美添先生は一体何がきっかけでプログラミングやスーパーコンピュータに興味を持ったんでしょうか?
今週も引き続き、美添先生にお話を伺っていきます。
最近のニュースを見ておりますと、2012年に運用が開始され、一時は世界最高のスペックとも言われた「京(けい)」というスーパーコンピュータが8月30日に運用が終了になるというニュースを見かけました。
7年前に世界でトップクラスだったスーパーコンピュータが、僅か7年間で世界各国の新モデルに追い抜かれていき、2019年6月に発表されたランキングでは、第20位まで後退しています。
このことが今のプログラミングやコンピュータの世界の技術発展の凄まじいスピードを物語っていますよね。
そして日本は理化学研究所を中心にして、2021年に「富岳(ふがく)」という名称がつけられた新しいスパコンを導入します。
今回の賢者である理化学研究所革新知能統合研究センターの美添先生もどうやらこのプロジェクトに関わっておられるようです。
さて、今や日本のプログラム開発やスーパーコンピュータ開発の最前線に立って活躍されている先生ですが、一体、どういう経緯でこの分野に興味を持ったのでしょうか。
はたまたどんな学生時代を過ごし、どんな勉強を続けてきたのでしょうか。
今回は、そんな皆さまが気になっているであろう点をいくつかお聞きしてみました。
それでは、 美添先生よろしくお願いいたします!
賢者のインタビューでは、先生が今の道に進むきっかけになった出来事や発見などについてお聞きしていますが、どの先生も非常にユニークな回答が返してくださるので、非常に興味深いです。
今、探索アルゴリズムの構築やスーパーコンピュータの開発にも携わっている美添先生が、ご自身の研究分野に興味を持ったきっかけってもちろん気になるところですよね。
まずは、そこからお聞きしてみました。
どうしてこの分野を選ばれたのですか?エピソードなどあれば教えてください。
囲碁を打つプログラムを書きたいと思い、その方法を考えているうちに自然と研究を始めました。
なるほど!似たようなものを比較することで初めて生まれる疑問や問題解決があるのですね!
美添先生はコンピュータ将棋とコンピュータ囲碁を「比較」して捉えたときに、初めて後者が前者に比べて「弱い」ことに気がつき、そこに疑問を抱いて研究を始めました。
これはコンピュータ将棋だけを見ていても、コンピュータ囲碁だけを見ていても気がつけなかったことでしょう。
つまり、大切なのは1つの物事にフォーカスすることに固執することではなく、少し視野を広げてみて、相対的に対象としている物事を捉えてみることです。
先日、千葉県袖ケ浦市立奈良輪小学校の6年生の女の子が童話「桃太郎」の鬼について、200冊以上の「桃太郎」を読み比べて研究したというニュースを見ました。
このニュースにもまさしく同じことが言えます。
彼女が大きな発見をすることができたのは、目の前にある1冊の『桃太郎』の本を他のものと比較してみようという発想に至ったからです。
お子様がいろいろな物事に好奇心や疑問を抱き、それに熱中して調べたり、考えたりしているのは、非常に良い傾向です。
そこで、保護者の皆さまができるサポートとしては、「お子様が興味の対象を相対的な視点で見る」ことができるようにアドバイスしてあげることが挙げられると思います。
先ほどは、先生が今の研究分野に興味を持ったきっかけをお答えいただきました。
次に、美添先生が学生時代にどんな勉強をしていたのかについてお聞きしてみました。
この質問も毎回、すごく面白い回答が返ってくるので非常に楽しみです。
先生は学生時代、どんなことに没頭していましたか?
速いプログラムを書くことが好きでした。ゲームも好きで、ゲームの仕組みを調べることも好きでした。
大学生の時には既にコンピュータやプログラムに没頭していたんですね・・・。
大学時代ってどうしても自由な時間が多くできるので、勉強以外の遊びに時間のを充ててしまいがちなんですが、その中で自分の研究に打ち込み続けたというのがすごいですよね。
その一方で、好きなことや興味のあることに熱中しすぎて、それ以外のことが目に入らなくなってしまったというのも何だか微笑ましいエピソードです。
先生の回答で興味深いのが、コンピュータゲームが好きで、そこでハイスコアを出すことに熱中したというエピソードですね。
美添先生は、ゲームで目標を達成するために没頭する姿勢を身につけ、それをご自身の現在の研究に向き合う姿勢へとそのままコンバートしているようにも見受けられます。
ゲームでハイスコアを追求するために努力するという行為は、探索アルゴリズムに趣向を凝らして、処理速度を上げるという作業と構造自体は実は同じなのです。
こういう風にゲームが持っているプレイヤーを活性化させるノウハウを、ゲーム以外の領域に持ち込むことを「ゲーミフィケーション」とも呼ばれます。
これまでゲームと聞くと、勉強の妨げになるものというイメージが強かったと思います。
しかし、近年は、子供がゲームに没頭する姿勢の向かうベクトルを変更して、ゲーム感覚で楽しく勉強できるようにするという手法も注目されています。
お子様がゲームにはあんなに熱中するのに、勉強にはやる気が出なくて困っているという保護者の皆さまは、ぜひこの手法をチェックしてみてください。
先ほど、「学生時代に数学をもう少し勉強しておけば・・・。」と後悔を覗かせた美添先生。
そんな先生に、今の研究でどんな学生時代の経験や勉強が役に立っているのかについてお聞きしてみました。
コンピュータやプログラミングの分野に興味があるお子様にとっては、逆算的に今の自分がどんな勉強に取り組めば良いのかを考えられる内容になっていると思います。
今役に立っている、学生時代の勉強や経験は何ですか?
数学やコンピュータの知識はもちろん役立ちますが、上達するための方法は部活動でも身についたと思います。
なるほど。部活動で筋トレをするが如く、日々の積み重ねの意識が大切ということですね。
例えばサッカー部に所属していて、練習の中で筋トレをしていると、どうしてももっとボールを使った実践的な練習がしたいと感じることがあると思います。
しかし、サッカーという球技1つとっても、単純に足でボールを扱う技術だけでなく、筋力やメンタル的な強さなど様々な力が求められます。
美添先生が仰っている、今の自身の研究分野ではコンピューターの知識やプログラムの技術だけでなく英語や数学などの力も求められるという内容も、これと同じことです。
自分のやりたいことをするためには、どうしても避けては通れない苦手なことや好きではないことが必ずあります。
それらに直面した時に、筋トレに取り組むかのように、粛々と努力を続けられるかどうかも、自分の夢の実現のためには非常に重要なんですね。
美添先生、ありがとうございました。
今回の学びのヒントとして、美添先生の経験談から伺える2つのキーワードを挙げておきましょう。
まず、「ゲーム感覚」でという点ですが、実は勉強には、子どもたちの大好きなゲームと構造的に似ている部分が多くあります。
だからこそ、お子様がついゲームに熱中してしまう傾向をネガティブに捉えるのではなく、1つのことに没頭できる姿勢を評価してあげ、そのベクトルを勉強に向けられるように環境づくりをしてあげると良いのではないでしょうか。
もう1点の「筋トレ」という点についててですが、やはり自分のやりたいことをするためには、どうしても苦手な分野や教科の勉強にも取り組む必要性が出てきます。
この勉強の側面が実は筋トレに似ているんですね。
ですので、スポーツを上達させるために筋トレに取り組むように、自分がやりたいことをするためには、苦手なことや苦痛に感じられる勉強にも取り組む必要があると位置づけてあげると良いのではないでしょうか。
お子様が勉強に集中できない、または苦手な勉強を避ける傾向にあるといった悩みを抱えておられる保護者の方は多いように思います。
そういったお悩みを抱えている方は、まず「勉強」というものを子供にとってどういう位置付けにしていくのかという視点で、今回のインタビューの内容などをヒントに考えてみましょう。
今回の記事に関連したおすすめの参考書・問題集をご紹介させていただきます。
5分間復習プリント シリーズ
○各教科の基礎的な問題を,1単元1ページあたり5分間で取り組むことができます。
○短時間で終わるので,次々と進めていくことができます。
○解答には,解き方や考え方などを簡潔にまとめた保護者の方が教えやすいアドバイスを加えています
『5分間復習テスト』シリーズは、1ページ5分で取り組めるドリルというコンセプトで作られています。
このシリーズは、毎日の学習の習慣づけにも適しています。
というのも毎日5分の学習をゲームの「レベルアップ」的に位置付けてあげることで、RPG(ロールプレイングゲーム)に取り組む感覚で勉強できるようになっているのです。
ぜひ、学校に行く前の朝の空き時間に「5分間」の勉強を習慣化してみてはいかがでしょうか。
もう1冊、「ゲーム」感覚で学べるという点で最適な1冊を紹介します。
賢くなるクロスワード シリーズ
○クロスワードパズル形式で楽しみながら、しっかり学習することができるドリルです。
○解答編は答えだけでなく,くわしい解説を付けました。
○本文や解答編にある「自由自在で調べよう」のコーナーでは,姉妹版の「小学自由自在」シリーズの参照項目を示し,学習がより深まるようにしました。
クロスワード形式で様々な教科の勉強に取り組めるので、ゲームが大好きなお子様には最適な1冊だと思います。
こちらもなかなか勉強の習慣がつかないお子様におすすめです。