インプットとアウトプットのバランスがカギに!小学生の英語学習のススメ

【第12回】ここに気をつけて!小学英語の「ライティング」「スピーキング」
受験研究社・編集部 スタッフZ

こんにちは。受験研究社・編集部のスタッフZと申します。

いよいよ最終回。

今回は小学生のお子様が英語学習を始める際に,どんなアプローチが有効なのか、保護者の方はどんな意識を持っておくと良いのかといった点について、これまでお話してきた内容を総括しつつお話させていただきます。

また、今まで触れてこなかった英語の「ライティング」と「スピーキング」にも触れながら進めていけたらと思います。

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英検®における「ライティング」

「ライティング」と聞くと、「和文英訳」を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれませんが、今回取り上げるのはそれとは異なります。

「ライティング」は英語4技能のうちの1つで、英検®では、2017年度第1回から、3級以上の級で出題されるようになりました。英検®は、「4技能均等配点」なので、リーディングとリスニングと同じ配点となります。

例えば、英検®3級における「ライティング」は次のような問題形式で出題されています。

・外国人からの英語の質問に対する解答と、その理由を2つ答える形式
・語数の目安は25語~35語
・質問に対応していないと判断された場合は、0点と採点される場合がある

また、採点基準は、①内容 ②構成 ③語彙 ④文法 の4つの観点で採点されます。

明確に「質問に対応していないと判断された場合は、0点と採点される場合がある」と書かれていますので、文法や語彙のミスがない正しい英文を書くだけでは、高得点は狙えないどころか、点数にさえならない可能性があります。

まず、質問に対してしっかりと答えを書く(①)。
次に、英文の構成や流れをわかりやすく論理的に書く。(②)
そして、自分が受験する級のレベルに合わせた語彙や文法事項を用いて書く(③④)。


…求められることが多いですね。

ただ、こうした「ライティング」の問題は英検®3級以上の話です。これから英語を始めようという方は、まだまだ先の話ではありますが、「帰趨(きすう)を知る」ということはとても大事なことです。将来的に、わが子はこういった問題にもチャレンジしていくんだ、ということをイメージしながら日々の英語学習を進めていきたいものですね。

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英検®における「スピーキング」

次に、「スピーキング」ですが、実際に合否の判断として利用されるのは、英検®3級からですが、英検®5級・4級級でも、受験者全員が受験できるオンラインスピーキングテストが行われています。

例題①

『小学 自由自在 英語』p.431より

例題②

『小学 自由自在 英語』p.442より

こちらは、毎度おなじみ『小学 自由自在 英語』に掲載されている「英検®練習問題」の抜粋です。イメージとしては例題①が5級レベル、例題②が4級レベルです。(実際の問題を使用することができなかったので、こちらで失礼します。)

実際の英検®スピーキングテストでは、まずパッセージとイラスト付きのカードが配られ、それを黙読します。そのあとにそれをマイクに向けて音読し、その内容に関する質問の答えをマイクに吹き込みます。

その音声がデータ化され、日本英語検定協会に届けられ、採点されます。英検®5・4級受験の際には、是非スピーキングテストも挑戦してみてください。

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inputとoutputのバランスが英語学習の肝に!

このブログでも繰り返しお伝えしていることですが、「リーディング」や「リスニング」においては、「速く正確に情報を収集する能力」が問われ、「ライティング」や「スピーキング」では、「正しく情報を発信する能力」が問われます。

特に、2020年度から施行された「学習指導要領」では、「コミュニケーションツールとしての英語力の養成」が大きく取り上げられていますので、「我が子には、英語を使いこなしてほしいので、小学校に入学したら英語塾や英会話スクールに通わせたい」とお考えの方も多くいらっしゃると思います。

実際に、2019年8月に、学研教育総合研究所が実施した「小学生の日常生活・学習に関する調査」において、「現在行っている習い事はありますか。(複数回答可)」という調査が行われました。

この調査によると、小1~小6の小学生の13.6%が英語塾(読み書き中心)や英会話教室に通っていたのだそうです。さらに,2020年8月の調査では,この割合が16.9%にまで上昇しています。これらの結果から推測すると、現在はもっとこの数値が上がっているかもしれません。

英語教育への関心は高まっているのは、データからも一目瞭然ですが、「リーディング」や「リスニング」などのinput、「ライティング」や「スピーキング」などのoutputそれぞれの特性を理解し、お子様の進度や目標に合った学習計画を立てることが大切です。

こちらも繰り返しお伝えしていますが、英語学習を、inputとoutputに分けて進めていくのはいかがでしょうか。英検®ジュニア~英検®4級までは、input中心の学習で合格することができます。市販の教材を使って学習を進めるのもいいでしょう。近所の読み書き中心の英語塾に通うのもいいでしょう。

今までの記事の中で、フォニックスの有効性についてはお伝えしていますので、将来のことを考えてフォニックスの学習はぜひ進めてほしいと思います。

→フォニックスに関する記事はこちら

せっかくinputしたら、それをoutputする機会を与えてあげましょう。outputの1つが「英会話」です。近所の英会話教室に通うのもいいでしょう。

最近は、「オンライン英語」もとても人気があります。パソコンとネット環境があれば、毎日英語のネイティブスピーカーと話すことができます。教材も充実していますし、比較的安価にオンライン英語を受講することができます。

また、「ライティング」については、書いたものを添削してもらう必要があります。近所の学習塾の先生に添削をお願いしてもいいでしょうし、オンライン上で添削をしてくれるツールも数多く存在していますので、まずはネットで調べてお子様に合ったものをぜひ探してみてください。

inputだけ、もしくはoutputだけに偏った学習はあまりおすすめしません。

inputだけで進めてしまうと、「ライティング」「スピーキング」を学習しなければならなくなったときに壁にぶつかってしまうでしょうし、そのころには英語を使ってコミュニケーションを取ることが恥ずかしくなってしまう「お年頃」になってしまうかもしれません。

またoutput、特に英会話スクールやオンライン英会話だけの英語学習の場合、inputが足りないために、表現できる幅も広がらないので、英語への興味も失ってしまうかもしれません。

もちろん、さまざまな方がいらっしゃいますので、inputだけ(outputだけ)の学習で、英語学習がうまくいったという方もいらっしゃると思います。あくまでも私個人の考えですので、「おや?」という方はぜひ読み流してほしいと思います。

しかし、進学塾で英語を教えていたときに、目の前の中学生に対して「小学生時にちゃんとフォニックス勉強していたらもっと伸びていたかもな」「小さいときにoutputをする機会が与えられていたら、今英語を話すことを恥ずかしがっていないだろうな」「英会話を長い間やってきたから英語に自信があるのはわかるけど、そのことでinputや文法学習を軽んじているのかもしれないな」と感じたことが多くあったことは事実です。

もう一度お子様の英語学習環境を見直し、足りない部分をどうやって補っていけばいいかを考えてみましょう。

一番大事なことは、お子様の英語学習の興味を持続させることです。「子どもの時に勉強した英語、ちょっと大変だった時もあったけど、楽しかったし、続けられてよかった!」とお子様が大人になったときに言ってくれたら最高ですよね!

それが保護者の皆様が目指すべき「ゴール」なのかもしれません。

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お子様が経験する、保護者世代とは異なる英語学習

これにて、全12回の英語の連載記事は終了となります。日々思っていたことや伝えたかったことなどを形に残すことができたので、とてもやりがいのある仕事ではありましたが、いかがだったでしょうか。

小学3年から学校で英語を学ぶことができる時代になりました。学習する内容も、環境も、我々が学生だったころとは、大きく異なります。

一連の記事を書きながら思っていたことは、「保護者の皆様に変化を知っていただきたい」ということでした。

小学3年から学校での英語学習が始まり、小学5年からはそれは「教科」となり、成績がつけられる。

そして学習内容が「前倒し」された結果、中学校で扱う英単語のレベルがあがり、文法範囲が広がりました。それは高校英語も同様で、文部科学省は、高校卒業時に英検®で言うと2級~準1級レベルまで英語力を引き上げたいと考えているそうです。

今までの我々の「あたりまえ」が通用しなくなってきています。学習ツールを見ても、「カセットテープ⇒CD⇒ダウンロード⇒QRコード読み取り」と進化しています。5月に算数・数学の迫田先生のブログで紹介した「動画ツール」も「今のあたりまえ」なのかもしれません。

変わるもの、変わらないもの、そして変えてはいけないものがあふれるこの時代、取捨選択をする保護者の皆様は責任重大ですし、情報を提供する我々自身も本当に責任が重いと感じています。

だからこそ、今ならではの「あたりまえ」を提供しようと努めてまいりました。そしてこの「あたりまえ」は半年、1年後には、「あたりまえ」でなくなっているかもしれません。

繰り返しになりますが、保護者の皆様におかれましては、自分の信用できるソースから、さまざまな情報をつかんでほしいと思います。我が子のために、アンテナをビンビンに張り巡らせてください。

そして、「この情報は有益だ!」「我が子にこの勉強法は合っている!」と思ったものから、ぜひお子様に紹介してあげてください。紹介したものが必ずあっているとは限りません。合っていなかったら、すぐにやめてしまっていいのです。

いずれきっとお子様に合う学習法が見つかるはずです。焦らず、慌てず、情報を収集し、お子様に学習の機会を与えていってください。

最後に、12回の連載を一緒にやってきた、国語の小池先生、算数・数学の迫田先生には、この場を借りて御礼申し上げます。

おふたりは、一言でいうと、プロ中のプロです。そんな方々と、一緒に仕事ができたことを光栄に思いますし、とても刺激になりました。

まだ、おふたりの記事を読んだことがないという方がいましたら、ぜひご一読ください。きっと、これからの国語、算数・数学の学習の世界が広がっていくことでしょう。

それでは、また機会がありましたら、また是非この場でお会いできればと思います。

1年間にわたり、ありがとうございました。

著者紹介

株式会社増進堂・受験研究社 編集部スタッフZ


某国立大学にて教育学を学ぶ傍らで、塾講師のアルバイトに取り組む。その中で英語教育法や教材作成に関心を抱き、卒業後に株式会社増進堂・受験研究社に就職。 これまでに文部科学省検定教科書の編集や多数の参考書・問題集の制作に関わる。最近は、オンラインでの語学教育にも関心がある。

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