【第11回】YouTubeで学習はできるの?改めて考える算数の家庭学習の「王道」
迫田 昂輝先生
こんにちは!塾や予備校で数学・算数を教えている、迫田昂輝(さこだこうき)です。
コロナの影響もあり、オンラインで授業を受ける流れが急速に進んでいます。また、昨今はYouTubeなどにも算数や数学の動画解説が上がっています。
いつもこの連載記事をご覧いただいている方にはお馴染みかもしれませんが、私も「数学・英語のトリセツ」というYouTubeチャンネルを運営しております。
現在では登録者数は9万人を超え (2021年5月27日現在) 、保護者の皆さんや学習に意欲的な中・高生の関心の高さが伺えます。
今回は、家庭学習の中で、こうしたYouTubeを学習に活用できるのか?という点について、主に小学生やその保護者様を対象に論じていきたいと思います。
YouTubeの動画は、うまく活用できれば効果的ですが、実は思わぬ落とし穴もあるのです。
そこで、YouTubeの動画解説との上手い付き合い方や家庭学習で活用するうえでの注意点などについてお話させていただきます。
自分の首を絞めることにも繋がりかねないのですが、自戒の念を込めてちゃんと伝えます。YouTubeに上がっている算数の解説動画は、はっきり言って超微妙なものも多いです。
原理・原則や仕組みを考えず「こうやったら解けるよね」というパターンを教え、それに当てはまるような問題ばかりを紹介しているような動画も散見されます。
一見わかりやすく見えてしまうのですが、前回の記事でも紹介したように、ちゃんとした理解が伴わない学習は、後々必ず苦労をします。
「わかりやすいかどうか」だけではなく、「なぜそのような解き方で良いのか」という意味もちゃんと説明しているかどうかが非常に重要になります。
また、私のYouTubeチャンネルのように「ある程度小学校の学習内容が終了しているお子様を対象とした動画」もあります。
私がYouTubeチャンネルに出している問題は、「中学受験を見据え、小学校4、5年生くらいから学習を始め、現在受験学年となっているお子様」やその保護者向けに動画を作っているので、対象外の学齢の場合、変に難しく感じてしまい苦手意識を持つことにも繋がります。
YouTubeで自分のお子様に合った動画を見つけるのは、本屋で自分のお子様に合った問題集や参考書を見つけるより、はるかに難しいものです。
「でも、たくさん再生されてたり、登録者数が多かったりするチャンネルなら大丈夫なんじゃないの!?」
そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、これもまた自分の首を絞めてしまうのですが、「再生回数やチャンネル登録者数は全く当てになりません」
例えば、私のYouTubeチャンネルは算数の動画を出している中では比較的チャンネル登録者が多い部類になります。例えば、次の動画は350万回以上再生されている (2021年5月27日現在) 、いわゆるバズっている動画です。
この動画で紹介している問題は、中学受験の入試問題です。非常に高度な問題であり、中学生はおろか高校生でも苦戦する問題となっています。しかし、問題の質はとてもよく、我ながらうまく解説はできていると思います。
そうとはいえ、この動画を、中学受験を控えたお子様全員に見せたいかというとそんなことはありません。
そのお子様がどのような学習を普段していて、どのようなレベルの問題を解くべきが、こちらからはわからないからです。
私が講師をするなら、そのお子様が基礎的な問題の定着を図っている段階で、この問題はまだ解かせません。
また、普段から塾などに通っている場合、そこで習ったものとは違う解説をされて戸惑うこともあるでしょう。
塾の宿題を家で保護者の方が教えた時によく起きる「お父さんの教え方、先生の教え方と違うからわかんない」と同じ状態です(第6回記事参照)。
もしお子様にYouTubeを効果的に活用させたいと考えるのであれば、その内容を保護者の方が全部チェックして、検閲済みの動画を見せるくらいの覚悟が必要です。
YouTube等を上手に活用するコツは「お子様だけで見させない」ことです。「親子で一緒に問題などを解いてみる」もしくは「親が見て、お子様に教える際の参考にする」程度の活用が望ましいのではないかと思います。
私のチャンネルに寄せられるコメントを見ても「親子で楽しんでやっています」や「子どもに教えるために見ています」という声が寄せられています。
そのような活用の仕方であれば、問題はないと思います。ただ、以前の記事 でも触れたように、保護者がお子様に算数を教えるのは、中々難しい側面があります。「うまく教えることができたらラッキー」くらいの気持ちが大切です。
また、お子様だけでYouTubeを見る場合、関連動画などで学習内容とは関係のないものを見てしまうこともあるでしょう。大人ですら、関連動画に興味のあるものが出てきたら見てしまうのではないでしょうか?お子様であれば尚更です。
そういった「脱線」でせっかくの勉強への集中力が削がれてしまうのを防ぐためにも、「お子様だけで」には気をつけたいですね。
正直、YouTubeを活用してお子様に家庭で算数を学習させるくらいならば、世の中に出ている良書にしっかり取り組ませた方が学習効率は間違いなく良いでしょう。
宣伝のようになってしまい恐縮なのですが、それでもやはり、60年のベストセラーである自由自在のような実績のある本を一からしっかり取り組む方が格段に学習の成果が出るでしょう。
小学高学年 自由自在 算数
★新学習指導要領に対応し,学習内容を大幅に一新する全面改訂を実施。高学年を中心に,中学受験の内容まで完全にカバーしています。
★これから必要となる「記述力・思考力」を伸ばす練習問題や解説を多数収録しています。
★スマホで知りたいことがわかる「教えて!自由自在先生」と連携。スマホアプリのLINEで友達追加をすれば,知りたい用語を検索することができ,該当する『自由自在』のページをスマホで読むことができます。
また、YouTubeなどの動画解説の弊害として、数学的な読解力が身につかないという側面があります。
第7回の記事で読解力について紹介していますが、文章で書かれた解説や式を読んで理解するという作業は、非常に大切です。
動画等の解説ばかりに慣れてしまうと、自分で読んで、イメージし、理解するという、算数・数学においてとても重要な訓練が疎かになってしまう危険性があります。
また、この読解力がないと、そもそもの問題文の意味を読み取れないことにも繋がります。
多少の苦痛は伴うと思いますが、やはり読んで理解するという王道の勉強法が、結局は一番の近道です。どうしても読んで理解できないとき、動画の解説に頼るのは良いでしょう。
YouTubeをはじめとするインターネットを用いた学習環境は日々進化しています。これは非常に好ましいことです。
私は、自身の会社で『数学のトリセツ』という動画付きの参考書・問題集を制作・発売しています。これは、上記で述べたように「どうしても、読んで理解できないときは動画を活用すれば良い」という方針のもと、制作しました。
数学のトリセツ! 中1
★大手予備校講師が、導入から演習まで全ページ全問題を動画で解説している問題集です。
★基礎〜標準レベルの問題を収録。中学校の授業の予習・復習・テスト対策に最適です。
★学校での授業に合わせて、なるべく教科書通りの解説になるよう配慮してあります。
これまで、地域的・経済的な理由でプラスアルファの教育を受けられなかった生徒にも、質の高い教育を届けたいという思いは、インターネット回線の普及・高速化に伴い実現することができました。そういった点においては、動画解説のサービス等は一定のメリットがあります。
しかし、YouTubeの動画のような無料のコンテンツである以上、一定のデメリットがあることは理解をしておく必要があります。
あくまでも「王道」の学習を軸に据えた上で、YouTubeの動画解説をサポートとして上手に使い、家庭学習を充実させていただけると幸いです。
また、「家庭学習」については、以前の記事も合わせて読んで参考にしていただけたらと思います。