【第3回】比較がもたらす発見や疑問!テストや受験に依存しない学習の習慣化のために

子どもの勉強の「習慣化」って本当に難しいですよね・・・。


今週も引き続き、早稲田大学人間科学学術院教授の松居 辰則先生にインタビューをしていきます。


これまでの記事では、先生のご専門である「感性情報科学」の概要・面白さ、先生の学生時代の経験などについてお話しいただきました。


詳しくは以下のリンクからご覧ください。



そして第3回となる今回は、「感性情報科学」の研究の中で求められる力や勉強についてお話を伺っていきます。


そこから一般化しながら、これからの社会でどんな力や姿勢が求められるのかという話題にも繋げていけたらと思います。


それでは松居先生、よろしくお願いいたします。

■ 何事もまずは比較してみる視点を持とう!


松居先生のご専門はこれまでのお話にもありました通りで「感性情報科学」です。


人類の今だ解き明かせていない神秘の領域とも言える「感性」について研究されている先生に、ご自身の研究にはどんな力や技能が求められるのかをお聞きしてみました。


先生の専門領域で必要になる学力・力とはどんなものですか?

世の中の不思議さ、人間の不思議さに敏感になること、でしょうか。

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基礎学力は不可欠なので、ここで私が語る必要はないと思います。

感性情報科学を研究する上では、「人間の不思議さ」ということに敏感になって欲しいと思います。

街中に出れば、たくさんの人が行動をしている。それもよくよく観察すると不思議なことがある。なぜ、あんな行動しているんだろう?と。単に「変な人だな」というのではなく。

これは感性情報科学だけではなく、様々な学問領域でも「世の中の不思議」に敏感になることが重要で、これは何にでも役に立つと思うんですよ。

そして我々人間にとって一番身近なのはもちろん人間なので、人間の不思議さに敏感になることって、日常でいくらでもできる事だと思うんですよね。

そういう観察眼とか「なぜ?」と思う視点というのは、仕事でも研究でも役に立ちますね。

ただ観察眼を身につけろ、と急に言ってもなかなか難しいと思います。

しかし、何かを「比べる」という習慣であれば、身につけることができるのではないでしょうか。

一つのモノだけ対象とすると、Yes/Noの二つしかありません。でも、二つのモノを比べてみるだけでも、Yes-Yes/Yes-No/No-Yes/No-Noというように、4つの可能性が出てきます。三つを比べると8つの可能性がありますね。累乗になる。

事例を事例としてしか見ないのではなく、他のものと比べて、「あれとは何が違うの?」と考え出すと様々な可能性が広がる。

ぜひ、一つのことだけ見るのではなく、何事でも「比較」してみるという習慣は身につけて欲しいですね。

一方で、もちろん基礎学力はしっかり頑張ってください。何も難しいことをやる必要はない。基礎・基本をしっかりと。


なるほど。比較してみて、初めて気がつけることがあるんですね!


確かに1つのことだけをじっと観察したり、考えていても、意外と何も気がつかないものです。


例えばですが、日本人は当たり前のように家に上がるときに靴を脱ぎますし、土足のままという人はほとんどいませんよね。


私たちにとっては当たり前ですし、それを疑問に感じることなんてことは日常生活の中ではまずありません。


しかし、ひとたび海外に目を向けてみると、土足で家の中へと上がるという国はたくさんあります。


その瞬間に「家に上がるときには靴を脱ぐ」という習慣が「当たり前のこと」から「不思議なこと」に変わります。


そうして、なぜ日本では?どういう歴史や背景があるんだろう?どんな文化や意識の違いが関連しているんだろう?と考えていくと、どんどんと可能性が広がっていきます。


こういった日常の何気ないことからでも、「比較」して考える眼というものは養うことができます。


ぜひ、お子様の毎日の「学び」に取り入れてみてください。

■ 純粋な学びを習慣化することの重要性


先ほど、先生がご自身の研究で求められる力について解説してくださいました。


では、そういった力や技能を身につけるためにはどんな勉強が大切なのでしょうか?


松居先生にズバリお聞きしてみました。


小中学生に勧めるとしたら、どんな勉強ですか?またどんな姿勢で勉強に向き合うのが良いでしょうか?

基礎学力は重要。基礎的な学習を進める上で「習慣化」することを考えてみましょう。

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勉強法・・・。今の勉強って、昔と大きく変わっていますか?

私が思うに、今までの日本の教育はよく練られた教育システムだと思うんですよね。

もちろん、「やりすぎ」なところもあったとは思いますが。それでも、ドリルをやったりという基礎学力は重要だと思います。

ただ、入試と普段の勉強はちがうと思います。

入試のための勉強というのが悪いとは思いません。でも、普段の学習自体をしっかりして、その学習の先に何があるのか、ということを考えることは重要ですね。

また、基礎的な学習を進める上で、「習慣化」することは大切だと思います。


入試の勉強は大切ですが、自分が今している勉強が「社会」にどう繋がっているのかと考えることも大切ということですね。


前回の記事の中で、松居先生の恩師である寺田文行先生の話題が挙がっていましたが、その中でも技術や理論に固執せず、現実社会と向き合うことの大切さについて強調されていました。



もちろん入試に合格しなければ、進学できませんから、受験勉強はしなければなりません。


しかし、受験のためだけのものという意識で勉強していると、その後に繋がる「生きた学び」にはなりません。


そして松居先生がもう1つ挙げられている「習慣化」というキーワードも非常に重要です。


そんな中「全国就業実態パネル調査2018」が「社会人の学び」について特集し、興味深いデータを掲載していました。


というのも、学生時代の学習習慣と社会人になってからの学習習慣の関連を調査したのです。


その結果、学生時代の学習習慣について「授業やテストの対策のみならず、ふだんから関心を持った事柄について自らも調べものをするなど習慣的に学習していた」と回答した人は、その83.3%が社会人になっても仕事の中で学び行動を取るようです。


それが「 授業やテストのために直前だけではなく、常日頃から学習をしていた」と回答した人になると、その数値が68.9%まで下落します。


さらに「ほとんど勉強していなかった」と回答した人になると、その数値はわずか36.7%なんだそうです。


つまり学生時代に学習習慣を身につけられていないと、社会人になってからも仕事の中で「学ぶ」という行動を取らないという傾向があると言えるのです。


近年「生涯学習」という言葉も注目され、学び続ける姿勢というものが重要視されています。


しかし、日本の生涯学習率は先進国の中でも最低ランクなんだそうです。


だからこそ、松居先生の仰られているテストや受験のためだけではない純粋な「学び」の習慣化は、これからまさしく求められていることでしょう。

■「世の中の不思議」に敏感になるためにおすすめの本


さて、第3回の最後の質問ということで、賢者のインタビューでは恒例となっているおすすめの書籍についての質問をさせていただきました。


この質問は、賢者の先生それぞれの個性や理念がすごくはっきりと表れるので非常に面白いですよね。


小中高生にむけて、おススメの本や参考書などあれば教えてください。

吉田洋一『零の発見』は、是非読んで欲しいですね。

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参考書については、よく分からないのですが・・・。

本であれば岩波新書の『零の発見』吉田洋一)ですね。これは読んだ時に知的好奇心が止まりませんでした。ぜひ、読んで欲しいですね。

あとは、遠山啓先生の本ですね。あれも面白い。遠山先生の本はいろいろあるので、手に取ってみていただければ。

最近は人工知能の本がたくさん出ていますので、簡単なものをいくつか読んで欲しいですね。


すごく興味深そうな本ですね!ぜひ読んでみたいです。


先生の挙げておられた『零の発見』のリンクを以下に掲載します。



この本は、インドで「ゼロ」という概念が発見されたことがどんな影響を及ぼしたのかということから始まり、数字と計算法がその後どのような発達を遂げてきたのかについて書かれています。


私たちは当たり前のことのように数字や計算を小学校で習い、それに疑問を特に持つことなく、大人になっていきます。


しかし、こういった本を読んで、ふと数字や計算のルーツや発達について学んでみると、面白い発見があるかもしれません。


これも先ほど先生が仰っていた「世の中の不思議」に敏感になることの重要性につながることだと思います。

■ 学びのヒント


松居先生、ありがとうございました。


今回の先生のお話の「学びのヒント」としては以下のことが挙げられると思います。


学びのヒント

(1)不思議さに敏感な感性を養う

(2)テストや受験に依存しない学びを「習慣化」する


まず1つ目ですが、これについて松居先生は身近で取り組めることとして、何事も「比較」してみる癖をつけるようにご提案されていました。


「比較」することで、新しい発見があり、新たな疑問が生まれます。そしてその発見や疑問が、次の学びへと繋がっていきます。


2つ目のテストや受験に依存しない学びの「習慣化」についてですが、やはりテストや受験といった外的要因による動機に自分の学びを依存させすぎると、それがなくなった時に、学ぶ習慣がなくなってしまう可能性があります。


高学歴な学生が大学で「燃え尽き症候群」「スチューデントアパシー」と呼ばれる症状に陥ることがあると言われます。


その1つの要因として、受験・大学合格のための勉強に集中するがあまり、根本的な「学びの習慣」が身についていなかったということが考えられます。


こういった状況に陥らないためにも、子どもの頃からテストや受験などに依存しない純粋な「学びの姿勢」を身につけられるように働きかけていく必要があります。


そういう意味でも「比較」してみて、物事に不思議さや面白さを見出す癖付けをしてみるというのも、1つの有効なアプローチと言えるでしょう。

■ おすすめの本


今回の記事に関連したおすすめの参考書・問題集をご紹介させていただきます。


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今回の賢者

松居 辰則

早稲田大学人間科学学術院教授
早稲田大学理工学部(数学科)卒業、同大学院博士後期課程修了(博士(理学))
寺田文行ほか共著『情報数学の基礎――暗号・符号・データベース・ネットワーク・CG』サイエンス社、1999年。
稲葉晶子ほか共著『インターネット時代の教育情報工学2――ニュー・テクノロジー編』森北出版、2001年。
人工知能学会編『人工知能学大事典』共立出版、2017年。

松居先生の詳しい情報はこちらから