SDGsを家庭学習に取り入れるには、どんな取り組みが有効でしょうか?
先週に引き続き、神田外語大学言語メディア教育研究センター長/教授として日々、研究や実践に取り組まれている石井雅章先生にお話を伺っていきます。
石井先生へのインタビューは今回が最終回となります。
前回のインタビューでは、お子様の学びに携わる保護者の皆さまがどんな姿勢で臨むと良いのかといった非常に実践的な回答をいただきました。
ぜひ、そちらもチェックしてみてください。
今回は、最終回ということで、SDGsを家庭での学びに取り入れていくという観点で、様々な質問をしてみました。
家庭でできる取り組みや役立つ本・映画、そして取り組む上での注意点など今日から役立つトピックがたくさん登場します。
ぜひ、最後まで読んでいただいて、皆さまのご家庭での学びが少しでも豊かなものになれば幸いです。
それでは、石井先生よろしくお願いいたします。
まず、最初に、SDGsについてご家庭でできる学びとしてはどんなことがあるのかをお聞きしてみようと思います。
ぜひ、今日からのご家庭での学びに取り入れてみてくださいね。
まだまだSDGsについては、認知が低いと思いますが、まず手軽に家族で始められることがあれば、活動・勉強方法など教えてください。
まずは、自分たちがどうやって生きているのかを知ることが大切かと思います。
「つながり」と「しくみ」がキーワードなんですね!
特別に何かするというよりは、日常の何気ないことを違った視点で見てみるというアプローチですね。
自分の手元にあるものの背後にはどんなシステムが広がっているのかを想像したり、調べたりしながら、理解していくというプロセスは非常に大切です。
そういった思考の癖をつけていけば、石井先生がここまでのインタビュー中でも繰り返し述べてきた「社会をシステムの複合体」として捉えるという視点が身についていくのではないでしょうか。
先ほどは、家庭でできるSDGsの学びということで質問させていただきました。
では、それを実践していく際にどんなことに気をつける必要があるのか、どんなことを意識すると子どもの「学び」につながるのかについてお聞きしてみましょう。
逆に、これだけは「やってはダメ!」というような注意点はありますか?
絶対にダメ、というわけではないのですが、SDGsのアイコン「だけ」に注目して、分かった気になってしまうことには注意した方がよいでしょう。
アイコンだけに注目して、本来のビジョンを見失ってしまうと本末転倒ですね…。
SDGsのアイコンは、街を歩いていても時々、看板等で見かけることがありますよね。
ただ、それはあくまでも人々の興味を引きつけるための入り口でしかないことは理解しておく必要があります。
私たちはそこで止まってしまうのではなく、SDGsが真に目指しているもの、その理念をきちんと把握しておく必要があります。
そして、先生も述べているように、17のゴールが同時に達成されるべきものであるということを忘れてはいけません。
例えば、17のゴールの中には「働きがい、経済成長」に関するゴールが1つ設定されています。
そのゴールだけの達成を考えるとすると、当然のように経済成長のためには環境破壊も厭わないというアプローチも生まれてきますよね。
しかし、他の目標に「海の豊かさを守ろう」「緑の豊かさも守ろう」などがありますから、同時に成立させようと思うと、そのアプローチは成立しえないということになってきます。
そういう風に17のゴールが同時に達成された社会を私たちは目指していくのだということを念頭に置いて、学びを進めていくのは重要と言えるでしょう。
いよいよ、石井先生への質問も最後になりましたので、自宅で手軽に取り組めるということで、SDGsについて学べるおすすめの本や映画などについてお聞きしてみましょう。
ぜひ、お子様のご家庭での学びに役立ててください。
自発的・能動的に学ぶ姿勢を子どもたちが身につけるために、小中学生からでもできることを教えてください。また、その際に保護者はどんなことに留意すればよいのでしょうか?
どんな本よりもまず読んでほしいのが、SDGsが示されている「2030アジェンダ」そのものです。
なるほど!SDGsについて学んだ上で、自分の好きな作品を見てみると、違った側面が見えてくるのですね!
まずは、国連から発行されている資料にきちんと目を通すところから始めるのが良いようですね。
SDGsと聞くと、どうしてもあのアイコンと17の目標が頭に浮かぶ程度になってしまいがちなのですが、そこから1歩2歩踏み込んで、どんな社会像を目指しているのかをイメージしていくことが大切です。
そうしてある程度SDGsについて学んだ後で、自分の大好きな作品を見返してみると、違った見え方をしてくるかもしれません。
例えば、ディズニー映画はとりわけジェンダーや人種の問題に積極的に対応していて、自社の配信サイトでは過去の作品に「時代錯誤の描写がある」という注意書きをしています。
なぜ、こんな注意書きが表示されるのかを、過去のディズニーアニメ作品と近年の実写リメイク作品を見比べながらSDGsの観点から考えてみると、面白い発見があると思います。
具体的な作品としては、レイチェル・カーソンの『沈黙の春』などが挙がっています。
この作品は、歴史の勉強でも習ったりするほど有名なのですが、意外と読んだことがある方は少ないのではないでしょうか。
高校生くらいであれば、『沈黙の春』にぜひ挑戦して見て欲しいですし、小学生であれば、レイチェル・カーソンの伝記本(マンガのものでも)などを読んでみるのも良いのではないでしょうか。
また、『フォレスト・ガンプ』は、普通の子供よりも知能指数の低く、脚装具をつけないとまともに歩けない少年フォレストの特異な人生を描いた作品です。
序盤に、いじめられていたフォレストがいじめっ子から逃げているうちに足が速くなり、それを偶然見ていた大学のアメフト監督に見出され、アメフトで全米代表選手に選出されてケネディ大統領に面会するという展開が描かれます。
このように、ネガティブなことがポジティブに転換していくというプロセスが非常に面白いので、石井先生が述べたように「多様な力」「多様性」という観点で見進めてみると、学びにつながると思いますよ。
石井先生、ありがとうございました。
今回の先生のお話の中での「学びのヒント」としては以下のことが挙げられると思います。
(1)「つながり」と「しくみ」を意識しよう!
(2)SDGsの17のゴールからアイコンを選んだだけで満足しないように!
(3)SDGsを学んだ上で、自分の好きな本や映画を鑑賞しなおしてみよう!
今回のインタビューの中で、17のゴールのアイコンを見ただけで、SDGsについて理解したつもりにならないようにという部分は1つ重要なことだと思います。
アイコンはあくまでも人々の関心を集めるための「きっかけ」に過ぎないのであり、その裏に秘められた理念やビジョンをきちんと把握していくことが、まずは大切です。
その上で、ご家庭での学びにおいては、「つながり」や「しくみ」を日常の些細なことからでも良いので、意識していくこと、そしてSDGsの視点から自分の好きな本や映画を鑑賞しなおしてみることなどが有効です。
これからの社会で活躍する子どもたちには、ぜひこういった視点を持っておいていただきたいですし、社会を「システムの複合体」として捉える感覚を養っていただきたいと思います。
毎日のちょっとした出来事に際しての、保護者の皆さんからの「声かけ」でも、子どもたちの視点や見え方は変わってきます。
ぜひ、全4回のインタビューの中で知り得たことを、今日からの「学び」に取り入れてみてください。
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○図表や写真を多数盛り込み,理解がよりしやすいよう工夫しています。
石井先生のお話の中でも、まずはSDGsについて知るところから始めるべきだというアドバイスがありました。
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