「感性を磨く」ことは大切なんてよく耳にしますが、「感性」って実際のところ何なのでしょうか?
今週からは新しい賢者の先生にインタビューをしていきます。
お話を伺うのは、早稲田大学人間科学学術院教授の松居 辰則先生です。
最近よく耳にするようになった「人工知能(AI)」のトピックも絡めながら、4回のインタビューを通じて「感性」というものについて松居先生のお話をお聞きしてみようと思います。
よく使う言葉ですが、意外と明確なイメージが湧かないこの「感性」という言葉の奥深さを皆さんにお伝えしていければと思います。
それでは、松居先生よろしくお願いいたします。
まずは、松居先生の専門分野についてお聞きしてみようと思います。
manaviにおける先生の賢者理念は「人間の不思議を『感性』から紐解く」となっています。
私たちは日常生活で何気なく「感性が違う」「感性が豊かだ」なんて言葉を用いていますが、「感性」という言葉の意味を深く考えたことって実はないのではないかと思います。
そういう点でも、今回「感性」について研究されているという松居先生のお話には非常に興味が湧きますね。
松居先生の専門分野について、教えてください。普段はどのような研究をされているのですか?
大きなくくりでは「人工知能」です。その中でも人間の「感性」を対象にした「感性情報科学」と呼ばれる領域です。
確かに言われてみると、私たちはいつも「感性」という言葉をすごくふわっとしたイメージで使ってますよね。
こうして「知性」と「感性」という言葉を比較しながら考えてみると、人工知能(AI)に「感性」を持たせることが難しい理由が何となく見えてきますね。
人工知能(AI)が得意としているのは、膨大なビッグデータを活用した言わば「知性」的な活動です。
manaviでもインタビューにお答えいただいた理化学研究所の美添先生のインタビューの中でAI囲碁の話が登場しましたが、これも膨大なビッグデータ(16万人の囲碁対局のデータとも言われる)をベースにして学習させて作られたものでした。
しかし、人間の活動には必ず「知性」だけでなく「感性」が関わってきます。
私たちは日常生活の中で無意識的にこの「感性」を行使していますし、「感性」は松居先生も仰る通りで人によって異なります。
そういった掴みどころのない概念を手探りで探し求めていくという先生の研究は何だかミステリアスで興味深いです。
先ほどの質問の中で先生のご専門が「感性情報科学」であるということが分かりました。
次に、松居先生がご自身の研究のどんなところに魅力や面白さを見出しているのかをお聞きできればと思います。
「感性情報科学」の面白さを一言でいうと?
「分からないから面白い!」ということですね。これこそが研究の面白さだと思います。
なるほど。感性を知ることが人間の起源を知ることになる。すごく壮大でロマンがありますね・・・。
実は「感性」という言葉は学習指導要領の中に、子どもたちが育むべきものとして長らく明記されていました。
文部科学省が広報を通じて発表した新学習指導要領に向けての発表の中にもこのような形で「感性」という言葉が登場しています。
そういう意味でも、まだまだAIでも再現することが難しい人間の「感性」というものは、人間らしさの1つの象徴ですよね。
そしてAIというものが、人間に対して知能的な活動の部分で優位性を持つようになってきたからこそ、私たちはこれから「感性」を一層磨いていく必要があるのです。
松居先生が仰るように「感性」を研究することで人間をより深く理解することができ、その解明がこれからの人間の進化の方向を左右するのかもしれませんね。
ここまで「感性情報科学」の概要や魅力についてお話していただきました。
第1回記事の最後に、「感性情報科学」が関連分野とどのようにリンクしていて、逆にどう異なっているのか?などについてもお聞きしてみようと思います。
関連する分野との、似ているところ・違うところを教えてください。
感性情報科学は新しい学問なので、古くからある心理学や認知科学が基礎となっていますね。
感性情報科学も過去の様々な研究分野が関連し合って、その中で生まれた学問なんですね。
デカルトが『精神指導の規則』の中で「すべての学問は相互に結合し、互いに他に依存している」と述べましたが、松居先生のこのお話もまさしくそのことを言い表しているように思えます。
これは学校の勉強に置き換えてみても実は同じことが言えるのではないかと思います。
例えば「数学」「国語」「英語」は一見すると別々の学問ですが、「論理的思考力」という観点で見ると、そこにはつながりを見出すことができます。
それぞれに求められる論理的思考力に微細な差異はあるでしょう。
「数学」では、論理的に考えて、得た情報や公式を組み合わせて解答を導き出します。「国語」や「英語」では文章を読みながら論理的思考力を用いて読解していくことで、文章の構造を正確に把握することができます。
もちろん「国語」や「英語」に関して言うならば、自分が文章を書いたり、意見を発話したりする際の「論理性」にもつながってきます。
松居先生は感性情報科学がコンピュータ科学工学や情報科学、数学などさまざまな学問とリンクして成立しているものであると述べていました。
それと同じように子どもたちが学校で学ぶ教科も、表面的には別々のものに見えますが、根底では密接に関わり合っているのです。
松居先生、ありがとうございました。
今回の先生のお話の「学びのヒント」としては以下の2つが挙げられると思います。
(1)人工知能の発達が目覚ましいからこそ「感性」の重要度が高まっている
(2)学問は相互に結びついている
私たちはどんどんと人工知能に取って代わられていくという悲観的なニュースもありますが、それを憂うよりも人間にしかできないことを追求していく必要があります。
その1つが松居先生の研究されている「感性」でもあります。
また、学問とはそれぞれが単独で存在するものではなく、有機的に関わり合って存在しているものです。
そのため何か1つの分野・学問だけを知っていれば良いということは、どんな教科学習でも、どんな研究でもありえません。
私たちは学問というものが根底では相互に結びついていることを理解しつつ、バランスよく多様な「学び」を得ていく必要があります。
この点も、お子様の「学び」を考える上で1つ重要なヒントになるのではないでしょうか。
今回の記事に関連したおすすめの参考書・問題集をご紹介させていただきます。
天才脳ドリル 数量感覚
○数を量として認識する数量感覚をもつことができるようになると,さまざまな計算にイメージをもって取り組むことができ,正確になっていきます。
〇数量感覚を獲得すると,難しい問題に出会っても,途中の計算ではなく,思考することに集中できるようになります。
数量感覚には,①量感(数を量としてイメージする感覚),②分数感覚(分数を量としてイメージする感覚),③数列や規則をイメージする能力(順にならんだ数の規則を見つける),④数のセンス(数の分解・合成能力) があるとされています。
そういった数を量としてとらえる「感覚」を磨くことで数字に強くなっていくということを目標として作られたのが『天才脳ドリル 数量感覚』シリーズです。
計算をもっと早くできるようになりたいというお子様にはぜひおすすめしたい1冊となっております。