子どもがこれからの社会で活躍するために、どんな力や姿勢を身につけておく必要があるんでしょうか。
さて、今週も引き続き嶋田総太郎先生にお話を伺っていきたいと思います。
前回までの記事では、先生の専門である認知脳科学の概要や学生時代のご経験についてお聞きしてきました。
詳細は以下のリンクからご確認ください。
今回の記事では、認知脳科学の分野で求められる力や、それを身につけるためにすべき勉強などを、一般化しながら皆さんにお伝えしていければと考えています。
また、最後には賢者のインタビューでは恒例となっている、おすすめの本や映画についてもお聞きしています。
お子様の教育について考えていく上でヒントになる情報がたくさん詰まっていると思いますので、ぜひ最後まで読んでいってください。
それでは、嶋田先生よろしくお願いいたします。
前回までは主に認知脳科学とは何か?といった内容が中心になっていました。
そこで少し視点を変えて、「先生の専門領域で求められる力」についても伺ってみようと思います。
先生の専門領域で必要になる学力・力とはどんなものですか?
認知脳科学に限りませんが、暗記や公式だけではこれからは生きていけません。問題を自分で見つけ、自分なりの答えを生み出し、それを検証する力が必要です。
答えの分からない問題や謎に自分なりの答えを見出していく姿勢が大切なんですね。
文部科学省も大学教育について以下のように声明を出しています。
社会に出ると、答えの存在しない、自分で答えを出し、その妥当性を担保していかなければならないシチュエーションがしばしば登場します。
そうなった時に、突然考えてみろと言われても、学生時代にそういった姿勢や考え方を身につけていなければ対応することができません。
1つの解答に辿り着くことを重要視する入試型の勉強だけに依拠しすぎると、そういった「答えのない課題」に直面した時に困惑し、立ち止まってしまう可能性があります。
フランスで実施されているバカロレアの哲学の試験は有名で、受験者は、哲学に纏わるいくつかの問いが投げかけられ、それに対して白紙の答案用紙に自分なりの解答を書き込みます。
これは、まさに知識を持っていることそのものを評価するのではなく、その知識を使ってどうやって自分なりの解答を作れるかを試されている例と言えるでしょう。
日本でも、大学入試に記述問題を導入する方向性が打ち出されており、今後こういった力がどんどんと求められるようになっていくと思われます。
嶋田先生も述べておられますが、謎や問題に対して自分なりの答えを見出し、そしてその解答に妥当性と根拠を与えていく姿勢を子どものうちから養えると良いですね。
現在、増進堂・受験研究社では、そんな記述式問題性の重要性に注目し、理化学研究所AIPと提携し、記述式問題の自動採点の研究に協力しています。
その提携についてこちらの記事で詳しくお話しておりますので、ぜひチェックしてみてください。
先ほど、認知脳科学の世界で求められる力や技能について伺いました。
次に、そういった力や技能を身につけるためにどんな勉強を学生時代にしておけば良いのかについて嶋田先生なりの見解をお聞きしました。
小中学生・高校生に勧めるとしたら、どんな勉強ですか?
中学受験の算数は面白いです。なぜあれを小学校ではやらないのでしょうか?
子どもの学習に自発的に向かう姿勢を養うためには、学びの中で感動や驚きを得られるようにすることが大切なんですね。
つるかめ算は、中学生になると連立方程式で処理してしまうような問題について、表や面積図を使って検証していくという計算法です。
もちろん連立方程式を使った方が簡単に解けるのですが、そういう問題を図表を使って具体的にイメージしながら1つ1つ検証していく手間がかかる分、答えに辿り着いた時の感動も大きいように思います。
もちろん受験では、速く正確に解くことが大切になりますが、自分で時間をかけて答えを模索していくという過程は学びの本質とも言えるものです。
その過程で生まれる驚きや感動は、学びの楽しさや自発的に学びに向かう姿勢にもつながります。
その例として1つ、嶋田先生が「つるかめ算」の話を挙げてくださりましたが、理科の実験でもそうですし、国語の読解もそうですが、どんなタスクであっても保護者の皆さまのちょっとした声掛けやアドバイスでも、子どもたちの驚きや感動を生み出すことはできます。
例えば、国語の読解であっても、子どもたちが考えていることに対して、少し違った視点で考えてみたら?とアドバイスするだけでも、新しい発見や驚きがあると思います。
そうした主体的・自発的な向学心、学ぶ姿勢が身につくように促していくことは非常に大切なことですね。
また、先生が挙げておられる読解力・論理的思考力は、人とコミュニケーションを取る際にも重要です。
相手の発言の意図を読み取って、そして自分の意見や考えを筋道を立てて論理的に伝えられるスキルは、どんな職業に就いたとしても求められます。
この2つの力については、教科の枠を越えて、子どもたちが身につけていけるようにしてあげたいですね。
第3回の記事の締めくくりということで、嶋田先生のおすすめの本についてお聞きしてみようと思います。
脳科学の研究をされている先生が進める脳科学の本には非常に興味が湧きますよね・・・。
小・中・高校生にお勧めする本・映画などありましたら教えてください。
ジャンルにこだわらず、興味の持てる本・映画に出会えたら良いですね。
ミステリー小説って確かに自分で謎に対する答えを模索しながら読みますよね!
先ほどまでの先生のお話に「謎を解こうと自分なりの答えを模索する姿勢」や「謎が解けた時の驚きや感動の重要性」といった言葉がありました。
これって実はミステリー小説を読んでいる時に、私たちが何気なくやっていることであり、感じていることでもありますね。
幼少の頃からミステリー小説が大好きだった嶋田先生が、研究者になり、認知脳科学の世界で謎を解明しようと尽力しているところにも不思議なリンクを感じます。
また、嶋田先生が挙げてくださった本も興味深そうなものばかりですね。
ラマチャンドランの「脳のなかの幽霊」という書籍は、インド出身のアメリカの神経科医である著者が出会った不思議な患者について綴った本です。
脳の仕組みや脳と人間の行動の関係などの不思議や謎について知り、考えることができる非常に興味深い1冊と言えます。
子どもの頃に様々な本や映画に触れて、刺激を受けることは非常に大切です。
ぜひ今回、嶋田先生にご紹介いただいた本もチェックしてみてください。
嶋田先生、ありがとうございました。
今回の先生のお話の「学びのヒント」としては以下のことが挙げられると思います。
(1)答えのない問題に積極的に取り組む姿勢を大切にする
(2)学びの過程で生まれる驚きや感動を尊重する
1つ目は、やはり文部科学省がこれから社会に出るにあたって子どもたちが身につけるべき力・姿勢と明記していることもあり、非常に重要です。
自分で問題や課題を発見し、その答えのない問いに自分の持っている知識や経験を活用して答えを見出していくことというのは、社会人になってからまさに求められるスキルでもあります。
そういった経験・訓練を子どもの頃から積むことは、これからの社会に対応していく上でも欠かせないものとなるでしょう。
また、受験勉強としての学びも大切ですが、社会に出てからも学び続ける姿勢を保持するために、子どもの頃から学びがもたらす驚きや感動に触れておきたいものです。
例えば、歴史の勉強なんて、受験勉強の中では暗記学習の最たるものと考えられがちですよね。
しかし、少し見方を変えて、現代と過去の日本を比較してみることで気がつくことも多いでしょうし、日本と他の国を比較した際に生じる差異に纏わる歴史的背景を捉えてみるのも面白いでしょう。
ミステリー小説の中で探偵が行っているような、事実や知識を踏まえて自分なりの「答え」を模索していくという過程をお子様の学びの中に取り入れていけると良いですね。
今回の記事に関連したおすすめの参考書・問題集をご紹介させていただきます。
天才脳ドリル仮説思考中級
子どもたちがこれからの人生を生き抜くために必要な「本物の学力」を身につけるためには、「センス(感覚的要素)」や「思考力」の育成が不可欠です。
天才脳ドリルはこれらを育成し高めます。
仮説思考力とは、習った解き方を思い出して問題を解くのではなく、仮説と検証をくり返しながら、自分で解法や答えを発見する能力のことを指します。
仮説思考力を鍛えることで、難問に出会っても、「自分の作戦」で粘り強く考え、答えを導こうとする姿勢が身につきます。
ぜひ、お子様に取り組んでいただきたい1冊です。
こちらの問題集は受験で問われる算数の文章題を集約しています。
保護者の皆様が、中学受験向けの算数ってどんなものなんだろう?ということで解いてみるのも良いですね。