「体験的な学び」が大切と聞きますが、どんなものを子どもに経験させておくと良いのでしょうか?
今週も引き続き川村先生にお話を伺っていきます。
川村先生への賢者のインタビューは、今回が最終回となります。
前回の記事では、応用力を養い、発揮するためにはどんな勉強をしたり、どんな生活習慣を心がけたりすべきかについて熱く語っていただきました。
詳しくは以下のリンクをチェックしてみてください。
そして今回は近年注目されている体験や経験を通じた学びについてお聞きしてみました。
「体験的な学び」が大切ですということはしばしば耳にします。しかし、どういうアプローチで子どもたちが体験から「学び」を得られるようにするのかという具体的な話になると、これが意外と悩ましいのです。
そこで、今回は「科学教育」について研究しておられ、さらには実験教室などの開催にも精力的に取り組まれている川村先生に、「体験的な学び」に纏わる疑問を投げかけてみました。
それでは川村先生、よろしくお願いします!
体験学習は子どもたちに新しい視点や視野の拡大をもたらしてくれるという点で非常に重要です。
そのため、どんな体験学習をお子様に提供してあげると効果的なのか?豊かな学びにつながるのか?と日々、思案されている保護者の方も多いと思います。
まずは、川村先生にどんな体験学習が効果的なのか?という点についてお話を伺ってみました。
自然体験が少なくなっている中、どのような体験学習を用意すべきでしょうか。
経験はすべてが薬なのです!
あまり保護者主導で子どもに体験を押しつけてしまわない方が良いんですね。
体験が子どもたちの「学び」において重要だと聞くと、どうしても保護者主導で体験を提供してあげようと思い至ってしまい、そこで「どんな体験を・・・?」と悩んでしまいますよね。
確かに保護者の皆さまはお子様にとって一番身近な学びのパートナーですので、子どもたちに体験や経験の機会を提供してあげることは大切です。
しかし、「○○を体験させて、○○を学ばせたい。」というように、保護者視点で子どもの体験学習に導線を引きすぎると、かえって子どもたちの学びが限定されてしまい、新しい視点の獲得や視野の拡大につながらない可能性があります。
ですので、川村先生も仰っているように、保護者の皆さまは肩の力を抜いて、「あれもこれも」と様々な体験の機会提供に努め、そこから何を感じて、何を学ぶのかはある程度子どもたちに委ねてあげると、より有意義な体験学習になるのではないでしょうか。
さて、川村先生は理科実験教室の開催やYoutubeへの理科実験動画の投稿など、実験に非常に力を入れておられることでも知られています。
川村先生の理科実験動画の1つを以下に掲載しておきますので、良かったらご覧になってみてください。
そんな数多くの理科実験に取り組まれてきた先生に、家庭でできるおすすめの実験ないし観察についてお聞きしてみました。
家庭で簡単にできるおすすめの実験や観察の例をいくつか教えてください。
いっぱいありすぎて、選べないです!なにか1つをみると、複数の実験が思い浮かんでしまいます・・・。
なるほど。どの実験をするかにこだわりすぎる必要はないんですね。
「いっぱいありすぎて、選べないです! 」という答えはすごく川村先生らしいと思います。
先生は受験研究社の『科学のなぜ?新事典』の監修者でもありますが、その前書きの中でこんなことを書かれています。
「どうしてそのようなしくみになっている?とか、どうしてそのような色がついているの?といった、みなさんのどうして?を1つずつ解決していくことがみなさんにとって理科を学ぶ上での楽しさや喜びになるでしょう。」
川村先生は、実験・観察そのものというよりは、実験・観察に対して子どもたちが「なぜ?」と疑問を抱き、それについて考えを巡らせ、いかにして答えを導き出そうとするかを重要視しているように感じられます。
そのため、先生は最初の質問に対する回答と同様に、どの実験をするのか?にこだわるのではなく、「あれもこれも」と様々な実験・観察に取り組んでみて、そこから生まれる疑問や発見をこそ大切にしてほしいと考えているのではないでしょうか。
では、最後に少し趣向を変えた質問をしてみましょう。
今は「科学教育」研究の分野で活躍されている川村先生ですが、他の分野を研究するとしたら・・・という「もしも」を話をお伺いしてみました。
全く異なる分野を研究するとしたら、どんな研究をされますか?またその理由は?
全く違う分野にも興味津々なので、どんな分野でも研究してみたいですね。
どんなことでも研究してみたいという溢れる好奇心は、川村先生らしい回答ですね。
川村先生の今の「科学教育」という分野の研究に、ハードロックという一見何の関係もなさそうなものが役立っているという点は、これまでのインタビューでもお話していただきました。
1つの道に専心することはとても素晴らしいことですが、そこにこだわりすぎると、視野が狭くなってしまい、かえって新しい気づきが生まれにくくなってしまいます。
ですので、常に学びのアンテナを広げて、自分の進む道に一見関係のなさそうなことであっても、学んでみると意外と役に立つかもしれないということです。
1つのことにこだわり過ぎず、「あれもこれも」学んでみようという点は、今回のインタビューの回答で一貫している点でもありますね。
川村先生、ありがとうございました。
今回のインタビューの学びのヒントとしては「体験や実験から何を学ぶかこそ重要である」という点だと思います。
お気づきの方も多いと思いますが、今回のインタビューで川村先生は3つの質問に対して、全て「どんなものでも」という回答をしています。
これは「何を経験・体験するか」よりも「その経験や体験から何を学ぶか」を重視する川村先生だからこその回答ではないでしょうか。
川村先生がハードロックから多くを学んだように、どんなことからも「学び」は生まれます。
だからこそ「何を学ぶか」にこだわりすぎて、子どもの視野を狭くしてしまうよりも、いろいろなことを体験・経験させてあげることで、子どもたちの多様な疑問や発見が生まれてくることの方がずっと大切です。
「子どもに有意義な体験をさせてあげなければ・・・。」と悩んでいる保護者の皆さまは少し肩の力を抜いて、「あれもこれも手あたり次第体験させればいいよね!」くらいの気持ちでいると良いのではないでしょうか。
ぜひ、川村先生のこれまでのインタビューを参考にしながら、お子様の学びへと関わり方についても考えてみてください。
今回の記事に関連したおすすめの参考書・問題集を1冊ご紹介させていただきます。
中学 理科 詳説用語&資料集
○生物・地学・化学・物理の領域ごとに用語をまとめています。調べたい用語だけでなく、関連のある用語も学習することができます。
○よく出る重要な実験や観察を集め、実験の手順や結果、注意点をまとめて解説しています。
受験研究社から発売されている『中学 理科 詳説用語&資料集』は用語集&資料集ではあるのですが、実験・観察に関するページが非常に充実しております。
また、ポケットサイズで持ち歩くのにも適しているので、自然体験や野外観察の際にも携帯することができます。
お子様の実験・観察のお供に1冊いかがでしょうか。