【第5回】高校入試の過去問って何のために解くの?元塾講師が解説する4つの目的

こんにちは。元進学塾講師の谷津綱一(やつこういち)です。

ようやく部活動や学校行事もひと区切りを迎えてくる2学期も後半に差し掛かってくると、受験生や保護者の方から具体的な学校名を話題にした志望校の相談を受けることが多くなります。

今回は、これまで私が相談を受けてきた中から、特に多かった質問や、この時期に参考にしていただけそうな内容をピックアップしてご紹介できればと思います。

志望校が具体的になると入試問題も気になるところ。過去問活用のコツやヒントも合わせて紹介していきますので、受験生本人の状況に合わせて参考にしてみてください。

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1.具体的な志望校選択について

この時期は志望校選びについて様々な相談があります。もちろん学力的な心配事が多いのですが、 他にも次のようなものがありました。

この高校に受かったとしてもついていけるでしょうか。

経験上言えるのは、不安を抱えて入学する生徒の方が入ってから伸びるという好例が多いことです。

逆に「入学前は安全校だったはずなのに、どんどん成績が下がった」という例もあります。

こう考えると、どこに入学しても成績が伸びるかどうかは本人の姿勢次第といえるかもしれません。

ですから安心して目標へ向かってチャレンジするといいでしょう。

公立高校が第一志望です。併願する私立校がまだ決まっていないのですが。

塾にお通いであれば、塾の先生と連絡を取り合ってください。 そうでなければ中学校の先生ヘご相談されるとよいでしょう。

いずれにしても先輩たちの例などから、複数校の紹介があるはずです。

併願校の仕組みは、 お住いの都道府県や地域によって異なります。 「公立第一志望併願優遇」「書類選考」「B推薦」などの聞きなれない用語もあると思うので、 ご家庭が先にリストアップするよりも塾や中学校からの返答を待つ方が得策と言えます。

二番目に行きたい高校の単願推薦がもらえそうです。第一志望をあきらめてそこにするか、家族で悩んでいます。

本人がどうしても第一志望に行きたいなら、あくまでそこを狙うべきです。

後で悔いを残さないようにしましょう。

保護者の方は、第一志望の高校のどんなところがよいと思っているのか、それとなく話題にしてみるのもよいかもしれません。

話をすることで本人の気持ちが整理され、行きたい理由がクリアになれば、第一志望に合格するために勉強を頑張る姿勢にも変化が出てくるように思います。

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2.志望校が決まったら過去問を購入しよう

第一志望の学校や併願する学校が決まってきたら、次は過去問を入手しましょう。過去問とは過去に出題された問題群のことです。

公立の学校なら、各都道府県の教育委員会のHPから解答例付きでダウンロードできます。一部私立高校も同様のサービスを行っているか、 問題冊子や解答用紙を販売している場合もあります。

それとは別に出版社から販売されているものもあります。多くは過去5~7年分が掲載されています。

過去問はやった方がいいですか?

過去問をみれば実際の形式などを知ることができます。

設問の言い回しや紙のサイズや文字の大きさ、解答用紙など、入試本番に目にする情報を予め想定できるようになるので、お子様の気持ちの部分での安心材料になります。

ですので私は、第一志望校の過去問集は購入するよう勧めています。

では、過去問はいつ頃からやり始めるのがいいでしょうか

“過去問を” と漠然と考えている人は、「過去問によって何がしたいか?」をまず考えてみてください。

個々の状況によって過去問の使い方は何通りか考えられます。過去問に取り組み始める時期に関しても、用途に合わせて適切に判断する必要があります。
 

まずは次の2つに大別してみます。

:出題を知って対策を立てる。いわゆる過去問対策として使いたい。

:問題を素材として自身の学習の進捗度合を測る。いわゆる過去問演習をしたい。

もし、 過去問対策を目的とするならば、さらに2つのケースがあるでしょう。

1-A:これから本格的な受験勉強を始めるために絞り込んだ学習がしたい。

1-B:すでに中学範囲が終了し演習も重ねている。いよいよ志望校に特化した学習をしたい。

学習範囲を絞り込むための1-Aのケースならば、
さっそく1年分を眺めて(あるいは解いて)みましょう。この場合は制限時間を気にせずに、たっぷり時間をかけてやってみてください。

ただし、コロナ禍により休校期間も続いた昨年度の入試(2021年初頭に実施された入試)は学校の進度に遅れがあった影響から、出題範囲が限られた可能性があるので避けた方が無難です。

1-A:その後の対策
大事なのは、特に白紙だったところの理由を明確にすることです。

「まだ習っていない」「習ったけど忘れた」というように単純に解決できるものならばいいですが、「このような問題形式にまだ出会ったことがない」だと、早急に手を打つ必要があります。

参考書や問題集で類似のものをいち早く見つけて、さっそく対策に取り掛かってください。

志望校に特化するための 1-Bのケースならば、
私は入試ギリギリの12月頃から始めることをおすすめしています。

知識や解き方を万全にし、さらに志望校でない学校の入試問題にも触れておき、そしていよいよ第一志望校に挑戦するという流れを作ります。

1-B:その後の対策
十分に得点できていれば、これ以上その教科は深追いせずに別の教科の学習に時間を費やしましょう。

ですが 1年分解いてみてとても制限時間内に解き終わりそうになければ、一旦時計をそこでストップさせまたさらに 10 分間追加します。このとき、制限時間内で解いたものと、追加の 10分間で解いたものが後でわかるように目印をつけておきます。 両者を採点し得点を比較します。

もし追加の10分間で10点以上得点が上がるならば、この10分を制限時間内に押し込む努力をします。もっと素早く処理する練習が必要だったり、頼りない知識をより強固にするために単元学習に立ち戻る必要がでるかもしれません。

ただし、10分間の追加で得点があまり変わらずにそもそも得点が低いようであれば、もっと抜本的に学習のやり直しが必要です。

一方で、過去問演習が目的の場合、以下の2つのケースがあるでしょう。

2-A:公立校志望ならば他の都道府県の問題を、私立校志望ならば同レベルの学校の問題を、入試問題のレベルを知るために解く。

2-B第一志望の過去問をやりこむ。

問題のレベルを知りたい 2-Aのケースに関して、
これは極めて重要で、私はぜひともやって欲しいと考えます。

試験感覚を身につけたいならば、模試と同じように時間を測りながらでもいいですし、できるまでとことん向き合うのもいいでしょう。

2-A:その後の対策
正解してもそうでなくても、 「しつかりと問題文を読めたか」、数学であれば「問題文が理解できたか」 を見つめなおします。

読めていなければ改めてじっくり読み込んで、数学であれば解き直しをしましょう。知識の部分に不安があるならば、 並行してその確認や練習も必要です。

第一志望の問題をやり込みたいという2-Bのケースですが、
一見効果がありそうにみえて、 最も危険な学習方法になりやすいので注意が必要です。

「問題を解く」→「解説を読む」→ 「わからないところを質問する」→「再度解く」というサイクルで進めると、生徒自身がやり切ったという満足感に陥り、初見から解ける気になるのが最も怖いからです。

もちろん学習効果はあるにせよ、あくまで過去問は過去の出題なので、 解き直しによる高得点を過信しないでほしいです。

2-B:その後の対策
過去は過去として割り切り、やりこむことはできるだけ避けましょう。

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3.過去問はあくまで過去の参考問題

ここまで、過去問の活用方法を見てきましたが、改めて整理してみたいと思います。

過去問をやることの最大の効果はなんですか。

それは傾向を知ることです。

ある私立高校の学校説明会でも先生方から、 「過去問を参考にしてください」というアドバイスが発せられたことがあります。これはその学校の出題傾向にあまり大きく変化がないことを意味しています。

過去問を学習する上での注意点はありますか。

先ほど述べましたが、 あくまで過去の出題なので結果に一喜一憂しないこと。

それとあまり過去問にのめりこみ過ぎると、少しの形式の変化に対応できなくなる可能性があることです。

入試直後に生徒たちに感想を聞くと、「これまでと傾向が違ったから慌てた」という返事が返ってくることがあります。

実は私たちがみればたいした変化ではないのに、生徒たちは過去問信奉がゆえに敏感になってしまっているのだと思われます。

塾に通っているのですが、 塾の先生にお願いすることはありますか。

解答の添削をお願いすることでしょうか。

本当に〇なのか×なのか、大人の眼でみてもらってください。

また特に記述や証明問題を自身で採点するのは難しいですから、プロに任せた方がいいでしょう。

過去問の活用方法には様々な使い方が考えられます。

活用する目的をはっきりさせたうえで状況に応じた選択を行い、たくさんの学校を購入する必要はないので、第一志望校の傾向を知ることを優先しながら対策を講じて入試を迎えるようにしてください。

著者紹介

谷津 綱一


元進学塾数学科講師。進学塾講師時代には最上位クラスを担当し、数多くの生徒を筑駒や開成などの超難関校合格に導いた実績がある。教室長を歴任したのち、教務部長を務める。

主な著書は『高校への数学 入試を勝ち抜く数学ワザ52』『高校への数学 入試を勝ち抜く数学ワザ・ビギナーズ52』(ともに東京出版)。

趣味は和算の研究。2020年より月刊『中学への算数』(東京出版)で「新・江戸の算術に挑戦!」を連載中。著書『親子で楽しむ 和算の図鑑』(技術評論社)では、生活に根差した和算の考え方をわかりやすく解説している。

関連書籍

絶対に公立トップ校に行きたい人のための 高校入試数学の最強ワザ120
(かんき出版)

★2021年5月に刊行の谷津先生の著書。

★「数学で得点を稼ぎたい」という目標を持って、公立トップ校を狙う中学生のための受験参考書です。

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