【第3回】ごみ焼却場が近未来の秘密警察に?想像力を発揮するための行動力を身につける!

子どもは映画やドラマを見ていると、ちょっとしたことが気になって「なんで?なんで?」と疑問を口にしますよね。


今週も引き続きフィルム・コミッショナーの西崎先生にお話を伺っていきたいと思います。


前回は先生の学生時代のエピソードやご経験、フィルム・コミッションの道を選んだきっかけ等についてお伺いしました。


詳しくは以下のリンクをご参照ください。



とにかく学生時代から勉強の傍らで、映画はもちろん音楽や手芸、料理など興味を持ったことには何でも取り組んできたご経験から、好奇心の大切さを強調していただきました。


今回は先生のお仕事であるフィルム・コミッションによりフォーカスし、その意義やそこで求められる力・技能などについてもお伺いしてみたいと思います。


また、この記事が公開となりました本日2019年12月20日より西崎先生が所属されている広島フィルム・コミッションが支援した映画『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』が公開となります。


こちらも良かったらチェックしてみてくださいね!


それでは、西崎先生よろしくお願いいたします。

■ フィルム・コミッショナーとして感じた映画の力


第1回記事でもお話しいただきましたが、「フィルム・コミッション」というお仕事は、映画のロケを誘致したり、撮影・上映の支援を担当したりといった形で映画作りを支えています。


フィルム・コミッショナーとしてご活躍されている西崎先生は、このお仕事にどんな意義や、やりがいを見出しておられるのでしょうか。


まずは、この点についてお伺いしてみました。


フィルム・コミッションというお仕事の意義は何だと思いますか?

フィルム・コミッションの仕事をしていると、「映画が時間も国境も越えて旅をする」と実感することがあります。

時間も国境も越えて・・・ですか?

映画は遠い異国の地で暮らす人や遠い未来でその作品を見る人にも届きます。そんな作品が広島から生み出されるようサポートできるところに、意義があると考えています。

確かに今、日本に暮らしている私たちが何十年も前にアメリカやヨーロッパで撮影された映画を見ることもありますよね!

先生が前回の記事で挙げられた『ローマの休日』も1950年代にローマを舞台に撮影された映画でした。

では、「映画が時間も国境も越えて旅をする」と実感した瞬間はありますか?

映画『この世界の片隅に』を支援させていただく中でまさに実感していました。

この作品は多数の映画賞を受賞していますが、その中に、韓国の映画祭でのグランプリがあります。

太平洋戦争を描く日本映画は、韓国での上映すら難しかった時もありましたが、名作は、国家間の難しい状況も軽々と越えて、人々の心に届くのだと本当に嬉しくなりました。

映画を見て感動する心に国境はないんですね!


『この世界の片隅に』はまさに太平洋戦争下の広島での普通の人々の暮らしを「すずさん」という1人の女性の視点で描いています。


戦争下で貧しいながらも懸命に毎日を生きていた当時の人々の姿が生き生きと描き出され、それらを一瞬にして奪ってしまう空襲や原子爆弾の恐ろしさが際立ちます。


これを歴史的事実としてただ伝えようとしても、西崎先生も仰っているように様々な事情から難しいということがありますね。


しかし、映画というフォーマットに落とし込まれると、それが普遍的な「物語」に昇華し、多くの人に届けられうる可能性を獲得します。


今年(2019年)に日本で公開された映画の中に『幸福路のチー』という作品があります。この作品は「幸福路(こうふくろ)」という台湾に実在する通りで暮らす一家の娘である主人公が激動の時代の中で成長していく様を描いています。


台湾の政治デモや独立運動などかなり政治色も盛り込んだ内容になっていますが、多くの国々で公開され称賛の声が集まっています。


場所や時代を超えて、その作品を見た人に普遍的なメッセージを届けることができるというのは、映画の可能性の1つですよね。

■ フィルム・コミッションで求められる行動力


前回の記事では、学生時代のご経験を伺いながら、そこでの経験や学びがフィルム・コミッションのどのように活かされているかという観点でご質問させていただきました。


今回はよりストレートに先生がフィルム・コミッションのご活動の中で、どんな力や技能が大切だと感じられたのかをお伺いしてみようと思います。


フィルム・コミッションのご活動をしていく中でどんな力や技能が大切だと感じますか?

やはり、想像力と創造力は、フィルム・コミッションの活動の上でとても大切なものだと感じています。

第1回の記事でも挙げておられましたね。

はい。広島は原爆に関するドキュメンタリー撮影も多く、戦争を知らない世代の私にできるのは、想像力を駆使して、被爆者の方に寄り添い、当時に思いを巡らすことしかありません。

また、ロケを誘致するためには、映画関係者との信頼関係を築くことが不可欠です。

そのため、ロケ地提案の際も想像力と創造力を駆使して監督のイメージに合うロケ地を一生懸命探します。

時間と場所を越えて思いを巡らせるということですね!

ちなみにこれまでのロケ地提案の中で印象に残っているものはありますか?

そうですね…消防署をニューヨークのスタジオとして、ゴミ焼却工場を近未来の秘密警察のロケ地として提案し、撮影していただいたことがあります。

ごみ焼却工場が近未来の秘密警察の舞台になるだろうとはなかなか想像できないですね…。

あとは特別な力や技能というよりは、やはり心構えと努力、つまり、やるかやらないかが大切だと考えています。

想像力と創造力があっても行動力がなければ、それを実現することはできないということですね!


西崎先生の第1回記事でも想像力と創造力は話題に挙がりました。


そして、この回答ではその1歩先のことが示されているように感じます。


頭の中でいくら想像・創造できたとしても、その実現のための行動力が伴わなければ、社会で活躍することはできません。


先生が、ごみ焼却場が近未来の秘密警察のロケ地になるだろうと思い至った想像力も、もちろん素晴らしいのですが、それを実際に提案するに至った行動力もまた特筆すべき点だと思いました。

■ 体験し、掘り下げることの重要性


先ほどは、フィルム・コミッションにおいて求められる力ということでお話を伺いました。


想像力・創造力、そして何よりその実現のために動く行動力がまずは大切だということを感じるお話でしたね。


では、それを身につけるためにはどんなことに取り組めばよいのでしょうか?小中学生の頃からできることで質問してみました。


フィルム・コミッションで求められる力や技能を身につけるために小中学生ができることがあれば教えてください。

今は、インターネットやテレビ等で情報が氾濫していますよね。ただ、写真や短文だけ読んで満足しないでいてほしいです。

美味しそうと思ったら、食べてみてほしいし、作ってみてほしい。行ってみたいと思う場所があれば、その場所に行ってほしいし、その場所の歴史や文化も調べてもらいたいです。

また、何よりそしてその体験を身近な人に話してほしいと思っています。この繰り返しが自然と行動力や想像力を養ってくれると思います。

映画を見て、疑問に思ったことを調べたり、登場した食べ物を食べたり、作ってみたりするのも良いですよね。

そうですね。映画でも、小説でもいいので、ジャンルを問わず楽しんでいただきたいです。

そして、多種多様な世界があることを、さまざまな価値観や感情があることを知っていただきたいです。

多様性を知ることは、想像力・創造力を磨くうえでも非常に大切なことです。


近年、スマートフォンの普及も相まって、より多くの情報に手軽にアクセスできるようになりました。


それに伴って、私たちはたくさんの情報を浅く広く知ることができるようになりましたが、同時にそこに依存し、自分の足を使って調べる、自分の味覚で確かめる、自分の目で見るという体験や経験から遠ざかってしまう傾向も見え隠れしています。


簡単に情報にアクセスできるからこそ、それを入り口にして、さらに自分で深めてみる、自分だけの視点を持とうとする姿勢は非常に大切ですし、それは将来的にも役に立つものです。


インターネットを調べて出てきた情報や写真だけで学びを完結させない姿勢づくりを子どもの頃から習慣にしたいものですね。

■ 学びのヒント


西崎先生ありがとうございました。


今回の「学びのヒント」としては以下の点が挙げられるのではないでしょうか。


学びのヒント

・想像力・創造力を磨くこと、そしてその実現のために動く行動力が大切である。


西崎先生の第1回インタビューや他の賢者の先生のインタビューの中でも「想像力・創造力」の重要性は話題に挙がりました。



ただ、それを身につけたとしても、そのためにできることを実行していく行動力が無ければ、頭の中のイメージが外に出ることはありません。


以前に拝読した朝井リョウさんの『何者』という小説にこんな一節がありました。


十点でも二十点でもいいから、自分の中から出しなよ。自分の中から出さないと、点数さえつかないんだから。 (朝井リョウ『何者』新潮文庫より)

この言葉がすごく印象に残っているのは、想像力・創造力に長けていて、頭の中でいくらイメージが膨らんでいても、社会人になってから求められるのは、それを外に出せる人、つまり行動に移せる人なのだと痛感させられるからです。


西崎先生が多くの映画人からの信頼を得ているのは、想像力・創造力に富んでいるからだけではなく、そのイメージを実現させるために行動できる力に長けているからとも言えます。


その行動力を養うためには、前回の記事で話題に挙がった「好奇心」にも関係することですが、どんなことでも調べてみよう、掘り下げてみよう、やってみようという姿勢の癖づけをしていかなければなりません。


映画を見て、舞台となった場所を訪れてみる、登場した事物を調べてみる、時代性を掘り下げてみる。何でも良いと思います。そしてそれを誰かに伝えてみるということで、保護者の皆さまが聞き手になってあげるのも効果的でしょう。


そういった小さな「やってみよう」の連続が、お子様の姿勢を育てていきます。


ぜひ、今日からのお子様の学びに取り入れてみてください。


関連映画作品

この世界のさらにいくつもの片隅に

ポスター画像西崎先生の所属する広島フィルム・コミッションが支援された本作がいよいよ2019年12月20日に公開されます。

2016年に公開され大ヒットを記録した『この世界の片隅に』に250カットを超えるシーンが追加された長尺版となります。

ぜひこちらも劇場でご覧ください!

映画公式サイトはこちらから

■ 関連書籍

関連書籍

自由自在Pocket 歴史人物&できごと

自由自在Pocket 歴史人物&できごと○歴史に登場する人物や現代の著名な人物を取り上げ,その人物に関連する歴史上の重要なできごとを解説した人物・できごと事典です。

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『自由自在Pocket 歴史人物&できごと』はそんな学校の教科書から1歩踏み込んで、歴史を考えてみたいというお子様におすすめの1冊となっております!

今回の賢者

西崎 智子

香川県出身。2003年より現職。
2005年AFCI(国際フィルム・コミッショナーズ協会)認定の国際フィルム・コミッショナー資格取得。
初支援作品は『父と暮せば』。主な支援作品に『夕凪の街 桜の国』や『エルネスト』『孤狼の血』、市街地で爆破シーン撮影を行った『DOG×POLICE 純白の絆』ほか、広島ならではと言える海外作品の支援も多い。公開まで5年半にわたり支援を続けたアニメーション映画『この世界の片隅に』。