【第1回】和田豊先生に聞く!航空宇宙工学の魅力や面白さとは?

この写真は何を作っているところなんだろ?

さて、今週からは新しい賢者にインタビューしていきます。


お話を伺うのは、千葉工業大学工学部で航空宇宙工学の研究をされている和田豊先生です。


航空宇宙工学という言葉を聞いても、ピンとこない方が大半かと思いますので、第1回は先生の研究分野について聞いていくところから始めたいと思います。


またお話の中には、お子様の学習に役立つ情報も含まれています。


文部科学省が学習指導要領の中でアクティブラーニングの推進を目指して「発見学習」という言葉を用いているのをご存じでしょうか?


今回のインタビューはまさに、そんな「発見学習」に直結する内容になっております。


それでは、和田先生お願いいたします!


航空宇宙工学ってどんな研究をしてるの?


さて、まずは和田先生の研究されている航空宇宙工学の概要を聞いていきたいと思います。


宇宙やロケットに興味のあるお子様がいらっしゃる方は、こんな研究があるんだよ!とお話ししてみるのも良い学びの機会ですよ!


和田先生の専門分野について、教えてください!

航空宇宙工学が専門で,その中でも特にロケット工学や燃焼工学と言う分野を中心とした研究をしています。

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私の研究分野はロケット工学や燃焼工学,推進工学です。

また,少し化学の知識も使うので,高校の教科でいえば物理と化学を合わせたような分野が専門になります。

今は,ロケットの新しい推進システムを提案し,実際に実験し,その有用性を評価するという実験的な研究活動を主に行っています。

特に,プラスチックを燃料に利用した,安全性が高く,低コストで将来の有人ロケットなどに利用されることが期待されているハイブリッドロケット用の新型燃料の開発なに注力しています。

低融点かつ伸びと弾性に優れたプラスチック材の開発や,高エネルギーなプラスチックの燃料への応用などを研究しています。

航空宇宙工学の魅力や面白さは?


先ほどの先生のお話の中で、航空宇宙工学の概要についてご説明がありましたが、次にその魅力や面白さについて伺っていこうと思います。


ここからのお話は最初にも書きました「発見学習」にもつながる内容になってくるので必見です!


航空宇宙工学の面白さを一言でいうと?

結果の予測の難しさです.思うとおりに行くことはなく,なぜそうなるのかが分かった時は最高に楽しいです。

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新しく考案したシステムや新型燃料を用いて実際に燃焼実験を行います。

もちろん,実験前にはどのような性能が出るのか,予測し,期待して実験準備を行い,燃焼実験を行います。

しかし,その多くは予想と違う結果になります。

思ったよりも性能が出なかったり,逆に,思ったよりも良く燃えたりと本当に様々です。

そして,なぜ,想像と違う結果が出たのか,その理由を明らかにするために様々な追試験を実施し,原因を探していきます。

一つ一つ可能性を検証し,仮説を立てては実験し,そして,ついにその理由が分かった瞬間,複雑な現象を説明できる理論ができたとき,その時が最も楽しい時間です!


航空宇宙工学の特徴って?


ここまで航空宇宙工学についてお話を伺ってきましたが、他の航空分野と比較しながら、この研究の特徴を探ってみようと思います。


ロケットの研究の現場でどんな「試行錯誤」が重ねられているのかについてのなかなか聞けない貴重な裏話もありますよ!


関連する分野との、似ているところ・違うところを教えてください。

航空分野です.地面を離れ動くという点は同じですが,宇宙は繰り返し実験することが難しい点が異なります。

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航空分野は,ロケット工学と同じく軽量で高強度な機体が求められます。

可能な限り軽くまた,空気の中を飛ぶため空気抵抗を小さくするような工夫がロケットと似ています。

しかし,飛行機は滑走路から飛び立ちまた地面に帰ってくることが出来るため,初めての飛行機などはちょっとだけ飛んでまたすぐに戻るなどの繰り返し実験を行い,都度修正しつつ確認しながら開発を進めていくことが出来ます。

一方でロケットの打ち上げ実験は規模が大きくまた費用も掛かるため何回もできるものではありません。そのため繰り返し実験することが困難でした。

そこで,安価なロケットを開発,シンプルな打ち上げ実験を提案し,飛行機のように繰り返し実験ができるロケットの開発環境を整えることも研究テーマの一つです。

学びのヒント


和田先生、ありがとうございました。


今回は普段なかなか聞くことのできない、ロケット工学研究の裏話を聞くことができました。


それだけではなく、今回和田先生にお答えいただいた内容にはお子様の「学び」に還元できるヒントがたくさん含まれています。


まずは、最初にも挙げた「発見学習」というキーワードですね。


先生にお話しいただいた、自分なりの仮説や問いを立てながら、実験や調査を重ね、原因を究明していくという研究プロセスは、まさしく「発見学習」そのものですよね。


また、最後の質問の回答に「安価なロケットを開発,シンプルな打ち上げ実験を提案し,飛行機のように繰り返し実験ができるロケットの開発環境を整える」というものがありましたが、これもすごく大切なことです。


いきなり保護者の方がお子様の研究や探求のための環境を整えてあげるのではなく、お子様が自分のできる範囲で情報や物品を用意し、ご自身で「場」づくりをしていくという経験も将来ものすごく役立つものだと思います。


今回の記事で取り上げた内容を、ぜひお子様の「学び」に生かしてあげてください。

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今回の賢者

和田 豊

千葉工業大学工学部教授。
千葉工業大学惑星探査研究センター非常勤主席研究員を併せて務める。

和田先生の詳しい情報はこちらから

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