【第8回】英語の共通テストを特集!「ゴール」を知ることから始めよう!
受験研究社・編集部 スタッフZ
前回の記事は以下のリンクからご覧いただけます。
こんにちは。受験研究社・編集部のスタッフZと申します。
先日、はじめての大学入学共通テストが実施されましたね!
今回の記事は、「共通テスト実施記念」ということで、今までとは趣向を変えて、共通テストとセンター試験の違いに目を向けながら、これから求められる英語の力について、私の意見をお伝えしようと思います。
「我が子にはまだ先の話だし…」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、ご一読いただけますと幸いです。
大学入学共通テストは、センター試験に代わり、今年から導入された日本における大学の共通入学試験です。
英語では、メッセージのやり取りを題材とした問題や1つの問いに答えるために複数のテキストを読み込む必要がある問題などが導入されました。
当初の予定では、国語・数学に記述問題が導入されるはずでしたが、こちらは延期が決定しています。
英語においても、受験生の英語4技能(読む・聞く・書く・話す)の力を測るため、英語の外部試験が導入される予定でしたが、2019年11月に延期が決定され、2024年度(2025年1月)に実施できるようにしたいとの発表がありました。
「経済的な状況や居住している地域によって格差が生まれてしまう可能性があり、すべての受験生にとって公平なテストではない可能性がある」という理由なども相まって、外部試験は延期されるという結論が出されたようです。
2024年度(2025年1月)に入試を迎えるお子様は現在の中学2年生です。つまり、中学2年生以下のお子様は、入試において英語4技能の力が試されることになります。
さて、今年から導入された共通テストですが、センター試験とはどのような違いがあったのかを確認してみましょう。
2020年1月実施 センター試験 筆記
2021年1月実施 共通テスト リーディング
上の表が、2020年1月に実施されたセンター試験 英語(筆記)、下の表が、2021年1月に実施された共通テスト 英語(リーディング)となります。まず違いを見比べてみてください。
一番大きいのは、「筆記」が「リーディング」に名称がかわったことです。
リーディングとは一言でいうと「読解問題」のことで、「英単語を1つずつ翻訳し、文法ルールを使って意味をつなぎ合わせていく作業」ではありません。
文字で示された情報をもとに、書き手の意図を解釈し、テキストに書かれている内容だけでなく、背景知識や状況などの情報を活用することで、文の意味を能動的に理解することを言います。
共通テストは「筆記」ではなく、「リーディング」なので、センター試験で問われていた、発音・アクセントや、文法・語法、語句整序(並べかえ)などの問題は一切出題されていません。すべて読解問題で構成されています。
そして読解問題も、物語・論説文・対話文・エッセーといった今までよく出題されていた形式だけではなく、ショートメッセージ・メール(大問1A・4)やウェブサイト(大問1B)の情報の読み取りといった、実生活に関わり合いのある事柄からの出題が多くありました。
2020年センター試験 リスニング
2021年共通テスト リスニング
上の表が、2020年1月に実施されたセンター試験 英語(筆記)、下の表が、2021年1月に実施された共通テスト 英語(リスニング)となります。まず違いを見比べてみてください。
問題数と配点が大きく異なります。
センター試験では、筆記200点・リスニング50点の配点でしたが、共通テストでは、リーディング100点・リスニング100点の配点でした。リーディングとリスニングの配点が1:1で行われているのです。
また、読み上げの回数ですが、第1問と第2問では2回ずつ、読み上げ語数や読み取るべき図表の多い第3問以降では1回でした。そのため難しいと感じた受験生が多かったのではないかと思われます。
実際に、センター試験(試験時間30分)では、読み上げ総語数が1,100語程度であったのに対し、今回の共通テスト(試験時間30分)では1,500語程度と文量が増加しました。
また、アメリカ英語だけでなく、イギリス英語も多く読み上げられました。
そして、センター試験では
①音声を正確に聴き取る力
②聴き取った情報を他の表現に言い換える力
③選択肢を素早く読み取り、情報を整理する力
が求められていましたが、共通テストではこれらに加え、
④図表やワークシートなどを正しく読み取る力
⑤聴き取った情報と重ね合わせて判断する力
も求められます。
突然ですが、factとopinionの違いはご存知ですか?
実はこの違いを区別しながら、情報を整理していくことは非常に大切です。
ちなみに、英語では以下のように定義されます。
・fact = a piece of information that is known to be true
(真実として知られている情報)
・opinion = your ideas or beliefs about a particular subject
(ある事柄に対する考えや信念)
たとえば、「迫田先生は男性だ」これはfact(事実)です。
「小池先生は国語の先生だ」これもfact(事実)です。
ですが、「迫田先生はかっこいい」これはopinion(意見)なのです。
なぜならそう思っていない人もいるかもしれないからです。(すいません、迫田先生、かっこいいですよ!笑)
今回の共通テストのリーディングで、fact(事実)とopinion(意見)の読み取りが複数題出題されました。
実際、共通テストの施行調査でも出題されていましたし、近年の入試トレンドの一つなのですが、あきらかに「正確に情報を読み取る力」が問われているのだと感じました。
こうした問題に対処するためにも、日本語においても日ごろから情報をインプットするときに、「事実」と「意見」を区別する訓練をしておく必要があります。
例えばですが、子ども向けの新聞なんかを教材にして、「事実」として書かれていることと「意見」として書かれていることを分類してみるというのも1つの方法ですね。
日本語で小中学生の頃からこうした訓練しておくと、それが英語になってもスムーズに対応できると思います。
また、マークしなければならない数は54個から47個に減少しましたが、情報量は、センター試験では、問題・図・設問・選択肢すべて含めて、約4500語の単語が出題されましたが、共通テストでは、約5500語の単語が出題されました。
この5500語が日本人の学生にとってどの程度のものなのか見てみましょう。1分間に読み取れる単語の数のことをWPM(words per minute)と呼びますが、日本人の学生のWPMの平均がどれくらいなのかを調べるために、複数のウェブサイトを確認してみました。
その結果、日本人の大学生のWPMの平均は80~100、高校生のWPMとの平均は75語程度と書かれているサイトが多かったです。
仮に75語程度と想定しましょう。リーディングで出題された単語数が5500語程度ですので、5500(語)÷75(語)≒73.3(分)となります。リーディングの制限時間が80分ですので、残り時間7分弱。この時間内で図や表を読み取らなければなりませんし、何よりも問題を解かなければなりません。
つまり、WPMが75語だと太刀打ちできないのです。
これが100語まで上がると、5500(語)÷100(語)=55(分)となり、残り時間25分ありますので、余裕をもって図表を読み取り、問題を解くことができるでしょう。
また、こうした情報を素早く処理していくテクニックも英語に限らずとも、日本語の段階で養っていくことができます。
たくさんの活字コンテンツに触れて、そこから重要な情報を素早くインプットするための「勘所」のようなものを掴んでいけると、英語になっても活きてくるのです。
今回皆様にお伝えしたいことは、
①英語を「読む」量も「聞く」量も増えた
②英文だけでなく、「図表」を読み取る力も大事
③どうやら、「書く」「話す」も今後は問われるらしい
ということです。
ですが、いきなりやろうとしても無理です。日本語がようやく話せるようになったお子様に、直木賞や芥川賞の作品を読ませても「???」となりますよね。「千里の道も一歩から」というように、段階を踏んで学習を進めていく必要があります。
まずは、何よりもゴールをしっかりと知ることが大事です。
もちろん入試がゴールというわけではありませんが、将来やりたいことをやるために大学(やその環境)が必要なのであれば、入試に関する情報をしっかり入手し、そこを目指して学習をしていく必要があると思います。
そしてゴールを定めたら、一気にゴールを目指すのではなく、そのゴールに到着するためのポイントと期限をいくつか設ける必要があります。
それが英検®なのかもしれませんし、他のテストかもしれません。はたまた高校入試かもしれませんし、中学入試かもしれません。
そしてそのポイントを期限内に通過するためにどんな勉強をする必要があるのかも調べなければなりません。
やらなければいけないことがたくさんありますが、それこそ「千里の道も一歩から」です。一気に調べるのではなく、気になったときにコツコツ調べていくのがいいでしょう。
次回は、英語学習方法の紹介に戻ります。引き続きよろしくお願いします。