様の成績が目に見えて下がってくると、本人もそうですが、保護者の皆さまも不安になると思います。
悩んでいる期間は、勉強が手につかないのも事実です。もちろん学習時間は0ではないですし、本人なりに最低限の勉強はしているはずです。
簡単に言ってしまうと「勉強に気がのらない」ということでしょうか。そしてそれは成績に現れます。
でも、こういう時に周りの大人が正面から問い詰めても、上手くいくケースは少ないのです。
保護者の方は心配だと思いますが、ここは腹をくくって割り切るしかありません。
そこで私からのアドバイスとしては、
学習量が減った事実を受け止め、大逆転計画を立てる
ということです。
要は2月や3月の入試時にお子様の学力が自己最高に達していればいいわけですから、 11月よりは12月、12月よりは1月、…、と目に見えて成長することを目指しましょう。
先ほども言いましたが、中学生の気持ちは不安定です。これは逆に言えば、必ずどこかでやる気を出す時期がくるということでもあります。
ですので、保護者の皆さまはその時期が来ることを信じてあげてください。
「もう10月なのに!」と焦るのではなく、「まだ10月だから」くらいの余裕をもって、今は「助走」の時期なんだ!くらいのイメージで、学習計画を考えてみても良いと思います。
ここからは、私の科目である数学でお話ししましょう
初めにも述べましたが、10月は内申点を少しでも確保するための勉強と受験勉強の両立が必要な時期です。
もし、最低限の時間しか取れないならば、学校の中3範囲を進めながら同時に関連する中2範囲を定着させましょう。
具体的に2学期の範囲は、「二次関数」「相似・円」という関数と図形ですね。
中3「二乗に比例する関数」と中2「一次関数」の共通点
変化の割合や変域という関数特有の概念はどちらにも共通しています。特に変化の割合については、一次関数が分かっていないと二次関数でつまずきます。
また、この分野は「座標平面」とくくられるように、ノートにグラフを描きながら長さや面積を求めていきます。これは中2も中3も変わりません。
それに先に述べたように、本来は中2内容を固めてから中3内容の理解が深まることが一般的ですが、何もこれは時間的に順番にしか理解できないものではありません。
そのため、中3内容を理解しようとしているうちに、同時に中2内容の「一次関数」の理解が改めて進むということもあります。
ですから、中2の時に「一次関数」が苦手だったからと尻込みしてしまうのではなく、目の前の中3範囲に心置きなくに取り組んでみてください。
一言アドバイスを申し上げるならば、比を使うと計算が楽になるので、この使い方に慣れる必要があります。また方程式の計算がぐちゃぐちゃになることもあり、計算力が求められます。
中3「円」「相似」と中2「三角形と四角形の性質」「三角形の合同」の共通点
「相似」は小学校内容の延長なのであまり苦手にする生徒はいませんが、「円」は新出単元なので戸惑う可能性もあります。
「円」の基本は理解できても、円内の「三角形の合同」を証明する場合などはどうしても中2の範囲に立ち戻らなければいけません。
ですので、授業やワークでわからない説明が出てきたら中2へ戻るというスタンスが取るとよいでしょう。
この分野で私からアドバイスするなら、回転系の合同や相似の型をまず身につけること。また円内の平行や垂直は新たな合同や相似を生むので、そこに着眼点するとよいでしょう。
このような方法をとる時に、中3の問題集だけではなく、中2の問題集も、あるいは中1のも買わなければならない・・・となってしまってはいろいろ悩みも発生します。
そういう時には、同じテーマが中1内容から中3内容まで網羅されている『自由自在』のような厚物の参考書が役に立ちます。同じような場面は入試までに意外と増えてくると思われますので、一度ご検討されてはいかがでしょうか。
以上、アドバイスも含めてこの時期にまずは取り組んでおきたい数学の学習内容をお話ししました。
記事の冒頭にも書きましたが、10月はいろいろな要因で、受験生が不安や悩みを抱え、「揺れやすい」時期です。
また、そうした「揺れ」が学習に向かう姿勢にも影響を与え、勉強に集中できなくなるといった形で表に出ることも珍しくありません。
そうした時期に、保護者の皆さまにぜひとも意識していただきたいのは、兄弟や他のお子様を引き合いに出して「あの子は◯時間勉強しているらしい」「あの子は夏休み明けのテストで○○点だったみたい」と言った不安や悩みを増長させるような声かけを避けていただくことです。
保護者の皆さまには、「悩みを打ち明けられる相談相手」でいて欲しいと私は思っております。
ですので、悩みや不安に寄り添い、今すぐに勉強の量や強度を一気に上げるのではなく、地に足の着いた学習計画を塾の先生や学校の先生にも相談しながら一緒に考えてあげて欲しいですね。
今回の記事で紹介したようにまずは目の前の中3範囲に集中してというアプローチも有効でしょう。
遠回りに思えるかもしれませんが、そうした「助走」が、お子様が「やる気を出す時期」に差しかかった時に必ず活きてきます。
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