SDGsという言葉をたびたび耳にするようになりましたが、具体的に何をすれば良いのでしょうか…?
今週からは、新しい賢者の先生にお話を伺っていきます。
インタビューにお答えいただいたのは、神田外語大学言語メディア教育研究センター長/教授として日々、研究や実践に取り組まれている石井雅章先生です。
先生は、ICTやデータを活用した新しい授業実践や学習環境づくりに取り組まれている一方で、「持続可能な開発目標(SDGs)」を社会根づかせていくための研究もされています。
そもそも「SDGsとは何か?」という疑問を持たれた方もいらっしゃることと思いますので、少しご紹介させていただきます。
SDGsは「Sustainable Development Goals」の略称で、2015年の国連サミットで採択された国際目標です。「持続可能な世界」を実現するために、環境や人権、教育などの問題に対して私たちが取り組むべき「17のゴール」と「169のターゲット」が設定されています。
「貧困をなくそう」「ジェンダー平等を実現しよう」などの言葉がありますが、これらは国際目標なので、かなり大きなスケールでの話になります。
そのため、SDGsを子どもたちの教育に反映させていこうと考えると、工夫が必要になってきますよね。
今回は、SDGsの研究に取り組まれている石井雅章先生に、これらの目標の実現という地球規模のタスクを子どもたちの領域にまで落とし込むためのヒントを伺えればと考えています。
それでは、石井先生よろしくお願いいたします。
最初の質問ということで、まずは石井先生が普段取り組まれている研究の概要についてお聞きしてみようと思います。
冒頭でもICTを取り入れた学習環境づくりやSDGsとかなり広い範囲の実践をされているとご紹介しましたが、そもそもこれがどんな分野の学問なのかという点も気になりますね。
先生は普段、どのような研究・活動をされているのですか?
様々な分野を横断的に研究・活動しています。
SDGsが掲げる目標を、具体的にどのような形で社会や教育の中に落とし込んでいくかを研究しておられるのですね!
石井先生は大きく分けると2つの研究・実践に取り組まれていますが、両者に共通するのは「環境」というキーワードですね。
前者においては、様々な教育実践に取り組む中で、子どもたちにとってより良い学びの「環境」の整備を目指していると言えます。
後者においては、社会のシステムの中にどうやって「環境」という考え方を組み込むのかを研究していると言えます。
そして、子どもたちの学習システムの中に「環境」という考え方を如何にして取り込んでいくのかというアプローチは、まさに先生がご研究されている2つの柱を合わせて導き出されたものとも考えられます。
石井先生が、新しい教育を模索しつつも、ご専門である環境社会学の中でSDGsについてご研究されているということが分かりました。
次に、その研究や実践のどこに面白さや魅力を見出しているのかをお聞きしてみたいと思います。
現在の研究・活動の中でSDGsの「面白さ」や「魅力」を感じるのはどんな瞬間ですか?
正解のない挑戦的なテーマであることが一番の魅力だと感じています。
なるほど。世界ないし社会をシステムの複合体として捉えるんですね!
物事を捉えるときに、1つのシステムだけに焦点を当てて、その内部にある問題を探していくことももちろん大切です。
しかし、少し視野を広げて、そういった社会内システムの構造やリンクを検討していくことで、新たな発見や対策が見つかることも多いです。
そういう意味でも、SDGsという課題について考えることは、1つの物事を多面的、多角的に読み解くプロセスでもあります。
こういった多様な視点を求められるという部分を、上手く教育の中に取り入れられれば、子どもたちにとっても有益な「学び」になりそうですよね。
ここまでは概要的なお話でしたが、第1回の最後ということでSDGsと教育の話題にも踏み込んでみたいと思います。
SDGsを学校の現場等で子どもたちに伝えていかなければという空気は確かにあるのですが、そのアプローチは非常に難しいものです。
そこで、教育と関連づけて日々実践に取り組まれている先生に、ぜひアプローチのコツなどを伺ってみたいと思います。
SDGsについて教育活動するにあたってどんなことを心がけていますか?
できるだけ、誰かに何かを「教える」という関係性にならないようにすることです。
言われてみると、確かに「持続可能な社会」って正解のない問題ですね。
持続可能な社会が実現できていないからこそSDGsというゴールが作られたのだという事実を再認識することはとても大切ですね。
勉強においては「教える」「教えられる」のそれぞれの立場が明確であることがほとんどですが、未来の社会のビジョンを共に作り上げていくというSDGsの教育活動において、私たちは誰もが「学ぶ」側にいるわけです。
だからこそ、こうしなければならないと「教える」のではなく、石井先生が述べられたように「まず一緒に体験してみる」というアプローチが有効なのだと思います。
石井先生、ありがとうございました。
今回の先生のお話の中でのSDGs教育に関する「学びのヒント」としては以下のことが挙げられると思います。
(1)物事をいくつかの仕組み(システム)の複合体として考える視点を育む。
(2)「まず一緒に体験してみる」を家庭にも取り入れる。
まず、SDGsを如何にして達成していくのかを考えるにあたっては、石井先生も述べられたように1つの物事を多面的・多角的に捉えていく必要があります。
先生のアプローチは社会をシステムの複合体として捉えることで、その構造やリンクを分析しながら、ソリューションを模索するというものでした。
例えば、SDGsの中には「ジェンダーの平等を実現する」というものがありますよね。
これについて考えてみると、歴史、民俗、宗教、社会制度、娯楽、報道…と実に様々な要素が関わり合っています。
こういった多様な視点で1つの物事について考えていくという視点を、獲得できるというのは、非常に重要なポイントですね。
また、体験の中で「創造的に」問題を解決しようとする力が身につくというのも1つ子どもたちの成長に繋がる点ではないでしょうか。
石井先生も述べられたように、「持続可能な社会」にはまだその形がありませんから、それに対して自分なりのアイデアや解決策を提示するにあたって、「正解」「不正解」はありません。
教える側も教えられる側もないので、まずは「一緒に体験してみる」という姿勢が重要になってきます。
体験からスタートすることで、子どもたちは自分の知識や調査、感覚をベースにして、既存の価値観に縛られず自由にかつ柔軟に考えることができます。
ご家庭での学びでも、こういった「まずは体験してみる」を取り入れて、お子様の好奇心を刺激し、創造性の成長に繋げていけると良いですね。
今回は、第1回ということで、先生の研究や実践の概要的な話がメインになりましたが、次回からはもう少しSDGsと教育にフォーカスした内容をお聞きしてみたいと思います。
今回の記事に関連したおすすめの参考書・問題集をご紹介させていただきます。
自由自在 賢くなるクロスワード なぜ?に答える
○日頃疑問に思う事がらに関連した用語を使ったクロスワードパズルです。楽しみながらしっかり学習することができます。
○クロスワードに取り上げられる言葉は,行事・自然・生き物・エネルギー・産業技術などがあります。
クロスワード形式ですので、お子様がゲーム感覚で取り組める問題集となっております。
ただ、この本の特徴は問題がすべて「なぜ?」を問うものになっていることです。
そういった「なぜ?」に対する答えを自分なりに調べたり、自分の知り得た知識を活用したりしながら模索するトレーニングができるようになっています。