【第2回】音楽で創造力を鍛える?〈歌う大学教授〉川村先生の驚きの学生時代とは?

子供が勉強に関係ないことに没頭してしまうんですが,どうしたら良いでしょうか?


今週も引き続き,東京理科大学の川村先生にお話を伺っていきたいと思います。


第2回となる今回は,川村先生の学生時代のエピソードに焦点を当てて,インタビューをしていきます。


前回ご紹介したように先生は「科学教育」を専門とし,子供たちがどうすれば「分かった!」という感覚に辿り着けるのかを研究されています。



一方で〈歌う大学教授〉としても知られ,YouTube等で自身の作曲した理科ソングを歌うなど個性的なキャラクターを持つ川村先生 。


川村康文先生「防災くんれん」の歌

そんな先生が一体どんな学生時代を経て,今に至ったのか?非常に気になるところですよね。


それでは川村先生,よろしくお願いします!

■ なぜ科学教育を選んだの?


子供たちがどうすれば理科(科学)について楽しく,分かりやすく学べるのかを研究されている川村先生 。


なぜ、数ある研究分野の中で、今のものを選んだのか?そのきっかけがどこにあったのかをまずは伺ってみました。


どうしてこの分野を選ばれたのですか?エピソードなどあれば教えてください。

やはり,理科が大好きだったからです!

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小学校の頃は,野原で,バッタやコオロギやキリギリスなどを追いかけていました。毎日,1時間以上は費やしていたかもしれません。

そのなかで,虫取り網も持たないで,キリギリスを捕まえるのは,どうしたらいいだろうか?などと戦略を練っていたことを覚えています。

また,いなかの小川で,小川に棲む魚や水生昆虫について,詳しい先生から学んだこともいい経験でした。

都会であっても,観察しようと思えば身の回りに観察できるものはたくさんあります。

植物一つとっても,「草」という言葉で理解を止めるのではなくて,「何の草だろう?」「あ,前も水辺に咲いていたな」などのように,少しだけ「調べる」という感覚を持つことがとても大切です。


やはり「好き」が最大の理由なんですね!
良い先生に出会えたことも、今の研究に繋がっているように思えます。


子供の頃は身の回りのことには何でも好奇心を持って「これは何?」「なんで?」といった疑問を口にします。


しかし,それを理解して,支えてくれる指導者やアドバイザーの存在がないと,そういった疑問意識はどんどんと失われていくことが危惧されます。


川村先生も自分の幼少期に理科(科学)を好きになるきっかけを与えてくれた指導者の存在があったからこそ,今の「科学教育」という分野に惹かれていきました。


お子様の一番身近な存在である保護者の皆さまが,彼らの純粋な好奇心に対してどう向き合うかというのは,実はものすごく重要なことなんですね。


川村先生が夏休みの自由研究の参考になるような「面白い実験」を紹介してくださっている動画がYoutube上にアップロードされていますので,こちらもチェックしてみてください。


■ 音楽に本気で向き合った学生時代?


幼少期に理科を好きなるきっかけがあったということですが,となると音楽に目覚めたのは,学生時代ということになるのでしょうか。


次に,個性的なキャラクターを持つ川村先生が一体どんな学生時代を過ごしたのかについてお聞きしました。


先生は学生時代,どのような生徒でしたか?(得意・不得意,何にハマっていたかなど)

ジャパニーズ・ハードロックにハマっていて、ライブハウス巡りをしていました。

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科学の知識のなかには,なかなか人に理解されない内容が多くあります。

日本語で伝わるハードロックをと思い,歌詞などは,自分で書いていました。曲も,何曲か作曲しました。

今でも,作詞作曲をやっていますし,講演に行ったときには,歌ったりしています。

好きなことに向き合うという姿勢も,こういう活動を続けているからこそ,身についた力の一つだと思っています。

勉強ができることも,部活で頑張ることも,趣味に没頭することも,共通することは「目の前のことと向き合うこと」だと思っています。


なるほど。どんなことであっても、それに向き合い続ける姿勢はすごく大切ですよね。


高校受験を控えた中学3年生や,大学受験を控えた高校3年生が部活動を引退して,一気に学力が向上するという傾向があります。


これはもちろん単純にそれまで部活動に充てていた時間を勉強に使えるからではあるんですが,理由はそれだけではないはずです。


部活動に一生懸命取り組んでいた子供たちって,その時点で川村先生も仰っている「目の前のことと向き合う」姿勢が出来上がっているんですね。


だからこそ,それを勉強に切り替えたとしても,目の前のやるべきことにしっかりと集中でき,必然的に学力も向上していくというわけです。


お子様が勉強にはあまり関係のないご自身の「好きなこと」に没頭してしまうことは,しばしばあると思います。


しかし,それは言い換えれば「目の前のことと向き合う」姿勢を身につけさせるチャンスでもあるはずです。


ぜひ,お子様の「好きなことに向き合う」時間を後押ししてあげてください。

■ 音楽で創造力を鍛える?


学生時代は様々なことを学び,経験しますが,それが本当に社会に出たときに役立つのか?って半信半疑なところがありますよね。


そこで,第2回記事の最後に,川村先生が今の研究に取り組む中で,役立っていると感じる学生時代の勉強についてお聞きしてみました。


今役に立っている学生時代の勉強って何ですか?

ライブハウス巡りですね。勉強とはちがう!と言われそうですが,どんな経験も学習になります。

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普段から創造力を駆使して,自分の授業も少しでもクリエイティブな授業ができないか,伝えたいことをうまく伝えるためにどんな表現ができるのか,ということを考えながら演出を工夫しています。

科学教育は,学習者に「理解してもらうこと」「楽しく前向きに学んでもらうこと」が重要です。

これってまさに,ライブ・コンサート・演劇・映画などに共通することなんですよ。

だからこそ,学生時代にライブハウスを回ってどうすれば観客が盛り上がるのかを考えたり,自分が演奏する中でどうすれば聞き手に自分の思いを届けられるのかと悩んだ経験が今に生きています。

そこで培った表現力・創造力が、どんな授業をしたら子供たちがワクワクして,楽しく学べるようになるのかを考える上で役立っているのです。

そんなことを考え続けて数十年経ちました。もう,癖になってしまっています(笑)


ここでも音楽が登場するんですね!確かに音楽ライブと授業って通じるものがありそうです。


川村先生のお話の中でライブハウスや音楽活動の経験が,創造力や表現力を培う糧になったという内容がありました。


人がどんな演出で感動し,考えるのかということは自分の感性だけでは意外と想像しにくいものです。


さまざまな演出の場面や芸術や映像(漫才やコントも)と出会った時に周囲の人たちの反応を観察する機会から経験的に学ぶからこその創造力・表現力の育成になるのでしょうね。


身近な自然を観察して育った川村先生は,後に科学教育研究という人間観察的な分野の研究に注目しました。


これが「観察→想像・創造・表現」という筋で,ライブハウス巡りや音楽活動の経験と一致しているというのはとても面白いですね。

■ 学びのヒント


川村先生,ありがとうございました。


今回は「科学教育」を研究する傍らで,音楽活動にも取り組まれている先生の学生時代のエピソードを伺いました。


学びのヒントとしては,次の2つのことが挙げられるのではないかと思います。


  • 純粋な好奇心と,それをサポートする指導者の存在が重要
  • 一見勉強に関係のないことにも学びのチャンスがある

学習指導要領にも書かれている「生きる力」には,本当に多種多様な力が含まれています。


そのため,いわゆる「勉強」に関係ないことからお子様を遠ざけてしまうのではなく,お子様の好奇心や興味を後押ししてあげるような姿勢をとってあげることが重要になってきます。


川村先生が幼少期に出会った良き師のように,保護者の皆さまがお子様の「学び」を肯定し,ナビゲートする存在になれると良いですね。

■ おすすめの本

関連書籍

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今回,インタビューにお答えいただいた川村康文先生監修の参考書です。


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お子様の本棚に1冊入れておくと,お子様の様々な疑問にご対応できるかと思います。ぜひ書店等でお手に取ってみてくださいね。

今回の賢者

川村 康文

東京理科大学理学部教授。

京都教育大学卒業。高等学校に勤務しながら,京都大学大学院エネルギー科学研究科博士課程修了。

NHK Eテレ「ベーシックサイエンス」監修・ガリレオ先生として出演。「所さんの目がテン!」など科学番組に多数出演。パナソニックセンター東京リスーピア監修者。

川村先生の詳しい情報はこちらから

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