小学校で習う「対義語」が大学入試の文章読解の助けになるってホント?

語彙力ハ思考力ナノダ!②:類義語/対義語
小池 陽慈先生

こんにちは。現代文講師の小池です。

前回は「熟語の組み立て」というテーマから、小学校での国語学習と、高校での学びや大学受験との深いつながりについて考えてみました。

前回の記事は以下のリンクからご覧いただけます。

そして今回は「類義語/対義語」という観点をとりあげて、さらに考察を深めていきたいと思います。

小学校のテストや中学受験でもしばしば問われることがある「類義語/対義語」ですが、これらを覚えておくことで、高校受験そして大学受験といったその先の「学び」にどう役立つのかという観点でお話していきます。

ご一読いただけますと幸いです。

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熟語としての「類義語・対義語」に注目しよう!

それではまず、「類義語/対義語」の辞書的な定義と、その具体例を確認しておきましょう。

例えば『明鏡国語辞典』では、それぞれ次のように定義されています。

類義語
意味がよく似ている二つ以上の語。「時間」と「時刻」、「話す」と「語る」、「こわい」と「おそろしい」など。類語。
対義語
同一言語の中で、その意味が対の関係、あるいは正反対の関係にある語。「右⇔左」「出席⇔欠席」「明るい⇔暗い」「売る⇔買う」などの類。アントニム。反意語。反義語。反対語、対語。

ここは、この辞書的な説明で十分にご理解いただけるでしょう。ただし本記事では、「熟語」としての「類義語/対義語」に着目したいと思います。

まず「熟語」とは、前回も言及したように次のような語のことを指します。

熟語は、二つ以上の漢字が結びついて一つの言葉になったものです。一つの漢字を他の漢字と組み合わせることで、多くの熟語を作ることができます。 『小学3・4年 自由自在 国語』p.140

ですから「類義語/対義語」の中でも、例えば「明るい⇔暗い」等ではなく、「出席⇔欠席」等を扱っていくということですね。

その理由は、これも前回触れましたが、「熟語」は、〝具体的な記述内容を抽象化・一般化する〟という読解に必須の実践において、最も頼れる語彙知識となるからです。

そしてさらに付け加えるなら、こうした読みを行っていくうえで、より大切になってくるのが、「類義語」よりも「対義語」なんですね。

ですから本記事では、「熟語」としての「対義語」を中心にお話を進めていくことになります。

というわけで、例によって『自由自在』から「対義語」の例をいくつかピックアップしてみたいと思います。

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対義語によって膨らむイメージ

いやー、難しいですね!!

例えば「主観⇔客観」「精神⇔肉体」などは、西洋近代哲学を理解するうえでキーワードとなる考え方で、難関大学の入試評論文での頻出テーマとなります。それを小学3・4年生のうちに学ぶ。

他にも「正常⇔異常」という考え方は、20世紀最大の思想家と言われるミシェル・フーコーを読むうえで重要になってくるもので、そしてこのフーコーに学んだ研究者の文章もまた、難関大学でしばしば出題されます。

さらに「中心⇔周辺」「革新⇔保守」なども、これまた難関大学で頻出の文化論や政治論等を理解するのに必須の概念です。

そのような知識に小学高学年ですでに触れるわけですから、前回申し上げた「『高校での学びや大学受験対策』に向けた『小学国語の勉強』」という観点がいかに実際的なものであるか、ますますご理解いただけるのではないでしょうか。

さて、対義語が分かると、文章の内容がよりイメージしやすくなるということがあります。例えば下記のような例ではどうでしょうか。

「王様は絶対的な権力をもち、国を支配してきた。」

「絶対的な権力」と聞くと、何となく「強い権力」なのだろうと推測できるでしょう。しかし、その一方で「絶対」の対義語が「相対」であることを知っておくと、この王様が持っている権力の在り方がよりイメージしやすくなるのです。

「相対」は先に確認したように、小学高学年 自由自在でも紹介されていますが、「他との比較や関係のなかで存在する」といった意味の語ですよね。

つまり、この王様の権力は、「相対的ではない」ということになり、例えばですが大臣や議会、そして市民と関係を持たず、独立して存在しているのではないかという想像ができます。

このように対義語を覚えておくと、ある語に出会った時にパッとその対義語を思い浮かべることができ、文章の言わんとしていることをより深く理解することが出来るのですね。

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難解な文章を「対義語」で整理してみよう!

では、大学入試で実際に扱われた難解な文章を例として考えてみましょう!

今度は、大学入試 ステップアップ/現代文(基礎)p.22 から、宇都宮大学で出題された文章の一節を引用します。

 現代は、情報過多の時代であると言われている。その反面、個々の情報が客観を装えば装うほど、情報を送り出す送り手の身振り、背後に見え隠れする手つきのようなものへの希求がかえって強まっているのではないだろうか。
 たとえば新聞記事にあって「事実」を「正確」に書くことが理念とされることは言うまでもないが、それが本当に客観的な記述が可能なのかといえば、むしろかぎりなく疑わしい。そもそも「今後~となることが望まれる。」「~が期待される。」「~といえそうだ。」というのは一体誰の判断なのだろうか。一面記事に頻出するこれらの文末表現は客観性と記者個人の判断とのギリギリの折衷の産物にほかならず、実は客観の衣を被ったこうした主観的判断ほど危ういものはないのである。(後略) (宇都宮大-改)
安藤宏『太宰治 弱さを演じるということ』(ちくま新書による。一部変更がある。)

まず、冒頭の「現代は、情報過多の時代であると言われている。」という一文についてはさして説明はいらないと思います。確かに僕たちの身の回りには、大量の情報があふれかえっていますよね。

ですが、その次の一文はどうでしょうか?

「その反面、個々の情報が客観を装えば装うほど、情報を送り出す送り手の身振り、背後に見え隠れする手つきのようなものへの希求がかえって強まっているのではないだろうか。」とありますが、「情報を送り出す送り手の身振り、背後に見え隠れする手つきのようなもの」という箇所が何を意味しているのか、ちょっとわかりづらいですよね。

というわけで、ここで対義語の知識の出番です!!

「個々の情報が客観を装えば装うほど」とありますね?

ここに、「客観」、すなわち〈個人の考えや感想などが入っていない〉という意味の語が用いられています。

では、この「客観」の対義語はなんでしょうか?

もちろん、『小学3・4年 自由自在 国語』にも載っているように、「主観」です。すなわち、〈個人の考えや感想などが入っている〉という意味の語ですね。

ここで、「個々の情報が客観を装えば装うほど、情報を送り出す送り手の身振り、背後に見え隠れする手つきのようなものへの希求がかえって強まっている」という記述の構造に着目してみましょう。

〈Xを装うほど、Yがかえって強くなる〉という言うとき、XとYとは、どのような関係になりますか? 

当然、対比・対立関係ということになるはずです。

つまり、「客観」と対照される「情報を送り出す送り手の身振り、背後に見え隠れする手つきのようなもの」という箇所は、その情報の送り手の「主観」を言っている可能性がきわめて高くなる わけです。

要するに該当箇所は、〈情報の送り手は客観を装おう……ということは、実はそこに、自らの主観を込めている。そして僕ら情報の受け手も、そうした送り手の主観を求めてしまう〉ということを述べているのですね。

「主観⇔客観」という対義語の知識を持っていれば、こうした解釈も可能となるわけです。

実際に次の段落に進むと、「本当に客観的な記述が可能なのかといえば、むしろかぎりなく疑わしい」、「一面記事に頻出するこれらの文末表現は客観性と記者個人の判断とのギリギリの折衷の産物にほかならず」、「客観の衣を被ったこうした主観的判断」と、〈情報の送り手は客観を装っているが、実はそこに自らの主観を込めている〉という内容が、何度も反復されていきます。

そしてそのようなありかたに対して、筆者は、「危うい」と批判を加える。つまりこの文章は次のように要約することが出来るのです。

現代は情報過多の時代だが、情報の送り手は、客観を装いつつそこに自らの主観を込めている。我々はそれを欲してさえいるが、実はそれは危ういことなのだ。

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「対義語」が思考をサポートして読解に活きる!

このように、対義語の知識を応用することで、例えば本文の内容を一般化・抽象化したり、その記述がどのようなことを言っているかを解釈することができたりするのです。

そもそも、対義語は対立・対比の関係を端的に表す組合せであるわけですが、この〈対立・対比〉というロジックは、評論文を読解するうえで、しばしば重要な観点となったはず。

対義語……実にあなどれません…!

語彙というものは、その語の意味を知り、覚えるだけでは、上記のモデルケースのように応用できる真の知識とはなりません。

覚えた語彙を実際に用いながら、長い期間を書けてこつこつと身体にしみ込ませていくことが不可欠なのです。

となれば、小学生のうちに数多くの対義語を理解し、覚えておくことが、将来の学習においてどれほど大切なことか、ご理解いただけると思います。

対義語を覚えたからと言って、それがすぐに思考のプロセスに活かせるわけではありませんから、小学生の段階から徐々に身につけておき、「絶対」という言葉を聞いたらノータイムで「相対」という言葉が返せるくらいになると良いということですね。

小学生の段階ではとにかく「反応」できるようになることを1つの目標に据えると良いと思います。

今、ここで覚えてこそ、高校に入ってから、そして大学受験において、〝使える知識〟とすることができるのです!

では、今回はここまでとなります。次回は、「同音異義語」をテーマとして扱います。

「同音異義語」は、単なる漢字知識ではありません。

これもまた、「語彙力」を鍛えるための学習なのです!

お楽しみに!

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著者紹介

小池 陽慈


1975年生まれ。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業。早稲田大学大学院教育学研究科国語教育専攻修士課程中退。現在、大学受験予備校河合塾および河合塾マナビスに現代文講師として出講し、テキスト作成の全国プロジェクトも担当している。また、国語専科塾博耕房でも教鞭をとる。
単著に『無敵の現代文記述攻略メソッド』(かんき出版)『大学入学共通テスト国語[現代文]予想問題集』(KADOKAWA)
共著に、紅野謙介編『どうする? どうなる? これからの「国語」教育』(幻戯書房)。その他、執筆記事多数。

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