子どもが将来の夢や進路について考えている時に、どんな声かけができるでしょうか…?
今週も引き続き、有限会社セメントプロデュースデザイン 代表取締役を務め、「ものづくりプロデューサー」としても活躍されている金谷勉先生にお話を伺っていきます。
4月1日に『企画~流通をツナグ!工場と職人とモノづくりをプロデュースする現場とは』と題しまして、金谷先生にオンラインセミナーを実施していただきました。
その際、平日の午前中の時間帯にもかかわらず、たくさんの方にご覧いただきまして、進路について考えておられる学生の方々にも多くご参加いただきました。
そこでお話させていただいた内容をより多くの人に届けたいという思いもありまして、今回はそんなセミナーの内容を全4回に分けて、皆さまにお届けできればと考えております。
この記事は第2回となります。第1回では先生の「ものづくりプロデューサー」という肩書きについて、その概要をお話していただきました。
第2回となる今回は、「デザイン」ないし「デザイナー」という言葉をもっと掘り下げて、そこには私たちのイメージとは違う側面があるのだという点をお話していただきました。
それでは、金谷先生よろしくお願いいたします。
続いて、セミナーの参加者から質問があり、その内容について金谷先生にご回答いただきました。
「デザイン」の案件は通常、何人くらいのチームで取り組んでしょうか?またどんな役割があるんでしょうか?
平均すると、3人くらいで取り組むことが多いのではないかなと思います。
僕が入る場合は、全体の監修の担当として、つまりプロデューサーとして入ります。
そして全体の進行を管理するディレクターが1人入って、デザイナーが1人入ります。
プロジェクトの最初に実際に工場などに足を運んで、何ができるのかを調査したりするのは僕の役割です。
一旦は、金谷先生が現地を訪れて、状況をヒアリングして、どんな技術があって、どれぐらいの人が働いていて、どんなチームが組めそうかというのを考えていくわけですよね。
そうですね。社内にもデザイナーが何人かいて、今回は女性の方が良いんじゃないか?というケースもありますし、イラストが得意な人が良いんじゃないか?というケースもあります。
その中で、誰に仕事を振るかというのが決まってきますね。
野球で言うと、金谷先生は監督ということになりますよね。
僕も走っているので、選手兼監督でしょうか(笑)
地域の職人や企業の方が「デザイナー」という職業に理解がないために苦労することが多いという記事を参加者の方が、ご覧になったようで、それについての意見を金谷先生にお話しいただきました。
地域の職人や企業の方が「デザイナー」という職業に理解がないということがあるようですね。
「胡散臭い」と思われるということでしょうか。
地方では、やはり「デザイン」は印刷する会社がついでにやるものだという認識もまだまだあって、「その絵に金要るの?」なんてことを言われたりもします。
この職業もまだまだ浸透していないので、「おしゃれにしたら売れるんやろ?」「ちょっとイラストを変えるだけでお金をもらえていいなぁ」なんて声も実際にあります。
そんなことを地方では言われるので、まだまだこの仕事も浸透していないですね。
それが無くても生き残れた会社もあるでしょうし、無くてだんだん厳しくなってきて、意識されている会社さんもあります。
そういった人たちにどうやって「デザイン」というものを理解してもらうのかって難しいところですよね。
そうですね。やっぱり「デザイン」が単にパッケージを変えることだけに限らないのだということを理解してもらえるようステップを踏んで、説明するようにはしていますね。
ですので、僕が一番工夫したのは「見える化」です。
デザインにかかる費用や工程をクライアントに提案する際に「デザイン料一式」がしばしば使われますが、こういう表記にすると、理解を得られないケースがあります。
やっぱり分かりにくいんですよね。
ですので、かかる工程を1つ1つ明確にして、そこにどれくらいの時間と費用がかかるのかをきちんと説明する必要がありますよね。
このジレンマを解決するために、きちんと明記し、理解を得られるように努めていく。この仕事を分かってもらうための工夫は僕らの責任だと思っています。
インタビュアーから、先生の話を聞く中で、少し聞いてみたいことがありましたので、質問させていただきました。
先ほど、案件に合わせて、チームに参加するデザイナーを分けているという話がありましたが、商品を届ける購買者のイメージをどれくらい意識されているのかも気になるポイントかと思います。
商品を届ける購買者のイメージ、つまりペルソナをどれくらい意識されているんでしょうか?
もちろんたくさんの人に売れた方が良いんですが、特定の「その人」に届けたいのであれば、パッケージを変えることだけがデザインではないので、やり方はいろいろあります。
30代の女性と言っても様々な方がいらっしゃるじゃないですか。例えば、ヨガをしている女性と毎日パチンコに行っている方とでは、お好きな食事のメニューも変わってきますよね。
その2人を比べて、どっちがシリアルをよく食べてそうかと考えると、前者の方が食べてそうな感じがするじゃないですか。
じゃあ、その人に売るためにパッケージに限らず、どうするのかを考えることになりますね。
面白い例が1つありまして、それがカロリーメイトなんです。
カロリーメイトは35年前からありますが、同じパッケージ、同じ味で3世代にわたって届けられてきた商品なんですよ。
最初は王貞治さんを起用して、スポーツマン向けに売られていたんですが、次にビジネスマン向けに売られるようになりました。職場でのおやつとしてですね。そして、近年は受験生向けにも売られるようになりました。
ほとんどパッケージや味を変えることなく、商品の伝え方を変えて、売り上げを確保していった面白い例なんです。
これも実は「デザイン」なんですね。
最近は、「マーケティング」という言葉も注目されますが、これも要は「どこ(誰)に向かってボールを投げるのか?」という話ですよね。
商店街で「みなさ~ん!」と呼びかけをしても誰に向けてのものかが分からなければ、だれも振り向いてくれないかもしれません。
でも「そこのおしゃれなお母さん!」と呼びかけると、振り向く方はいるでしょうね(笑)
つまり、誰に届けたいのかによって、メッセージの内容は変わってくるということですよね。
金谷先生、ありがとうございました。
今回の先生のお話のポイントをまとめると以下のようになるかと思います。
(1)人や技術、場所などを組み合わせて問題の解決方法を「デザイン」している。
(2)理解されないことを嘆くのではなく、理解されるための工夫や「見える化」をすることが大切である。
やはり、私たちにとっての「デザイン」という言葉のイメージは、ポスターや商品のパッケージを作ることになってくると思います。
子どもたちや学生が「デザイナー」になりたいと考えると、そういったことをしたいのだと思いますが、前回からのインタビューの中でたびたび触れられたように「デザイン」という言葉はもっと広義です。
つまり、金谷先生も述べたように「デザイン」はその商品が作られて、世に出て、私たちの手元に届くまでのプロセスを作るということでもあるんですね。
「デザイナー」という職業そのものは知っていても、調べてたり、こうやって話を聞いてみたりしますと、実は違った側面があることに気がつきます。
今回の記事の冒頭にも書きましたが、日本の子どもたちや学生は既存の職業に自分の将来の夢を当てはめようとする傾向があります。
しかし、子どもたちや学生は、知っている職業の幅が狭いことも相まって、とりあえず自分の知っている職業しか目標にならないというケースも多いように見受けられます。
これからの社会では、自分のやりたいことが先にあって、それに基づいて職業を考えていかなければなりません。
そのためにも、いろいろな職業や働き方について、まずは知っていくことが大切です。
保護者の皆さまとしては、お子様のやりたいことを聞いた上で、「じゃあそれを実現するためにはどんな仕事があるのかを一緒に考えてみようか?」といった声かけをするのも良いですね。
金谷先生の全4回のインタビューを通じて、「世の中には簡単に分類できない職業がたくさんあるんだ!」という感覚をぜひ持っていただければと思います。
今回の記事に関連したおすすめの参考書・問題集をご紹介させていただきます。
小学3・4年自由自在社会
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ここまでのインタビューで、既存の様々な技術や人、場所を組み合わせて新しい商品やサービスを生み出していくという「デザイン」の在り方が語られてきました。
このように組み合わせて新しいものを生み出していくためには、まずは社会について知っておく必要がありますよね。
その知識の獲得段階で役立つのが、この『小学3・4年自由自在社会』です。
「人々の暮らし」や「伝統工芸」が詳しく載っているので、意外にも大人がハマってしまうほどのボリュームです。