囲碁や将棋、チェスの世界ではAIが人間を圧倒するようになっているんですよね。
今週からは、新しい賢者の先生にお話を伺っていきます。
インタビューにお答えいただいたのは、理化学研究所革新知能統合研究センターで研究に取り組まれている美添一樹先生です。
2016年に囲碁の世界大会優勝経験もあるイ・セドル氏とAI技術で学習・訓練を受けた「AlphaGo(アルファ碁)」というシステムが対戦し、4勝1敗で後者が勝利したというニュースが話題になりました。
チェスの最初の二手の着手数は400通り、将棋が900通りという中で、囲碁は129960通りあると言われていて、それ故にAIが囲碁のような複雑なゲームで人間に勝利するには、まだまだ時間がかかるだろうとされていました。
しかし、驚くべき速さでAI技術は進歩し、あっという間に囲碁で人間を上回ってしまったのです。
そんな囲碁AIを動かしているアルゴリズムにも密接に関係のある研究をされているのが、今回お話しいただく美添一樹先生です。
AIと聞くと、自分とは縁遠い、難しい話と思われる方が少なくないと思います。
ただこれからの社会や教育について考えていく上でAIを避けて通ることはできませんし、プログラミング教育が始まるという観点で見ても、アルゴリズム等の話はお子様が今後学ぶ内容に関連してくる可能性があります。
今回、美添先生には、そういった分野にまだ馴染みがない人がいらっしゃることも踏まえて、非常に分かりやすく解説していただいています。
ぜひ、最後まで読んでいってくださいね。
それでは、 美添一樹先生よろしくお願いいたします!
まずは、今回の賢者である美添先生に、ご自身の専門分野についてお聞きしてみました。
ゲームやAIのアルゴリズムを研究しているということですが、より具体的に先生のご専門に踏み込んでいきたいと思います。
先生の専門分野について、教えてください!
ゲームなどで良い手順を探すためのアルゴリズムををスーパーコンピュータで動かす研究をしています。
カーナビや乗換案内も「探索アルゴリズム」を使用しているんですね!
「探索アルゴリズム」と聞くと難しそうに聞こえますが、意外と私たちの身近なものにも使われているんですね。
AIは記憶や情報処理能力に長けており、多くの情報を整理して、その情報から最適解を導き出すことについては得意分野です。
ただ膨大な情報の中から必要な情報を探し出して、それを分析し、答えを導き出すとなると、すごく時間がかかってしまいそうですよね。
そういったAIの性質を踏まえて、美添先生は、どうすれば高速で「探索」を完了させることができるようになるのかを模索しているということです。
AIにも弱点はありますが、そこをどう補完するかの研究を進めていくことで、人間にはできないような膨大な情報の整理や分析ができるようになるんですね。
次に、先ほどお伺いした美添先生の専門分野である「探索アルゴリズム」の研究のどこに魅力や面白さを感じているのかをお伺いしてみました。
アルゴリズムや人工知能の研究って、少し私たちとは縁遠く感じられるような話なので、逆にその分野の第一線で活躍されている方が、どんなところに面白さを見出しているのかって気になるところではないでしょうか。
「探索アルゴリズム」研究の分野の面白さを一言でいうと?
上手くいくと、思いもよらない選択肢をコンピュータが発見してくれるところが一番の面白さだと思います。
AIが人間にはできないような新発見に辿り着くことがあるんですね!
映画などを見ていると、汎用的な知能を有した「強いAI」が目立ちます。
これは、人間と同等かそれ以上の知能を有し、様々な状況や分野に柔軟に対応できるAIということになりますが、現時点では、実現はまだまだ難しいとも言われています。
そのため今は「弱いAI」と人間が協働することで、多くの成果を得ているというわけです。
現状でAI単体で新しく何かを創造したり、新しい発見をしたりということは難しいとも言われています。
しかし、私たち人間がAIを適切に扱うことができれば、人間の知能だけでは辿り着き得ないような世界を見ることができるんですね。
ここまでの先生のお話の中で、「探索」と機械学習という2つの言葉が何度も挙がっていました。
どちらもAIに関連したキーワードではあるんですが、その2つがそれぞれどんな意味を持っていて、どう違うのかって非常に気になるところですよね。
第1回記事の締めくくりとして、 「探索」と機械学習の違いについてお伺いしてみました。
「探索」と機械学習の似ているところ・違うところを教えてください。
「探索」と機械学習はどちらも人工知能分野に分類されますが、「探索」は手順や組合せの発見に有効です。
なるほど。同じAI分野でも、「探索」と機械学習では、その性質が全く異なるんですね。
どんなに便利な道具があったとしても、それを使う人間が使い方を知らなければ、その良さを100%生かすことはできません。
それと同じで、AIという便利ツールがあったとしても、その扱い方が分からないと、どうすることもできません。
AIが今後、どんどんと発展していく中で、まずはその特性を知るところから始めていく必要がありそうです。
美添先生、ありがとうございました。
今回は「探索アルゴリズム」という少し専門的で、難しい内容に踏み込んだ記事になっていましたが、その一方で私たちがAIに限らず様々な物事との向き合い方を考えていく上で重要なヒントも隠されていたのではないかと思います。
これから小学校教育の現場でもプログラミング教育が始まります。
その中で文部科学省が重視しているのは、 「情報活用能力」の育成です。
これは、情報及び情報手段を主体的に選択し活用していくための個人の基礎的な資質や力と定義されています。
もちろんプログラミングができる人を育てたいという思いもあるのでしょうが、それ以上に強調されているのは、自分が活用する情報手段がどんな特性を持っているのかを理解するという部分です。
美添先生も、AIないし「探索」というアプローチを深く理解されていて、だからこそ、それを使って新しい発見に辿り着くことができるのだと思います。
AIに限らずですが、どんなことでもまずは「知る」ところから始めるようにお子様にアドバイスしてあげられると良いですね。
今回の記事に関連したおすすめの参考書・問題集を1冊ご紹介させていただきます。
天才脳ドリル入門編 仮説思考
問題を以前に習った解法を思い出して解くことも大切ですが,教具を使って、あーでもない、こーでもないと仮説と検証を繰り返し、自分で答えを導く能力(仮説思考力)こそが、伸びる子どもを育てます。
勉強はまずは知識・技能を身につけるところから始まります。
そして、その次に自分が会得した知識・技能をどうすれば応用できるのかを仮説・検証のサイクルの中で見出していくことが求められます。
そのために必要な仮説思考力を養うことを目的として作られたのがこの『天才脳ドリル入門編/教具付き 仮説思考』です。
勉強が進んで、ある程度知識の習得ができてきた段階で、ぜひお子様に勧めてあげたい1冊です。