【第4回】知的好奇心と問題発見能力がもたらす「自分事」の学びの重要性とは?

子どもがコンピュータやスマートフォンを使っているのを見ると、どうしても時間を浪費しているといったネガティブなイメージが浮かんでしまいます・・・。


さて、今週も引き続き加藤学園暁秀初等学校にてICTコンピュータ専科教諭としてご活躍されている中原先生にお話を伺っていきます。


中原先生へのインタビューは今回が最終回となります。


さて、前回の記事では、チームでプログラミングを学ぶことで生まれる成長や想像力を養うために家庭でもできることという観点でお話を伺いました。


詳しくは以下のリンクからご覧ください。



最終回となる今回は、先進的な教育に取り組まれている先生が、今後どんな展望を持っておられるのかについて熱く語ってくださっています。


これからの教育、これからの学びを考えていく上でも非常に考えさせられる内容となっておりますので、ぜひご一読いただきたいです。


また、最近香川県の条例をめぐって話題になったことで加熱した、子どもがインターネットやスマートフォンを使い過ぎているといった問題に対しても、考え方が変わるような鋭い視点を提示してくださっていますので、注目です。


ぜひ最後まで読んでみてください。


それでは、中原先生よろしくお願いいたします。

「コンピュータ=悪」ではない!

近年、プログラミング教育やSTEAM教育という言葉が注目されるようになりました。


しかし、まだまだこれらの教育が何を志向していて、子どもたちにどんな成長をもたらすのかについては知られていなかったり、誤解を受けていたりする可能性も考えられます。


コンピュータやスマートフォン、タブレットといったデバイスを活用し子どもたちが学ぶ光景に対して、保護者の皆さまはどう向き合っていくべきなのかを中原先生にお聞きしてみようと思います。


プログラミング教育・STEAM教育を実践していて、こんな誤解をされることだけは避けたい!と思われるようなことはありますか?

「コンピュータ=悪・危険」という誤解は避けたいです。

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お家で宿題や勉強をせずに、コンピュータやスマートフォンばかり触ってしまうお子様の姿を眺めてしまうと、何か動画サイトやSNS、ゲームばかりやっているのでは、と大人は思ってしまいがちです。

しかし、そういったメディア、サイトの情報が子どもたち自身のプロジェクトや「自分事になっている学び」に必要なこともあります。

「コンピュータやゲーム、インターネット動画サイト=悪・危険」なのではなく、テクノロジーやコンピュータを悪用してしまう大人、また子どもたちにコンピュータの正しい使い方をきちんと伝えていない大人がいけないのだと思います。

コンピュータを使うと、自分のやりたいこと、つくりたいものがつくれる、「クリエイター」になれます。自分の仕事や生活を、そして社会を豊かに楽しくできます。

また、世界中の人たちとつながり、時には困っている人をテクノロジーやコンピュータの力で助けることができます、こういったことを自分も含めた大人が伝えていかなくては、と思っています。

未来を自分たちの手で創る、切り開いていく、そのためにテクノロジー、コンピュータとプログラミングの使い方が重要だということを伝えていきたいです。


デバイスの正しい使い方を教えていくことこそが、大切なんですね!


先日、香川県でスマホ・インターネットの利用時間制限に関する条例の審議が進められていることが大きな話題となりました。


しかし、日本の学生のデジタルデバイスに纏わる問題は、利用時間そのものよりも何にデバイスを活用すべきかを大人たちがきちんと教えられていないことだと考えられます。


PISA2018の調査結果によると、学校外で「ネット上でチャットをする」「1人用ゲームで遊ぶ」ためにデジタルデバイスを使う日本の学生(15歳)の割合は、OECDの平均を大きく上回っていました。


一方で、「コンピュータを使って宿題をする」「学校の勉強のために調べ物をする」学生の割合は、 OECDの平均を大きく下回っているのです。


「スマホ・インターネットの利用時間」を単純に減らせば良いのではなく、そういったデバイスを活用して自分なりの「学び」を享受できると気づかせることこそが今求められています。


そういった意味でも、テクノロジーを活用して「創造性」を発揮する子どもたちを育てたいという中原先生の思いは、今の日本が抱える問題にもマッチしていますね。

自分事として取り組めることの大切さ

プログラミング教育で身につくのは、もちろんプログラミングの能力だけではありません。


以前の記事でも触れましたが、プログラミング必修化の背景には「プログラミング的思考の涵養」があります。


では、中原先生はプログラミング教育に携わる中で、プログラミングそのものの知識・技能以外で、子どもたちにどんな力を身につけて欲しいと考えておられるのでしょうか。


プログラミング以外で、社会で役立つと思われる「これだけは身につけて欲しい」と思う能力・資質はありますか?

「推し量る力」「想像力」そして「探究できる力」 でしょうか。

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プログラミングは、コンピュータを使って、「コンピュータと会話する手段(ツール)」であり、新しいテクノロジーやサービスを生み出すツール、問題解決の方法を具現化するツールだと考えます。

ツールを使いこなして、新しいものを創造することも大切だと思いますが、サービスの対象となる人や問題を抱える人の思いや状況などを「推し量る力」「想像力」を、どのような現場でも、子どもたちには身につけてほしいです。

そして、それを自分事として置き換え、「探究できる力」を身につけてほしいです。

そのためには、テクノロジーやコンピュータ一辺倒になるのではなく、多感な時期にこそ、デジタルとアナログの「バランス」をとることは必要だと思います。

そういった意味で、自然体験や農作物育てる経験、旅行で現地の空気を感じる力、など自分の体や感覚から「感じる」ことも大切にしてほしいです。

また、どのような現場でも最終的にはチームで活動することも多いかと思いますので、相手の状況や思いを読み取る力、かつ自分のやりたいことや思いを相手に伝える「コミュニケーション力は、オンラインでもオフラインでも必要かと思います。


どんなことにも「想像力」を働かせて、自分事として探求を続けていくことが大切なんですね!


以前に広島フィルム・コミッションの西崎先生にお話を伺った際に、「どんな映画であっても想像力を働かせて、『自分事』として取り組めるのが、自分の強みです」ということをお話してくださいました。


私たちの社会が抱えている問題や課題をただ「社会問題」として客観的に捉えるのではなく、それに自分なりに向き合って、自分事の問題にまで落とし込んで考える力というのは、今後ますます必要とされるものだと思います。


プログラミング教育の中では、課題が与えられ、自分なりのアプローチでその課題に取り組むことになるので、「自分事」として学ぶトレーニングができるというわけですね。


また、デジタルデバイスに傾倒しすぎるのではなく、「感性」を磨いていくこともまた大切だとお答えいただきました。


自然体験や他人とのコミュニケーションの中で、そういった感覚的な鋭さの部分を磨くことで、より豊かな「創造性」を獲得できるのではないかと思います。

創造性の再定義とワクワク感がもたらす学びの原点

中原先生へのインタビューの締めくくりということで、先生が今後どんなことに取り組んでいきたいと考えておられるのかについても伺ったみたいと思います。


現在、プログラミング教育やSTEAM教育に取り組まれ、最先端の教育を追求している先生が、その先にどんなことを見据えておられるのか、非常に気になるところですよね。


最後になりますが、現在力を入れている取り組みや、今後実施していきたい教育活動があったら教えてください。

「創造性」とは何か、どうやったら子どもたちの中に育むことができるのか、それを見つめ直す作業を行いたいです。

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これからの時代はAIと共生していく時代であると最初にお話ししましたが、教育現場は、AIにできないことを子どもたちに確実に育んでいく必要があると思います。それが「創造性」ですね。

AIは大量のデータを統計学的に分析し、「最適値」を提案することができます。しかし、何もデータがない「白紙」の状態から自由に発想したりすることは現状ではできないと考えられます。

そのため、テクノロジー全盛のこの時代にこそ、人間が人間たる所以である、「創造性」を、私たち教育に関わる者がもう一度問い直す必要があると思います。

「何もない所から生み出す、自由に発想する、既存のものを組み替えて(編集して)新しい価値を生み出す」こういったことも「創造性」だと思いますが、問題を創造的に解決することもまた「創造性」だと思います。

そういった意味で、モノをつくって、プログラミングで自在に動かす活動とともに、地域や社会、自分たちの生活にある問題や課題を解決するためのプログラミングやコンピューティングの課題、学習活動、プロジェクトをたくさん考え実践していきたいです。

また、与えられた問題を解くことに慣れた子どもにとって、白紙の状態から、自分で答えを創り出すことは本当に難しいことだそうです。

そこで、今後は、全くの白紙からアイデアや考えをみんなで創り出すこと、その生みの楽しさと苦しさを、これからも子どもたちとともに一緒に体験していきたいです


ここまでのインタビューでもたびたび挙げていただいた「創造性」をこれからも追及していきたいということですね!

ちなみに先ほど話題に挙がった「コミュニケーション力」についてはどうでしょうか。

「国際社会でのコミュニケーション力」の向上は重要だと痛感させられています。

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2019年に、米国マイクロソフトコーポレートバイスプレジデントでアジアプレジデントのRalph Haupter氏に、オンラインで子どもたちがマインクラフトカップ優勝の実践報告する機会を得ました。

そのプロジェクトの中で、自分も含めて、子どもたちにも、テクノロジーを活用して英語でプレゼンテーションする力、世界の人々とコミュニケーションしていく力をもっと身につけなくては、と痛感しました。

そのためにはAIやテクノロジーの力をもっと活用していこうと思います。

5年生では〝English Letter Project″という英語科とICTコンピュータ科の合科のプロジェクトに取り組んでいます。これは、子どもたちが英語の時間に書いた手紙をネイティブスピーカーの先生方に読んでお渡し交流するというプロジェクトです。

コンピュータ科の方では、従来は英文タイピングする程度で終わっていたのですが、株式会社デジタル・ナレッジが開発した「トレパ」というAIソフトを活用することで、自分の書いた英文のスペルミスに気づいたり、ネイティブスピーカー並みの制度の高いコンピュータの発音を聞いて、単語や言い回しなどを個別に練習し、短時間で英語の活用力を高めることができました。

この時にAIソフトの精度の高さに驚き、子どもたちの中に、「AIっていったい何なの?」という疑問が生まれ、AIについてみんなで調べてみようという探究学習に発展しました。

ここでの体験からAIの教育現場での活用の醍醐味を知り、2019年6月には、福岡県の株式会社グルーヴノーツが運営する「TechPark」が開発したAIブロックを活用したプログラミングの授業を行いました。

そして最終的にはAIブロックを活用して10月のバザーという行事で子どもたちが出店するお店で、子どもたち自身がAIレジを使って検証を行いました。

バザーで子どもたちがAIレジを使うというのは、面白い取り組みですね。AIというものに触れて、子どもたちがワクワクしている様子が目に浮かびます!

まさにその通りで、やはりいつになっても変わらないことは、子どもたちのワクワク感や「楽しい!」といった内から湧き上がる思いと知的好奇心を、「学び」として具体的な形にしていくことだと思っております。

そのためには、私自身が「子どもから学ぶ」という本校の原点に、常に立ち戻っていきたいです。

そして、子どもたちが未来を切り開いていくために必要なテクノロジーをツールとして、子どもたちの「知的好奇心」と「創造性」をさらに育んでいきたいと思っています。

子どもたちがプロジェクトや課題に「自分事」として夢中になって取り組めることが大切です。

わからないことや疑問を積極的に自分で調べる、とにかくやってみる、そして修正する、その結果、気づいた時には、自然と力が身についている、自分がつかんだものだからこそ、人に伝えることもできる、このような学びのサイクルの中で生まれた「知的好奇心」と「創造性」は、子どもたちにとって、一生の宝になるのではと思っています。

それは、探究学習?プロジェクト学習、SETAM、それとも自由研究?

はたから見れば、何を学んでいるのかわからない、でもプログラミングやコンピュータ、最新のテクノロジーを活用して、子どもたちが夢中になって取り組んでいる、議論している、ずっと試行錯誤しながらモノを動かしている、そんな「ワクワクする学び」を、これからも子どもたちと一緒に楽しんでいきたいです。

学びの原点に立ち返り、子どもたちが「ワクワク」できること、楽しんで取り組めることを追求していくという熱い思いに感激しました。

これから中原先生がどんな「学び」を子どもたちと一緒に生み出していくのかがとても楽しみです!

学びのヒント

中原先生、ありがとうございました。


今回の先生のお話の中での「学びのヒント」としては以下のことが挙げられると思います。


学びのヒント

(1)大人がデバイスやテクノロジーの可能性を子どもたちに伝えていかなければならない

(2)ワクワク感と問題発見能力に裏打ちされた「自分事」の学びが大切である

(3)AIを始めとしたテクノロジーが台頭している時代だからこそ、改めて人間らしい「創造性」について考えていく必要がある


まずは、やはり大人がコンピュータやスマートフォンといったデバイスやインターネットに対する見方を変えていき、それを子どもたちに伝えていく必要がありますよね。


子どもたちがそういったデバイスやテクノロジーを使ってチャットやゲームにばかり傾倒しているのは、それらを使って何ができるのかをきちんと教えられていないからという側面もあります。


ご家庭でお子様に対してゲームやSNSのために、コンピュータやスマートフォンを使いすぎだと叱りたくなることもあると思いますが、その際にデバイスを使ってこんなことをしてみると良いのではないかと提案してみるというのも、1つの解決策になり得るかもしれません。


そして今回の記事の中でキーワードとして挙がった「自分事の学び」も非常に重要です。


例えば、現代における人類が直面する大きな問題の1つに水資源があります。確かにこれは大きな問題ですが、ではそれが自分の生活にどう繋がっていて、どんな害をもたらす可能性があって、改善のために何ができるのか?と聞かれるとどうでしょうか。


こうした一般的な事象を自分自身や自分の身の回りの事象に落とし込んで、考え、学ぼうとする姿勢こそが「自分事化」の1つの形です。


入試対策でお子様に「時事問題」を勉強させることがあると思いますが、その際に少し「自分事化」を促すような問いを投げかけてみるだけでも、お子様の好奇心を刺激することはできます。


保護者の皆さまには、ぜひお子様が何事でも「自分事」として学ぼうとする姿勢づくりのサポートをしてあげて欲しいですね。


そして、中原先生のインタビューの中で何度も挙がった「創造性」というキーワードについては、深く考えていく必要があります。


AIを始めとしたテクノロジーが発達し、私たちの社会は大きく変化していくことが予見されますが、そんな中で私たちは人間としてどんな価値を創造していくことができるのでしょうか。


それを考えていくためには、まずは中原先生も強調されていたように、テクノロジーを「使える」ようになることが大切ですね。


テクノロジーを使えないことには、それを使って新しい価値を創造することはできません。


プログラミング教育やSTEAM教育は、これからの社会を生きる子どもたちが必要な力を身につける上で大きな助けになることが期待できますね。

おすすめの本

今回の記事に関連したおすすめの参考書・問題集をご紹介させていただきます。


関連書籍

科学のなぜ?新事典

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○取り上げるテーマを,地球・宇宙のふしぎ,植物のふしぎ,動物のふしぎ,私たちのからだのふしぎ,身近なふしぎの5つの分野に分けて,いろいろな「なぜ?」を紹介しています。

○実験・観察の方法なども紹介しています。

詳しくはこちらから

「自分事の学び」の癖づけをしていくためには、どんなことにも好奇心を持ち、身近なものや出来事に疑問や課題を見出していく訓練が必要です。


その上で、大きな助けになるのがこの『科学のなぜ?新事典』です。


お子様の身近な疑問を解説に導く1冊となっており、「なぜ?」から「分かった」へのサイクルを繰り返すことで、自然とお子様の好奇心や問題発見能力を向上させていきます。

今回の賢者

中原 悟

加藤学園暁秀初等学校ICTコンピュータ専科教諭。2019-2020マイクロソフト認定教育イノベーター。
2018年からオープンプランコース「ICTコンピュータ専科」教諭を務め、コンピュータとプログラミングを活用した「創造性」を育む教育を探究、実践している。
主な指導実績:「小・中学生のための国際ロボット競技会URC2019」レギュラー部門優勝。「マインクラフトカップ2019」大賞受賞。

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