【第1回】ものづくりプロデューサーとは?金谷勉先生の思う「デザイン」の在り方

子どもたちが、どんな職業があるのか?が分からないというケースは非常に多いのではないでしょうか?


今週からは、新しい賢者の先生にお話を伺っていきます。


インタビューにお答えいただいたのは、有限会社セメントプロデュースデザイン 代表取締役を務め、「ものづくりプロデューサー」としても活躍されている金谷勉先生です。



4月1日に『企画~流通をツナグ!工場と職人とモノづくりをプロデュースする現場とは』と題しまして、金谷先生にオンラインセミナーを実施していただきました。


その際、平日の午前中の時間帯にもかかわらず、たくさんの方にご覧いただきまして、進路について考えておられる学生の方々にも多くご参加いただきました。


そこでお話させていただいた内容をより多くの人に届けたいという思いもありまして、今回はそんなセミナーの内容を全3回に分けて、皆さまにお届けできればと考えております。


そもそも金谷先生にセミナーを依頼させていただいたのは、子どもや学生が「職業に何があるのか分からない」という疑問を抱えているケースが多いという現状を憂慮しているからです。


子どもたちに「将来の夢は何ですか?」と聞くと、昔から多く挙がるのは野球選手、サッカー選手、芸能人など、子どもたちがよく目にする職業なんですね。


最近、小学生の間にもYoutubeがかなり浸透してきましたが、それに伴い将来の夢としてYoutuberが上位に挙げられるようになりました。


つまり、子どもたちは自分たちが知らない職業をイメージすることができないわけで、それが明確な将来のビジョンを持つことへの大きな障害となっている現状があるわけです。


例えば、皆さんは「殺処分される動物たちの姿をドキュメンタリー番組で見て、この子たちを救いたいと思ったから、獣医になりたい」と語る子どもがいたとしたらどう思いますか?


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確かに獣医という職業は目につきやすいので、「動物」+「命」+「救う」=「獣医」という方程式が導き出されやすいのは事実です。


しかし、動物の命を救うとは言っても様々なアプローチがありますよね。国会議員になって、もっと広い視野から動物の命を救うことだって可能です。


つまり、職業ベースで将来の夢を考えるのではなく、自分のやりたいことは何か?それを実現するための「ツール」としての職業という観点で考えることが重要になってきます。


金谷先生の仕事における肩書きは「ものづくりプロデューサー」です。「それってどんな仕事?」と聞かれると、はっきりとは答えづらく、時には怪しまれることもあるようです。


しかし、世の中には、既存のカテゴリに簡単には分類できないような仕事がたくさんあります。そしてこれから社会が劇的に変化していく中で、今までにない仕事に就く人はますます増えていくことでしょう。


そんな時代だからこそ、進路選択に悩む学生や子どもたちに向けて、金谷先生から、「世の中には簡単に分類できない職業がたくさんあるんだ!」ということも含めて、お話していただこうと考えました。


そういった経緯で今回のインタビューが実現したのだという点を簡単にお話させていただきましたので、ここからは本論に移らせていただきます。


第1回は、まず「ものづくりプロデューサー」ってどんな仕事なの?というところからお聞きしてきます。


それでは、金谷先生よろしくお願いいたします。

金谷先生のお仕事って?

まずは、簡単にではありますが、金谷先生のお仕事についてお話しいただきました。


「ものづくりプロデューサー」という聞きなれない肩書きでお仕事をされている先生ですが、一体どんなことに取り組まれているのでしょうか…。


「ものづくりプロデューサー」って今、どんな仕事に取り組まれているんでしょうか?

普段は、皆さんが目にされるような駅でご覧になられているようなポスターのデザインですとか、増進堂・受験研究社の教科書等のデザインですとか…あとは、コクヨさんのキャンバスノートのデザインなんかにも携わっています。

最近では、コクヨさんのキャンバスノートのイベントやコラボ企画のプロデュースも担当しました。

うちの会社(金谷先生が代表取締役を務めるセメントプロデュースデザイン)はデザイン部とプロデュース部に分かれています。僕はプロデュース部の人間なんですが、「デザイン」をどのような形で世の中に届けていくのかを考えることが仕事ですね。

伝統工芸に携わる人たちや職人さんの問題や課題、悩みを解決するためのお仕事をメインでやらせていただいてます。

ちなみに僕はデザイナーではないので、デザインはできません!!

やっぱり「ものづくりプロデューサー」はデザイナーとは少し違うんですね。

はい、違います。

デザインはできませんと言いましたが、僕の中学生時代の美術の成績の評定は「2」でした。

…あっ、5段階評価ですよ(笑)

母にも美術の先生に嫌われてるの?なんて言われたくらいです。

今、デザイナーという言葉が出てきましたが、この言葉も幅広い意味で使われますよね。

そうなんですよ。「デザイン」という言葉自体もすごく広義なので、形のあるモノを作ることだけが「デザイン」の仕事ではなくて…。

まあ、お医者さんに近いのかもしれないですね。お医者さんは患者さんの身体を調べて、適切な処置をされますよね。薬を出したり、注射をしたり…。

それが我々にとってのポスターを作ることであったり、カタログやウェブサイトを作ることであったりに重なるんじゃないかと思います。

デザイナーで言うと、塾では全国模試の設計であったり、1年間のカリキュラムを設計するという「教育デザイナー」や「カリキュラムデザイナー」と呼ばれる仕事があったりします。

学習者に「どう届けるか?」までを考えて、教材や授業のコマ割りといった全体像を設計していく仕事ですが、これも「デザイン」なんですよね!

それもまさに「デザイン」ですね。

商品は形を作って終わりではなく、その後どこでどう売っていくかも考えないといけなくて、実は世に出すまでに我々の場合だと、開発の工程を38に分けて管理しているんですよ。

これはその会社や工場、職人さんがどんなことができるのかを分析するところから始めて、展示会等の場で皆さんの目に触れるまでにかかる工程です。

それが全て決まっていって、皆さんの目に触れているものが一般的に言われるデザインなのかもしれません。

商品のデザインをして終了ではなく、その商品が出来上がるまでの工程、世に出回るまでの工程までを包括的に「デザイン」していくわけですね。

実際にどんな商品を「デザイン」したの?

さて、ここまではプロデューサーやデザイナーといったキーワードに触れつつ、金谷先生が取り組まれているお仕事の概要についてお話を伺ってきました。


ここから、先生が過去に取り組まれた具体的な事例に話が移っていきます。


例えば、この耳かきを作った時も、ざっくり38工程かかっているわけですよね?

©2020 CEMENT PRODUCE DESIGN ltd. ALL RIGHTS RESERVED.

鯖江市っていう眼鏡ではすごく有名なところでして、国内の眼鏡の90%を生産しているんですよ。

ちなみに鯖江市の人口が6万9000人なんですが、眼鏡関係者が6500人という一大産地なんですね。

ただ、皆さんがよく目にするJINSさんやZoffさんといった眼鏡屋は、ほとんど日本で作ってらっしゃらないんです。

こういう事情もあって、2011年ごろから徐々に国産の眼鏡が流通に乗らなくなってきたわけです。

そのときに、眼鏡の技術を使って、何か他の物を作れないかと考えた時に、この耳かきが生まれました。

実は、眼鏡のフレームに使われている技術や機械を流用してるんですよ!

眼鏡の「耳にかける」部分を「耳をかく」道具に転換してしまうのがすごいです。

使っている技術や機械は同じ、職人さんも同じという状態で、メガネではなくて、耳かきができる、そこで価値が生まれているのが面白いですね。

値段を聞いて、最初はびっくりしました。耳かきって基本的には、100円ショップで購入できる品物ですよね。

これっていくらでしたっけ?

3900円です。

それでも、この耳かきには付加価値があって、喜ばれるんですよね。これってネタになると思います。

例えば、入学シーズンということで、ちょっとした贈り物にしたいときに、困っていつもペンを渡しちゃうみたいなことってありますよね(笑)

そのときに、こういった趣向が凝らされた商品を渡すと、その品を見た時に、贈ってくれた人の顔を思い出すんですよ。これ1つの価値だと思いました。

工場、職人が持っている技術や設備。そこで生まれる技術に別の価値づけをして送り出すことで、世の中の人たちに知ってもらう。驚きやワクワクを届けられるような価値を付与していくことが「ものづくりプロデューサー」としての仕事なんだと思います。

もちろん商品だけではなくて、鯖江市の場合ですと、この耳かきに携わった会社は5年で売り上げが約12倍になりました。これによって、その地域に雇用を生まれたりもするわけですよね。

地方を見てみると、人がいなくて…それでもそこで一生懸命働いている方がいて…。

そういった方々が考えているのは、少しでも付加価値のある仕事をして、雇用を生み出したり、後継者を育てたりといった良い「循環」を作ることなのかもしれませんね。

「地域に貢献したいんです!」という多くの子どもたちや学生が思い浮かべるのは、農家や地方の銀行員といったものが多いでしょうか。

鯖江市の場合だと、眼鏡の技術や職人がたくさん集まっていますが、意外とそういったことを地元の人が知らないということがあるんですよね。

眼鏡なんかも実は分業で、200くらいの工程で生産されていて、「眼鏡会社」と言っても、例えば素材を輸入している会社や、レンズだけを加工している会社、フレームだけを作っている会社など様々です。

だから、「眼鏡会社」で働きたいと一口に言っても自分のお目当ての会社がなかなか見つからないなんてこともあるんですよね。

最近は、町工場の見学なんかが行われるようになって、外から来た人たちだけではなくて、逆に地元の人たちが地元のことについて知るきっかけになったりしているのかなとも思います。

学びのヒント

金谷先生、ありがとうございました。


今回の先生のお話のポイントをまとめると以下のようになるかと思います。


今回のポイント

(1)「デザイン」とはパッケージをおしゃれにしたりすることに限らず、商品が出来上がるまでの工程、世に出回るまでの工程までを包括的に作っていくことである。


(2)「ものづくりプロデューサー」としての仕事は、工場や職人が持っている技術や設備を組み合わせて、別の価値づけをして送り出すことで、世の中の人たちに驚きやわくわくを届けることである。


「デザイン」や「創造」という言葉を聞くと、0から何かを生み出すことだろうと思う方が多いかもしれません。


一方で、金谷さんが「ものづくりプロデューサー」として取り組まれているのは、今ある技術や場所、人を組み合わせて何か新しいものを作り出すということなんですね。


これも実は、今起きている問題をどう解決するかを「創造的に」考えているわけです。


社会は劇的に変化していきますから、その中で当然今までは当たり前だったものが崩れていき、問題や課題が生じてきます。


それらを解決しようとして新しい「職業」や「仕事」が生まれ、求められるようになるというのも自然な流れですよね。


だからこそ、これから社会に出ていく子どもたちは、今ある職業や仕事に自分を当てはめようとするのではなく、自分のやりたいことやビジョンを念頭に置いて、そのために何ができるのか、どんな職業を選べるのかという発想を持つ必要があります。


そのためには、記事の冒頭にも書きましたが、自分のやりたいことを確立していくと共に、世の中にどんな仕事があるのか、どんな問題や課題があるのかを知っていく必要があります。


私たちの社会にはまだまだ知らない仕事があるということ、そして名前を知っている職業であっても、実は知らない側面があったり誤解があったりするのだということを、今回のインタビューから少しでも感じ取っていただけると嬉しいです。


次回は、セミナーの際に参加者から寄せられた質問への回答から、「デザイン」や「デザイナー」についてのお話を掘り下げていけたらと思います。

おすすめの本

今回の記事に関連したおすすめの参考書・問題集をご紹介させていただきます。


関連書籍

標準問題集 読解力

小6/標準問題集読解力

○各単元は,ごく短い文章で取り組むステップ1(基本問題)とやや長い文章で取り組むステップ2(標準的な問題)の2段階で読解力を身につけます。

〇その後数単元ごとに長い文章で取り組むステップ3(発展問題)で実力が身についたか確かめることができます。

詳しくはこちらから


読解問題では、文章の中に散りばめられたヒントを繋ぎ合わせて、問題に対して自分なりの解答を作成していくこととなります。


このプロセスは金谷先生からお話頂いた内容と少しリンクするものがありますね。


読解問題に取り組む中で、読解力だけではなく、要素と要素を繋ぎ合わせて課題を解決するプロセスを練習しておくのも良いのではないでしょうか。

今回の賢者

金谷 勉

有限会社セメントプロデュースデザイン 代表取締役/クリエイティブディレクター
企業の広告デザインや商業施設のビジュアル、ユニクロ「企業コラボレーションTシャツ」、コクヨの博覧会「コクヨハク」、星野リゾートアメニティ開発のディレクションなどに携わる。
テレビ番組『ガイアの夜明け』(テレビ東京系列)などでも取り上げられ、注目を集めた。

金谷勉先生の詳しい情報はこちらから