修飾語が果たす「目的語」の役割に注目!述語の対象を見抜いて文章を読み解こう!

【第7回】ブンポウってナニソレ、おいしいの?③:「修飾語」
小池 陽慈先生

こんにちは。現代文講師の小池です。

前回は、前々回のテーマ〈文節〉の知識をベースとして、〈主語/述語〉について確認しました。

内容におぼつかないところがあるという方は、前々回と前回の記事に再度お目をお通しになってから、本稿をお読みいただければと思います。

さて、今回の課題は、〈修飾語〉です。

みなさん、学生時代に学んだ〈修飾語〉についてどれくらい覚えていますか?

修飾語〉は、前回の〈主語/述語〉同様に、高校以降の国語(現代文・古文・漢文)学習の軸となるものです。

ぜひ学生時代の記憶をたどりながら、最後まで、じっくりとお読みください!

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国文法における「修飾語」とは何か?

前回同様、まず確認しておきますが、当シリーズにおいては〈文節〉を、

「自立語から次の自立語の直前までの範囲」

と定義しています。

例えば、次の一文(自立語は大文字・太字)を文節に分けてみましょう。

塗られた屋根に、一人暮らす

すると、このように分けることができますね。

塗られた屋根に、一人/暮らす

さて、ではこの一文でそれぞれの文節が持つ働き(=文の成分)について、整理してみましょう。

前回、

>語順の入れ替え(=倒置)や省略がないかぎり、原則として日本語の〈述語〉は、一文の最後の文節(もしくは連文節)に位置します。

>日本語の文は〈述語〉を軸として成り立つ

という点に言及し、「文の構造を押さえる際には、まず〈述語〉を見つけるのが先決」と強調しておきました。

というわけで、先ほどの1文についても文全体の〈述語〉を押さえてしまいましょう。

塗られた屋根に、一人/暮らす

この中だと、もちろん、「暮らす」ですね。

そして次に、この「暮らす」という〈述語〉を軸として、では、いったい"何(誰)"が「暮らす」のかを確認しましょう。

こちらもすぐに見つかりますね。当然、「彼」ということになります。

すなわちこの例文は、

彼は = 主語〉 + 〈 暮らす = 述語〉

という構造で成り立つ一文であると判断できるわけです。

では、他の文節はどのような働きをしているでしょうか。
そうですね…例えば、「一人で」という文節はどうでしょう。

この文節は、「暮らす」という〈述語〉にかかっていき、"どのような状態で「暮らす」のか"ということについて、詳しく説明しています。

あるいは、「赤に/塗られた/屋根の」という連文節は、「家に」という文節にかかっていき、"その「家」がどのような「家」なのか"ということについて、詳しく説明しています。

このように、

ある文節がほかの文節を「どんな」「どんなに」などとくわしく説明する言葉
『小学高学年 自由自在国語』p.176より

のことを、〈修飾語〉と言います。

この、

塗られた屋根に、一人/暮らす

という例文における〈主語=彼は/述語=暮らす〉以外の文節は、それぞれ、

赤に ⇒ 塗られた
(赤に)塗られた 屋根
(赤に/塗られた)屋根の
(赤に/塗られた/屋根の)家に 暮らす
一人で 暮らす

という形で、すべて、他の文節をくわしく説明する〈修飾語〉として機能していることを確認しておいてください。

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修飾語には種類がある?

さて、上に挙げた例文中の修飾語ですが、実はこの5つ、2つの異なる修飾語へとグループ分けすることができます。

グループA

(赤に)塗られた 屋根
(赤に/塗られた)屋根の

グループB

赤に ⇒ 塗られた
(赤に/塗られた/屋根の)家に 暮らす
一人で 暮らす

違いがわかりますか?少し考えてみてください。

グループAの場合、「塗られた」や「屋根の」という〈修飾語〉がかかっていく言葉(被修飾語と呼びます)は、それぞれ「屋根」「家」、すなわち〈名詞〉と呼ばれる語ですよね。

そして〈名詞〉の別名は、〈体言〉。

つまり、「塗られた」や「屋根の」という〈修飾語〉は、「屋根」や「家」という〈体言〉に"連"なる〈修飾語〉ということで、〈連体修飾語〉と呼ばれます。

これに対し、グループBについては、「赤に」という〈修飾語〉が「塗ら」すなわち「塗る」の変化した形にかかり、「家に」や「一人で」という〈修飾語〉は、どちらも「暮らす」にかかっています。

この「塗る」や「暮らす」は、動きを表す語で、すなわち〈動詞〉ですね。

要するに、グループBの〈修飾語〉は、すべて、〈動詞〉を中心に組み立てられた〈文節〉にかかっているわけです。

〈動詞〉と〈形容詞〉、〈形容動詞〉の3つをまとめて〈用言〉と言いますが、このように、〈用言〉に"連"なる〈修飾語〉のことを、〈連用修飾語〉と呼ぶことになります。

なぜこのようなグループ分けをしたのか。

それは、日本語の構造を把握するという点で、前回学んだ〈主語/述語〉という概念とともに、この〈連用修飾語〉という概念が、とても大事なものとなってくるからなのですね。

*「連体修飾語という概念はあまり大事ではない」と言っているわけではありません!

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〈目的語〉と〈連用修飾語〉

ココでちょっと気分転換に、例文を変えてあれこれと考えてみたいと思います。

彼女/図書館/本/たくさん/読む

この例文の〈述語〉は、「読む」ですね。もちろん〈主語〉は、「彼女は」です。

では、他の文節は、いったいどのような働きをしているでしょうか。

まず、「たくさん」は、「読む」にかかっていく〈連用修飾語〉。

そして、「図書館で」も、現行の学校文法では、「読む」にかかっていく〈連用修飾語〉と説明されます。"どこで「読む」のか"をくわしく説明している、というわけですね。

それでは、「本を」という文節はどうでしょうか。

おそらく、多くの方々が、「目的語!」とお考えになったのではないでしょうか。

〈目的語〉は、"その動作の対象"を意味する概念で、英文法では〈O〉と表記されるものですね。例えば〈I haveapen.〉という文なら、〈have〉という動作の対象となる〈apen〉が、〈have〉の〈O〉すなわち〈目的語〉と呼ばれます。

とするなら、上の例文中の「本を」は、「読む」という動作の対象を示しているわけですから、英文法的な考え方から言うと、まさに〈目的語〉であるということになります。

けれども、小中学校での学校文法においては、〈目的語〉という考え方は、基本、教えないはずです。となるとそこでは、「本を」という〈文節〉の機能は、どのような名称で呼ばれることになるのか。

もうおわかりですよね。

「本を」という〈文節〉は、「読む」という、動詞(=用言の一つ)で構成された〈述語〉にかかっていきます。そして、"何を「読む」のか"ということを、くわしく説明する。

つまり学校文法においては、「本を」という文節は、「読む」にかかる〈連用修飾語〉と説明されるわけです。

ということは、逆に言えば、この〈連用修飾語〉と呼ばれるもののなかには、英文法で言う〈目的語〉として機能するものも含まれる、と定義される。

そして、日本語で書かれた文の構造を把握するうえで、〈主語/述語〉とともに重要になる〈連用修飾語〉というのは、つまりは、ここに説明した、〈目的語としての連用修飾語〉のことなのですよね。

なぜ〈目的語としての連用修飾語(以下、原則として「目的語」とのみ表記します)〉が大切か。

それは、英語の〈have〉が〈目的語〉をとって初めて機能するように、日本語の動詞のなかにも、文意を正しく伝えるためには〈目的語〉を明示せねばならないものがたくさんあるからなのです。

例えば、「食べる」という動詞を〈述語〉として文を書く際に、なるべく正確にメッセージを伝えようとするなら、

○○が = 主語▲▲を = 目的語食べる = 述語

という構造が、最低限の情報として要求されるはずです。

あるいは「教える」という動詞を〈述語〉とする場合は、

○○が = 主語□□に = 目的語▲▲を = 目的語教える = 述語

となりますよね。

繰り返しますが、日本語の構造を把握する際には、まずは〈述語〉を捉えることが先決になります。

そして、その〈述語〉に対する〈主語〉を押さえる。これだけで最低限の情報を整理することのできるような文もありますが、ただし、上に挙げた「食べる」や「教える」等の動詞が〈述語〉を構成している場合、その〈述語〉は、〈目的語〉なしには正確に機能することはできません(主語と同じで、必ずしも明記されるわけではありませんが)。

だからこそ、日本語で書かれた文の構造を把握するうえでは、〈主語/述語〉とともに、〈目的語としての連用修飾語〉を押さえることが重要になるのですね。

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〈修飾語〉の概念を、読解に応用しよう!

では、ここまで確認してきた〈主語/述語〉および〈修飾語(とりわけ、目的語)〉という考え方を用いて、実際に、大学入試の問題を読解してみましょう。

(ある不安を抱えていた宗助は、その心を静めようと禅寺の門を潜った。十日あまりの滞在を経て、宗助は家へと戻らねばならない日を迎えた。)
 自分は門をあけてもらいに来た。けれども門番は扉の向こう側にいて、たたいてもついに顔さえ出してくれなかった。ただ、「たたいてもだめだ。ひとりであけてはいれ」と言う声が聞こえただけであった。彼はどうしたらこの門の閂(かんぬき)をあけることができるかを考えた。そうしてその手段と方法を明らかに頭の中でこしらえた。けれどもそれを実地にかえる力は、少しも養成することができなかった。したがって自分の立っている場所は、この問題を考えない昔とごうも異なるところがなかった。彼は依然として無能無力にとざされた扉の前に取り残された。彼は平生自分の分別をたよりに生きてきた。その分別が今は彼にたたったのを口惜しく思った。(後略)

(京都産業大―改)

夏目漱石『門』

傍線部「その分別が今は彼にたたった」とあるが、どういう意味か。最も適当なものを次の中から選んで、記号で答えよ。

ア 問題を分けて考えるこれまでの方法が門の扉を開けるのに役立たなかった。
イ 知恵を忘れてただひたすら扉を開けるために努力することができなかった。
ウ 何事につけ理屈で問題を解決する仕方がここではかえって害になった。

(『大学入試 ステップアップ/現代文(基礎)』p.30-31より一部改変のうえ抜粋)

いろいろな解き方はできるのですが、今回の内容を活用しながら考えてみましょう。

まず、傍線部を含む一文は、

その分別が今は彼にたたったのを口惜しく思った。

となっています。

〈述語〉は「思った」で、そこに、「口惜しく」という〈連用修飾語〉がかかっています。

そして、傍線部を含む「その分別が今は彼にたたったのを」という連文節もまた、「思った」にかかっていく〈連用修飾語〉です。しかも、「思った」という動作の対象を表す、〈目的語としての連用修飾語〉ですよね。

つまり、傍線部「その分別が今は彼にたたった」は、宗助がこの場面で「口惜しく思った」その対象であると判断できるわけです。

このように、傍線部が〈目的語〉であると分析できれば、要するにこの問題は、「この場面で宗助が口惜しく思っているのは、どのようなことか?」と問うていると整理することができるのですね。

もちろん、ここで宗助が口惜しく思っているのは、

>そうしてその手段と方法(=門をあけるための方法…引用者注)を明らかに頭の中でこしらえた。けれどもそれを実地にかえる力は、少しも養成することができなかった。

ということです。

それはすなわち

門をあけるための方法を頭で考えたが、それでは実際に門をあけることができなかった

ということであるはずです。

よって、その内容を端的に抽象化した、

ウ 何事につけ理屈で問題を解決する仕方がここではかえって害になった。

が正解となります(「何事につけ」という箇所については、傍線部直前の「彼は平生自分の分別をたよりに生きてきた」から根拠がとれます。また、「かえって」は、傍線部中の「今は」と対応した記述となっています)。

アは「問題を分けて考えるこれまでの方法」という箇所が、上で解釈した内容と合致していません。そしてイがまったくの見当はずれであることは、すぐにご理解いただけるかと思います。

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〈目的語〉の役割を果たす〈連用修飾語〉を読解時の手助けに!

今回はここまでとなります。

前回まで記事で触れた「文節」や「主語・述語」の知識に加えて、「修飾語について知っておくことで、より文章の構造を見抜きやすくなったり、設問の意図をはっきりと理解できるようになったりするわけですね。

特に英語でいうところの「目的語」にあたる「連用修飾語」は、適切な理解があると、大学入試において大いに役立ちます。まさに 学校文法 の応用が、文章を正確に読み解く道標になっているのです。

国語における「ブンポウ」なるものの大切さ、いや、その"おいしさ"について、少しでもご納得いただけたなら幸いです!

著者紹介

小池 陽慈


1975年生まれ。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業。早稲田大学大学院教育学研究科国語教育専攻修士課程中退。現在、大学受験予備校河合塾および河合塾マナビスに現代文講師として出講し、テキスト作成の全国プロジェクトも担当している。また、国語専科塾博耕房でも教鞭をとる。

単著に『無敵の現代文記述攻略メソッド』(かんき出版)『大学入学共通テスト国語[現代文]予想問題集』(KADOKAWA)『小池陽慈の 現代文読解が面白いほどできる基礎ドリル』(KADOKAWA)

共著に、紅野謙介編『どうする? どうなる? これからの「国語」教育』(幻戯書房)難波博孝監修『論理力ワークノート ネクスト』(第一学習社)

川崎昌平『マンガで学ぶ〈国語力〉 ―大学入試に役立つ〈読む・書く・考える〉力を鍛えよう―』(KADOKAWA)を監修。その他、執筆記事多数。


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